• 更新日 : 2025年4月1日

社宅の火災保険は会社と個人どっちが負担?補償範囲や注意点も解説

社宅の火災保険料支払いについては、法令上の定めはなく、会社が負担しても個人が負担しても問題ありません。どちらが負担する場合もそれぞれのメリットデメリットがあります。

本記事では、会社が火災保険料を負担するメリットやデメリット、火災保険の補償内容などを解説します。

従業員が安心して社宅で暮らせるように、社宅の火災保険選びや費用についての参考にしてください。

社宅に火災保険が必要な理由

火災が発生すると、建物だけでなく家具や家電、衣類なども損傷する可能性があります。火災保険は、火災や水漏れなどのトラブルから建物や家財を守る役割です。

修理や買い替えには高額な費用がかかるため、自己負担では大きな負担となることもあるでしょう。火災保険に加入していれば、これらの損害を補償できるため、経済的なリスクを軽減できます。

火災保険は、契約内容により火災だけでなく、水漏れや落雷、台風などの自然災害による損害も補償されます。社宅でも、万が一の事態に備えて火災保険に加入することが大切です。

また、火災保険に加入する際には、契約内容をよく確認し、必要な補償が含まれているかを確かめましょう。

社宅の火災保険は会社負担?個人負担?どちらがいいのか

社宅に住む場合、火災保険の費用を誰が負担するかは、会社の方針や契約内容によって決まります。契約者によって異なるメリットがあり、どちらが適しているかは状況に応じて判断することが大切です。

どちらが負担してもよい

火災保険料の支払いは会社でも個人でも問題ありません。補償内容や費用負担の仕組みを考慮して検討することが重要です。

会社が保険料を負担する場合、従業員の費用負担はありません。しかし、補償の対象が社宅の建物だけで、入居者の持ち物は補償されない場合があります。一方、従業員個人が負担する場合は、従業員の費用負担は増えますが、火災保険の補償内容を入居者本人が選ぶことも可能です。

一般的には会社が加入する

多くの社宅では会社が火災保険に加入し、保険料を従業員が負担します。保険料を従業員が負担する場合は、給与から控除されるのが一般的です。「家財保険」に加入する場合、会社負担では入居者の家財や日常生活での損害も会社が補償することになるためです。

しかし、火災などで部屋を損傷した際に大家への賠償責任を補償する「借家人賠償責任保険」については、賃貸契約者である会社が負担しても違和感はありません。会社が火災保険に加入することで、建物の損害や大家への補償などの費用を補填できます。

社宅の火災保険を会社が負担するメリット・デメリット

社宅の火災保険は、会社が負担する場合と従業員が契約する場合があります。会社が負担することで得られる利点もあれば、注意すべき点もあります。それぞれの特徴を理解し、どちらが適しているか判断することが大切です。

会社が負担するメリット

会社が火災保険料を負担するメリットは、以下の3つです。

  • 社員が保険料を支払わなくてよい
  • 保険料が割安になる
  • 節税効果がある

会社が火災保険料を負担すると、従業員は個別に契約する必要がなくなります。保険の手続きが不要になり、保険料の負担もありません。

また、会社が一括で契約することで、個別に契約するよりも保険料を安くできる場合があります。さらに、会社が負担した火災保険料は福利厚生費として経費計上できるため、節税につながることもメリットです。

会社が負担するデメリット

会社が火災保険料を負担するデメリットは、以下の2つです。

  • 従業員が補償内容を自由に選べない
  • 従業員にとって必要な補償が含まれていない可能性がある

会社が契約する火災保険は、主に社宅の建物を守ることが目的です。そのため、従業員の家財が補償されない契約内容になる場合があります。たとえば、家具や電化製品が火事で損傷した場合でも、契約内容によっては補償の対象外となることがデメリットです。

社宅の火災保険で補償される主な内容

火災保険の補償内容は契約によって異なります。たとえば、借りている部屋の損害を補償するものに加え、家の中の家具や家電を守る補償もあります。補償内容を理解したうえで、どのような被害に備えるか検討しましょう。

家財保険

家財保険とは、火災や災害で家具や家電などが壊れた場合に補償を受けられる保険で、社宅に住む人の持ち物を守るために重要です。

たとえば、家財保険が適用されると、社宅で火災が発生し、ベッドや衣類が燃えてしまった場合でも、修理費や買い替え費用の補償が可能です。また、補償される範囲には、家具や家電だけでなく、衣類や高額な貴金属などが含まれることもあります。

家財保険があることで万が一の際の大きな費用負担に備えられ、安心して生活できます。

借家人賠償責任保険

借家人賠償責任保険は、借りている部屋に損害を与えた場合に修繕費を補償する保険です。火災や水漏れによって壁や床が傷んだ場合、借主は大家に修繕費を支払う必要があります。

賃貸住宅向けの火災保険では、借家人賠償責任保険への加入を義務付けられていることが多く、社宅に入居する際に会社から加入を求められることもあります。

借家人賠償責任保険に加入していれば、火災や水漏れなど、思わぬトラブルによる修繕費を補償してくれるため、金銭的なリスクを大きく減らすことが可能です。

個人賠償責任保険

個人賠償責任保険は、日常生活の中で他人に損害を与えてしまった場合に適用される保険です。火災保険だけでなく、自動車保険や生命保険に付帯されていることが多く、幅広いトラブルに対応できます。

たとえば、洗濯機のホースが外れて水漏れし、下階の部屋に水が染み込んでしまった場合、個人賠償責任保険で修理費を補填可能です。

また、家の中でのトラブルだけでなく、外で自転車を運転しているときに他人にケガをさせてしまった場合にも適用されることがあります。日常生活の中で起こりうるリスクに備えるために役立つ保険です。

社宅の火災保険を会社負担にする際の注意点

社宅の火災保険を会社が負担する場合、適切な経理処理や補償内容の確認が必要です。保険料の処理や契約内容についての注意点を解説します。

社宅の火災保険の勘定科目と仕訳

会社が社宅の火災保険料を負担する場合、保険料として計上し、契約期間に応じた仕訳を行います。

契約期間が1年の場合、保険料はその年の経費として計上します。

1年契約で保険料が10,000円の場合の仕訳方法は以下のとおりです。

借方貸方
勘定科目保険料現金
金額10,000円10,000円

契約期間が2年以上の契約では、支払時と決算時に分けて処理します。たとえば、2年契約で20,000円を支払った場合、一部は「前払費用」として計上し、翌期に繰り越します。

2年分の保険料(20,000円)をまとめて支払った場合の仕訳は以下のとおりです。

【支払時の仕訳】

借方貸方
勘定科目保険料現金
金額20,000円20,000円

【決算時の仕訳】

借方貸方
勘定科目(長期)前払費用保険料
金額10,000円10,000円

【翌期に費用計上する仕訳】

借方貸方
勘定科目保険料(長期)前払費用
金額10,000円10,000円

火災保険の補償範囲を明確化する

火災保険には、建物だけでなく家財や賠償責任の補償が含まれることがあります。ただし、火災保険の契約内容が建物のみを対象としている場合、火事で家具や家電が損傷しても補償を受けられません。また、従業員個人の持ち物や他人に与えた損害は補償されない場合があります。

従業員が安心して暮らせるよう、契約内容を明確にし、会社と従業員の認識のズレをなくすことが大切です。

付保漏れを防ぐ

付保漏れとは、本来加入すべき保険に加入していない状態を指します。社宅の火災保険では、付保漏れが発生しないように注意が必要です。

契約更新時に手続きを忘れたり、新たに社宅を借りる際に保険の手配を見落としたりすると、保険が切れてしまうことがあります。その場合、火災や事故が発生しても補償を受けられません。

付保漏れを防ぐには、契約内容を定期的に見直し、会社側で保険の管理を徹底することが重要です。また、複数社宅の火災保険をまとめて契約する包括保険を利用する方法もあります。適切な管理を行い、従業員が安心して住める環境を整えましょう。

社宅の火災保険でよくある疑問

本章では、社宅の火災保険についてのよくある質問に回答します。

包括保険とはなんですか?

包括保険とは、複数の社宅の火災保険をまとめて契約する方法です。すべての社宅を一括で管理できるため、火災保険の管理がスムーズになります。

個別に契約する場合、社宅ごとに契約内容や更新時期が異なり管理が複雑です。一方、包括保険を利用すれば一括管理できるため、保険料が安くなるほか、手続き漏れのリスクも軽減できます。

社宅の火災保険は包括保険を活用すると、トラブルを防ぎやすくなり、社宅管理業務の負担も減ります。

補償されないケースはある?

火災保険に加入していても、すべての損害が補償されるわけではありません。契約内容によって、対象外のものがあります。

どこまで補償されるのかを事前に確認し、従業員に共有しましょう。従業員が補償内容に不足があると感じる場合は、個別に備えることも可能です。

退去時に火災保険は解約するべき?

会社が火災保険を負担している場合でも、従業員の退去時には火災保険の解約や変更の手続きが必要です。次の入居者が決まっていない場合、契約をそのままにしておくと不要な費用が発生します。

また、保険金を受け取る権利があるのは、保険の対象(建物や家財など)の所有者(記名被保険者)です。火災保険の補償対象者が変わると、保険金を受け取る権利にも影響します。

火災保険の解約手続きをしないと、無駄な保険料を払い続けることになるうえ、補償が適応されないこともあります。そのため、社宅の入居者が変わるごとに適切な管理を行いましょう。

会社負担の火災保険と個人の家財保険は併用できる?

会社負担の火災保険と個人の家財保険は併用できます。

会社が契約する火災保険は、建物の補償が中心となる場合が一般的です。家財を守るために、従業員が個人で家財保険に加入するのもよい方法でしょう。

火災保険と家財保険の両方を組み合わせることで、より安心した生活が送れます。

どのような補償内容が必要か?

社宅生活では、建物の損害に加え、家財や賠償責任の補償があるとより安心です。社宅の火災保険を選ぶ際は、幅広いリスクに対応できる内容を検討しましょう。

社宅の火災保険は補償内容やコストを考慮して選択する

社宅の火災保険を会社が契約すると、従業員の負担軽減や会社の節税効果といったメリットがあります。一方で、補償内容が不十分に感じられることもあります。

会社負担と従業員負担のどちらの方法にもメリットとデメリットがあるため、契約内容や必要な補償範囲を検討し、最適な方法を選びましょう。

従業員が安心して社宅で生活できるよう、意見をとり入れながら適切な仕組みを整えることも重要です。


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