• 更新日 : 2024年5月17日

住民税とは?計算方法、いつから・いくら払うのかも解説

住民税は教育、福祉、消防・救急、ゴミ処理など身近な行政サービスをまかなうために、地域に住む人たちなどが分担する地方税です。住民税には「区市町村民税」と「道府県民税」があります。
また、住民税は「個人住民税」と「法人住民税」があり、会社員であればお給料から天引きされるのが一般的です。

所得税(源泉徴収税)や固定資産税、国民健康保険税など、個人として納める税金にはさまざまなものがあります。住民税(個人住民税)も個人が納める税金のひとつです。

今回は住民税にスポットを当て、その概要と計算方法、非課税になるケース、いつ課税されるのか、滞納した場合はどうなるのかなど、疑問に感じやすい部分をまとめて解説していきます。

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住民税とは

住民税とは

住民税は企業などが負担する「法人住民税」と個人が負担する「個人住民税」に分かれ、その区市町村(または都道府県)に住所などがある個人が個人住民税を負担することになっています。
この記事では、個人が納税する個人住民税について取り上げます。

なお、住民税についてはこちらの動画でも詳しく解説していますので、あわせて参考にしてみてください。

住民税の税率

住民税の税率

住民税の税率と均等割(令和6年~)

所得割(標準税率)均等割(年額)
森林環境税(国税)1,000円
区市町村民税6%3,000円
道府県民税・都民税4%1,000円
合計10%5,000円

※令和6年度から1人年額1,000円の「森林環境税(国税)」が個人住民税とあわせて徴収されます(後述します)。

標準税率とは、地方税法で定められた税率のことで、各自治体の財政上必要がある場合には一定の範囲内で異なる税率を定めることができるものです。

所得割とは、前年の所得が基準になっており、前年の住民税の所得金額所得控除額を基に計算されるものです。なお、政令指定都市の道府県民税は2%、市民税は8%です。

均等割とは、一定の所得がある人全員に均等に負担するもので、個人住民税の基礎的な位置づけにあります。

個人住民税の徴収については、道府県民税の徴収も市町村民税とあわせて市町村が実施しています。

参考:個人住民税|総務省

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住民税の計算方法

住民税の計算は、以下のフローで行います。順を追って計算方法を説明していきましょう。

住民税の計算方法

1. 総所得金額の算出

合計所得金額-損失の繰越控除=総所得金額

 

住民税の計算において合計所得金額とは、年間(1月1日~12月31日)の収入から経費や法的控除額等を差し引いた額です(分離課税の所得を除きます)。
所得税の確定申告をした人は、前年度の確定申告書の所得を見ると、合計所得金額(青色申告者は青色申告特別控除を差し引く前の金額)を知ることができます。
給与所得のみの人は、会社から交付された源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄で総所得金額がわかります。

2. 所得控除

住民税の計算においても、所得税のように一定の所得控除(所得額より差し引ける額)が認められます。控除できる金額は所得税の所得控除とは異なりますが、以下の項目について控除が可能です。

3. 課税所得の算出

総所得金額-所得控除額の合計=課税所得

4. 所得割の計算

課税所得額×標準税率(10%)=税額控除前の所得割額

5. 税額控除

税額控除前の所得割額-税額控除の額=税額控除後の所得割額

 

税額控除には、以下のようなものがあります。

  • 配当控除
  • 外国税額控除
  • 寄附金税額控除
  • 配当割額及び株式譲渡所得割額の控除
  • 住宅借入金等特別税額控除
  • 調整控除
  • 住宅借入金等特別税額控除(所得税で控除しきれなかった場合)

6. 均等割の加算

税額控除後の所得割額+均等割額=住民税の額

 

なお、先述のとおり、令和6年度から個人住民税の均等割に1人年額1,000円の「森林環境税(国税)」が上乗せされて徴収されます。

【住民税額計算の例:令和6年分】

総所得金額300万円で住民税の所得控除の合計が100万円、税額控除はない場合

課税所得額:300万円(総所得)-100万円(所得控除)=200万円
所得割の計算:200万円(課税所得)×10%=20万円
税額控除:なし
住民税額:20万円(所得割)+5,000円(均等割と森林環境税)=20万5,000円

※簡易的に示すため、ほとんどのケースで発生する調整控除の計算は除外しています。

令和6年度税制改正による住民税の定額減税について

令和6年度税制改正では、令和6年分の所得税と住民税について「定額減税」(所得税および住民税からの特別控除)が実施されます。

所得税は納税者本人について3万円(同一生計配偶者および扶養親族1人について3万円)、住民税は納税者本人について1万円(控除対象配偶者および扶養親族1人について1万円)がそれぞれ特別に控除されます。住民税については、住民税所得割額からの特別控除となります。

住民税が減税となる対象は、令和6年分の住民税の納税義務者で原則として令和6年分の合計所得が1,805万円以下である人です。給与所得者、事業所得者、公的年金受給者それぞれ減税の方法は異なり、また、普通徴収特別徴収とは減税方法は異なります。

住民税均等割だけの人については減税の対象にならず、また、控除しきれない額がある場合は、調整給付金という形で支給されます。

参考:個人住民税における定額減税について|総務省「個人住民税の定額減税に係るQ&A集

住民税はいつから払う?

住民税はいつから払う?

住民税は、前年の1月から12月に一定以上の所得がある人が課税対象です。

住民税の額は、前年1月1日から12月31日までの所得で決まります。
したがって、社会人1年目の人で、前年の所得がない人は社会人2年目から住民税を負担(給与天引による支払)することになります。

年の途中で引っ越しをしても、住民税の納付先は引っ越しをした翌年1月1日の住所地で決まります。

住民税はいつ払う?

住民税いつ払うか|普通徴収・特別徴収

申告納税方式の所得税は、確定申告後すぐに納税するか、振替納税で指定の期日に金融機関の口座から引き落とされるかのいずれかの方法で納めます。給与所得者の場合は毎月給与から源泉徴収税として天引きされ、年末調整のときに過不足分が精算されるしくみになっています。

申告納税方式である所得税と異なり、個人住民税については「賦課課税方式」となっています。つまり、区市町村が年末調整や確定申告の情報などから税額を計算し、納税額を通知するしくみとなっています。また、住民税の徴収方法には「普通徴収」と「特別徴収」などがあります。それぞれ見ていきましょう。

普通徴収

住民税の普通徴収とは、区市町村が納税通知書によって通知し、通知書に基づいて納税者本人から直接徴収する方法です。個人事業主や特別徴収ができない給与所得者などについてはこの方法にて住民税を徴収します。

特別徴収

住民税の特別徴収とは、区市町村が特別徴収税額通知書によって、会社などの給与支払者を通じて通知され、毎月の給与の支払時に給与から天引きして徴収する方法です。給与所得者の住民税は、原則として特別徴収の方法によることとされています。

退職したとき

給与から住民税を特別徴収されていた納税者が退職した場合、退職の翌月以降の住民税について、次のような対応があります。なお、次の勤務先が未定、自営業に切り替えなどで次のいずれにも該当しないときは、普通徴収にて納税することになります。

  1. 再就職先にて引き続き特別徴収する
    各納付期限までに引き続いて、再就職先にて特別徴収します。
  2. 6月から12月までに退職し、残りの税額を前職にて天引き
    前職にて残額を精算するもので、翌年の6月までの住民税を前払い(特別徴収)することが可能です。
  3. 翌年1月から5月までに退職し、残りの税額を前職にて天引き
    上記1に該当しない人のうち、5月31日までに支払われる給与等が住民税残額を超える場合にはまとめて特別徴収となります。

公的年金受給者の場合

65歳以上の公的年金受給者で、個人住民税の納税義務がある場合には、公的年金からの引落によって住民税の徴収をします。

参考:公的年金からの特別徴収 |総務省

海外にいるとき

住民税は、各年の1月1日時点で住所のある区市町村について納付します。海外赴任や留学などで、1月1日よりも前に1年以上出国することとなったときは、1月1日時点で住所が国内にないため、新しい年度からの住民税は課されません。ただし、1年以上の出国でも住民税の異動を行わなかった場合や、観光ビザで滞在するワーキング・ホリデーの場合は、国内に住所があるとみなされ課税されます。

なお、出国前に納税通知書が届いた普通徴収の分については、出国前に全額納付する、口座振替の手続きをする、納税管理人を立てて納税を委託するという方法のうち、いずれかで納付しなければなりません。

1月1日時点で国内に住所があり、1月1日から納税通知書が送付されるまでの期間に海外へ転出する場合は、本人に代わり納税を実行する納税管理人の指定を区市町村に届け出る必要があります。

住民税が非課税になる場合

個人住民税は、その年の1月1日時点において住所がある区市町村にて課税されます。しかし、一定の理由にあてはまる場合には課税対象から外れる制度があり、これを「非課税制度」といいます。

個人住民税の非課税については扶養家族の状態や所得を考慮して決定され、次の二つのケースが考えられます。

所得割・均等割とも非課税のケース

次のいずれかに該当する場合には、所得割・均等割とも非課税となります。

  1. 「生活保護法」による生活扶助を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親に該当し、前年の合計所得が135万円以下
  3. 前年の合計所得が区市町村の条例に定められた金額以下

上記3については区市町村によって異なりますので、お住まいの区市町村にお尋ねください。

所得割のみ非課税のケース

それぞれの金額以下のときは所得割のみが非課税となります。

  • 同一生計配偶者や扶養親族がいない場合
    前年の総所得が45万円以下
  • 同一生計配偶者や扶養親族がいる場合
    {35万円 ×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+ 42万円 }以下

参考:個人住民税|東京都主税局

住民税決定通知書で税額を確認

個人住民税の通知は、普通徴収の場合には納税者あてに、特別徴収の場合には給与支払者あてに5〜6月頃に届きます。給与支払者に届いた通知書は本人にも通知されます。

なお、令和6年度より特別徴収の通知書受取方法が変更され、紙から電子データで通知書を受け取ることもできるようになりました。電子データで受け取った場合、従業員にも通知書を電子的に配付するための体制が求められます。

参考:個人住民税特別徴収税額通知電子化に係る特別徴収義務者向け特設ページ|地方税共同機構「受取方法変更のお知らせリーフレット」

住民税決定通知書とは、以下のような書類です。おおまかな見方を確認してみましょう。

住民税決定通知書

出典:令和6年度個人市県民税に係る定額減税について|福島県南相馬市を加工して作成

※自治体によって決定通知書の書式等は異なります。

(上の住民税決定通知書の画像から)
①総所得や所得控除、課税所得、扶養親族の数が記載されます。
 なお、※の部分等に住民税における定額減税の適用状況が記載される予定です。
②所得割や均等割などの税額の計算が記載されます。
③納付額の欄で、給与所得者の場合は6月~翌5月までの月々の納付額が記載されます。

住民税は確定申告をする必要がある?

そもそも確定申告とは所得税の申告のことであり、住民税の申告は住民税申告といいます。

所得税の確定申告を行う必要がある人は、確定申告を行うことで基本的には住民税申告は不要になります。

そのため、下記に該当する方は住民税の申告は不要です。

住民税申告(市民税申告)が不要なケース
  • 所得税の確定申告を行った人
  • 会社の年末調整で完結した人
  • 所得が公的年金のみで、特別に住民税の控除をしない人

詳しく知りたい方は、下記の記事もご参照ください。

住民税を滞納したらどうなる?

住民税を滞納した場合、本来の税額のほかに延滞金がかかります。納税が遅れると、まず区市町村から督促状が届くことが多いでしょう。督促状が届いたら、すぐに納税または区市町村の担当窓口に連絡します。

督促状が届いてもなお滞納が続く場合は、電話での納税の連絡や催告書が届くこともあるほか、財産が差し押さえられるケースも考えられます。特別な事情があり納付できない場合、納税が猶予されることもあります。何の連絡もせずに滞納することだけは避けましょう。

ふるさと納税で住民税の負担が軽減される?

ふるさと納税

ふるさと納税寄附金控除の1つで、自分の選んだ自治体に「ふるさと納税(寄附)」を行うと、寄附金のうち「2,000円を越える部分」について、控除上限額内で所得税と住民税から全額が控除される制度です。

ただし、ふるさと納税において「ワンストップ特例制度」を利用した時は、住民税からのみの控除となります。

参考:ふるさと納税トピックス|総務省

所得税の計算とふるさと納税のイメージ

例えば、年収500万円の単身の給与所得者の場合、30,000円のふるさと納税を行ったとすると、28,000円(=30,000円-2,000円)が所得税と住民税から控除されます。

参考:ふるさと納税のしくみ|総務省

詳しくは下記記事もあわせてご参考ください。

ー個人事業主・フリーランスの方

ー会社員・副業している方

住民税の額は納税通知書で確認しよう

住民税は所得税と異なり、賦課課税方式の税金です。所得税の確定申告書や年末調整の情報をもとに、区市町村で税額の計算が行われ納税者に通知されます。住民税の額を確認したいときは、直接あるいは会社を通して送付される住民税決定通知書などで確認しましょう。なお、普通徴収の場合には支払い忘れに注意しましょう。

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