• 更新日 : 2025年9月30日

年末調整における年収とは?定義と計算方法を解説!

その年に得た収入の合計額を「年収」といいます。年末調整は、対象の年の1月1日から12月31日までの期間の給与収入額を対象に行われるため、収入・年収・給与収入の3つの言葉は多くの場合で同じ意味で用いられます。年収にはまだ受け取っていない12月給与なども含まれるため、年末調整の書類には見込額で記入します。

年末調整における年収とは?

年末調整では、日常生活では馴染みのない言葉や、理解できない言葉がよく登場します。「年収」「収入」「所得」なども、難しい言葉ではありませんが、具体的になにを指しているのかはわからないという方も多いのではないでしょうか。

年末調整における年収・収入・所得の言葉には、以下のような違いがあります。

収入と年収の違い

収入は金銭を得ることや、得られた金銭を指して使われる言葉です。労働の対価として支払われる給与については、「給与収入」が用いられます。

年収は、その年1年間の収入の合計額です。年末調整は1年を単位として行われるため、収入と年収は同じものとして取り扱われます。

所得と年収の違い

収入から、その収入を得るためにかかった費用を差し引くと所得になります。

例えば、土地などを売った場合、譲渡収入から購入代金や書類作成費といった取得・譲渡にかかった費用を差し引いたものが、譲渡所得になります。しかし、給与の場合は必要経費を差し引くことができません。このため必要経費に代わるものとして給与所得控除額を定め、給与収入から差し引いて給与所得を求めます。

2020年以降の給与所得控除額は以下の通りです。

給与収入額給与所得控除額
~1,625,000円550,000円
1,625,001~1,800,000円給与収入額×40%-100,000円
1,800,001~3,600,000円給与収入額×30%+80,000円
3,600,001~6,600,000円給与収入額×20%+440,000円
6,600,001~8,500,000円給与収入額×10%+1,100,000円
8,500,001円~1,950,000円

年末調整では給与収入が年収として取り扱われるため、給与収入から上の表の給与所得額を差し引いた金額が給与所得額になります。

参考:No.1410 給与所得控除|国税庁

年末調整における年収の対象となる期間は?

年末調整で年収として計算に含むのは、その年の1月1日から12月31日までの期間の収入です。

年末調整における年収は見込み金額

年末調整は、その年の最後の給与支払時に行われ、申告書はそれより前、11月下旬から12月中旬にかけての期間に記入して提出しなければなりません。

年末調整における年収は、1月1日から12月31日までの給与・賞与であるため、申告書の記入・提出後に受け取る12月賞与や12月給与も含める必要があります。

およその金額を想定しての記入となるため、年末調整での年収は、見込額になります。

賞与など年末調整における年収に含まれるもの

年末調整における年収に含まれるもの、含まれないものには以下のようなものが該当します。

年末調整の年収に含まれるもの

◆給与関係
  • 時間外手当
  • 休日出勤手当
  • 深夜労働手当
  • 役職手当
  • 職務手当
  • 家族手当
  • 住宅手当
  • 通勤手当のうち非課税限度額を超過している金額
  • 年末調整を行う年に前職があり給与を受けていた場合のその給与額
    など
◆賞与関係
  • 賞与額
  • 年末調整を行う年に前職があり賞与を受けていた場合のその賞与額
    など

年末調整の年収に含まれないもの

◆給与関係
  • 通勤手当のうち非課税限度額以下の金額
  • 転勤旅費、出張旅費のうち実費相当額以下の金額
  • 結婚祝金などのうち社会通念上相当額と認められる金額
    など

年末調整における年収の計算方法

年末調整では、その年1年間に支払いを受けた給与・賞与の金額を合計して年収を計算します。

年末調整における年収の計算では、以下の点に気をつける必要があります。

  • 合計するのは手取り額ではなく、支給額です。
  • まだ受け取っていない分も含める必要があります。
  • 支給時期が先の12月賞与や12月給料は見込額を求めて計算に使用します。
  • 転職して前職の給与収入がある場合も、計算に含めます。

年末調整において年収を記載する箇所

年末調整で年収などを書く欄は、以下のように基礎控除申告書に設けられています。

令和7年分年収の欄_給与所得者の基礎控除申告書

出典:A2-4 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除及び所得金額調整控除の申告|国税庁、「令和7年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」を加工して作成

書き方は次の通りです。

1) 計算した年収を記入します。

2) 1) の年収から給与所得控除額を差し引くことで求められる、給与所得額を記入します。次の速算表を用いると、簡略に計算できます。

■給与所得額速算表

年収(①の金額)給与所得額(②に記入する金額)
1円~650,999円0円
651,000円~1,899,999円年収(①)-650,000円
1,900,000円~3,599,999円年収(①)/4(千円未満切捨)→×2.8-80,000円
3,600,000円~6,599,999円年収(①)/4(千円未満切捨)→×3.2-440,000円
6,600,000円~8,499,999円年収(①)×0.9-1,100,000円
8,500,000円~年収(①)-1,950,000円

所得金額調整控除が適用の場合は、算出した給与所得控除の金額から所得金額調整控除の金額を控除します。

参考:令和7年分 年末調整のしかた|国税庁「合計所得金額の計算について(令和7年分)」

③ 給与所得以外の所得がある場合にその所得の金額を記入します。

④ 給与所得(②)と給与所得以外の所得(③)の合計額を記入します。

年末調整における年収の記載例

給与と賞与を合わせた年収が3,500,000円、給与所得以外の所得はないAさんの場合で申告書の「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」の欄を記入してみましょう。

申告書の①欄は、年収の額3,500,000円と記入します。

上記の「給与所得額速算表」に当てはめると年収の範囲が『1,900,000円~3,599,999円』に該当します。計算は以下の通りです。

3,500,000円/4=875,000円(千円未満切捨て)
→875,000円×2.8-80,000円=2,370,000円

よって申告書②欄には2,370,000円と記入します。

Aさんには給与所得以外の所得はないため、申告書の③欄は0円を記入します。

申告書の④欄は②欄と③欄の合計額、2,370,000円+0円=2,370,000円と記入します。

年末調整で困らないために年収の計算・記入方法を理解しておこう

年末調整は、毎月の給料から差し引かれた源泉徴収の合計を、所得税と同じ金額にする手続きです。1年を単位として行われるため、年末調整での収入は年収と同じ意味になります。

12月給与といった支払いがまだの給与・賞与も含まれるため、年末調整で年収を書く際は見込額を想定して記入する必要があります。

給与所得は、給与収入から給与所得控除額を差し引いた金額です。簡略に計算できるよう速算表が準備され、記入する場所は基礎控除申告書にあります。

年収の計算・記入方法を理解して、正確に年末調整をスムーズに行えるようになりましょう。


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