• 更新日 : 2025年8月20日

給与支払報告書の電子データによる提出はeLTAXで!義務化の対象からPCdeskでのやり方まで解説

近年、行政手続きのデジタル化推進により、給与支払報告書の電子提出が普及し、特定の事業者には義務化されています。しかし、いざ電子提出をしようとしても、地方税ポータルシステムのeLTAX(エルタックス)や国税のe-Tax(イータックス)との違いが分からなかったり、具体的なやり方が分からなかったりと、戸惑う担当者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、給与支払報告書の電子提出について、義務化の対象から、eLTAXを利用した具体的な手順、必要な準備、そして見落としがちな注意点まで解説します。初めて電子提出を行う方でも、この記事を読めばスムーズに手続きを進められます。

給与支払報告書の電子提出とは

給与支払報告書の手続きは、デジタル化への移行が進んでいます。正確な手続きを行うための第一歩として、まずは制度の基本と電子提出義務化の対象、そして重要な提出期限を把握しましょう。

そもそも給与支払報告書とは

給与支払報告書とは、事業者が前年1年間に従業員へ支払った給与額などを記載し、従業員が住む各市区町村へ提出する重要な書類です。この報告書が、個人住民税の税額計算の基礎情報となります。

記載内容は所得税の源泉徴収票とほぼ同じですが、提出先が税務署ではなく市区町村である点が大きな違いです。正社員だけでなく、パート、アルバイト、役員を含むすべての従業員について、給与を支払った場合は作成と提出が義務付けられています。

電子提出の義務がある事業者

給与支払報告書の電子提出が義務付けられる事業者が定められています。具体的には、基準年(前々年)に国税(税務署)へ提出すべきであった源泉徴収票の枚数が100枚以上である場合、電子提出が必須です。

例えば、2024年(令和6年)に提出した源泉徴収票が100枚以上であれば、2026年(令和8年)1月に提出する給与支払報告書は電子データにより提出をしなければなりません。

2026年(令和8年)1月提出分の提出期限

給与支払報告書の提出期限は、毎年1月31日です。2026年の場合、1月31日が土曜日のため、期限は翌営業日の2026年2月2日(月)となります。

この期限は、紙での提出でも電子提出でも同じです。期限の直前、特に1月最終営業日や平日日中帯にはeLTAXのシステムが混雑することが公式でも注意喚起されているため、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが重要です。

給与支払報告書の電子提出で利用するeLTAXとは

給与支払報告書の電子提出は、eLTAX(エルタックス)というシステムを利用して行います。eLTAXを利用することで、次のようなメリットがあります。

  • 複数の市区町村への提出を一度で完結
    従業員がそれぞれ異なる市区町村に住んでいても、eLTAXを通じて一括で給与支払報告書を提出できます。
  • 事務負担とコストの削減
    従来のように、各市区町村へ個別に郵送や持参で提出する必要がなくなり、印刷代や郵送費、移動時間といったコストと手間を大幅に削減できます。
  • 他の地方税手続きも可能
    給与支払報告書の提出だけでなく、法人住民税の申告や固定資産税(償却資産)の申告など、複数の地方税手続きをまとめて電子的に処理できます。

eLTAXとe-Taxの違い

eLTAXとよく似た名称のシステムに、国税庁が管轄するe-Tax(イータックス)があります。これらは全く異なるシステムであるため、違いを正確に理解しておく必要があります。

  • eLTAX(エルタックス)
    地方税(住民税、法人事業税、固定資産税など)の手続きを行うシステム。給与支払報告書はeLTAXで各市区町村へ提出します。
  • e-Tax(イータックス)
    国税(所得税、法人税消費税など)の手続きを行うシステム。源泉徴収票はe-Taxで税務署へ提出します。

この2つは提出先も対象税目も異なるため、混同しないように注意しましょう。

参考:e-TaxeLTAX

給与支払報告書の電子データによる提出方法

eLTAXを初めて利用する際は、いくつかの準備が必要です。ここでは、利用開始から申告データを送信するまでの流れを4つのステップで解説します。この手順に沿って準備を進めることで、迷うことなく電子提出を始められます。

1. eLTAXの利用届出と利用者IDの取得

最初に、eLTAXの公式サイトから利用届出(新規)を提出します。会社の所在地、名称、代表者名などの基本情報を入力して送信してください。届出の提出後、eLTAXへのログインに必要となる利用者IDと仮の暗証番号が通知されます。この利用者IDと暗証番号は、電子提出に必須の情報ですので、厳重に管理してください。

2. 電子署名のための電子証明書を準備する

eLTAXで作成した申告データが、確かに本人によって作成され、改ざんされていないことを証明するために、電子署名を付与します。そのために必要なのが電子証明書です。

法人の場合は商業登記に基づく電子証明書、個人事業主の場合はマイナンバーカードに搭載されている公的個人認証サービスなどが利用できます。電子証明書は、信頼できる第三者機関(認証局)から取得します。有効期限があるため、事前の取得と期限の確認が必要です。

3. eLTAX対応ソフトウェアを入手する

次に、申告データを作成・送信するためのソフトウェアを準備します。eLTAXでは、無償の専用ソフトPCdeskを提供しており、これを利用するのが一般的です。

PCdeskには、パソコンにインストールして使うダウンロード版(DL版)と、一部機能がブラウザ上で利用できるWEB版があります。給与支払報告書の作成・提出は、PCdesk(DL版)のインストールが必要です。

また、市販されている多くの税務・会計ソフトもeLTAXに対応しています。普段利用している給与計算ソフトが対応している場合、そのソフトから直接、申告データを作成・送信できることもあります。

参考:PCdeskの特徴と取得方法|eLTAX 地方税ポータルシステム

4. 申告データを作成して送信する

準備したソフトウェアを使って、給与支払報告書の申告データを作成します。給与計算ソフトなどからCSV形式のファイルを出力し、PCdeskに取り込む方法が一般的です。もちろん、PCdeskの画面上で直接入力してデータを作成することもできます。

データ作成後、電子証明書を使って電子署名を付与し、eLTAXを経由して各市区町村へ送信します。送信後は、受付状況を必ず確認しましょう。手続きが正常に受け付けられたことを示すメッセージが届くまでを確認して、一連の手続きは完了です。

給与支払報告書の電子提出で失敗しないための注意点

最後に、電子提出をスムーズに完了させるための重要な注意点を3つ紹介します。特に初めての方は、これらのポイントをしっかり押さえておきましょう。

利用者IDの取得と電子証明書の準備は早めに行う

eLTAXの利用届出から利用者IDを発行する際に、時期によっては回線が混雑している可能性があります。電子証明書は、即日発行が可能なケースもありますが、提出方法や証明書の種類、認証機関によっては数日〜数週間かかることもあります。提出期限である1月間際になって慌てないよう、遅くとも12月中にはこれらの準備に着手することをおすすめします。

電子証明書には有効期限がある

電子証明書には有効期限が設定されています。去年使えたからといって、今年も使えるとは限りません。提出作業を行う前に、必ず電子証明書の有効期限が切れていないか確認してください。もし期限が切れていた場合は、更新手続きが必要です。

送信完了だけでなく受付完了通知まで確認する

データを送信した直後に表示されるメッセージは、あくまでeLTAXのサーバーにデータが到達したことを示すものです。その後、提出先の各市区町村で内容が審査され、不備なく受け付けられると、受付完了の通知がメッセージボックスに届きます。この通知を確認して、初めて正式な手続き完了となるため、必ず最後まで確認する習慣をつけましょう。

給与支払報告書の電子提出でスムーズな手続きの実現を

給与支払報告書の電子提出は、義務化の対象事業者でなくても、事務効率の向上やコスト削減の面で大きなメリットがあります。

本記事では、電子提出の基本から、eLTAXを利用した具体的なやり方、そしてe-Taxとの違いや電子証明書の準備といった要点まで、ステップを追って解説しました。手続きで不明な点が生じた際は、eLTAXの公式サイトにあるマニュアルも確実な情報源となります。

この記事で紹介した手順とポイントを参考に、余裕を持ったスケジュールで準備を進め、毎年1月の提出期限に向けて、正確かつスムーズな給与支払報告書の提出を実現してください。


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