• 更新日 : 2026年10月5日

源泉徴収票のペーパーレス化を進めるには?電子交付の条件・メリット・導入手順を解説

Point源泉徴収票のペーパーレス化はできる?

源泉徴収票は従業員の同意を得ることで電子交付が可能です。

  • 電子交付には事前の従業員同意が必須
  • 印刷・郵送コストと業務負担を削減できる
  • 2027年から法定調書の電子申告基準が厳格化

Q. 源泉徴収票を電子交付する主な条件は?

A. ①従業員の事前同意、②PC等での表示・印刷が可能な環境、③電子交付した旨の通知、の3点が必要です。

企業にとって、源泉徴収票の発行業務は毎年欠かせない手続きの1つです。しかし、従来の紙による発行は、印刷や郵送に時間とコストがかかる上、保管スペースの確保も必要です。近年では、こうした業務をデジタル化する取り組みが進んでおり、源泉徴収票のペーパーレス化や電子交付の導入によって、業務効率化やコスト削減が期待されています。

この記事では、源泉徴収票のペーパーレス化を進めるメリットと、その導入プロセスについて詳しく解説します。また、実施にあたっての注意点についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

源泉徴収票のペーパーレス化は可能?

源泉徴収票は、従業員の同意を得れば電子データによる交付(電子交付)が可能です。2019年度税制改正等によって2019年4月以降、給与所得者が確定申告書を提出する際に紙の源泉徴収票の添付が不要になったことも後押しとなり、電子化を進める企業が増えています。

源泉徴収票の主な電子交付方法

代表的な電子交付方法は、電子メールで送信する方法、社内ネットワークやインターネットを介して開示する方法、USBメモリーなどの媒体に記録して交付する方法の3種類です。実務上は、電子メールで送信する方法もしくは社内ネットワークやインターネットを介して開示する方法が多く選択されています。

  • 電子メールで送信する
  • 社内ネットワークやインターネットを介して開示する
  • USBメモリーなどの媒体に記録して交付する

参考:国税関係手続が簡素化されました|国税庁、給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A|国税庁

「電子交付」と「法定調書の電子申告」は別制度

源泉徴収票の電子交付(従業員への提供)と、税務署へ提出する法定調書のe-Tax等による電子申告は、目的も義務の基準も異なる別の制度です。混同しないよう注意しましょう。

電子交付は従業員の同意を得れば任意で導入できる制度である一方、法定調書の電子申告は提出枚数などの基準を満たすと会社に義務が生じる制度です。この基準は段階的に引き下げられており、2027年1月以降に提出する法定調書からは「前々年に提出すべきだった枚数が30枚以上」であれば電子申告が義務化されます(現行は100枚以上)。2027年に提出する法定調書については、2025年中に提出する法定調書の枚数が30枚以上であったかどうかを基準に判定されるため、該当する可能性のある企業は準備を進めておくとよいでしょう。

参考:法定調書のe-Tax等による提出義務化の概要について|国税庁 e-Tax

ただし、源泉徴収票は、住宅ローンや教育ローンの審査のように確定申告以外の場面でも使用する書類です。源泉徴収票をペーパーレス化する際には、従業員から紙で発行を依頼された場合に備えて、対応できる体制を整備しておきましょう。

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源泉徴収票のペーパーレス化を進めるメリットは?

源泉徴収票のペーパーレス化は、労使の双方にメリットが期待される取り組みです。以下では、企業側・従業員側に分けて解説します。

企業側のメリット

源泉徴収票をペーパーレス化すると、年末調整時の事務コストを削減できる上、人事労務担当者の業務負担を軽減できます。紙の源泉徴収票を印刷して郵送する際には、印刷代・インク代・人件費などのコストが必要ですが、ペーパーレス化するとPC上ですべての作業を行え、郵送作業も不要になります。

  • 印刷や郵送時の人的ミスを抑制できる
  • 過去の源泉徴収データを検索しやすくなる
  • 源泉徴収票関係書類の保管スペースを節約できる

源泉徴収票をペーパーレス化して書類の作成や交付作業をPC上で行えば、印字や封入ミスが発生しません。退職者から源泉徴収票に関する問い合わせを受けた際にも、必要なデータを検索してスムーズな対応が可能です。作成データをデータベースに保存すればスペースを節約でき、バックアップを取得すれば紛失リスクの軽減にもつながります。

従業員側のメリット

従業員は電子交付された源泉徴収票を時間や場所を問わずに確認でき、利便性が向上します。外出や出張の多い人はスマートフォンで、在宅勤務の従業員は仕事用パソコン(PC)で、それぞれ自宅や外出先から確認できます。

従業員が紙の源泉徴収票を紛失した状態で確定申告したり転職したりする際には、企業側への再発行依頼が必要です。担当部署が多忙な場合、スムーズな対応を受けられるとは限りません。源泉徴収票がペーパーレス化されていれば、従業員は自分自身で必要な電子データにアクセスし、内容の確認や印刷が可能です。

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源泉徴収票のペーパーレス化を進める場合の流れは?

源泉徴収票のペーパーレス化を進める際には、関連法律を理解した後に従業員の同意を得て、自社に合うソフトやツールを導入する必要があります。各ステップのポイントは以下の通りです。

STEP1 関連法律を理解する

源泉徴収票のペーパーレス化には所得税法や租税特別措置法が関係するため、内容をよく読み、電子交付の条件を理解しておきましょう。国税庁が公表している源泉徴収票の電子交付の主な条件は、以下3点です。

  • 事前に従業員の同意を得ていること
  • PCなどでの表示や書面への出力ができること
  • 電子交付した旨を通知すること(従業員のPCに直接送信する場合などは不要)

上記の他、従業員から紙で発行を依頼された場合に対応できる環境を整備することも必要です。

参考:1.基本的な事項|国税庁

STEP2 ペーパーレス化の範囲を決定する

国税庁では源泉徴収票以外に、給与明細書も電子交付することを認めています。源泉徴収票をペーパーレス化する際には、給与明細書も対応するかを検討しましょう。

主に業務効率化の目的で源泉徴収票をペーパーレス化する場合、給与計算システムや勤怠管理システムも同時に見直したほうが、高い効果を狙えるケースもあります。費用対効果をよく考えて、状況によってはシステム全体を入れ替える選択肢も検討してください。

参考:1.基本的な事項|国税庁

STEP3 従業員の同意を得る

源泉徴収票の電子交付方法・交付予定日・交付開始日・閲覧方法・セキュリティ対策などを従業員に説明し、同意を得ます。同意を得る方法について法的なルールはないものの、社内ネットワークなどを介して同意書を配布し、以下の内容を入力させる方法が一般的です。

  • 電子交付に承諾する旨
  • 承諾日
  • 氏名

源泉徴収票の場合、事前に「期限内に回答しない場合は同意と判断する」ことを従業員へ説明し、その通りに対応する方法も認められています。これは令和5年度税制改正で明確化された取扱いで、2026年9月時点でも有効です。

参考:1.基本的な事項|国税庁

STEP4 専用ソフトやツールを導入する

源泉徴収票のペーパーレス化に対応したツールには、給与計算システム・年末調整システム・人事労務管理システムなどの種類があります。以下の点に注目して自社に合うツールを選択し、導入しましょう。

  • ランニングコスト
  • サポート体制の充実度
  • 操作性の高さ
  • 機能の豊富さ

ペーパーレス化に対応できるツールは通常、発行する源泉徴収票の枚数でランニングコストが変動します。自社の従業員数に応じてランニングコストを試算し、予算内で継続できるツールを選択しましょう。

STEP5 電子化による交付を実施する

導入したツールを活用して所定の期限までに源泉徴収票を作成し、事前に同意を得た方法で交付しましょう。「従業員がスムーズに源泉徴収票を確認できるか」を不安に感じている場合には、事前に説明会や研修会を実施し、画面の操作方法や印刷方法を解説することで不安を解消できます。もしくは、操作マニュアルを作成して配布する、「よくある質問・回答」ページを公開するなどの方法で利用を促進してください。

源泉徴収票をペーパーレス化する場合の注意点は?

源泉徴収票をペーパーレス化する際には、十分なセキュリティ対策を取ること、既存システムと相性の良いツールを導入すること、そして関連する電子化制度の動向を把握しておくことが必要です。

セキュリティ対策を強化・徹底する

源泉徴収票は従業員の個人情報が記載された書類であるため、セキュリティ対策を強化し、情報漏洩を防止しましょう。合わせて従業員のセキュリティ教育も徹底し、十分な安全管理体制のもとで運用を行うことが重要です。

源泉徴収票のペーパーレス化で使用するツールには通常、アクセス制御・ファイル暗号化などのセキュリティ対策が取られています。安全にペーパーレス化を実現するためには、ツール自体のセキュリティ対策を事前に確認し、信頼度を見極めることも必要です。

既存のシステムとの相性を確認する

ツールを利用して源泉徴収票をペーパーレス化する場合には、既存のシステムとの相性を確認しましょう。相性の悪いソフトやツールを導入すると、給与情報をスムーズに取り込めず、業務の効率性に影響するケースがあるためです。

可能であれば、既存のシステムと同一企業の提供しているツールを選択すると、スムーズに連携できます。別の企業の製品を導入する場合には、無料のトライアル期間に相性を確認してください。

法定調書の電子申告義務化の基準引き下げに備える

源泉徴収票は税務署に提出する法定調書の一種でもあるため、法定調書の電子申告義務化の基準引き下げにも注意が必要です。2027年1月以降に提出する法定調書からは、義務化の判定基準が「100枚以上」から「30枚以上」に引き下げられます。

判定に使われる枚数は提出年の前々年の実績であるため、2025年中に提出する法定調書の枚数が30枚以上であった場合、2027年に提出する当該法定調書から、e-Tax等による提出が必要です。従業員への電子交付とあわせて、税務署への提出方法についても早めに準備しておくと安心です。

参考:法定調書のe-Tax等による提出義務化の概要について|国税庁 e-Tax

源泉徴収票のペーパーレス化を円滑に進めよう

源泉徴収票のペーパーレス化は、企業と従業員の双方にとって、業務効率化やコスト削減といった多くのメリットをもたらします。印刷・郵送の手間を省くことで企業側の負担が減り、従業員にとっても必要な時に電子的に確認できる利便性が高まります。

導入に際しては関連法律の理解や従業員の同意取得が重要であり、あわせてセキュリティ対策の徹底や、法定調書の電子申告義務化基準の変更といった関連制度の動向にも目を配ることが大切です。これらのポイントを押さえた上で、源泉徴収票のペーパーレス化を検討していきましょう。


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