• 作成日 : 2023年3月10日

残業代や残業手当の正しい計算方法とは?

残業代や残業手当の正しい計算方法とは?

従業員に残業させた場合、残業代や残業手当を支払います。残業に対して支払うべき賃金は労働基準法で定められている通りに計算しなければなりません。
時間外・深夜・休日労働に対しては割増賃金を支払う必要があります。フレックス制やみなし残業制、変形労働時間制についても労働基準法に基づいた残業代・残業手当の支払いが必要です。

そもそも残業とは

労働者にさせた残業については、残業時間に応じた残業代や残業手当の支払いが必要です。残業代や残業手当を正しく支払うためには、残業について正確に把握しておかなければなりません。そもそも残業とはどのような労働であるのか、所定労働時間や法定時間外労働、法内残業の言葉の関係から理解しましょう。

所定労働時間

所定労働時間とは、企業の定める労働時間のことを指します。企業ごとに、就業規則などにおいて定めている時間のことです。「1日8時間」や「労働時間は9:00から18:00までとする(12:00から13:00までは休憩時間とする)」と規定してある時間を指します。

法定時間外労働

法定時間外労働とは、労働基準法が定めている法定労働時間を超えて労働させた場合の時間外労働のことです。労働基準法は第32条で労働時間を1日につき8時間・1週につき40時間と定めています。

法内残業

法内残業とは、残業ではあるものの法定労働時間を超えない残業のことであり、法定内残業とも言います。1日の所定労働時間が7時間である場合に行う1時間の残業が法内残業に該当します。

残業代を計算する際の割増率とは

一般的に残業に対しては割増賃金の支払いが必要とされています。割増賃金とは通常に支払う賃金に割増分を加えた賃金です。残業に対する割増賃金支払いは労働基準法に定められているため、法定通りの割増賃金を支払わないと労働基準法違反になります。残業で割増賃金が必要になるのはどのような場合なのか、またどのような割増率になるのかについて、しっかりと理解しましょう。

休日労働の場合

休日労働の場合、割増率35%の割増賃金の支払いが必要です。ただし割増賃金の支払いが必要とされるのは、労働基準に定めている「1週に1日」の法定休日に労働させた場合です。週休2日制の場合、どちらの休日にも割増賃金の支払いが必要なわけではありません。

法定時間を超えた場合

法定時間を超えた場合の割増率は、1カ月の労働時間が60時間までと60時間を超えた場合で異なっています。

  • 60時間まで25%
  • 60時間を超えると50%

1カ月の労働時間が60時間を超えた場合に50%の割増率とされるのは大企業だけで、中小企業は25%のままとする経過措置がありました。しかし2023年4月からは中小企業でも1カ月の労働時間が60時間を超える法定時間外労働に対しては50%の割増率が適用されるようになります。
22:00から翌朝5:00までの深夜にさせる労働(深夜労働)の割増率は25%で、法定時間外労働であり深夜労働でもある場合は「25%+25%=50%」の割増率になります。

法定時間内の場合

法定労働時間内の労働の場合は割増賃金の支払い義務はありません。

法定内時間の具体例

例1)1日の所定労働時間6時間30分の場合の、6時間までの労働させた時間

例2)1週の所定労働時間35時間の場合の、法定休日以外の休日に5時間まで労働させた時間

※法定休日以外の休日とは、土日を休みとする週休2日制の場合の土曜日または日曜日のどちらかを言います。

残業代の計算方法と具体例

残業時間の計算方法を、例を挙げて説明します。フレックスタイム制や変形労働時間制、裁量労働制では残業はどのように扱うのかについても、理解しましょう。

基本的な残業代の計算方法

1時間あたりの賃金が1,800円の場合、割増賃金は次のように計算します。

  • 休日労働の場合
    割増率35%を用いて割増賃金を計算します。
    1時間あたりの割増賃金 1,800×1.35=2,430(円)
  • 時間外労働の場合(1カ月60時間まで)
    割増率25%を用いて割増賃金を計算します。
    1時間あたりの割増賃金 1,800×1.25=2,250(円)
  • 時間外労働の場合(1カ月60時間超)
    割増賃金率50%を用いて割増賃金を計算します。
    1時間あたりの割増賃金 1,800×1.5=2,700(円)
  • 深夜労働の場合
    時間外労働でもある場合は割増率50%(1カ月60時間までの場合)や割増率75%を用いて割増賃金を計算します。
    1時間あたりの割増賃金 1,800×1.5=2,700(円)
    1時間あたりの割増賃金 1,800×1.75=3,150(円)

フレックスタイム制の場合の残業代

フレックスタイム制とは労働者が始業時間や終業時間を決めて働く制度です。コアタイム(必ず労働しなければいけない時間帯)を除き、労働者は始業や終業の時間を自由に定めて働くことができます。

フレックスタイム制では3カ月までの清算期間において労働基準法に定める労働時間(1日あたり8時間・1週間あたり40時間)を超えた時間が残業代の支払い対象になります。

変形労働時間制の場合の残業代

変形労働時間制とは単位とする期間を通して労働基準法の定める労働時間(1日あたり8時間・1週間あたり40時間)を超えないように所定労働時間を設定することを認める制度です。
単位期間を通しての労働時間について法定時間外労働があった場合は、割増賃金の支払いが必要となります。

裁量労働制の場合の残業代(みなし残業)

裁量労働制とは労働者に働き方について多くの裁量が委ねられている制度です。実際に働いた時間とは関係なく、締結した労使協定に定めた時間が労働時間とみなされます。

専門的な業務を行う労働者を対象にした専門業務型裁量労働制と、事業の運営に関する特定の業務を行う労働者を対象にした企画業務型裁量労働制があります。
裁量労働制では実際に働いた時間が時間外労働に該当する場合でも残業代は発生しませんが、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合は、割増賃金の支払いが必要になります。

時間外労働の考え方やカウントルールを習得して、正しく残業代を計算しよう

残業した労働者に対しては、残業代や残業手当を支払わなくてはなりません。残業は労働基準法では時間外労働として、割増賃金を支払わなくてはならないと規定されています。ただし労働基準法の定める法定労働時間の範囲内である残業には、割増賃金の支払いは必要ありません。

時間外労働に対して支払う割増賃金の割増率は、1カ月60時間までは25%、60時間を超えると50%になります。休日労働や深夜労働に対しても割増賃金を支払う必要があり、割増率はそれぞれ35%、25%です。時間外労働が深夜に及んだ場合は、時間外労働と深夜労働の割増率がかかります。

フレックスタイム制や変形労働時間制、裁量労働制を採用していても、残業代の支払いが必要な場合があります。それぞれの労働時間制をよく理解し、正しい残業代計算ができるようになりましょう。

よくある質問

残業代はどれぐらい割り増しされますか?

1カ月60時間までの時間外労働には25%、60時間を超える時間外労働には50%の割増率で計算される割増賃金が支払われます。詳しくはこちらをご覧ください。

裁量労働制でも時間外労働となることはありますか?

裁量労働制の場合、みなし労働時間が労働基準法の労働時間を超える時間になっていると時間外労働として割増賃金が支払われます。詳しくはこちらをご覧ください。


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