• 更新日 : 2025年2月21日

労働基準法における夜勤の定義は?労働時間の計算方法や注意点を解説

夜勤シフトを導入する企業は、労働基準法に違反しないよう適切な管理をする必要があります。とくに、夜勤時間の定義や計算方法、休憩時間の取り方など、法的な規定を守ることが重要です。誤った夜勤の労働時間で従業員を働かせてしまうと、法律違反につながり、企業に対する罰則や従業員の健康リスクが高まる可能性があります。

本記事では、労働基準法における夜勤の基本的な定義から、労働時間の計算方法、実際に役立つ注意点まで徹底解説します。

労働基準法における夜勤の定義

労働基準法第37条では、原則として「22時〜翌日5時まで」を深夜労働と定めています。ただし、厚生労働大臣が夜勤の必要性を認めた地域や期間においては、例外的に「23時〜翌日6時まで」の時間帯が深夜労働とされる場合があります。

夜勤を採用している業種は、病院や介護施設、工事現場、運輸業、宿泊施設などです。上記のような業種は、24時間体制や長時間の稼働が求められるため、夜勤を取り入れることが一般的です。

従業員に夜勤させる場合、通常賃金に対して少なくとも25%の深夜割増賃金の支払い義務があります。さらに、夜勤の時間帯に残業すると、時間外労働分の割増賃金25%を追加で支払う必要があります。

なお、上記でいう「残業」とは、労働基準法で定められている「1日8時間、週40時間」を超える労働時間です。そのため、従業員に夜勤させる際は時間帯と手当に注意しましょう。

日をまたぐ勤務の勤務日数の計算方法

日をまたぐ勤務の場合、カウント方法は翌日が所定労働日かどうかにより異なります。

翌日が所定労働日の場合、前日に開始した勤務が翌日にまたがっても勤務の終了までは前日勤務扱いです。その後に翌日の始業時間を迎え、新たな勤務が開始される場合は、翌日の勤務としてカウントされます。

一方、翌日が所定労働日でない場合は、前日に開始した勤務が翌日にまたがっても、勤務終了までは1回の勤務と扱われて勤務終了後に新たな勤務は発生しません。

翌日が休日であるため、連続勤務とはならず、あくまで前日の勤務として処理されます。上記のように、日をまたぐ勤務の取り扱いは、翌日が所定労働日かどうかで区別し、適切に管理することが求められます。

休憩時間と休日の設定方法

夜勤の場合、休憩時間の基準は日勤と同様に適用されます。具体的には、労働時間が6時間以内であれば休憩の付与義務はなく、6時間を超え8時間以内の勤務では45分以上、8時間を超える勤務では60分以上の休憩が必要です。

上記の基準を満たしていない場合、労働基準法違反となるため、企業は夜勤における休憩時間を厳格に管理する必要があります。

一方、夜勤明けの休日設定については、とくに注意が必要です。休日は暦日、つまり24時から翌日の24時までの連続した24時間として付与する必要があります。

したがって、夜勤明けの日を休日と設定しても、実際には1日の全体が休みにならず、休日と認められません。

実務上は、夜勤明けの翌日を休日とし、週1回または4週間に4日以上の休暇が確実に付与できるシフトを組むことが重要です。

夜勤と割増賃金の考え方

従業員に夜勤をしてもらう場合、通常の給与に加えて深夜割増賃金の支払いが必要です。時間帯によっては時間外労働の割増賃金も必要となるため、勤怠管理を徹底して正確な給与計算をする必要があります。

以下では、夜勤と割増賃金の考え方について解説します。

夜勤の割増賃金の計算方法

​22​時〜翌日5時までの夜勤には、1時間あたりの基本給に対して25%の割増賃金が発生します。

たとえば、基本時給が1,500円の場合、夜勤の深夜割増賃金は1,500円×0.25=375円となります。

月給制では、1時間あたりの基礎賃金の計算が必要です。算出した基礎金額から25%の割増賃金を基本時給に加算して支給しましょう。​

たとえば、従業員の基本時給が1,500円の場合、5時〜22時までの法定時間外労働に対する賃金は「時給1,500円×1.25以上」となります。22時〜翌日5時の深夜労働は、時間外労働の割増賃金と深夜割増賃金が合算され「1,500円×1.50以上」となります。

なお、法定労働時間を超える労働は別途時間外労働の割増賃金が支払われ、複数の割増率が重なる場合は合算して計算され、従業員の健康や生活への配慮も必要です。

深夜残業の割増賃金

深夜残業では、法定労働時間を超える残業の割増賃金と深夜割増賃金が合算され、通常の賃金の50%以上が割増賃金として必要です。

たとえば、所定労働時間が10時〜18時の8時間勤務をする従業員が、​24​時まで残業した場合、まず18時以降1時間(18時〜19時)は法定内残業として割増賃金は発生しません。

19時〜22時の3時間は、通常の賃金に対して25%増の時間外手当が支給されます。さらに、22時〜24​時の2時間は、時間外労働の割増賃金と深夜割増賃金が適用され、合計50%の割増となります。

そのため、時給が1,500円の場合、22時〜24時までの賃金は2,250円です。

深夜残業の割増賃金について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事をあわせてご覧ください。

深夜残業と割増賃金を解説 – 定義や計算方法

法定休日に夜勤をした場合の割増賃金

法定休日に出勤させた場合、労働基準法に基づき、通常の賃金に対して35%以上の休日割増賃金が支払われます。さらに、同じ休日中であっても、22時以降の勤務が深夜に及ぶ場合は深夜手当25%が加算され、合計60%以上の割増賃金を支払わなければいけません。

たとえば、従業員が9時〜23時まで勤務した場合、9時〜22時までの労働は法定休日勤務として35%の割増が適用されます。22時〜23時の1時間は休日割増賃金と深夜割増賃金が重なるため、60%の割増率での支払いが必要です。

休日出勤した場合の割増賃金については、以下の記事をご覧ください。

休日出勤とは?割増賃金の発生ケースと計算方法を解説!

法律で定められた夜勤の注意点5つ

法律を遵守して従業員に夜勤をしてもらう場合、企業は理解しておくべきポイントが5つあります。トラブルを防ぐためにも、夜勤のルールを理解して導入することが重要です。以下では、各注意点について解説します。

1. 未成年や妊産婦は夜勤にルールがある

労働基準法第61条により、原則として満18歳未満の労働者は深夜労働が禁止されています。なお、交代制で勤務する満16歳以上の男性は例外的に認められるケースがあります。

妊産婦については、本人から深夜労働を望まないと請求があれば、夜勤をさせてはいけないと定められており、厳格に制限されているため注意が必要です。ただし、病院や保健衛生業など、業務の性質上深夜勤務が必要な場合は、理由を事前に周知しておきましょう。

したがって、未成年や妊産婦の夜勤については、法律に基づいた適切な取り扱いを徹底しましょう。

2. 夜勤明けの当日は休日として認められない

休日とは、労働契約において労働義務が一切発生しない日を指し、0時から24時までの暦日単位でなければなりません。

したがって、夜勤明けの場合は注意が必要です。たとえ、勤務終了後に十分な休息時間が確保されていたとしても、夜勤明けの日はすでに労働が行われているため休日とは認められません。

つまり、夜勤明けから次の勤務まで24時間空いていた場合でも、休日とすることは認められません。

3. 夜勤と日勤の連続勤務は違法ではない

夜勤明けの翌日の日勤勤務は、法定休日が週1回または4週に1回付与されていれば違法ではありません。

労働契約上、休日は労働義務が一切ない日と定義され、0時から24時までの24時間であるため夜勤明け当日は休日になりません。そのため、夜勤明け後に日勤や夜勤に就くことも認められています。

ただし、連続勤務による過度な疲労や健康被害のリスクを避けるため、事業者は従業員の健康状態に十分配慮し、適切な休息の確保や労働環境を整えることが重要です。

4. 夜勤をする従業員は年2回の健康診断を受ける必要がある

夜勤をする従業員は、身体への負担軽減と疾病予防のため、年2回の健康診断を受ける義務があります。具体的には、夜勤が週1回以上、または月に4回以上実施される場合や、深夜勤務時間が頻繁に含まれる労働者が対象です。

健康診断を受けることにより、生活習慣病や睡眠障害などの健康リスクを早期に把握し、必要なフォローアップや治療を行えます。結果的に、従業員の健康維持を図ることだけでなく、企業側も従業員の健康状態を把握できます。

5. 残業時間の上限は超えてはいけない

労働基準法第36条により、労使間で「36協定」を締結した場合でも、残業は月45時間、年360時間以内と定められています。ただし、特別な事情がある場合は労使協定で定めることで、月45時間を超える時間外労働が可能です。

月45時間を超える残業にも上限があり、月45時間を超える残業を命じられるのは年6回までとされています。

上限を超えた場合、労働基準監督署から厳重な指導を受け、場合によっては6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。そのため、夜勤においても残業時間が上限を超えないよう、労働時間の管理が重要です。

夜勤シフトの具体例

シフト制にはあらゆる形態があり、業種や職場の運営状況に応じて採用されています。

固定シフト制は、特定の勤務時間帯に固定される勤務形態です。たとえば、夜勤専従の場合、勤務時間を18時〜翌日6時に固定します。

2交代制は、1日を2つの時間帯に分ける方式です。一般的な例として、日勤8時間(例:8時〜16時)と夜勤16時間(例:16時〜翌日8時)とするパターンがあります。

3交代制は、1日を3つに区切る方法です。3交代制の例として、日勤は10時から18時まで、夕勤は18時から翌日2時まで、夜勤は翌日2時から10時までというものが挙げられます。

夜勤シフトは、業種や職場の運営状況に応じたものを採用し、また労働者の健康管理や生活リズムの確保を徹底しましょう。

夜勤シフトを作成する際の3つのポイント

夜勤シフトを作成する際は、従業員の労働時間や体調面を考慮して作成することが重要です。適切なシフト作りは、従業員が働きやすくなるだけでなく、結果的に企業の業務効率アップにもつながります。以下では、夜勤シフトを作成するポイントについて解説します。

1. 日勤と夜勤のバランスを調整する

シフト作成の際は、日勤と夜勤の負担が特定の従業員に偏らないよう、バランスを調節することが重要です。

仮に従業員から夜勤を希望されている場合でも、連続して週4日以上の夜勤や特定の人だけに夜勤が集中するシフトは、体調や生活リズムの乱れを招くため注意が必要です。

使用者は各従業員の健康やプライベートも考慮し、均等にシフトを振り分け、チーム全体の働きやすさやモチベーションの維持につなげる必要があります。バランスのいいシフト調整は、業務の円滑な遂行と従業員の長期的なパフォーマンス向上に直結する重要なポイントです。

2. 適切に従業員を配置する

業務の際に従業員を適切に配置することは、企業の生産性向上と経営の安定に直結します。

従業員が多ければ業務はスムーズに進みますが、人数が多いほど人件費が増大し、逆に人手不足となれば業務が滞るリスクがあります。そこで重要なのが、各従業員のスキルや経験、希望を考慮し、適材適所に配置することです。

たとえば、専門知識や実績が豊富な従業員は主業務をさせ、柔軟な対応力が求められる部署には多様な経験がある従業員を配置すれば、仕事効率の向上と従業員のモチベーションも維持できます。

適切な部署に従業員を配置することは、従業員の成長にもつながり、結果として企業全体の意欲向上にもつながるでしょう。

3. 連続勤務で所定労働時間を超えないようにする

夜勤シフトを組む際は、連続勤務により所定労働時間を超えないように注意が必要です。​連続​勤務が続くと、疲労から集中力の低下などによる予定外の残業が発生しやすく、所定労働時間を超えてしまうリスクがあります。

シフト作成時は始業・終業時刻だけでなく、休憩時間や前後の勤務状況も十分に考慮しなければ、意図せず法定労働時間を超過する可能性があります。

そのため、リアルタイムで従業員の労働時間を正確に把握できるような工夫を施すことが重要です。

夜勤シフト作成の効率化に役立つツール

夜勤シフトを作成する際は、従業員の労働時間を適切に管理・把握するために、勤怠管理ツールやシフト管理アプリを導入することも重要です。以下では、各ツールの特徴について解説します。

勤怠管理ツール

勤怠管理ツールは、従業員の勤務時間を自動で記録・集計するシステムです。夜勤シフト作成の際に勤怠管理ツールを活用することで、従業員の労働時間を適切に管理・把握できます。

たとえば、夜勤勤務時の労働時間を正確に把握し、所定の割増賃金も自動で計算できるため、手作業による計算ミスやヒューマンエラーを防止できます。

さらに、リアルタイムで勤務状況を確認できるため、法定労働時間の遵守や労務管理の効率化につながり、夜勤シフト作成だけでなく企業全体の労働環境の改善にも効果的です。

マネーフォワードクラウドが提供する勤怠管理システムを利用すれば、夜勤シフト作成だけでなく、有休管理と残業時間を自動集計し、​管理も楽に行えます。

1ヶ月無料トライアルで利用できるため、まずは使用感を確かめてみてください。

シフト管理アプリ

シフト管理アプリは、従業員の勤務希望やスキル、過去のシフト実績を基にシフトを自動生成でき、リアルタイムでの共有や変更通知が可能です。

シフト管理アプリを導入することにより、業務効率が向上し、従業員も働きやすい環境が実現されます。また、アプリごとに自動集計機能や割増賃金計算、アラート機能など仕様が異なるため、自社のシフト作成ニーズにあったものを選択することが重要です。

従業員の労働時間を適切に管理して夜勤シフトを組もう

夜勤は、労働基準法第61条により22時から5時の深夜時間に働くことになります。しかし、夜勤にはルールが多く、法律を守って従業員に勤務してもらうためには夜勤に関する注意点を確認し、適切に管理することが重要です。

従業員に夜勤で働いてもらう場合は、労働時間を適切に管理しながら、従業員の健康を管理することでトラブルを未然に防げます。


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