• 更新日 : 2025年3月5日

失業保険をもらう4つのデメリットを解説|支給額や受給までの期間に注意

失業保険の受給には、メリットだけでなくデメリットも存在します。

ただ「どのようなデメリットがあるのだろう」「受給したら何かに影響が出る?」などと疑問に思う人もいるでしょう。そこで本記事では、失業保険の受給にまつわる4つのデメリットや受給する際の注意点などを中心に解説します。

失業保険とは

失業保険とは、失業者が早く再就職できるように支援するための手当のことです。一定の条件を満たした会社の従業員は、雇用保険に加入し保険料を納めます。納められた保険料によって、失業保険が賄われているというわけです。

手当の額は、年齢・雇用保険の加入期間・退職前の給与などで決まります。また、離職理由も失業保険の重要な項目です。離職理由には自己都合と会社都合の2種類があり、それぞれ以下の理由が分類されます。

  • 自己都合での退職:キャリアアップを目指した離職、病気治療をするための離職、家業を継ぐための離職など
  • 会社都合での退職:倒産、有期雇用者の雇い止め、賃金未払いによる離職、希望退職制度の利用など

離職理由によって手当の額や受給までの期間が変わるため、離職理由は正直に申告しましょう。

なお、失業保険は退職したら自動的にもらえるわけではありません。自らハローワークに行き、失業保険の申請手続きをする必要があります。

参考:ハローワークインターネットサービス – 基本手当について

失業保険を受給できる条件

失業保険を受給するには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

  1. 「失業の状態」であるが、ハローワークにて求職の申し込みを行い転職活動を行っている
  2. 離職日以前の2年間に、被保険者期間が通算で12ヶ月以上ある

失業保険は再就職を支援するための制度であるため、再就職する意思があるか・再就職できる状態にあるかが重要です。出産や育児をする予定の人、病気やケガの治療に専念する人などは、すぐに就職できる状態ではないと判断され、基本的に手当はもらえません。

また、被保険者期間とは雇用保険に加入していた期間を指します。離職日以前2年間で雇用保険に通算12ヶ月加入していれば条件を満たしていることになります。たとえば、短期間で複数の会社に転職した人でも、雇用保険に加入していた期間が合計で1年あれば問題ありません。

参考:ハローワークインターネットサービス – 基本手当について

失業保険をもらう4つのデメリット

失業保険の受給には、主に4つのデメリットがあります。以下より詳しく解説するため、デメリットも考慮して受給するか検討しましょう。

1. 雇用保険の加入期間がリセットされる

一つ目のデメリットは、雇用保険に加入していた期間がリセットされることです。

会社に就職すると雇用保険に加入します。加入期間が「退職日以前2年間で通算12ヶ月以上」あることが失業保険を受給できる条件の一つです。もし失業保険を受給すると、今までの職場で雇用保険に加入していた期間がリセットされます。

よって、再就職後に退職して失業保険を受給したい場合は、再び「雇用保険に加入していた期間が通算12ヶ月以上ある」という状態になる必要があります。失業保険を受給する前の加入期間と合算してもらえるわけではないため注意しましょう。

失業保険を受給した場合、次に手当をもらえるのは早くても1年後です。。短期間で退職すると、手当の受給条件を満たせず生活に困ってしまう可能性があるため、失業保険を受給するなら、1年以上は次の就職先に勤めましょう。

2. 受給できるまでに時間がかかる

二つ目のデメリットは、受給できるまでに時間がかかることです。失業保険は、待期期間や給付制限期間を過ぎてから支給されます。

自己都合で退職した場合は、待期期間の7日と給付制限期間の2ヶ月(3ヶ月)を経てからの支給となります。一方、会社都合で離職した場合は、7日の待期期間のみです。給付制限期間はありません。

会社都合だと手当の受給まであまり時間がかかりませんが、自己都合だと受給できるまでに数ヶ月ほど時間がかかります。失業保険の申請をしたからといって、すぐに手当をもらえるわけではない点に注意しましょう。

特に自己都合で辞職した人は、退職後すぐに失業保険の申し込みをするのがおすすめです。

参考:教えて!?雇用保険受給の基本|厚生労働省

3. 自己都合での退職だと支給される金額が少ない可能性がある

三つ目のデメリットは、自己都合での退職だと支給額が少ない可能性があることです。

自己都合で退職した人は、会社都合で離職した人と比べて給付日数が短い傾向にあります。自己都合だと給付日数は90日~150日、会社都合だと給付日数は90日~330日です。よって、年齢や勤続年数などが同条件でも自己都合で退職した人の方が支給額が少なくなることがあります。

23歳から22年勤めた会社を退職した45歳の人の支給額の上限を比較してみましょう。

45歳で雇用保険の加入期間が20年以上ある人の給付日数は、自己都合だと150日、会社都合だと330日です。

離職理由給付日数支給額
自己都合150日129万5,250円
会社都合330日284万9,550円

上記の場合、年齢や雇用保険の加入期間が同じでも退職理由が異なるだけで、約155万円もの差が生まれます。

自己都合で退職して手当を受給しようと考えている人は、会社都合で辞めたときより支給額が少なくなる可能性があると理解しておいてください。

参考:ハローワークインターネットサービス – 基本手当について

4. 申請手続きのために何度もハローワークへ行く必要がある

4つ目のデメリットは、手続きのために何度もハローワークへ行く必要があることです。原則としてオンラインでは手続きできず、申し込み・説明会・認定のたびにハローワークへ行かなければなりません。

また、失業保険に申し込む際や認定を受ける際は、それぞれ指定の書類を用意し提出しなければなりません。特に認定は、認定を受けるごとに書類を作成し提出する必要があります。

転職活動をしながら、書類を用意したりハローワークへ行ったりするのは、面倒だと感じる人もいるでしょう。ただ、いずれの手順も必須であるため、転職活動の合間を縫って対応してください。

失業保険の申請から受給までの流れ

失業保険を申請してから受給するまでの流れを解説します。

自己都合で会社を退職した場合は2~3ヶ月の給付制限期間を経てからの受給となるため、時間を空けすぎると受給も遅くなります。退職したらすぐに申し込みましょう。

参考:ハローワークインターネットサービス – 雇用保険の具体的な手続き

1. ハローワークにて失業保険に申し込む

住んでいる地域のハローワークへ行き、失業保険に申し込んでください。受給条件を満たしているかが確認され、受給資格が決定されます。

また、申し込み手続きには、以下の書類や通帳などが必要です。

  • 雇用保険被保険者離職票
  • 個人番号が確認できる書類(マイナンバーカードや個人番号が記載された住民票など)
  • 身元確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 縦3.0cm×横2.4cmの写真(マイナンバーカードがあれば省略可能)
  • 本人名義の預金通帳もしくはキャッシュカード

身元確認書類や写真はマイナンバーカードで代用できるため、マイナンバーカードがあると他に用意する物も離職票と預金通帳だけで済みます。

受給資格が決定したのち、求職の申し込みも行います。積極的に就職しようとする意思があることを示すためにも必須の手続きです。

2. 雇用保険受給者初回説明会に参加する

受給資格が決定した際に、雇用保険受給者初回説明会について案内されます。指定された日時の説明会に必ず参加しましょう。

説明会には以下の物を持参してください。

  • 雇用保険受給資格者のしおり
  • 筆記用具
  • マイナンバーカード(申し込み時に写真を省略した場合に必要)

説明会では、雇用保険の受給に関する重要な説明があります。また「雇用保険受給資格者証」や「失業認定申告書」が配布されるため、大切に保管してください。

失業の認定日までに求職活動の実績が必要となりますが、雇用保険の説明会に参加すれば1回分の求職活動として数えられます。

なお、説明会に参加できない場合は、初回の認定日までに自身で求職活動を1回行うこととなります。説明会の日程変更はできないため注意してください。

3. 失業の認定を受ける

住んでいる地域のハローワークにて、指定された日時に失業の認定を受けましょう。認定を受ける前に失業認定申告書に必要事項を記載してください。申告書と併せて雇用保険受給資格者証を認定日に提出します。

また、認定を受けるには、求職活動の実績が必要です。初回の認定日は、1回分の実績があれば問題ありません。ただ、2回目以降の認定は、2回もしくは3回の求職活動の実績が必要となります。

求職活動として認められるのは、主に以下のような行動です。

  • 応募書類を送付する、面接を受ける
  • ハローワークが行う職業相談や職業紹介等を受ける、講習やセミナーを受講する
  • 許可・届出のある民間機関が行う職業相談や職業紹介等を受ける、セミナーを受講する
  • 公的機関が行う職業相談を受ける、講習やセミナーを受講する
  • 再就職に役立つ国家試験や資格試験を受験する

許可・届出のある民間機関とは、厚生労働省に許可された・届出をした職業紹介事業者のことです。許可もしくは届出のある事業者は「人材サービス総合サイト」にて調べられます。

なお、失業の認定は原則として4週間に1回受けてください。失業保険は満額が一気に受給されるわけではなく何回かに分割して受給されるため、認定を受けないと残りの手当がもらえません。認定を受けたときに次回の認定日を案内され、新しい失業認定申告書をもらえます。

4. 失業保険を受給する

認定を受けたら、5営業日以内に手当が振り込まれます。ただ自己都合で退職した人は、2ヶ月もしくは3ヶ月の給付制限期間を過ぎないと、認定を受けても手当はもらえません。

再就職できるまで、あるいは手当の所定給付日数の上限が来るまで、失業の認定と受給を繰り返します。

所定給付日数は、年齢や勤続年数などによって異なります。たとえば、自己都合で退職した人の給付日数は90日~150日です。一方、会社の倒産や結婚など特定の理由で離職した人は、給付日数が90日~330日と定められています。

よって、給付日数が90日の人は、90日分の手当を受給した時点で、再就職できていなくても受給は終了となります。再就職先が決まったら、入社日の前日にハローワークへ行ってください。就職申告をしたり再就職手当の案内をされたりします。

参考:ハローワークインターネットサービス – 基本手当の所定給付日数

失業保険の受給に関する注意点

失業保険の受給に関する注意点を3つ紹介します。ハローワークに申請しに行く前に確認しておきましょう。

失業の認定や失業保険の受給後も転職活動を続ける必要がある

失業の認定を受けたあとや失業保険を受給したあとも、転職活動は続ける必要があります。

失業の認定や手当の受給は1回で終わるわけではありません。認定と受給は複数回繰り返します。途中で転職活動を止めてしまうと再就職の意思があるとみなされず、手当を満額までもらえない可能性もあります。

転職活動として認められる内容や回数も定められているため、転職活動に該当する行動や必要な回数はしっかり確認してください。

また、失業保険を受給している途中で転職先が見つかると、再就職手当をもらえる場合があります。次の就職先を見つけて再就職手当をもらうためにも、転職活動は継続しましょう。

虚偽の申告をすると罰則が科される

失業保険の申請や失業の認定の際に、虚偽の申告をすると罰則が科される恐れがあります。たとえば、再就職しているのに失業中と嘘の申告をした場合、失業保険の全額返還を求められることもあり得ます。

ほかにも、求職活動の実績を偽ったり、役員への就任や自営業の開始を報告しなかったりすることも、不正に該当するため注意してください。

不正受給が判明した場合は、支給停止や全額返還などの処分が下されます。不正受給に当たるのか不安な場合は、すぐにハローワークの職員の方に相談しましょう。

参考:不正受給について(事例等)|大阪労働局

基本的に年金と同時に受給できない

特別支給の老齢厚生年金といった65歳になるまで受給できる年金は、失業保険と同時に受給できません。ハローワークにて求職の申し込みをした時点で、年金の全額が支給停止されます。

具体的に年金が支給停止となるのは、ハローワークで求職の申し込みをした月の翌月から受給期間が満了した月までです。ただ、失業の認定を受けずに手当を受給しなかった月は、年金が支払われます。

実際には失業保険を受給していなくても、求職の申し込みを行った時点で年金の支給停止が決まるため注意しましょう。65歳未満で年金を受給している人は、年金と失業保険のどちらが良いのかよく検討してください。

参考:年金と雇用保険の失業給付との調整|日本年金機構

デメリットや注意点も把握したうえで失業保険の申請を検討しよう

失業保険は再就職を支援するための給付金であるため、再就職の意思表示をする必要があります。転職活動をしながら、ハローワークへ行ったり必要書類を用意したりしなければなりません。

受給すると再就職までの生活費を補填できるのはメリットですが、面接の時間に被るといった支障が出る可能性もあります。

失業保険の受給に伴うデメリットや転職活動への影響なども考慮して、受給の申請をするか検討しましょう。


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