- 更新日 : 2026年1月22日
給与支払報告書の作成は税理士に依頼すべき?メリットや費用相場、社労士との違いを解説
年末調整の業務に追われる中、給与支払報告書の作成と提出は多くの方にとって負担になる業務です。従業員一人ひとりの住民税額を決定する重要な書類だからこそ、ミスは許されません。
この記事では、給与支払報告書の作成・提出を税理士に依頼する具体的なメリット、気になる税理士報酬の相場、そして混同されがちな社労士との役割の違いについて、分かりやすく解説します。自社で対応すべきか、専門家に任せるべきか、判断するための参考にしてください。
目次
そもそも給与支払報告書とは
給与支払報告書とは、事業主が前年中に従業員へ支払った給与の総額などを記載し、従業員が住む各市区町村へ提出する書類です。市区町村は、この報告書の内容に基づいて翌年度の住民税額を決定します。つまり、従業員が住民税を正しく納めるための根拠となる、非常に重要な書類です。
税務署へ提出する源泉徴収票と記載内容はほとんど同じですが、提出先と目的が異なります。
給与支払報告書は誰が提出するのか
給与支払報告書の提出義務は、前年中に従業員(パート、アルバイト、役員を含む)に対して給与や賞与などを支払ったすべての事業主(法人・個人事業主)にあります。たとえ年末調整の対象外である退職者でも、年間の給与支払額が30万円を超える場合は、原則として提出が必要です。
この書類は従業員個人が作成するものではなく、給与を支払った事業主側が責任を持って提出しなければなりません。
給与支払報告書の提出先と提出期限
給与支払報告書は、従業員のその年の1月1日時点での住所がある市区町村へ提出します。例えば、ある従業員が2025年1月1日に東京都港区に住んでいる場合、事業主は港区役所へその従業員の給与支払報告書を提出することになります。
提出期限は、毎年1月31日です。期限を過ぎても未提出または虚偽記載があった場合には、地方税法により1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があるため、注意が必要です。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
年末調整で従業員がやりがちな8つの間違い
年末調整で従業員の方々がやりがちな8つのミスをとりあげ、正しい対応方法についてまとめました。
年末調整業務をスムーズに完了させるための、従業員向けの配布資料としてもご活用いただけます。
扶養控除等申告書 取り扱いガイド
扶養控除等申告書は、毎月の源泉徴収事務や年末調整の計算をするうえで必要不可欠な書類です。
扶養控除等申告書の基礎知識や具体的な記入方法、よくあるトラブルと対処方法などをわかりやすくまとめたおすすめのガイドです。
年末調整業務を効率化するための5つのポイント
「毎年年末調整のシーズンは残業が多くなりがち…」、そんな人事労務担当者の方に向けて年末調整業務をスムーズに行うためのポイントをまとめました。
スケジュールや従業員向け資料を作成する際の参考にしてください。
年末調整のWeb化、業務効率化だけじゃない3つのメリット
年末調整のWeb化=業務効率化のイメージが強いかもしれませんが、実際には労務担当者にしかわからない「もやもや」を解消できるメリットがあります。
この資料ではWeb化により業務がどう変わり、何がラクになるのかを解説します。
給与支払報告書を税理士に依頼するメリット
給与支払報告書の作成と提出は自社でも行えますが、税務の専門家である税理士に依頼することで、多くのメリットが得られます。
正確性の担保と法令遵守
税理士に依頼する最大のメリットは、その正確性です。給与計算から年末調整、給与支払報告書の作成に至るまでの一連の業務には、所得税法や地方税法などの専門知識が欠かせません。毎年のように行われる税制改正に正しく対応することは、専門家でなければ困難です。税理士が作成・チェックすることで、記載ミスや計算間違いを防ぎ、追徴課税や延滞税といったリスクを未然に回避できます。
業務負担の軽減と本業への集中
年末から1月にかけては、年末調整、法定調書の作成、償却資産税の申告など、経理部門の業務が最も集中する時期です。この煩雑な給与支払報告書の作成・提出作業を税理士に任せることで、担当者はその分のリソースを他の重要な業務に振り向けられます。結果として会社全体の生産性が向上し、本業に注力しやすくなる可能性があります。
年末調整からの一括依頼で手間なく完了
給与支払報告書は、年末調整の結果をもとに作成されます。そのため、年末調整の段階から税理士に一括で依頼することが、最も効率的な方法です。年末調整、源泉徴収票の作成、そして給与支払報告書の作成・提出という一連の流れをすべて任せられるため、自社での作業負担はほとんどありません。情報連携もスムーズに進み、手間なくすべての手続きを完了させることができます。
給与支払報告書を税理士に依頼した場合の報酬相場
専門家に依頼する上で、最も気になるのが費用面でしょう。給与支払報告書の作成・提出を税理士に依頼した場合の報酬や料金体系について解説します。
税理士報酬の料金体系
給与支払報告書の作成に関する税理士報酬は、多くの場合、基本料金に従業員1人あたりの単価を加算する形で設定されています。基本料金には、総括表の作成や提出代行手数料などが含まれます。
顧問契約を結んでいる場合、これらの作業が月々の顧問料や決算料に含まれていることもあります。スポットで単発依頼するのか、顧問契約の範囲内なのかによって料金は大きく変わります。
従業員数で変動する費用相場
スポットで依頼する場合、費用相場は基本料金が1万円から3万円程度、従業員1人あたり1,000円から3,000円程度が目安です。
例えば、従業員10名の会社であれば、合計で2万円から6万円程度の税理士報酬が発生すると考えられます。ただし、これはあくまで一般的な相場であり、事業所の状況や依頼内容の複雑さによって変動します。
年末調整とセットで依頼する場合
年末調整と給与支払報告書の作成をセットで依頼すると、個別に依頼するよりも割安になるケースがほとんどです。年末調整の税理士費用は、従業員個人の状況(扶養家族の有無、住宅ローン控除など)によっても変わりますが、セット料金の目安は従業員1人あたり5,000円から1万円程度です。費用を抑えつつ、一連の税務手続きを正確に完了させたい場合は、セットでの依頼を検討するのが賢明です。
給与支払報告書の依頼先は税理士?社労士?
給与に関連する専門家には、税理士のほかに社会保険労務士(社労士)がいます。給与支払報告書は税理士と社労士、どちらに依頼すべきか、両者の役割の違いを明確にしておきましょう。
税理士と社労士の専門分野の違い
税理士は税務の専門家です。所得税や住民税といった税金の計算や申告代理を独占業務としています。
一方、社労士は労務・社会保険の専門家であり、健康保険や厚生年金などの手続き、就業規則の作成、労務管理に関する相談などを独占業務とします。同じ給与計算でも、税理士は税金の観点から、社労士は社会保険料の観点から関与するという違いがあります。
給与支払報告書はどちらの業務範囲か
給与支払報告書は、住民税額を確定させるための税務書類です。したがって、作成と提出代行は税理士の独占業務となります。社労士は給与計算の一環として関連情報を計算することはできますが、代理人として給与支払報告書を市区町村へ提出することはできません。給与支払報告書を誰が提出するのかという問いに対し、代理を依頼できる専門家は税理士であると明確に区別されます。
給与支払報告書を税理士に頼まない場合の注意点
もちろん、コストを抑えるために、年末調整から給与支払報告書の提出までを税理士に頼まないで自社で完結させる選択肢もあります。その場合に注意すべき点を解説します。
作成・提出ミス
自社で対応する上で最大の懸念点は、ミスが発生する可能性です。年末調整の計算間違い、転記ミス、提出先の市区町村の間違い、提出遅延など、様々なミスが起こり得ます。これらのミスは従業員の住民税額に直接影響を与え、会社の信用問題にもつながりかねません。ミスが発覚した際の修正手続きも煩雑で、かえって手間が増えることもあります。
時間的コスト
担当者が最新の税制を正確に理解し、作業手順を覚えるには相応の学習時間が必要です。また、実際の作成・集計・提出作業にも多くの時間を要します。これらの時間的コストを人件費として換算すると、税理士に依頼する費用と大差ない、あるいはそれ以上になる可能性も十分に考えられます。単純な外注費だけでなく、社内の人件費を含めたトータルコストで判断することが重要です。
電子申告(eLTAX)の準備
近年、給与支払報告書の電子申告(eLTAX)が普及しており、基準年(前々年)の源泉徴収票の提出枚数が100枚以上の場合、eLTAXまたは光ディスク等による提出が義務化されています。自社でeLTAXを利用するには、利用者IDの取得や対応ソフトの準備など、事前の手続きが必要です。これらの準備に手間がかかる点も考慮しておく必要があります。
参考:eLTAX
給与支払報告書に関してよくある質問
最後に、給与支払報告書の作成・提出に関して、事業者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
源泉徴収票の作成も税理士に依頼できる?
はい、もちろんです。そもそも給与支払報告書は年末調整の結果に基づいて作成されるため、源泉徴収票の作成を税理士に依頼する際に、給与支払報告書の作成・提出もセットで依頼するのが一般的です。年末調整から源泉徴収票作成、給与支払報告書提出までの一連の業務をすべて任せることで、最も効率的に手続きを進められます。
顧問税理士がいなくても依頼できる?
顧問税理士がいない場合でも、年末調整や給与支払報告書の作成・提出だけを単発(スポット)で引き受けてくれる税理士事務所はあります。インターネットで、給与支払報告書 スポット依頼 税理士、などと検索したり、税理士紹介サービスを利用したりすることで、自社のニーズに合った税理士を見つけることが可能です。まずは複数の事務所に見積もりを依頼し、料金やサービス内容を比較検討することをおすすめします。
給与支払報告書は信頼できる税理士への依頼が確実
給与支払報告書の作成と提出は、年に一度の業務ですが、その正確性が従業員の納税に直結する極めて重要な手続きです。自社で対応することも不可能ではありませんが、法改正への対応や繁忙期の業務負担を考慮すると、多くの事業者にとって税理士への依頼は賢明な選択と言えます。
税理士に依頼すれば、書類の正確性が担保され、担当者の負担が大幅に軽減されます。特に年末調整からの一括依頼は、業務の効率化に大きく貢献するでしょう。顧問税理士がいない個人事業主や法人の方でも、スポットでの依頼は可能です。
まずは一度、税務の専門家である税理士に相談し、自社にとって最適な方法を見つけることが、正確でスムーズな手続きへの第一歩となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
源泉徴収票にマイナンバーの記載は必要?提出してもらうまでの流れや、拒否された時の対応を解説
マイナンバーは、行政手続きにおいて個人を識別するための番号です。確定申告や年金等の手続きで必要とされますが、源泉徴収票にも記載を要する場合があります。 当記事では源泉徴収票の概要や、マイナンバー記載の必要性などについて解説します。提出を拒否…
詳しくみる年末調整の書類はボールペンで書く?特定の色や鉛筆ではダメな理由を解説!
年末調整の書類を記入する際、鉛筆でいいのかボールペンを使用するべきか迷う方がいるでしょう。正しくは、ボールペンで記載します。さらに間違いを修正する場合は修正テープではなく、国税庁のサイトに記された方法を参考に修正するのが正しいやり方です。ま…
詳しくみる給与支払報告書の電子データによる提出はeLTAXで!義務化の対象からPCdeskでのやり方まで解説
近年、行政手続きのデジタル化推進により、給与支払報告書の電子提出が普及し、特定の事業者には義務化されています。しかし、いざ電子提出をしようとしても、地方税ポータルシステムのeLTAX(エルタックス)や国税のe-Tax(イータックス)との違い…
詳しくみる年末調整とは?【2025年最新】必要書類まとめ・書き方を簡単解説!
年末調整は、従業員の1年間の所得税の納税額を確定させる重要な業務です。 年末調整の時期は、経理担当者は必要資料の作成だけではなく、従業員からの質問に対応するなど忙しくなります。 ここでは、最新版の年末調整の手続きと提出資料について解説します…
詳しくみる中途採用された場合の年末調整を解説!必要な書類など
年の途中で中途採用により会社が変わった場合、転職した先で年末調整を行います。その際、前職を退職したときに受け取った源泉徴収票が必要です。ここでは、中途採用された人が年末調整を受ける場合に必要な書類や紛失時の対応などについて解説。さらに、年末…
詳しくみる一時所得は年末調整で申告できる?
給与所得者に給与以外の一定の所得があった場合は、申告が必要です。誰かが亡くなったことで支払われる死亡保険金や、保険期間満了による満期保険金、保険解約による解約返戻金は、一時所得として所得税が課される場合があります。給与所得者でも一時所得の申…
詳しくみる


