- 更新日 : 2025年10月10日
キャリアアンカーとは?意味や診断方法、適職がわかる8つの分類を解説 | 給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」
キャリアアンカーとは、キャリア形成においてこれだけは譲れないという価値観のことです。8つのカテゴリーがあり、どれに分類されるかを知ることで人材配置や人材育成に役立てられます。また、仕事や企業とマッチするかを判断することも可能です。
本記事では、キャリアアンカーの意味や活用方法、診断方法などを解説します。
目次
キャリアアンカーとは?
キャリアアンカー(Carrer anchor)とは、アメリカの組織心理学者エドガー・シャインが提唱した理論であり、キャリアを考える上で譲れない軸となる価値観のことです。
「anchor」とは「船の錨(いかり)」のことで、いかりが海底に下りていると船は安定して運航できます。キャリア形成においても、軸となる不動のアンカーがあることで、仕事に求めているものを明確にでき、納得のいく働き方を選びやすくなるでしょう。
キャリアアンカーは個人だけではなく、会社が従業員の特性・能力を測定するツールにもなるものです。企業は適材適所の人員配置や異動、従業員に合わせた人材育成計画などにキャリアアンカーを活用し、エンゲージメントの向上を図れます。
キャリアアンカーの3つの要素
キャリアアンカーには「コンピタンス」「動機」「価値観」という3つの要素があります。これら3つの要素から、自分の譲れないポイントを探します。3つの要素のなかで重なる部分を仕事にすれば、高い満足度をもって働けるようになるでしょう。
ここでは、キャリアアンカーの3つの要素について解説します。
コンピタンス(できること・能力)
コンピタンスとは、 「自分の核となる能力」「得意分野」という意味で、仕事に必要なスキルや知識のことです。キャリアアンカーでは、「仕事における専門性」を指します。
コンピタンスは自分にできることや得意なこと、強み・弱みであり、自己分析などで見極めます。コンピタンスを持つことで自信を持って業務を遂行でき、モチベーションを高める要素となるでしょう。
動機(やりたいこと・欲求)
動機とは、自分がやりたいこと・関心があることなど、自己実現に向けた欲求のことです。動機に合う仕事をすることで、高い満足度と達成感を得られます。
動機には、外部からの影響で発生する外発的動機と、内側から湧き上がる内発的動機があります。どちらも行動を起こすために必要なものですが、キャリアアンカーで重視するのは内発的動機です。内側からの欲求で行動することで、やりがいを感じやすくなります。
価値観(やるべきこと・義務)
価値観とは、自分が大切にする信念を指します。仕事をする上で「絶対にやるべき」と感じていることや義務感です。価値観に沿った仕事をすることで意義を感じ、仕事に対するモチベーションも高まります。
価値観は、「期日までに仕上げること」「ミスをしないこと」といったことが例にあげられます。このような明確な価値観だけでなく抽象的な価値観もあり、これを明確にして納得できる選択ができれば、より意欲的に仕事ができるでしょう。
キャリアアンカーの8つのカテゴリー
キャリアアンカーには8つの分類があり、どの分類に当てはまるかで、キャリア形成の道筋がみえます。
8つのカテゴリーについて、詳しくみていきましょう。
① 専門・職能別
専門的なスキルや知識を活かしたいと考え、特定の分野のエキスパートを目指すタイプです。管理職になるよりも現場の仕事を続けることを好み、特定の仕事について高い才能を持つことに価値を見出します。
キャリアの変化を望まないため、専門性を活かせない部署に異動をするとモチベーションが下がることもあるでしょう。
② 全般管理
出世志向が強く、経営者やマネージャーを目指すタイプです。組織や集団を率いることに価値を見出します。専門職よりも、組織の中で責任ある役割を担うことを望みます。
多くの経験を積むために異動も受け入れ、キャリアアップのための資格取得や自己研鑽には努力を惜しみません。人の世話や問題解決を支援することを好み、責任を追うことで成長します。
③ 自立・独立
独立を志向し、集団行動が苦手なタイプです。組織のルールに縛られず、自分のペースやスタイルを守り、マイペースに働くことを好みます。
仕事は納得のできるやり方で進めたいと考え、人の力を借りずに成し遂げたいと考えます。一定の規律が求められる組織に馴染めず、何らかのきっかけで離職・独立することも少なくありません。
④ 保障・安定
保障や安定があることを重視するタイプです。終身雇用制をとる大企業や公務員など、ひとつの組織で長く働くことを好みます。
ゆったりとした気持ちで仕事に就きたいと考え、将来が見通せる安定性が重要です。予測できないことやリスクの伴うこと、変化を嫌うため、キャリアチェンジや部署の異動などは大きなストレスになります。
⑤ 独創性
独創性があり、新しいことを生み出したいと考えるタイプです。リスクを恐れずに行動し、結果を得ることが原動力となります。
発明家や芸術家、起業家を目指す人が多く、企業に属していても最終的には独立・起業の道を選びます。新しい製品やサービスの開発、新規事業の立ち上げといった仕事を好む傾向があります。
裁量が大きいベンチャー企業やテレワーク、フレックスタイム制など、柔軟な働き方を採用する企業で能力を発揮するでしょう。
⑥ 奉仕・社会貢献
世の中や人のためになることに価値を見出し、自分の仕事を通して社会に貢献したいと考えるタイプです。医療や社会福祉、教育などの仕事を目指します。
自分の能力を発揮して出世するよりも、人の役に立つことに喜びを感じる傾向があります。 誠意のない仕事や内部不正は許せません。企業では商品・サービスの開発や監査、人事部門などで能力を発揮します。
⑦ 純粋な挑戦
困難なことにあえて挑戦するタイプです。誰もが難しいと考える厳しい状況下において、課題を解決することに喜びを見出します。不可能と思えるような障害を克服することにやりがいを感じ、ライバルが手強いほど競争心を高めるのも特徴です。
自分を磨くことにも余念がありません。 喜んでハードワークに取り組みますが、ルーティンワークなど単調な仕事は好まない傾向があります。
⑧ ライフスタイル
仕事とプライベートを両立したいタイプです。ライフワークバランスを重視し、個人の欲求や家族の事情と自分の仕事とのバランスを考えます。仕事には熱心に取り組む一方で、育児休暇取得など、家庭や私生活も同じように大切にする傾向にあります。有給休暇は残さず取得し、急な飲み会には参加しないことが多いです。
プライベートに支障が出るような異動や労働環境には拒否感を示し、転職を検討する場合もあります。
キャリアアンカーは仕事にどう活かせる?
キャリアアンカーの考え方は、個人だけでなく企業にも役立ちます。ここでは、キャリアアンカーの仕事への活用法について解説します。
キャリア・サバイバルと一緒に活用し、仕事と企業のマッチを測る
キャリアアンカーはキャリア・サバイバルと一緒に活用することで、仕事のニーズとマッチ度を測りやすくなります。
キャリア・サバイバルとは、個人の譲れない価値観であるキャリアアンカーと、組織のニーズとの調和を図る言葉です。個人のキャリアについて、企業の取り巻く環境からのニーズに視点をおきます。
キャリアアンカーは人材側のニーズや価値観であり、会社運営を考える場合は組織のニーズとも合わせなければなりません。
個人の視点であるキャリアアンカーに対して、キャリアサバイバルは企業の期待に応えられるか、貢献できるかといった視点で考えます。
人事異動のアドバイス
キャリアアンカーは、人事異動のアドバイスの際に役立ちます。人事異動は人材の持つ特性により、成功が左右されるためです。
出世志向の強い管理タイプであれば異動を積極的に受け入れ、成長に活かそうとします。一方、専門性を活かしたいと考える専門職タイプは、職種が変わるような大きな人事異動はモチベーションを下げてしまう可能性が高いです。また、離職につながることもあるでしょう。
キャリアアンカーで特性を考慮すれば、適切な人事異動を実施できます。
新人研修・育成研修への活用
キャリアアンカーは、新人研修や人材育成の研修など、研修の題材としても活用できます。まだキャリアを形成していない新入社員は、キャリアアンカーの概念を知ることで、今後発生する「仕事をする上で譲れない価値観」について考え、キャリアアンカーを形成するために役立てられるでしょう。
中堅社員にとっては、自分のキャリアアンカーを振り返り、これからのキャリア形成を考えるきっかけにできます。
キャリアアンカーの診断方法
キャリアアンカーはインターネット上に無料の診断サイトがあり、手軽に診断できます。
また、「コンピタンス」「動機」「価値観」という3つの要素でキャリアを振り返ることでも、キャリアアンカーを診断することが可能です。
仕事や私生活でやりがいを感じたときや大切にしたいこと、したくないことなどを洗い出すことで、自分のタイプがわかります。
キャリアアンカーはそれぞれの価値観を分類したもので、どれが良い・悪いというものではありません。会社にとっては人材がどのような価値観を持っているかを知ることは重要であり、 キャリアアンカーを重視して人員配置をすることが、円滑な組織運営のために必要です。
キャリアアンカーは30代で確立するとされていますが、十分な経験・実績を積んでいない場合、自分がどのようなキャリアアンカーなのか判断できないこともあります。複数のタイプに当てはまることもあり、8つの分類には当てはまらない場合があるかもしれません。単純にひとつのタイプに当てはめるのではなく、そのような傾向にあると考えたり、複数の要素があるタイプを認めたりすることも必要です。
キャリアアンカーを組織運営に活用しよう
キャリアアンカーは絶対に譲れない価値観や能力のことです。8つの分類があり、上手に利用することで適切な人材配置や人材の育成計画に役立ちます。
しかし、8つの分類は大まかであり、必ずしもすべてがそのまま当てはまるわけではありません。人材を総合的に判断する際、ひとつの指標として取り入れていくのがよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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