- 更新日 : 2024年9月13日
懲戒免職とは?意味や懲戒解雇との違い、処分の注意点について解説
ニュースやテレビなどで「懲戒免職処分が下された」といった報道を聞いたことがある方も多いかも知れません。懲戒免職は、民間企業でも実施されるのでしょうか。ここでは制度の概要と併せて、処分が下された場合における退職金や年金など、その後の人生への影響を解説します。
目次
懲戒免職とは?
懲戒免職とは、公務員に対して行われる懲罰処分の1つです。公務員の懲戒処分には、処分が重い順から「免職」「停職」「減給」「戒告」の4種類が存在します。したがって、懲戒免職は公務員に対して行われるもっとも重い懲戒処分といえるでしょう。
免職とは強制的な解雇のことです。公文書の改ざんや営利目的での機密漏洩など、重大な違反行為があった場合に行われます。
クビ(解雇)との違い
解雇の種類には、普通解雇と懲戒解雇があります。普通解雇は業績悪化による人員整理などの理由によっても行われるため、懲戒処分として行われるわけではありません。一方、懲戒免職は懲戒処分としてのみ行われるため、両者の目的は異なります。
懲戒解雇との違い
懲戒解雇も懲戒免職も懲戒処分として行われる点では共通しています。また、強制的に所属する企業や団体から解雇される点も同様です。しかし、懲戒解雇は民間企業が行う強制解雇であり、公務員に対して行われる懲戒免職とは区別して使われる単語です。
懲戒免職があるのは公務員だけ?
既に述べた通り、懲戒免職は公務員に対して行われる懲戒処分です。処分も国家公務員法や、地方公務員法を根拠として行われます。そのため、民間企業に勤める労働者に対して行われることはありません。民間企業に勤める労働者に対して、懲戒免職を使っている場合がありますが、誤った表現となります。
懲戒免職以外の懲戒制度
公務員に対して行われる4種類の懲戒処分は、免職を除いて民間企業でも行われる場合があります。また、民間企業では4種類だけでなく、さまざまな懲戒処分の制度を設けている場合もあります。ここでは、どのような懲戒制度があるのかを確認しておきましょう。
戒告・けん責・訓戒
戒告やけん責、訓戒は、いずれも仕事上のミスや違反行為を戒めるために行われます。もっとも軽い処分であり、犯罪となるような重大な違反行為に対して行われることは通常ありません。
減給
減給は、民間企業と公務員の双方で行われる懲戒処分です。処分内容は給与を減額することであり、戒告やけん責よりも重大な違反行為に対して行われます。ただし、公務員と民間企業のいずれであっても無制限の減給は許されず、一定額までに制限されています。
出動停止
出勤停止は民間企業でのみ行われる懲戒処分であり、公務員の場合には停職の表現を使います。出勤停止も停職も基本的な意味は変わらず、一定期間の出勤を禁止する処分です。ただし、民間企業でも1か月以上の出勤禁止を停職とし、1か月未満を出勤停止とするなど、使い分けている場合もあります。
降格
降格とは、役職や職務上の資格を下位に落とす処分を指します。懲戒処分としてのみならず、人事上の必要性から行う場合もあります。しかし、降格は通常給与面で不利になることが多く、懲戒処分として行われることが多いでしょう。
公務員に対しても降給や降任など降格類似の処分が行われることがありますが、その場合には懲戒処分ではなく分限処分となります。分限処分は職務を十分に果たせなくなった場合に行われ、懲戒処分と異なり制裁的な意味を持ちません。
論旨解雇・論旨退職
諭旨解雇や諭旨退職は、それまで勤めていた企業を辞める点では懲戒解雇と異ならない処分です。しかし諭旨(諭す)することで、自発的な退職を決意させるという点で懲戒解雇とは異なります。
一般的には懲戒解雇の場合には退職金なども出ず、その後の再就職も不利となることが多いでしょう。そのため諭旨解雇や諭旨退職は、懲戒解雇を避ける一種の温情措置の側面があります。また、諭旨解雇や諭旨退職を同一の処分としている場合もありますが、通常諭旨解雇の方が重い処分といえるでしょう。
懲戒処分を行う際の7原則
懲戒処分は無制限に許されるものではありません。懲戒処分の際には次の7つの原則を守ることが必要です。
- 罪刑法定主義の原則処分を行うには、予め処分の対象となる行為や処分の種類、処分の内容などを明らかにしておかなければなりません。そのため、処分を行うためには就業規則等に根拠となる規定が必要です。
- 適正手続の原則処分の際には、事実関係の調査と処分される者に対する抗弁権の付与が必要です。不確実な証拠で処分したり、異議を認めず処分したりすることは禁止されます。
- 合理性及び相当性の原則処分は合理的理由に基づいて行われ、処分内容は重すぎるものであってはなりません。
- 平等取扱いの原則以前に同様の行為で処分を行ったのであれば、同様の内容で処分しなければなりません。
- 個人責任の原則個人のミスに対して、部署全体で責任を取らせる連帯責任処分は禁止されます。
- 二重処罰禁止の原則一度処分を行った行為に対して、後日再度処分を行ってはなりません。
- 効力不遡及の原則処分の規定を設けるよりも前になされた行為に対して、処分することは効力を遡及させたものとなります。処分できるのは、処分規定を設けた後の違反行為に限られます。
懲戒免職された場合、退職金はある?
懲戒解雇(免職)された場合には、退職金は支給されるのでしょうか。
民間企業における退職金は、任意の規定となっています。そのため、退職金制度を設けるか否か、支給の基準はどうするかなどは自由に設定可能です。しかし、多くの企業では懲戒解雇の場合における退職金の不支給や減額などの規定を就業規則等に設けており、制限されることが一般的です。公務員も同様で、懲戒免職の場合であれば退職金が不支給となったり、制限されたりします。
懲戒免職された場合、年金はどうなる?
懲戒解雇(免職)された場合であっても、将来支給される年金に影響はありません。懲戒処分によって年金が減額されることはなく、退職するまでに納めていた保険料に基づいた金額が支給されます。ただし、公務員が禁固以上の刑に処せられた場合や、停職処分を受けた場合には、退職共済年金などの一部年金が制限を受ける場合があります。
また、退職後に自営業主やフリーランスになるような場合には、厚生年金に加入しません。そのため、民間企業に再就職した場合より将来の年金額が下がる可能性があります。
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懲戒免職と懲戒解雇はよく似た制度
懲戒免職は、公務員に対してのみ行われる懲戒処分であり、民間企業では懲戒解雇と呼ばれます。ただし、両者とも基本的な性質に違いはなく、処分対象者のその後に悪影響を与えることは同様です。懲戒処分を行う際には、誤った処分で不利益を与えないように、原則をしっかりと守りましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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