• 更新日 : 2025年3月5日

契約社員も産休はとれる?取得条件や手続きの流れを解説

契約社員として働きながら出産を検討していると「産休は取得できるの?」と不安になる方もいるでしょう。結論、労働基準法が定める女性労働者であれば、契約社員やパートなどの有期契約労働者も産休を取得できます。

本記事では、契約社員の産休取得に必要な条件や手続きについて、詳しく解説します。

契約社員も産休をとれる!

契約社員も産休を取得できます。産休は正式名称を「産前産後休業」といい、母体保護を目的に法律で定められた制度です。

契約社員だけでなく、アルバイトやパートタイム労働者も取得できます。産休の取得条件や手続きについて、解説します。

契約社員が産休を取得する条件

契約社員が産休を取得するために、特別な条件はありません。労働基準法では「女性労働者であれば誰でも産休を取得できる」と定められているため、勤務年数に関係なく取得可能です。

ただし、個人事業主や経営者など、雇用関係にない方は対象外です。また、産前休業は任意取得になるため、自ら申し出る必要があります。

参考:厚生労働省|産前産後(第65条)

産休を取得できる期間

産休を取得できる期間は、下記のとおりです。

  • 産前休業:出産予定日を含む6週間(双子以上は14週間)前から
  • 産後休業:出産の翌日から8週間(56日)以内

産休は産前と産後あわせると、14週(98日)間取得できます。なお、出産予定日によって、産前休業の期間は短くなったり長くなったりするので注意しましょう。予定日より出産が遅れた場合は、その差の日数分だけ産前休業期間が延びます。

産後6週間を過ぎたあとは、本人が働くことを希望し医師が認めた場合は、仕事への復帰が可能です。

また、双子以上の場合は、産前と産後で22週間の休業を取得できます。

参考:厚生労働省|産前産後(第65条)

産休について、以下の記事でも詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。

産休を取得するために必要な手続き

産休を取得する際は、以下の流れで手続きを進めましょう。

  1. 会社に妊娠を報告する
  2. 産休に入る時期を決める
  3. 必要書類を提出する
  4. 産前休業に入る
  5. 出産後、会社に報告する
  6. 産後休業終了後、育休または職場復帰する

立ち仕事や力仕事、接客業など母体に負担がかかる仕事の場合は、早めに会社へ報告しておくと安心です。申請時には、下記のような書類の提出が必要となります。

  • 産休申請書:本人が会社に提出する
  • 産前産後休業取得者申出書:会社が年金事務所へ提出する

産前休業・産後休業は、基本的に同時に申請をします。申請後に出産予定日が変わりそうな場合や出産したあとは、忘れずに会社に連絡しましょう。

参考:厚生労働省|産前・産後、育児休業、復職までの流れ

産休の手続きについて、以下の記事で詳しく解説しているため、参考にしてみてください。

契約社員の産休中に給料は支払われる?

基本的に、産休中は給与の支払い義務はありません。しかし、公務員の場合は、異なる制度が適用されるため注意が必要です。

ここでは、産休中の給料や免除される保険料について解説します。

契約社員の産休中は給料は支払われない

契約社員が産休中に給料を受け取れるケースは少なく、基本的には無給となります。これは「ノーワーク・ノーペイの原則」にもとづいて、労働者が働いていない期間は、賃金を支払う義務がないとされているためです。

具体的には以下の理由があります。

  • 労働基準法に、産休中の給与保証に関する義務規定はない
  • 産休期間中は業務に従事していないため、企業側に給与支払い義務が発生しない

ただし、企業によっては、独自の福利厚生制度として、産休期間中にも給与を一部支給しているケースがあります。

また、産休中は、給料の代わりに出産手当金が支給されます。産休中の給料について疑問がある方は、会社の就業規則を事前に確認しておくとよいでしょう。

公務員は産休中も給料が支払われる

公務員の場合は、産休期間中も給与が支払われます。理由は、産前産後休業が有給扱いとなるためです。

具体的には以下の通りです。

  • 産前産後休業中も通常の給料が満額支給される
  • 賞与(ボーナス)も支給対象となる

公務員は民間企業とは制度が異なるため、産休取得に伴う収入減少の不安は少ないでしょう。

産休中の社会保険料は免除される

契約社員であっても、産休中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)は申請すれば免除されます。免除期間は産休に入る日を含む月から、休業を終える日の翌日を含む前月までです。

社会保険料は、月単位で計算されます。そのため、給与の支払いが15日や20日などの場合でも、免除の計算には影響されません。

出産予定日よりも早くに出産した場合は、実際の出産日を基準に「産前休業」の期間が変わります。それに伴い、さかのぼって社会保険料の免除を受けられます。予定日より遅く出産した場合は、出産予定日から出産日までの日数が産後休業の期間に追加される仕組みです。

社会保険料は、給与額に関係なく一定額が引かれるため、免除されることで家計の負担が軽減されます。免除期間中も、将来受け取る年金額には影響がないので、安心して産休を取得できるでしょう。

参考:日本年金機構|産前産後休業期間中の保険料免除が始まります

産休の社会保険料免除について、以下の記事でも詳しく解説しているため、参考にしてみてください。

契約社員が産休中にもらえるお金

産休中に給料が出なくても、契約社員は一定の条件を満たせば各種給付金を受け取れます。ここでは、出産育児一時金と出産手当金について詳しく解説します。

1. 出産育児一時金

出産育児一時金とは、子どもを出産した際に加入している健康保険から支給される一時金のことです。出産育児一時金の額は原則として一律となっており、令和5年4月より、支給額が42万円から50万円に引き上げられました。

支給条件は、下記のとおりです。

  • 妊娠4ヶ月(85日)以上で出産した場合
  • 出産する本人が会社の保険に入っている、または扶養者であること

また、令和3年度の出産費用の平均を、下記にまとめました。

施設の種類出産費用
公的病院418,810円
私的病院486,880円
診療所

(助産所を含む)

472,258円

参考:厚生労働省|出産一時金について(6p)

出産費用には健康保険が適用されません。そのため、分娩費用や入院費などは自己負担ですが、出産育児一時金によってその負担を大きく軽減できます。

2. 出産手当金

出産手当金は、産休中の収入を補うために健康保険から支給される給付金です。

支給条件は以下の通りです。

  • 健康保険に加入していること
  • 出産のために会社を休んでいること
  • 妊娠4ヶ月以降の出産であること

参考:全国健康保険協会|出産に関する給付

契約社員も、健康保険に加入していれば、出産手当金を受け取れます。原則として、出産のために仕事を休んでおり、かつ産休中に会社から賃金の支払いを受けていない方が対象です。

なお、支払額が産休前の給与より少ない場合は、差額分を出産手当金として受け取れます。支給期間は、出産前の42日前から出産後の56日までです。

支給額は、下記の計算式で決まります。

<出産手当金の支給額の計算式>

産休に入る前の1年間の標準報酬月額を平均した金額÷30×2/3×支給日数

出産手当金は、産休中の生活費を支える重要な制度です。対象となる方は、安心して出産に備えるためにも必ず申請しましょう。

産休後は契約社員も育休をとれる!

産休後、契約社員でも一定の条件を満たせば育休を取得できます。育休は「育児休業」の略称で、育児に専念するための制度です。産休とは異なり、育休には取得条件があるため、事前に確認しておくことが大切です。

ここでは、育休の制度について解説します。

育児休業給付金とは?

育児休業給付金は、1歳未満の子を養育する目的で、育児休業を取得した際に受け取れる手当のことを指します。雇用保険から支給されるもので、契約社員であっても一定の要件を満たしていれば受け取ることが可能です。

支給対象になる条件は、下記のとおりです。

  • 1歳未満の子を養育するために、育児休業を取得した被保険者であること
  • 育休開始前の2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上あること
    ※ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の完全月が12ヶ月以上あること
  • 育休期間中に働いた日数が、1ヶ月に10日以下であること

参考:厚生労働省|育児休業等給付の内容と支給申請手続

これらの条件を満たせば、雇用保険に加入している契約社員も、育児休業給付金を受け取れます。支給額は、育休開始から180日目までは「賃金の67%」、181日目以降は「賃金の50%」です。

また、育児休業給付金のほかに、出生時育児休業給付金という制度もあります。産後パパ育休給付金とも呼ばれており、産後8週間以内に4週間(28日)を上限に取得できます。男性の育児休業取得促進のための制度で、休業時の収入を支援することが目的です。

対象者は、下記のとおりです。

  • 子どもの出生日から8週間を経過する日の翌日までの期間内に、4週間以内の期間を定めて、当該子を養育するための産後パパ育休を取得した被保険者であること
  • 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上の完全月が12ヶ月以上あること(ない場合は就業した時間数が80時間以上であること)
  • 休業期間中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)であること
  • 子どもの出生日から8週間を経過する日の翌日〜6ヶ月を経過する日までに、労働契約期間が満了することが明らかでないこと

参考:厚生労働省|出生児育児休業給付金

育児休業給付金は、勤務先を通じてハローワークに申請します。必要書類は勤務先が用意してくれることが多いため、事前に人事担当者に確認しておくとスムーズです。育休期間中も家計を支える重要な給付金となるため、申請を忘れないようにしましょう。

育休について、以下の記事でも詳しく解説しているため、参考にしてみてください。

育休を取得できる期間

契約社員も、原則として子どもが1歳になる前日まで、育休を取得できます。また、以下の条件を満たせば育休期間を延長できます。

  • 保育園の空きがない場合・配偶者の志望・怪我や病気の場合:1歳6ヶ月まで延長可能
  • 1歳6ヶ月を過ぎても保育園への入園の目途が立たない場合:最長2歳の誕生日前日まで延長可能

参考:厚生労働省|「育児休業」の延長を予定されている労働者・事業主の皆さまへ

なお、2025年4月からは、育休延長の手続きが厳格化されます。これまでは、保育所の利用を申し込んだものの、当面入所できないことについて、市区町村の発行する入所保留通知書などで確認しておりました。

2025年4月以降に延長の申請をする際は、延長時の「育児休業給付金支給申請書」に下記の書類を添付して提出する必要があります。

  • 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
  • 市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
  • 市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書・入所不承諾通知書など)

参考:厚生労働省|2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります

延長を考えている方は、市区町村に保育所等の利用申し込みを行う際は、必ず申込書の写しを保管しておきましょう。

【2025年4月~】法改正により実質10割相当の支給が実現

2025年4月から、改正雇用保険法が施行され「出生後休業支援給付金」が新たに創設されます。この制度は、主に父親の育児参加を促進することが目的です。

これまで父親が育休を取得しづらい理由として「収入減少への不安」がありました。しかし、改正後は経済的負担が大きく軽減されます。つまり、主たる生計者である父親の減収分をカバーすることで、父親の育児参加の促進を図るというものです。

具体的には、育児休業給付金の給付率が現在の67%から80%に引き上げられます。育児休業給付金の67%に、新しく出生後休業支援給付が13%上乗せされる形になります。

さらに、育休期間中は社会保険料が免除されるため、最大28日間は「実質手取り10割相当」となる仕組みです。原則として、父親・母親ともに育休を取得することが要件となっています。

出生後休業支援給付金の具体的な対象者は、下記のとおりです。

  • 被保険者が対象期間内に子を養育するために休業していること
  • 被保険者が対象期間内に14日以上の出生後休業を行い、被保険者の配偶者が14日以上の出生後休業を行っていること

参考:厚生労働省|令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について

共働き家庭が増える中、父親の積極的な育児参加を後押しする制度として期待されています。

契約社員が育休を取得する上での注意点

契約社員は、育休の取得が認められない場合があるため、注意が必要です。以下に該当する場合は、育休を取得できないことがあります。

  • 会社の労使協定で「勤続1年未満の社員は育休対象外」とされている
  • 子が1歳6ヶ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと
    ※保育園などが見つからず延長する場合は2歳まで
  • 労働時間が短く、雇用保険の加入条件を満たしていない

契約社員は有期雇用であるため、育休中に契約期間が満了してしまうケースも少なくありません。契約が終了すれば、育休も途中で打ち切りとなり、育児休業給付金の支給もストップしてしまいます。

また、下記いずれかに該当する労働者は、「労使協定」で育児休業の取得対象外にできます。

  • 雇用期間が1年に満たない労働者
  • 育児休業申出があった日から起算して1年以内に、雇用関係が終了することが明らかな労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

参考:厚生労働省|育児休業制度(23p)

なお、労使協定が締結されていない・労使協定において育児休業の取得要件を変更する定めがない場合は、育児・介護休業法にもとづく要件が適用されます。契約社員で育休の取得を検討しているなら、会社の就業規則や労使協定を事前に確認しましょう。

以下の記事でも、産休・育休について詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。

契約社員の産休中に雇い止めされることはある?

雇い止めとは、有期労働契約で、契約期間が満了を迎えたときに次の契約を結ばない場合のことを指します。契約社員として働いていると、「産休を取得したら契約を切られてしまうのでは?」と不安に感じる方もいるでしょう。

結論、妊娠や産休を理由にした「雇い止め」は法律で禁止されています。ここでは、妊娠・出産を理由とする雇い止めの違法性について詳しく解説します。

妊娠・出産が理由の雇い止めは、違法となる可能性が高い

契約社員であっても、妊娠や産休を理由とする雇い止めは、違法となる可能性が高いです。「男女雇用機会均等法」や「労働基準法」によって、妊娠・出産・産休・育休を理由とした解雇や契約終了など、不利益な扱いが禁止されているためです。

具体的には、以下の法律で定められています。

妊娠中や産休取得の申し出をしたことで、契約更新を拒否されるケースは「マタニティハラスメント(マタハラ)」に該当する可能性が高いです。

厚生労働省の調査によると、令和4年度に「妊娠・出産・育休取得を理由とする不利益取り扱い」に関する相談が、全国の労働局に4,717件寄せられています。これは、妊娠・出産を理由とする不当な扱いを受けるケースが、決して珍しくないことを示しています。

参考:厚生労働省|【概要】令和6年度事前分析表(3p)

契約社員が産休前に契約が終了した場合はどうなる?

契約社員は有期雇用であるため、契約期間が満了すれば原則として契約終了となります。なお、契約社員であっても、下記のどちらかに該当する場合は、契約終了の30日前までに予告が必要です。

  • 同じ職場で3回以上契約を更新している場合
  • 1年以上継続して働いている場合

参考:厚生労働省|有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準について(2p)

しかし、産休に入る直前に契約終了を告げられた場合は、単なる契約満了ではなく「妊娠・産休を理由とする雇い止め」の可能性も考えられます。妊娠を伝えた直後に雇い止めとなった場合は、不利益な取り扱いに該当するでしょう。

また、下記のようなケースは不当な雇い止めとして、会社に異議申し立てをすることが可能です。

  • 過去に契約が何度も更新されており、突然の雇い止めが不自然な場合
  • ほかの契約社員と比べて、妊娠・産休を理由に不当に契約終了が決められた場合

参考:厚生労働省|例えば…「妊娠したから解雇」 「育休取得者はとりあえず降格」は違法です
厚生労働省|不利益取扱いの禁止

自己判断せず、まずは会社に理由を確認し、必要であれば公的機関に相談しましょう。

雇い止めされそうになったときの対処法

契約社員が産休前後に「雇い止めされそう」と感じたら、以下のように対応しましょう。

  1. 会社と話し合い、雇い止めの撤回を求める
  2. 雇い止めの理由を確認する
  3. 厚生労働省の雇用環境・均等室に相談する
  4. 雇い止めが不当であるとわかる証拠を集める

雇い止めが不当だと感じた場合は、証拠を集めることも大切です。具体的には以下のものが役立ちます。

  • 契約書や更新履歴
  • 上司や人事担当者とのメール・LINEなどのやりとり
  • 退職を告げられたときのメモ

このような証拠があると、公的機関に相談するときや法的措置を取る際に有利になります。また、雇い止めのリスクを避けるためにも、産休・育休を取得する前に契約更新の可否を会社と確認し、記録を残しておきましょう。

正しい知識を身につけて、安心して産休を取得しよう

契約社員であっても、労働基準法により産休(産前産後休業)を取得する権利があります。勤務年数や雇用形態に関係なく、女性労働者であれば誰でも取得可能です。

ただし、産前休業は自身で申し出る必要があるため、早めに会社へ相談しましょう。産休中は給与が支払われないケースが大半ですが、出産手当金や出産育児一時金といった給付金が受け取れます。

制度を理解し、必要な手続きを早めに進めて、安心して出産に備えましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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