- 更新日 : 2025年3月19日
外国人を正社員雇用するには?在留資格・注意点・手続きを解説
日本で外国人を正社員として雇用するには、在留資格の確認や各種手続きが必要です。外国人正社員の雇用に関するルールや手続きを正しく理解しておきましょう。
本記事では、外国人が正社員として働くために必要な在留資格や、雇用時の注意点を解説します。
目次
外国人が働くためには就労可能な在留資格(就労ビザ)が必要
日本で働く外国人は、就労が認められる在留資格を取得しなければなりません。在留資格には複数の種類があり、それぞれ働ける職種に制限があります。
適切な資格をもたずに働くことは法律で禁止されており、違反すると罰則を受ける可能性があります。
在留資格ごとに認められる職種が異なる
日本で働くための在留資格にはさまざまな種類があり、それぞれに従事できる職種が決められています。そのため、取得した資格に合った職業に就く必要があります。
就労が制限される在留資格の一覧は、以下の表のとおりです。
在留資格 | 就労できる活動内容 | 具体的な職種例 |
---|---|---|
外交 | 外国政府の外交官やその家族としての活動 | 大使、公使、総領事、外交官の家族 |
公用 | 外国政府・国際機関の公務に従事する活動 | 大使館・領事館職員、国際機関の派遣職員とその家族 |
教授 | 大学や高等専門学校での研究・教育活動 | 大学教授、研究指導者 |
芸術 | 収入を伴う芸術活動 | 作曲家、画家、作家 |
宗教 | 外国の宗教団体から派遣された宗教家の活動 | 宣教師 |
報道 | 外国の報道機関の取材・報道活動 | 記者、写真家 |
高度専門職(1号) | 高度な専門知識を活かした業務 | 研究者、エンジニア、経営者 |
高度専門職(2号) | 高度専門職1号での活動を経て、永続的な活動が認められる | 研究者、エンジニア、経営者 |
経営・管理 | 企業の経営・管理業務 | 会社経営者、管理職 |
法律・会計業務 | 資格をもつ専門家の業務 | 弁護士、公認会計士 |
医療 | 医療系資格をもつ専門家の業務 | 医師、歯科医師、看護師 |
研究 | 研究機関や企業での研究業務 | 大学研究員、企業の研究者 |
教育 | 小学校・中学校・高校などでの教育業務 | 語学教師(英語など) |
技術・人文知識・国際業務 | 理系・文系の専門知識を活かした業務 | エンジニア、通訳、デザイナー、マーケティング担当者 |
企業内転勤 | 外国企業の日本支社・支店への転勤 | 外資系企業の転勤者 |
介護 | 介護福祉士の資格をもつ者による介護業務 | 介護福祉士 |
興行 | 芸能やスポーツ関連の活動 | 俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手 |
技能 | 熟練した技術を活かした業務 | 外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機パイロット、貴金属職人 |
特定技能(1号) | 人材不足の産業での技能を活かした業務 | 介護、外食、建設、農業など |
特定技能(2号) | 特定産業分野での熟練技能を活かした業務 | 建設、造船など |
技能実習(1号) | 技能実習計画に基づく業務 | 技能実習生 |
技能実習(2号) | より高度な技能を要する業務 | 技能実習生 |
技能実習(3号) | さらに高度な技能を要する業務 | 技能実習生 |
外国人を雇用する際には、在留資格ごとに認められた職種を正しく理解することが重要です。雇用する企業側も、外国人の在留資格を適切に確認し、ルールを守りましょう。
外国人本人が在留資格を取得できる条件を満たしている必要がある
在留資格を取得するには、外国人本人が定められた条件を満たしていなければなりません。
たとえば、以下のような条件が挙げられます。
- 学歴
- 実務経験
- 資格の有無
条件を満たしていない場合、申請しても在留資格を取得することはできません。
企業は採用前に、職種に合う条件と、雇用予定の外国人がその条件を満たしているかを確認しましょう。
外国人正社員と日本人正社員の違いは在留資格のみ
日本では、労働基準法第3条により、国籍を理由に労働条件を変えることは認められていません。給与や労働時間などの待遇は、日本人と外国人で区別せず、公平に扱う必要があります。
たとえば、外国人であることを理由に賃金を低くしたり、休暇の取得を制限したりすることは法律で禁止されています。日本で働く外国人も、日本人と同じ権利をもつことを理解しておくことが大切です。
そのうえで、外国人が正社員として働くには、雇用主が在留資格を確認する必要がある点に注意が必要です。
外国人を正社員雇用する5つのメリット
企業が外国人を正社員として雇用すると、人材不足の解消や企業の成長、海外展開の促進など、多くのメリットがあります。
本章では、外国人を正社員雇用するメリットを5つご紹介します。
1.人材不足を解消できる
日本では少子高齢化が進み、多くの企業が人手不足に悩んでいます。そのため、外国人を採用することで、安定した労働力を確保できる点がメリットです。
また、外国人社員は働く意欲が高く、長期間勤務する傾向があります。日本の働きやすさや生活環境に魅力を感じ、日本で働きたいと考える外国人が増えているためです。とくに、人手不足が深刻な業界では、外国人を雇用することで人材不足を解決でき、事業の安定につなげられます。
2.グローバルな視点を取り入れられる
外国人社員が加わることで、企業内に異なる文化や価値観などの新しい視点が生まれます。その結果、新たな発想やアイデアが生まれやすくなり、企業の成長につながるでしょう。
また、日本人だけでは気づきにくいニーズを発見できる場合もあります。たとえば、外国人観光客向けのサービスを提供する企業では、外国人社員の意見を活用することで、よりよい商品やサービスの開発が可能になるでしょう。
3.海外展開の足掛かりになる
現地の文化や商習慣に詳しい外国人社員がいると、ビジネスの展開がしやすくなります。言葉の壁が減り、海外企業との交渉もスムーズになります。
たとえば、アジア市場に進出したい場合、その国の言語を話せる外国人社員がいれば、現地の企業と円滑にやり取りできる点がメリットです。また、海外出張や駐在の際にも、外国人社員がサポート役となり、業務を効率的に進められます。
さらに、現地の市場調査やマーケティング活動にも貢献します。外国人社員がいることで、ターゲット市場のニーズを正確に把握し、適切な戦略を立てやすくなるでしょう。
4.外国人採用による企業イメージの向上
グローバル化を進める企業にとって、外国人採用は信頼性やブランド力向上につながるでしょう。海外の取引先と関わる機会が多い企業では、外国人社員がいることで、円滑な関係を築きやすくなります。
また、職場に多国籍の社員がいることで「ダイバーシティ(多様性)」を重視する企業としてのイメージが強まり、優秀な人材が集まりやすくなります。
5.高い労働意欲をもつ優秀な人材を確保しやすい
日本で働きたいと考える外国人は、向上心が強い人が多い傾向があります。企業が成長するには、意欲的で優秀な人材の確保が欠かせません。
日本の技術やビジネス環境を学びたいと考える外国人は、仕事への意欲が高く、積極的にスキルアップを図ってくれます。また、こうした意識をもつ外国人を雇用することで、他の社員の意欲も高まり、組織全体の成長にもつながるでしょう。
外国人を正社員雇用するときに注意すること
外国人社員が働きやすい職場環境を整えるための注意点を解説します。
文化や価値観の違い
外国人社員と日本人社員の間では、働き方やコミュニケーションの方法が異なるため、意思疎通がうまくいかないことがあります。また、文化や価値観の違いが原因でトラブルが起こる可能性があるため注意が必要です。
対策として、事前に研修を実施し、異なる文化や価値観について学ぶ機会を設けることが有効です。日本のビジネスマナーを説明するだけでなく、日本人社員も外国人社員の文化や働き方を理解できるようにすると、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
お互いの文化や価値観の違いを尊重し、歩み寄ることで、職場の雰囲気が良くなり業務も円滑に進みます。
雇用手続き
外国人を雇う場合、日本人を採用するときよりも手続きが複雑になります。在留資格の確認や労働許可の取得が必要なため、法律にしたがって適切に進めましょう。手続きに不備があると、外国人社員が働けなくなる可能性があります。
とくに、在留資格の管理は重要です。更新を忘れると就労ができなくなるため、慎重に対応しなければなりません。また、外国人社員自身が行う手続きに必要な情報を提供し、サポート体制を整えると安心して就業できます。行政手続きに不慣れな企業は、専門家の協力を得るのもよい方法です。
受け入れ環境の整備
外国人社員が働きやすい環境を整えることも大切です。職場でのサポートが充実すれば、安心して業務に取り組めます。
たとえば、研修では、言語の壁や業務の進め方の違いを考慮し、わかりやすい説明を心がけましょう。日本語が得意でない外国人社員には、簡潔で理解しやすい言葉を使うと伝わりやすくなります。
また、職場に外国人社員の相談役を配置するのも効果的です。仕事の進め方や社内ルールについて気軽に相談できる環境があれば不安が減り、職場になじみやすくなります。適切なサポートを提供することで、外国人社員の定着率が向上し、企業全体の生産性向上にもつながるでしょう。
外国人を正社員雇用したあとに必要な手続き
外国人を正社員として採用後は、さまざまな手続きが必要です。手続きを怠ると、外国人社員が働けなくなったり、企業が罰則を受けたりする可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
雇用契約締結
外国人を雇用する場合、日本人と同じように雇用契約を結ぶ必要があります。具体的には、業務内容や賃金、労働時間などの条件を外国人本人と確認し、双方の合意が必要です。母国語や英語で契約書を作成することで、契約内容の認識について食い違いを防げます。
また、日本人の雇用と異なる点として、在留資格取得の有無があります。雇用契約の締結にあたり、在留資格の取得・更新を雇用契約の効力発生要件とすることに言及するとよいでしょう。たとえば、外国人の在留資格が取得できない場合に契約を無効とする条項を契約書に盛り込むことで、不法就労のリスクを軽減できます。
在留資格の申請・変更
在留資格の申請は、本人が出入国在留管理局で行うのが基本です。しかし、オンライン申請や行政書士による申請取次など、企業がサポートできる方法もあります。雇用する本人と相談し、申請が不安な場合はサポートを行いスムーズな申請を行いましょう。
また、在留資格の審査には通常1〜3ヶ月かかるため、内定が決まってもすぐに働けるわけではありません。採用活動は余裕をもって進め、必要な手続きを早めに行うことが大切です。
税務手続き
外国人も日本人と同様に、日本の税制度に基づいて所得税や住民税の手続きを行います。特に、外国人の所得税は、「居住者」か「非居住者」かによって税率が異なるため注意が必要です。「居住者」は課税所得金額に応じて税率が変わる一方、「非居住者」は一律20.42%に設定されています。
外国人社員の税務処理を誤ると、外国人社員に確定申告を依頼することになり、過去申告期限を過ぎたことによる無申告加算税や延滞税を会社が負担するよう求められる場合があります。そのため、税理士などの専門家に相談しながら、適切に手続きを進めましょう。
外国人雇用状況届出書の提出
外国人を雇用した企業は、ハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出しなければなりません。外国人社員の就業状況を行政機関が把握するための制度です。届出は提出期限が決められており、提出を怠ると罰則を受ける可能性があります。
適切な手続きを行うことで、企業の信用を守ることにもつながります。事前に必要な書類を準備し、計画的に進めましょう。
入国手続きのサポート(海外在住の場合)
外国人が日本で就労するには、在留資格の取得だけでなく、住居の確保や銀行口座の開設など、多くの準備が必要です。スムーズに入国し安心して働けるように、企業が事前に必要な手続きを行うサポートが重要になります。
具体的には、来日後すぐに生活をはじめられるよう、一時的な住居を用意したり、銀行口座の開設を手伝ったりすると安心です。
外国人の正社員雇用を推進しよう
外国人を採用することで、人材不足の解消や企業の競争力向上など、さまざまなメリットが得られます。
ただし、企業は外国人社員が働きやすい環境を整えることも大切です。文化や価値観の違いを理解し、円滑なコミュニケーションを図れるよう、企業側が必要な知識を身につけましょう。働きやすい環境を整えることで、外国人社員の活躍を支援できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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