- 更新日 : 2024年2月9日
レディネスとは?意味や種類、メリット、活用するポイントを解説!
レディネス(readiness)とは、学習のために必要な準備を整えることを意味する言葉です。たとえば、前提となる知識や経験、環境を整えることや、学習意欲を高めておくことなどを指します。求められる理由やメリット、活用するポイントをまとめました。また、職業レディネス・テストについても紹介します。
目次
レディネスとは
レディネス(readiness)とは、学習のために必要な準備を指す言葉です。前提となる知識や経験を獲得することや環境を整えること、学習に対する意欲を高めておくことなどは、いずれもレディネスの一種です。
新しい学びにはレディネスが必要
レディネスがない状態では、新しいことを学び、習得するのは困難だといわれています。たとえば読み書きを学ぶ前に、十分にその言語を話せる能力を習得していることが望ましいでしょう。
話すためには単語や文法についての理解が必要なため、音を文字化することを学ぶだけで読み書きができるようになります。つまり、話す能力というレディネスがある人とない人では、読み書きを習得するスピードが大きく変わってくるのです。
高いレベルでの学びを可能にするレディネス
また、レディネスがある人は、学習に対しての興味を持ちやすくなります。新たに学ぶ学問や分野について何の知識や経験もないなら、「知りたい」という意欲が湧きにくく、学習に対して前向きになれません。
意欲のないまま学んでも、習得に時間がかかるだけでなく、より高いレベルを目指して自己研鑽を行うことも少ないと考えられます。効率的かつ高水準の学びを実現するためにも、レディネスは必要な要素といえるでしょう。
レディネスの種類
レディネスには多くの種類があります。ビジネスに関するレディネスとしては、次の種類が挙げられます。
- 就業レディネス
- 職業レディネス
- デジタルレディネス
各レディネスについて見ていきましょう。
就業レディネス
就業レディネスとは、就業に必要な知識や経験、心構えが整った状態のことです。就職活動をする学生には、就業レディネスがあることが求められます。就業レディネスがあれば、就職活動に前向きに取り組めるだけでなく、内定後や就職後も研修や実務に能動的に携わり、早く職場で結果を出せるようになります。
職業レディネス
職業レディネスとは、特定の業務に対して興味と自信を持ち、期待される役割を果たすための準備が整った状態のことです。労働者の興味の対象と職業適性には一定の関連があるとされ、後述する「職業レディネス・テスト」を使って測定することで、自分に合った職業を選びやすくなるとされています。
デジタルレディネス
デジタルレディネスとは、時代の流れやデジタル環境の変化に対応し、デジタル化の準備を整えることです。多くの企業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいますが、デジタルレディネスのある人材が少ないならば速やかにDXは進みません。DX推進のためにも、従業員のデジタルレディネスを高めることが必要です。
レディネスが注目される理由
レディネスは元々学びのための準備を指しますが、ビジネス分野でも次の理由から注目されています。
- 適切な人材を育成できるから
- 早期離職を防止できるから
- 従業員と業務のミスマッチを回避できるから
それぞれの理由について解説します。
適切な人材を育成できるから
業務を遂行するにはその業務についての知識や経験も必要ですが、論理的に考えることやチームとして協力すること、努力を続けることなどの「社会人としての基礎力」が前提となります。前提となる基礎力、つまり業務遂行に必要なレディネスを備えておくことは、人材育成にとって欠かせない要素といえるでしょう。
また、レディネスに注目することで、新しい業務に取り組むときも短時間で必要なスキルを習得し、高いパフォーマンスを発揮できるようになります。現在の業務、そして将来取り組む業務に対応できる人材を育成するためにも、レディネスは必要です。
早期離職を防止できるから
職業レディネスが整わない状態で仕事に取り組むと、仕事に適応できないだけでなく、企業内の変化にも対応できず、早期離職につながることが想定されます。すべての従業員が興味を持って仕事に取り組み、変化に対応するためにも、レディネスを整えることが重要です。
レディネスに注目することで、早期離職を防止でき、結果として従業員が定着しやすい環境を構築できるようになります。従業員が定着すれば、採用活動の時間的・経済的負担を削減でき、より効率的に企業活動を実現できます。
従業員と業務のミスマッチを回避できるから
レディネスに注目することで、従業員の適性を判断し、適性に合った業務に配属できるようになります。従業員と業務にミスマッチが生じると、従業員の企業に対する愛着が低下し、離職率が高まります。また、生産性が低下し、企業の成長も難しくなるでしょう。
従業員からの評価が低い企業は、就職活動者からの評価も低くなる可能性があります。就職を希望する人材が減り、人材確保も難しくなるかもしれません。ミスマッチから始まる悪循環を回避するためにも、レディネスに注目した適性判断・配属は必要といえます。
職業レディネス・テストとは
職業レディネス・テスト(Vocational Readiness Test、VRT)とは、興味や自信を持つ職業分野について分析するきっかけを提供するテストです。アメリカの心理学者ジョン・L・ホランドにより類型化された6つの職業領域と、3つの日常行動特性から、基本的な志向性と自信度を測定します。
職業志向性 | 現実的興味領域(R領域):機械や物体などの具体的かつ実際的な活動 |
---|---|
研究的興味領域(I領域):調査や研究などの探索的な活動 | |
芸術的興味領域(A領域):芸術や音楽、文学などを対象とする活動 | |
社会的興味領域(S領域):人と接する・奉仕するなどの活動 | |
企業的興味領域(E領域):企画立案や組織運営、経営などの活動 | |
慣習的興味領域(C領域):規則や習慣を重視し、それに従う活動 | |
基礎的志向性 | 対情報関係志向(D志向):知識や情報、概念を取り扱う活動の志向性 |
対人関係志向(P志向):直接人と関わる活動に対する志向性 | |
対物関係志向(T志向):機械や装置などの物を取り扱う活動の志向性 |
なお、職業レディネス・テストは中学生や高校生などを対象としたテストです。職業経験を積んでいる人の分析には適さない点に注意しましょう。
レディネスのメリット
従業員のレディネスを高めることには、次のメリットがあります。
- 人材を確保できる
- 生産性を向上できる
- 企業イメージを向上できる
それぞれのメリットについて解説します。
人材を確保できる
研修などの教育活動により従業員のレディネスを高めることで、業務に対して適切に備えた状態に整えられるようになります。能動的に業務に取り組めるようになり、離職防止につながるでしょう。
また、内定者研修や新人研修においても、レディネスに注目することが必要です。業務を行うための心構えや社会人としての基礎力を高める研修に注力すれば、特定の業務だけでなく新しい業務や変化にも対応できる人材へと育成でき、都度人材を確保する必要がなくなります。
生産性を向上できる
社会人としての知識や経験、心構えが整わない状態で業務に取り組むと、常に現状に合わせるだけで手いっぱいとなり、仕事のクオリティや効率にまで意識を配ることができません。
しかし、レディネスに注目し、社会人としての基礎力を高めた状態で業務を開始すれば、意欲的に業務に取り組めるだけでなく、高い生産性を実現できるようになります。企業価値の増大のためにも、従業員を生産性を向上できる人材に育成することが必要です。
企業イメージを向上できる
レディネスに注目して人材育成に取り組むことで、適材適所の配属が可能になります。従業員個々が意欲を持って業務を遂行できるようになり、仕事に対する満足と企業に対する愛着を得やすくなるでしょう。
従業員の企業に対するイメージが良くなれば、「働きたい企業」「育成に注力している企業」のイメージが付き、就職活動者や社会全体の企業イメージも向上します。
レディネスを活用するポイント
新人研修などの教育活動にレディネスを活用するときは、次のポイントに注目しましょう。
- 適切にコミュニケーションを取る
- 効果測定とフィードバックを定期的に実施する
いずれもレディネスによる効果を高めるために必要です。それぞれのポイントを解説します。
適切にコミュニケーションを取る
研修を実施して必要な知識や心構えを説いても、それだけで従業員が業務に対して意欲的に取り組めるようになるわけではありません。適切にコミュニケーションを取り、企業が従業員に求めていることや組織としての目的、達成すべき目標などを明確な言葉で伝えることで、レディネスが業務に適切に活かされるようになります。
効果測定とフィードバックを定期的に実施する
研修の効果を適時測定することも大切です。研修により期待するような効果を得られていない場合は、教育内容や実施方法、研修対象の選定などを変える必要があるでしょう。
また、従業員個々に研修の効果や業務のフィードバックを実施することも大切です。各自が業務の到達度について把握するなら、自分の強みと改善点を正確に理解できるようになり、業務に対してより意欲的に取り組めるようになります。
レディネスに注目して人材育成に取り組もう
レディネスは従業員個々の能力を最大限に引き出すためにも必要な要素です。研修などの教育をとおしてレディネスを高め、従業員が能力を発揮できる状態をつくりましょう。
また、事前に職業レディネス・テストを実施することも必要です。能力のある人材でも、適性のない場所では輝けません。テストをとおして適性や志向を把握し、適材適所に配置するようにしておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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