- 更新日 : 2025年3月26日
扶養手当とは?支給条件や金額、家族手当との違いについて解説
扶養手当とは、企業が福利厚生の一環として、扶養家族のいる従業員に対して支給する手当のことです。本記事では扶養手当の金額の相場や支給条件、家族手当との違いを解説します。また、育休中や離婚したとき、ひとり親への対応についてもお伝えします。近年、支給する企業は減少傾向にあるため、今後の動向が気になる方も参考にしてください。
目次
扶養手当とは
扶養手当とは、企業が家族を扶養している従業員に対して、福利厚生として支給する手当のことです。
扶養とは、自分一人では生活ができない家族や親族に対して、経済的な支援を行うことであり、子どもや配偶者が世帯主の扶養に入るケースが一般的です。
家族手当との違い
扶養手当と家族手当の違いは、「扶養に入れていない家族」がいる従業員を、支給対象に含めるか否かという点にあります。
扶養手当は、配偶者や子どもなどの扶養している家族がいる従業員に支給する手当です。一方で家族手当は、家族がいる従業員であれば、その家族を扶養しているか否かを問わず支給されることがほとんどです。
扶養手当は法的に設定されているルール?
扶養手当は、法的に設定されているルールではありません。あくまでも、企業が独自に設ける福利厚生の制度の1つです。そのため、企業によって支給する金額が異なります。また、企業が、取り巻く環境の変化などに応じて、扶養手当の内容を変化させる裁量がある点は特徴です。
扶養手当が支給される条件
扶養手当は法律で定められたものではなく、企業が福利厚生の一環として支給するものです。そのため、支給条件や金額はそれぞれの企業が独自に決められます。以下は、支給条件の一例です。
- 扶養家族がいること
- 同居している家族がいること
- 扶養している家族の続柄が、配偶者・子ども・親などであること
- 扶養している子どもの年齢が18歳未満である、扶養している親の年齢が60歳以上であるなど
- 配偶者の年収が一定金額以内
- 家族の人数が一定数以内
扶養手当の相場・金額
厚生労働省が公表している「令和2年就労条件総合調査 」によると、扶養手当・家族手当・育児支援手当などの従業員1人あたりの平均支給額は月額1万7,600円でした。
また、従業員数が多い企業ほど支給額が高いことはうかがえます。従業員数の平均人数が1,000人以上の企業の支給額が2万2,000円であるのに対し、30~99人の企業における支給額は1万2,800円と、1万円程度の差がみられました。
扶養手当を導入するメリット
企業が扶養手当を導入するメリットは、主に以下の2点です。
- 従業員満足度の向上
- 介護・子育て支援になる
各メリットを解説します。
従業員満足度の向上
扶養手当の導入によって、扶養家族がいる従業員の経済的な負担が軽減されるため、企業への満足度が高まる効果を見込めます。従業員満足度が向上すれば、離職率の改善も期待できるでしょう。また、福利厚生制度の充実は、採用力の向上にもつながります。
介護・子育てにおける支援になる
介護や子育てにおける支援になることも、企業が扶養手当を導入するメリットです。
扶養手当は通常、扶養する家族がいる従業員に支給される手当です。そのため、介護や子育て中の従業員に支給されることが多いといえます。介護や子育てをしている従業員の毎月の経済的な負担が軽減されれば、間接的に介護や子育てに対する支援になるでしょう。
扶養手当を導入するデメリット
扶養手当を導入すると得られるメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
- 扶養家族のいない従業員にとっては不公平似感じる
- 申告方法によっては不正受給が発生する恐れも
それぞれのデメリットを解説します。
扶養家族のいない従業員にとっては不公平に感じる
扶養手当の導入によって、扶養家族のいない従業員は抱く可能性があるでしょう。扶養する家族がいない従業員や、条件を満たさずに支給の対象から外れてしまった従業員の不満が募りやすい点に注意が必要です。扶養手当を受けられない従業員の、仕事に対するモチベーションの低下を招くリスクもあります。
申告方法によっては不正受給が発生する恐れも
申告方法のルールに抜け漏れがあると、不正受給が発生する恐れがあることも、扶養手当を導入するデメリットです。支給条件にあてはまっているかどうかを細かく審査せずに、従業員からの申告を根拠に支給対象を決めると、不正受給につながる場合があるでしょう。
不正受給が発覚した場合、社内の雰囲気や会社に対する信頼性にも影響を及ぼす可能性があります。
扶養手当は廃止の方向性に向かっている?
2023年5月に東京都産業労働局が開催した「東京くらし方会議(第2回)」の資料によると、扶養手当・家族手当を支給する企業は、減少傾向にあります。2025年に83.1%であった支給率は、2021年には74.1%まで低下しました。
扶養手当の支給率が低下している背景としては、以下のような状況が考えられます。
- 共働き世帯の増加により、扶養対象とならない配偶者が増えた
- 成果主義を重視することにより、属人的な手当をなくそうという風潮
扶養手当を廃止する場合の手続き
扶養手当は企業が独自に設ける法定外福利厚生の1つであるため、廃止するにあたって決められた手続きはありません。しかし、扶養手当の廃止は労働条件の不利益変更に該当するため、原則従業員の同意なしには行えないことに注意が必要です。
突然の廃止は従業員の混乱を招くため、同意を得るうえで十分な説明が必要となるでしょう。また、企業によっては、同意を得たうえで以下のような対応を行う場合があります。
- 子育てや介護に対する手当への振替
- 基本給への一本化
扶養手当の支給において気になるポイント
ここからは、扶養手当の支給において、以下の気になるポイントについて解説します。
- 産休・育休中でも扶養手当はもらえる?
- 離婚・一人親でも扶養手当はもらえる?
それぞれ確認しましょう。
産休・育休中でも扶養手当はもらえる?
扶養手当を支給されている従業員が産休や育休を取得した場合、産休や育休中の扶養手当の取り扱いについても、企業によって判断が異なります。ただし、扶養手当に限らず手当は給与の一部として支払われます。そのため、休業中に無給となる場合は、扶養手当も支給されないことがほとんどです。
離婚・ひとり親でも扶養手当はもらえる?
それまで配偶者を扶養していた従業員が離婚した場合、通常は従業員の元配偶者は扶養手当の対象から外れるでしょう。
離婚をした後も子どもの養育費を支払っている場合に、扶養手当の対象になるかどうかも、企業ごとの判断によって決まります。企業が規定した支給条件で「健康保険または税法上の被扶養者である」とされている場合は、その条件にあてはまらなくなった時点で、扶養手当の対象からは外れることが一般的でしょう。
ひとり親で子どもを扶養している場合は、それ以外のケースと同様に扶養手当の支給対象になります。
扶養手当の動向を把握しよう
扶養手当は、企業が扶養家族のいる従業員に対して、経済的な負担の軽減を目的として支給する手当です。扶養手当は、法的に設定されているルールではなく、あくまでも企業が独自に設ける福利厚生の制度の1つであることを押さえておきましょう。
近年、扶養手当を支給する企業は、減少傾向にあります。背景として、共働き世帯の増加によって扶養される配偶者が減ったこと、成果主義を重視することにより、属人的な手当をなくそうといった風潮などが挙げられます。扶養手当の今後の動向をチェックしていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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