• 更新日 : 2025年3月27日

適応障害の労災認定は難しい?手続きや証拠の重要性、デメリットなども解説

適応障害は、強いストレスが原因となって心や体の調子を崩し、仕事や日常生活に支障をきたす精神疾患の一つです。現代の職場では、長時間労働や人間関係のトラブル、業務上のプレッシャーが大きなストレスとなり、適応障害を発症するケースが少なくありません。そして、こうした業務上のストレスが原因で発症した場合には、「労災」として補償を受けられる可能性があります。

本記事では、適応障害の基礎知識から、労災として認定されるための条件、申請の手順、実際の成功事例、企業側の対応までわかりやすく解説します。労災申請を検討している方や、企業としての対応を知りたい方にも役立つ内容です。

目次

適応障害とは?

適応障害とは、ある特定の出来事や環境の変化がストレスとなって、心や体に不調が現れ、日常生活に支障が出てしまう心の病気です。人は誰でも生活の中でストレスを感じることがありますが、そのストレスにうまく対応できず、強い不安や落ち込みが続いてしまうと、「適応障害」と診断されることがあります。

厚生労働省の情報によると、適応障害は「明らかなきっかけとなる出来事があり、それに対して本人が強く反応し、社会生活に支障が出ている状態」とされています。

適応障害の主な症状

適応障害は、心の不調だけでなく、行動や体の症状としても様々な変化が現れます。症状には個人差がありますが、代表的なものとして、感情面、行動面、身体面に分けて考えることができます。

感情面では、落ち込みや不安、怒りっぽさ、焦り、緊張感などが強く現れることがあります。これまでなら平気だったことに過敏に反応してしまったり、自分で感情をコントロールできなくなったりすることがあります。

行動面では、無断欠勤や遅刻が増えたり、暴飲暴食や衝動的な行動をとったりすることがあります。また、集中力が落ちて仕事や勉強が手につかなくなることもあります。

身体面では、頭痛や吐き気、不眠、動悸、倦怠感、朝起きられないといった症状が現れることがあります。こうした体の不調が続くことで、さらに心の状態も悪化し、悪循環に陥るケースもあります。

適応障害と他の精神疾患の違い

適応障害は、うつ病や不安障害と症状が似ている部分がありますが、明確な違いがあります。適応障害の場合は、「きっかけとなる出来事」がはっきりしていることが多く、その出来事が過ぎたり、環境が変わったりすることで、症状が自然に軽くなっていくことがあります。

一方で、うつ病などは、はっきりした原因がなくても長期間にわたって症状が続くことがあり、より深刻な状態になりやすい傾向があります。

適応障害は、早めに対応することで回復しやすい病気でもあります。しかし、そのまま放っておくと、うつ病などの重い精神疾患に進行してしまうこともあるため、早期の受診と適切な対処がとても大切です。

適応障害は労災の対象になる?

労災とは、仕事中や通勤中にケガをしたり、病気になったりした場合に、労働者やその家族に対して国が補償を行う制度です。例えば、工場での作業中に機械に手を挟んでケガをしたり、通勤途中に交通事故に遭ったりした場合などが、一般的な労災のイメージです。

しかし最近では、仕事による強いストレスが原因で心の病気を発症したケースも、労災の対象として認められるようになってきています。

適応障害が労災の対象となる理由

適応障害は、ストレスが引き金となって発症する病気です。例えば、長時間の残業が続いていた、上司からの強い叱責やパワハラを受けていた、新しい部署で急に大きな責任を負わされた、などの状況があった場合、強いストレスとなって適応障害を引き起こすことがあります。

このように、ストレスが仕事に深く関係している場合には、「業務が原因で起きた病気」として労災に認定される可能性があります。

適応障害は必ず労災認定されるわけではない

ただし、適応障害であれば必ず労災に認められるというわけではありません。労災として認められるには、厚生労働省が定める「認定基準」に基づいて、厳密に判断されます。

特に重要なのは、「適応障害の原因が業務にあるかどうか」という点です。仕事が原因であると客観的に確認できなければ、たとえ症状が重くても労災としては認められないことがあります。

例えば、家庭内のトラブルや個人的な悩みが大きな原因であると判断された場合は業務と関係がないとみなされ、労災にはなりません。

適応障害の労災認定における証拠の重要性

適応障害の労災認定は、それぞれの事例について個別に調査・判断されます。単に「ストレスを感じていた」「仕事が大変だった」といった主観的な訴えだけではなく、客観的な証拠や第三者の証言なども重視されます。

労働基準監督署では、医師の診断書だけでなく、勤務記録、メールや報告書、上司や同僚の証言などをもとに、仕事と病気の因果関係があるかどうかを慎重に検討します。

したがって、もしご自身が適応障害を患っていて、その原因が仕事にあると感じる場合には、まず医師に相談し、必要な証拠を集めながら労災申請に向けた準備を進めることが大切です。

適応障害などの精神障害が労災認定される条件

適応障害などの精神障害が労災として認められるためには、厚生労働省が定めている「精神障害の労災認定基準」に基づき、3つの重要な条件をすべて満たしている必要があります。

条件1.対象となる精神障害を発病していること

1つ目の条件は、申請する人が厚生労働省の基準で定められた「労災認定の対象となる精神障害」を発症していることです。適応障害はこの対象に含まれています。

この条件を満たすためには、精神科や心療内科などの医療機関で、専門の医師から正式に「適応障害」と診断されることが必要です。自己判断やインターネットの情報だけで申請することはできません。

医師による診断書には、病名だけでなく、発症した時期や症状の具体的な内容、治療の経過などが記載されます。できるだけ詳細かつ正確な内容が記載されていることが、後の審査でも重要になります。

また、診断書には可能であれば「業務によるストレスとの関連性」についても、医師の意見として触れてもらうことが望ましいとされています。これは因果関係を説明するうえで有力な資料となるためです。

条件2.発症前のおおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷があったこと

2つ目の条件は、精神障害が発症する前のおおよそ6ヶ月間の間に、仕事上の強いストレスを受けていたことが明らかであることです。この「強い心理的負荷」が労災として認められるための鍵となります。

厚生労働省は、ストレスの強さを評価するために、仕事の内容や環境に関するさまざまな具体例を挙げています。そのなかには、長時間の残業、職場でのハラスメント、業務内容の急激な変更、大きな責任の負担、職場での事故やトラブル対応などがあります。

例えば、発症直前の1か月間に160時間以上の残業をしていた場合や、2か月連続で月120時間を超える残業をしていた場合は、非常に強い心理的負荷があったと判断されやすくなります。さらに、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどが継続的に行われていた場合も、明らかに精神的な負担が大きいと評価されます。

重要なのは、単にストレスがあったという主張だけでは不十分で、その内容や程度、頻度、継続期間、そして発症との時間的な関連性などが、客観的に確認できるかどうかです。こうした要素を、労働基準監督署が総合的に判断することで、「業務による強い心理的負荷」があったか否かが評価されます。

条件3.業務以外の理由によって発症したとは考えにくいこと

3つ目の条件は、精神障害の原因が仕事以外の事情にあると考えにくいことです。例えば、家庭内の問題、金銭的な悩み、自分自身や家族の病気など、私生活における重大なストレスがあった場合、それが主な原因と判断されると、労災としては認められない可能性があります。

また、過去に精神疾患を患ったことがある場合や、性格的な要素、たとえば過度に責任を感じやすいなどの個人の傾向が強く影響しているとみなされると、業務との因果関係が否定されることもあります。

ただし、業務によるストレスと私生活のストレスの両方が存在する場合でも、業務による影響が一定以上大きいと認められれば、労災として認定されることがあります。また、過去に精神疾患があった人でも、「業務による新たな負荷がなければ再発しなかった」と判断される場合は、労災の対象となる可能性があります。

このように、労災として認められるかどうかは、「発症の主な原因が仕事にあるのかどうか」が、医師の診断や客観的な資料をもとに慎重に検討されることになります。

適応障害などの精神障害による労災の補償内容

適応障害などの精神障害で労災認定された場合、労働者は労災保険から様々な補償を受けることができます。補償内容は、病気の程度や治療の状況、就労の可否などによって異なります。ここでは、主な補償の種類について詳しく説明します。

療養補償給付

労災が認定された場合、病気の治療にかかる費用は原則として全額が労災保険から支給されます。自己負担はありません。対象となるのは、診察、入院、薬代、検査、精神療法など、医師の指示に基づいた治療行為です。

治療を受ける際には、労災指定医療機関を利用するか、もしくは事前に申請を行うことで、治療費を労災保険でカバーできます。指定外の医療機関を受診した場合は、一度自費で立て替えて、後日請求することも可能です。

休業補償給付

精神障害のために働くことができず、会社から賃金が支払われない期間がある場合には、「休業補償給付」が支給されます。支給額は、休業1日につき、給付基礎日額の60%です。

さらに、労災保険からは「特別支給金」として、給付基礎日額の20%が加算されるため、実質的には80%相当の収入補償が受けられます。休業が継続している限り、必要書類を提出することで、定期的に支給が続きます。

なお、休業補償を受けるためには、「労働不能な状態が連続して3日以上続いた後の4日目以降であること」という条件を満たしている必要があります。

障害補償給付

治療を続けても症状が改善せず、一定の障害が残ったと医師により判断された場合、「障害補償給付」を受けることができます。この場合の「障害」とは、社会生活や就労に著しい制限が残っている状態を指します。

障害の程度に応じて1級から14級までに分類され、それぞれ支給内容が異なります。重度の場合は年金形式で、軽度の場合は一時金として支払われます。精神障害の場合は、診断内容や症状の継続性、生活・労働への影響などが評価されます。

遺族補償給付

非常に稀ではありますが、精神障害が進行して自死に至った場合、一定の要件を満たしていれば、「遺族補償給付」が遺族に対して支給されることがあります。

自死に関しては慎重な判断が行われますが、業務による著しいストレスが主因であったと証明されれば、労災として認定される可能性もあります。遺族には、遺族年金または遺族一時金、葬祭料などが支給されます。

その他の補償・支援制度

精神障害で労災認定された場合には、上記以外にも必要に応じた支援が受けられることがあります。例えば、傷病が長期にわたる場合には「傷病補償年金」が支給されることがあります。

また、復職支援や就業困難者向けのリハビリテーションプログラム、社会復帰支援などが行政や労働局を通じて案内されることもあります。加えて、会社側に安全配慮義務違反がある場合は、民事で損害賠償を請求できる可能性もあります。

適応障害の労災申請に必要な手続き

適応障害が業務による強いストレスによって発症したと考えられる場合、労災保険による補償を受けるためには、正しい手続きに沿って申請を行う必要があります。ここでは、初めて労災申請を行う方でも迷わずに進められるよう、申請の流れを一つ一つわかりやすく説明していきます。

医療機関を受診し、診断を受ける

最初に行うべきことは、精神科または心療内科を受診し、専門の医師から「適応障害」と診断を受けることです。診断がなければ労災申請はできません。

診察の際には、どのようなストレスを受けていたのか、いつから症状が現れたのか、仕事との関係についてできるだけ具体的に伝えることが重要です。医師が状況を理解しやすくなり、診断書の記載内容も充実します。

診断書には病名、発症時期、症状の概要に加え、可能であれば業務との関連性についても記載してもらうと、申請時に有利になります。

仕事によるストレスの証拠を集める

労災申請では、業務上の出来事が適応障害の原因であることを示す証拠が重要になります。例えば、長時間労働の記録、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの事実を示すやり取り、業務内容の急激な変化に関する資料などが該当します。

証拠として有効とされるのは、実際の勤務記録(タイムカード、シフト表、業務日報など)、メールやチャットの履歴、上司からの指示メモ、社内報告書、業務命令書など、客観的な記録です。

あわせて、自分自身の症状や体調の変化、どのような時期に悪化したかなどを日記やメモで記録しておくと、労働基準監督署による判断の参考資料として役立ちます。

また、ハラスメントなどの被害については、日時や状況、相手の言動などをできるだけ詳細に記録し、第三者の証言が得られる場合はそれも準備しておくとよいでしょう。

労災保険給付の請求書を作成する

次に、労災申請に必要な書類を作成します。主に使用するのは「労災保険給付請求書」という様式で、申請内容によって使用する様式が異なります。

たとえば、医療費の支給を求める場合は「療養補償給付請求書」、仕事を休んだ期間の賃金補償を求める場合は「休業補償給付支給請求書」を使用します。これらの書類は、厚生労働省のホームページや労働基準監督署の窓口で入手できます。

請求書には、労働者本人の情報、勤務先の情報、発症に関係した業務の内容、医師の診療情報などを記載します。不備があると審査が遅れたり、受付されない場合があるため、内容は正確に記入することが大切です。

事業主が証明欄を記入する

労災申請書の一部には、事業主の証明欄があります。これは、労働時間や仕事内容、業務内容などについて、会社側に記入・証明してもらう部分です。

会社が労災申請に協力的である場合は、必要な証明を受けることでスムーズに手続きを進めることができます。ただし、会社が協力しない場合でも、申請そのものは本人の意思で行うことができるため、あきらめずに手続きを進めましょう。

このような場合には、会社からの証明がないことを理由に不利益が生じないよう、他の証拠や第三者の証言などをしっかりと準備することが重要になります。

労働基準監督署に提出する

必要な書類をすべてそろえたら、それらを所轄の労働基準監督署に提出します。所轄とは、勤務先の所在地を管轄する労働基準監督署のことです。

提出方法には、持参、郵送、あるいは一部自治体ではオンライン申請が可能な場合もありますが、詳細は事前に管轄の労働基準監督署に確認しておくとよいでしょう。

提出書類には、医師の診断書、収集した証拠類、本人の説明資料などが含まれます。できるだけ整理された形で提出することで、調査も円滑に進みます。

労働基準監督署による調査を受ける

申請が受理されると、労働基準監督署が事実関係の調査を行います。この調査には、申請者本人、勤務先、診断した医師などへの聞き取りが含まれる場合があります。

また、提出された証拠類に基づき、業務と発症の関係性、業務による心理的負荷の強さ、他に発症原因がないかなどが詳しく調べられます。

精神疾患に関する労災申請の場合は、調査に一定の時間を要することがあり、結果が出るまでに6か月以上かかることもあります。

労災認定の結果を受け取り、今後の対応を考える

調査の結果、労災として認定された場合は、必要な保険給付(医療費の支給、休業補償、障害補償など)を受けることができます。これにより、経済的な不安を軽減しながら治療に専念することが可能になります。

一方で、認定されなかった場合は、その理由について通知されます。納得できない場合は、不服申立て(審査請求)を行うことも可能です。弁護士や社会保険労務士などの専門家の支援を受けながら、再申請を検討することもできます。

従業員が適応障害と診断された場合の企業側の対応

従業員が適応障害と診断された場合、企業側には法的・倫理的にさまざまな対応が求められます。職場環境の改善や再発防止、労働者の人権の尊重に配慮した適切な対応を行うことが、安全配慮義務の履行につながるだけでなく、企業リスクの低減にも寄与します。

早期の情報共有と事実確認

従業員が「適応障害と診断された」と会社に申し出た場合、まずは本人の意思と体調に配慮しながら、事実確認を丁寧に行うことが重要です。医師の診断書をもとに、病名・発症時期・主な症状・業務との関係性などを確認し、本人の同意があれば産業医や人事部門と連携を図ります。

この段階では、詮索や過剰な聞き取りは避け、本人が安心して話せる環境を整えることが求められます。症状が不安定な場合は、無理に面談を行わず、必要に応じて家族や代理人を通じて連絡を取る方法も検討します。

産業医・専門家との連携による対応方針の検討

適応障害は精神疾患の一種であり、治療には時間がかかることも少なくありません。そのため、職場復帰や業務調整については、本人の主治医や産業医の意見を尊重しながら、企業側が無理のない対応方針を立てることが重要です。

産業医の意見書があれば、それを参考にして就業継続の可否や、必要な配慮(勤務時間の短縮、業務内容の軽減、異動の検討など)を具体的に検討します。場合によっては一時的な休職や療養を認めることも選択肢となります。

また、再発リスクが高い場合や、職場環境にストレス要因があると考えられるときは、環境改善や人間関係の調整も含めて広い視野で対応することが求められます。

職場環境の見直し

個別の対応だけでなく、適応障害の発症を職場全体の問題として捉える姿勢も重要です。ハラスメントや過重労働が背景にある場合、それを放置していると他の従業員にも悪影響を及ぼす可能性があります。

したがって、必要に応じて職場の人間関係や業務体制を見直し、メンタルヘルス研修や管理職への教育、ストレスチェックの実施、相談窓口の整備など、組織的な対策を講じることが効果的です。

また、ハラスメントが関係していた場合には、社内のハラスメント防止規程に基づき、加害行為の調査と再発防止措置を講じる必要があります。これらの対応を怠った場合、企業の責任が問われることになります。

労災申請に関する対応

従業員が業務によるストレスを理由に労災申請を希望する場合、企業側はこれに協力する義務はありませんが、協力を拒否することによってかえって不信感を招くケースもあります。事業主による証明欄の記入を依頼された場合は、事実に基づいて冷静かつ中立的に記載する姿勢が望まれます。

また、労災が認定された場合には、治療費や休業補償の支給に伴う実務的な対応(証明書類の提出、産業医との連携など)が求められるため、担当者を中心に社内体制を整えておくことが必要です。

企業側が適切な対応を取らなかった場合、安全配慮義務違反として損害賠償を求められるリスクもあります。裁判例においても、精神疾患の発症と職場の対応不備との関係が問われることは少なくありません。

職場復帰に向けた支援体制の整備

症状が回復に向かった場合、復職支援の体制を整えることが大切です。主治医の復職許可や産業医の意見に基づいて、段階的に勤務を再開できるよう、短時間勤務や業務限定、リモートワークの導入など、柔軟な働き方の調整が必要になる場合があります。

復職直後は、再発防止のためにも本人の状態を定期的に確認し、フォローアップ面談やメンタルヘルス担当者によるサポートを継続することが望まれます。

復職の成否は本人の努力だけではなく、企業側の受け入れ体制と周囲の理解に大きく左右されます。したがって、職場全体の理解促進と支援体制の共有も不可欠です。

適応障害の労災についてよくある質問

最後に、適応障害の労災についてよくある質問とその回答を紹介します。

パワハラやセクハラによる適応障害も労災認定される?

上司や同僚、または顧客などからのパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントが原因で適応障害を発症した場合、その内容が具体的かつ継続的であると認められれば、労災として認定される可能性があります。

例えば、日常的に人格を否定するような暴言を受けていた、性的な言動に長期間悩まされていた、上司からの過剰な叱責や無視、仕事の妨害などが繰り返されていたといった事実が証明できれば、それが「業務による強い心理的負荷」と判断されます。

ただし、労災として認められるためには、そうした行為が単発ではなく、継続性・深刻性があること、またそれによって適応障害が発症したことを、医師の診断書や証拠資料で示す必要があります。

録音やメール、チャット履歴、日記やメモ、同僚の証言などが有力な証拠となるため、被害を受けた際には記録を残しておくことが大切です。

適応障害の労災申請をするデメリットはある?

労災申請そのものに法律上のデメリットはありませんが、実際の職場環境や人間関係によっては、申請後に不安や不都合を感じる場合があります。

例えば、会社が労災申請に否定的な態度をとる場合、職場内での関係性が悪化したり、気まずさを感じたりすることがあります。また、メンタル不調であることが職場に知られることに不安を感じる人も少なくありません。

ただし、労災は労働者の正当な権利です。申請によって不利益を受けたり、不当な扱いを受けたりした場合には、法律により保護されますし、必要であれば弁護士や労働基準監督署に相談することができます。

精神的・経済的な負担が軽減され、治療や生活の安定を図るためにも、労災申請は十分に検討する価値があります。申請に不安がある場合は、信頼できる専門家に相談しながら進めることで、リスクを最小限に抑えることが可能です。

過去に精神疾患の既往歴がある場合も労災申請できる?

過去にうつ病や適応障害、不安障害などの精神疾患を経験したことがある場合でも、労災申請は可能です。重要なのは、「今回の発症や再発が、業務による新たな心理的負荷によって引き起こされたものかどうか」です。

精神疾患は再発しやすいという特徴があるため、過去に治療歴があると「もともとの体質や性格が原因ではないか」と判断される可能性があります。しかし、業務によって明らかに悪化した場合や、業務がなければ発症しなかったと判断される場合も労災の対象となります。

労災認定は、既往歴があるかどうかよりも、「業務と症状の因果関係」が客観的に証明できるかどうかが判断のポイントです。既往歴がある場合は、より一層、医師の診断書や勤務状況を示す資料が重要になります。

適応障害の労災について相談できる窓口はある?

労災申請に関する相談は、労働基準監督署、弁護士、社会保険労務士、労働組合などで受けることができます。厚生労働省の「労災保険相談ダイヤル」なども利用可能です。相談は無料で受けられる場合も多いため、早めに専門機関に問い合わせることが勧められます。

承知しました。それでは、「従業員が適応障害と診断された場合に企業側がとるべき対応」について、労務管理・安全配慮義務の観点から、実務的かつ丁寧に解説いたします。全体のトーンと整合するよう、見出し(h2・h3)を用いて構成いたします。

適応障害の労災認定は証拠の提示がポイント

適応障害は、業務によるストレスが引き金となって発症することがある精神疾患で、証拠があれば労災として認定される可能性があります。ただし、認定には明確な基準があり、業務との因果関係を客観的に証明することが求められます。申請には医師の診断書や勤務状況の記録などが必要であり、企業側の協力や、専門家のサポートも重要です。また、企業としては従業員の心身の健康に十分配慮し、再発防止や職場環境の改善に努めることが求められます。この記事が、労災申請を検討されている方や、職場での適切な対応を考える企業の一助となれば幸いです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事