- 更新日 : 2025年4月24日
育児休業給付金の計算方法 – いつの給与までが対象になる?
育児休業は、子どもが1歳(一定の条件を満たした場合は2歳まで)取得できます。また、育児休業期間中は通常は給与は無給になりますが、雇用保険から育児休業給付金を受けることができます。
今回は、育児休業給付金とは何かを再確認し、育児・介護休業法の改正による育児休業給付金の影響、支給額の計算方法や手続きについて見ていきます。
目次
育児休業給付金とは?
育児休業給付金は、雇用保険に加入している被保険者が育児休業を取得して給与が一定以上支払われなくなった場合に、雇用保険から給付される給付金のことです。
育児休業給付金には、出生時の育児休業期間を対象に支給される「出生時育児休業給付金」と育児休業期間中に支給される「育児休業給付金」があります。
育児・介護休業法の改正ポイントおさらい
2022年4月から育児・介護休業法の改正が段階的に施行されています。今回の改正は特に男性の育児休業制度が大きく見直されています。
育児・介護休業法の改正についてのポイントは、下記のようになります。
※2022年4月1日の改正
- 雇用環境整備や個別の周知・意向確認の措置の義務化
- 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
※2022年10月1日の改正
- 「産後パパ育休」制度の開始
- 育児休業の分割取得
- 育児休業給付に関する規定整備
※2023年4月1日より
- 育児休業の取得状況を公表するよう企業に義務付け
詳しい内容はこちらでご確認ください。
育児休業給付金の計算方法
ここからは、育児休業給付金と出生時育児休業給付金の計算方法について見ていきます。出生時育児休業給付金、育児休業給付金は、ともに休業した日についての給付金ですので、休業開始日から休業終了日までの分が支給対象になります。
出生時育児休業給付金の計算方法
出生時育児休業給付金の支給額は、原則として、
です。
※休業開始時賃金日額は、申請の際に提出する「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」で、育児休業を開始する前6カ月間の賃金を180で割った金額です。
※休業開始時賃金日額の上限額は15,190円(ただし令和5年7月31日まで)です。
出生時育児休業給付金の上限額は、15,190円×28日×67%=284,964円になります。
※出生時育児休業期間に会社から賃金が支払われた場合は、支払われた賃金の額により支給額が変わります。
- 休業開始時賃金日額×休業期間の日数の13%以下の場合
→ 休業開始時賃金日額×休業期間の日数×67% - 休業開始時賃金日額×休業期間の日数の13%超から80%未満の場合
→ 休業開始時賃金日額×休業期間の日数×80%-賃金額 - 休業開始時賃金日額×休業期間の日数の80%以上の場合
→ 出生時育児休業給付金は支給されません。
例えば、休業開始時賃金日額が9,000円で15日間の出生時育児休業を取得した場合
育児休業を開始した場合、賃金が全く支払われていなければ、
支給額=9,000円×14日×67%=84,420円になります。
育児休業給付金の計算方法
育児休業給付金の支給額は、支給対象期間(1カ月)について、原則として、
です。
※休業開始時賃金日額は、申請の際に提出する「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」で、育児休業を開始する前6カ月間の賃金を180で割った金額です。
※支給日数は原則30日間です。ただし、休業終了日を含む休業期間の日数は休業終了日までの日数になります。
※休業開始時賃金日額の上限額は15,190円、下限額は2,657円(それぞれ令和5年7月31日まで)です。
(給付率67%) 支給上限額 305,319円 支給下限額 53,405円
(給付率50%) 支給上限額 227,850円 支給下限額 39,855円
※育児休業期間に会社から賃金が支払われた場合は、支払われた賃金の額により支給額が変わります。
- 休業開始時賃金日額×休業期間の日数の13%以下の場合
→ 休業開始時賃金日額×休業期間の日数×67% - 休業開始時賃金日額×休業期間の日数の13%超から80%未満の場合
→ 休業開始時賃金日額×休業期間の日数×80%-賃金額 - 休業開始時賃金日額×休業期間の日数の80%以上の場合
→ 育児休業給付金は支給されません。
例えば、休業開始時賃金日額が9,000円(賃金月額が270,000円)の場合
育児休業を開始した場合、賃金が全く支払われていなければ、
- 育児休業開始日から180日目までで休業日数が30日の場合の計算
支給額=9,000円×30日×67%=180,900円 - 育児休業開始日から181日目以降で休業日数が30日の場合の計算
支給額=9,000円×30日×50%=135,000円
になります。
育児休業給付金を受け取るための手続き – 企業と従業員
ここからは、出生時育児休業給付金、育児休業給付金を受け取るための手続きについて解説します。
出生時育児休業給付金の手続き
【必要書類】
◆会社
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書
- 賃金台帳、出勤簿、タイムカード、育児休業申出書など、出生時育児休業を開始した日と終了した日、賃金額、支払い状況がわかるもの
◆従業員
- 払渡希望金融機関指定届
- 母子健康手帳、医師の診断書など、出産予定日ならびに出産日を確認できる、いずれかのもの(コピー可)
【手続きの流れ】
- 受給予定の従業員が会社に出生時育児休業の申し出を行います。
- 従業員が必要な書類を会社に提出します。
- 会社が必要な書類をそろえて管轄のハローワークに提出します。
- 審査が承認されたら出生時育児休業給付金が支払われます。
育児休業給付金の手続き
【必要書類】
◆会社
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 賃金台帳、出勤簿、タイムカードなど、育児休業を開始した日と終了した日、賃金額、支払い状況がわかるもの
◆従業員
- 払渡希望金融機関指定届
- 母子健康手帳など、育児の事実、出産予定日ならびに出産日を確認できるもの(コピー可)
【手続きの流れ】
- 受給予定の従業員が会社に出生時育児休業の申し出を行います。
- 従業員が必要な書類を会社に提出します。
- 会社が必要な書類をそろえて管轄のハローワークに提出します。
- 審査が承認されたら育児休業給付金が支払われます。
その後は、1〜2カ月に1回、支給申請手続きを行います。
【育児休業給付金はいつまでもらえるか】
原則は、子どもが1歳になる日の前日まで支給されます。
しかし、一定の要件を満たした場合には、最長で1歳6カ月または2歳になる日の前日まで受けられる場合があります。
育児休業申出書のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
育児・介護休業法の改正を確認して正しく給付金を受給しましょう
育児休業給付金は、法改正により、育児休業給付金の他にも出生時育児休業給付金を受け取ることができるようになりました。
支給要件や必要書類を確認して、正しく出生時育児休業給付金や育児休業給付金を受けられるように手続きを行っていきましょう。
よくある質問
育児休業給付金とは何か教えてください
育児休業給付金とは、雇用保険に加入している労働者が支給要件を満たした場合に雇用保険から給付される給付金のことです。育児休業給付金には、「出生時育児休業給付金」と「育児休業給付金」があります。詳しくはこちらをご覧ください。
育児休業給付金の計算方法について概要を解説してください
出生時育児休業給付金は、原則、「休業開始時賃金日額×休業期間の日数(上限28日)×67%」です。育児休業給付金は、原則、「休業開始時賃金日額×休業期間の日数×67%(181日目以降は50%)」です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
会社が労災を嫌がるのはなぜ?デメリットや対処方法、認められない事例なども解説
業務中に予期せぬ怪我に見舞われた際、従業員が当然のように考える労災保険の申請。しかし、実際には会社側が労災申請を嫌がるケース多く見られます。この記事では、会社が労災申請を嫌がる背景にある様々な理由を深掘りするとともに、もし会社が非協力的な場…
詳しくみる厚生年金の報酬比例部分とは?定額部分との違いや計算方法、支給開始年齢を解説
公的年金制度には厚生年金と国民年金がありますが、その仕組みは複雑です。 支給開始年齢が65歳であることは知っていても、年金を構成する報酬比例部分や定額部分がどのようなものなのか、理解している人は少ないのではないでしょうか。 本稿では年金制度…
詳しくみる従業員に住所変更があった場合の社会保険の手続きについて解説
社会保険に加入している従業員が転居等した場合、届け出済みの住所も変更する必要があります。住所変更は「健康保険・厚生年金被保険者住所変更届」で行います。住所変更があった後、窓口持参・郵送・電子申請のいずれかにより速やかに手続きしなければなりま…
詳しくみる健康保険の傷病手当金とは
健康保険に加入していれば、被保険者や家族がケガをしたり病気になったりしたとき、一部の負担で治療を受けることができます。お医者さんが処方してくれた薬も同様です。 これを「病養の給付」といい、名称を知らない人であっても、病院に行った際、健康保険…
詳しくみる厚生年金における経過的加算とは?計算方法などわかりやすく解説!
長く加入するほど将来もらえる年金額が増えていくのが厚生年金保険ですが、50歳以上の方にハガキで届く「ねんきん定期便」に載っている経過的加算額を見て、経過的加算の意味がわからず疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。 今回は、厚生年金保…
詳しくみる一人親方は厚生年金に加入できない?適用除外の理由や加入すべき制度を解説
一人親方は厚生年金には加入できません。老後に受給できる年金は、基本的に国民年金のみです。そのため、国民年金基金やidecoと呼ばれる個人型確定拠出年金への加入を検討しましょう。本記事では一人親方の年金制度を解説します。受け取れる年金額のシミ…
詳しくみる