- 更新日 : 2024年10月30日
定額減税を6月給与に反映しなければ罰則?対応方法について解説
定額減税は6月の給与から実施しなければならず、年末調整時に一括で処理することは認められていません。税法上の違反にはなりませんが、労働基準法違反となる可能性があります。支払うべき給与を支払わないとして、全額払いの原則を定める労働基準法第24条に反するためです。これらの罰則について詳しく解説します。
目次
定額減税を給与に反映しなかった場合、罰則がある?
定額減税は、2024年6月1日以降に支払われる給与から実施されます。企業が定額減税の給与への反映を行わなかった場合、どうなるのでしょうか。罰則について税法と労働基準法の観点から確認しましょう。
税法上の罰則
企業が定額減税を給与計算に反映しなかった場合でも、税法上の罰則はありません。6月給与からの「月次減税」を行わずに「年調減税」によって年末調整で一括に特別減税を処理したとしても、税法違反とはならないとされています。しかし、定額減税処理の先延ばしは、定額減税によって従業員が受けられる経済的利益を一方的に奪うことにつながります。法令に従って適切に処理することが求められます。
労働基準法上の罰則
一方、労働基準法において定額減税を6月給与から行わない場合は違反となり、罰則の対象となる恐れがあります。定額減税分の給与が支払われないことにより、労働基準法第24条第1項に規定されている給与の全額払いの原則に反するとされるためです。
労働基準法第24条第1項
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
例えば、6月の給与で所得税17,500円、住民税10,000円が減税されるはずの従業員に対して、減税処理をしなかったとします。定額減税が反映されない場合、給与から源泉所得税・住民税特別徴収が差し引かれ、給与支給額は27,500円少なくなります。
そのため、給与の全額が支払われておらず、労働基準法第24条違反に該当する恐れがあります。
労働基準法に違反した場合の罰則内容
6月の給与から定額減税の反映を行わない場合、労働基準法違反とされる恐れがあります。労働基準法第24条第1項違反に対しては30万円以下の罰金に処すると、第120条第1項において規定されています。労働基準監督署による調査が入り、指導・勧告がなされ、是正されない場合は罰則の適用を受ける可能性があります。
万が一、6月給与で定額減税に対応できなかった場合
定額減税は6月の給与から開始し、2024年中の給与支払いにおいて、各人の定額減税額をすべて控除するまで続けなければなりません。こうした月次減税を行わずに、年末調整時に一括で処理することは認められていません。定額減税を反映しない給与を支払った場合は、労働基準法違反となる恐れがあり罰則が科せられる可能性もあります。まずは企業による自主的な改善が求められ、是正のための指導が行われる際には、真摯に受け入れ、速やかに対応する必要があります。
個人事業主・自営業の場合も罰則は発生する?
個人事業主や自営業であっても人を雇用していれば労働基準法上の使用者に該当し、同法を遵守しなければなりません。定額減税を6月の給与に反映しない場合は、企業と同様に罰則の対象となり得ます。
定額減税に対応しないと労働基準法違反となることに注意しよう
定額減税は1人につき4万円(所得税3万円・住民税1万円)で、給与所得者に対しては給与において実施されます。源泉所得税額・特別徴収住民税額を減額することで給与支給額を増やす形で、6月の給与から行われます。企業だけでなく個人事業主や自営業者も、雇っている者に給与支払いを行っている使用者として定額減税を行わなければなりません。
定額減税に対応しないと、労働基準法第24条第1項に規定されている給与全額払いの原則に反し、労働基準法違反となる恐れがあります。労働基準法第24条違反の罰則は30万円以下の罰金です。即座に処罰を受ける可能性は少ないものの、定額減税へは速やかに対応しなければならないことには変わりありません。定額減税の仕組みと労働基準法の関係を理解し、法律違反をならないよう、きちんと処理しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
山口県の給与計算代行の料金相場・便利なガイド3選!代表的な社労士事務所も
山口県内でビジネスを運営する企業にとって、給与計算は不可欠な業務の一つです。しかし、専門知識や時間を要するため、外部に委託する企業も増えています。この記事では、山口における給与計算代行の料金相場を詳しく解説し、コストを抑えつつ高品質なサービ…
詳しくみる削除不可【2023年最新】給与計算ソフトとは?選び方や購入のポイントを種類別に比較!
給与計算ソフトとは、従業員の勤怠情報をもとに自動で給与計算を行うシステムのことを指します。近年さまざまな給与計算ソフトが登場しており、給与計算に特化したものから、会計業務までをカバーするものまで、その機能は個々のシステムによって異なります。…
詳しくみる休業手当の計算方法をケースごとに紹介!
会社都合での休業は、平均賃金の60%以上の「休業手当」を支払わなければいけません。しかし休業には自然災害や経営悪化など様々な事情があります。雇用形態により計算方法は異なり、細かい判断も必要です。 今回は、休業手当の定義から休業補償との違い、…
詳しくみる休職手当とは?主な種類6つ!傷病手当金の条件も解説
病気などで休職する場合、休職手当の支給の手続きをすることで、気がかりな休職期間中の経済的な困窮を回避することができます。この記事では休職手当の概要や支給条件、金額、申請方法について解説し、休職期間中に支給される手当の種類についてもご紹介しま…
詳しくみる役員退職慰労金とは?計算方法と功労加算・税金面の注意点や支給手続きを解説
取締役や監査役などの役員が退職した場合に、会社は役員退職慰労金を対価として支給することができます。 この役員退職慰労金については、支給する側にもされる側にも様々なメリット・デメリットがあります。また、役員退職慰労金を損金算入することで、節税…
詳しくみる給与計算代行・アウトソーシングの基本!代行業務の内容・相場やメリット・デメリットを解説
企業の毎月の給与計算、年末調整などの業務の委託を受けて処理するサービスを、給与計算代行・給与計算アウトソーシングといいます。収益に直結しない、こうした間接業務に人員を割く余裕がないという理由で、委託を検討されている方も多いのではないでしょう…
詳しくみる