• 更新日 : 2025年3月19日

事故欠勤とは?傷病欠勤との違いや給与の扱いも解説

事故欠勤とは、病気やケガなどで欠勤する「傷病欠勤」以外の理由で欠勤することです。

ただ、「どのようなケースが事故欠勤になるの?」「事故欠勤した場合の給与や税金の扱いは?」などと疑問に思っている人もいるでしょう。

そこで本記事では、事故欠勤の概要、給与や各種税金・保険料の扱いなどを解説します。

事故欠勤とは

事故欠勤とは、「傷病欠勤」以外の理由により自己都合で欠勤することを指します。「事故」とありますが、交通事故に遭ったために欠勤する場合は、事故欠勤として扱わないため注意してください。

ただし、交通事故や自然災害などに巻き込まれたが、病気・ケガなどになっていない場合に欠勤する際は事故欠勤に該当します。たとえば、交通事故の加害者として逮捕・勾留された場合です。

ほかにも、親族を介護する場合も事故欠勤に該当します。留学や出向なども傷病以外の理由による欠勤ですが、留学は自己都合休職として、出向は出向休職として扱うのが一般的です。

なお、交通事故が原因での欠勤は、傷病欠勤や労働災害として扱います。私生活で事故に遭って欠勤する際は傷病欠勤、業務中や通勤中に事故に遭って欠勤する際は労働災害となります。

事故欠勤と傷病欠勤の違い

事故欠勤と傷病欠勤の違いを以下の表にまとめました。

事故欠勤傷病欠勤
概要傷病以外の理由で欠勤すること業務外の病気やケガが原因で欠勤すること
該当する
主なケース
  • 逮捕や勾留された場合
  • 親族の介護をする場合
  • 帰省途中の交通事故により骨折した場合
  • 旅行中の事故によりパニック障害を引き起こした場合
給与原則として無給原則として無給
手当受給できる手当なし傷病手当金を受給可能

事故欠勤とは、傷病以外の理由で欠勤すること、傷病欠勤とは業務外の病気・ケガが原因で欠勤することです。交通事故が原因で欠勤する場合は、事故欠勤ではなく傷病欠勤か労働災害として扱います。

事故欠勤の場合も傷病欠勤の場合も、基本的に無給の会社がほとんどです。ただ傷病欠勤に関しては、傷病欠勤中でも有給にすると就業規則で規定している会社もあります。もし、就業規則で有給にすると定めている場合は、傷病欠勤の期間も給与を支給しなければなりません。

また、事故欠勤中に受給できる手当や保険金はありません。一方、傷病欠勤中は傷病手当金を受給できる可能性があります。ただ、給与が支給されない場合、もしくは傷病手当金よりも給与が少ない場合でないと受け取れません。

参考:病気やケガで会社を休んだとき|こんな時に健保|全国健康保険協会

通勤中の事故は労働災害の対象となる場合がある

業務中に病気になったりケガを負ったりした場合は、労働災害として扱います。通勤中に交通事故に遭った場合も労働災害の対象です。

通勤中の事故は、労働災害のうちの「通勤災害」に分類されます。ただし、通勤災害として扱うには「通勤」に関して以下の条件を満たす必要があります。

  • 業務と密接な関係を持って行われた移動である
  • 住居と就業の場所との往復、単身赴任先の住居と帰省先の住居間の移動、就業場所から他の就業場所への移動のいずれかである
  • 合理的な経路および方法で行っている

たとえば、会社から自宅へ直帰している最中に事故に遭った場合は、通勤災害と認定されます。

対して、帰路の途中で映画館に入ったあとに事故に遭った場合は、通勤災害として認定されません。会社帰りに映画館に寄ると、通勤に該当しなくなるためです。

なお、労働災害や通勤災害と認定された場合、労災保険から療養(補償)給付や休業(補償)給付といった保険給付を受給できます。通勤の条件を満たしておらず通勤災害と認定されなければ、受給もできないため注意してください。

参考:通勤災害について|東京労働局業務災害・通勤災害について|青森労働局労災保険給付の概要|厚生労働省

事故欠勤する場合の給与・賞与の扱い

事故欠勤する場合の給与と賞与の扱いについて解説します。

給与は原則として支払われない

事故欠勤した期間の給与は、原則として支払われません。就業していない分の給与は支払う義務がないという「ノーワーク・ノーペイの原則」があるためです。

欠勤のほかに、遅刻・早退や育児休業・介護休業などにもノーワーク・ノーペイの原則が適用されます。対して、有給休暇や会社都合による休業・自宅待機などには、ノーワーク・ノーペイの原則は適用されません。

事故欠勤した場合、欠勤した日数に応じて給与が控除されます。欠勤控除の一般的な計算方法は以下の通りです。

欠勤控除の額 =(月給 ÷ 1ヶ月の所定労働日数)× 欠勤日数

たとえば、月給が25万円で所定労働日数が20日の場合、1日あたりの給与は12,500円です。欠勤日数が7日とすると87,500円が控除されるため、最終的な給与は162,500円となります。

賞与(ボーナス)は減額される可能性がある

賞与(ボーナス)は、減額される可能性があります。

賞与の算定方法は会社の就業規則に規定されており、賞与の支給額から欠勤日数分を差し引くと規定している会社が大半です。つまり、欠勤日数が多いほど、もらえる賞与が少なくなります。

賞与の減給対象や算定方法などは、会社の就業規則によって規定されています。

賞与を支給する場合は就業規則に記載しなければならないと労働基準法の第89条に定められているためです。自社の賞与の規定について気になる人は、就業規則を確認してみましょう。

参考:労働基準法|e-Gov 法令検索

事故欠勤する場合の税金や社会保険料の扱い

事故欠勤する場合の税金や社会保険料の扱いについて解説します。

税金は所得があれば発生する

基本的に所得があれば、欠勤中でも税金は発生します。各種税金について、以下の表にまとめました。

税金発生の有無
所得税欠勤中でも所得があれば発生する
住民税の所得割前年に所得があれば発生する
住民税の均等割基本的に発生する

所得税は、事故欠勤中でも所得があれば課税対象です。もし欠勤中に所得がなかった場合、出勤した分の所得のみ課税対象となります。

住民税は、前年の所得に基づいて算出されます。前年に所得があれば、欠勤中に所得があったかどうかは関係なく課税対象です。欠勤中の所得の有無は、翌年の住民税に影響します。

ただし、住民税の均等割は非課税対象でない限り、所得の額に関わらず課税されます。欠勤によって所得額が通常より少ない場合でも、均等割は一定額が課税されるため注意しましょう。

参考:所得税について教えてください。|財務省個人住民税|暮らしと税金|東京都主税局

社会保険料の一部は所得に関わらず発生する

社会保険料については、一部のみ所得に関わらず発生します。それぞれの社会保険料について、以下の表にまとめました。

社会保険料発生の有無
健康保険料所得に関わらず発生する
厚生年金保険所得に関わらず発生する
介護保険料所得に関わらず発生する
雇用保険所得がない期間は発生しない
労災保険料所得に関わらず発生しない
(会社が全額負担)

健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料の3つは、所得額に関わらず発生します。給与を基に設定される「標準報酬月額」によって算出されるためです。標準報酬月額が変動しない限り、欠勤によって所得が減っても3つの保険料を支払わなければなりません。

雇用保険料は、標準報酬月額ではなく、毎月の賃金総額を基に算出します。よって、欠勤により所得がない期間分は発生しません。

労災保険料は、会社が全額負担しています。よって、従業員は支払う必要がありません。

参考:標準報酬月額・標準賞与額とは?|こんな時に健保|全国健康保険協会労災補償 |厚生労働省

事故欠勤の場合は有給休暇を使うべき?

私用で欠勤する場合や突発的な事故を起こして欠勤する場合は、有給休暇を使った方が良いでしょう。

私用で欠勤する場合は、欠勤する理由や欠勤の見込み期間などを考慮して、有給休暇を消化するか決定するのがおすすめです。たとえば、短期間で済みそうなら有給を消化する、長期間になりそうなら一部の有給を消化し残りは欠勤扱いにする、などの決め方があります。

交通事故を起こした場合は、最長で23日間勾留される可能性があります。ただ、実際には逮捕・勾留されないケースがほとんどです。よって、事故を起こしてしまった日は欠勤扱いしてもらい、後日に手続きで出勤できない日のみ有給を消化すると良いでしょう。

事故欠勤する場合に利用できる2つの制度

事故欠勤する場合は、就業不能保険と休職の2つの制度を利用できます。

1.就業不能保険

就業不能保険とは、病気やケガなどにより長期間就労できなくなった場合に備える保険です。入院期間が長引いたり在宅治療が必要になったりして、長期間にわたって就業できないときに保険金を受け取れます。

ただ、就業不能保険は、病気やケガになった場合でないと保障されません。親族の介護によって会社を欠勤する際に受給できるのは「介護休業給付金」です。

介護休業給付金は、雇用保険に1年以上加入しており対象となる親族の介護を行う予定の人が対象です。また、職場復帰が前提となっているため、介護休業の初日と末日を会社側に伝える必要があります。

自身の状況に応じて、必要な保険金や給付金を受け取りましょう。

2.休職

長期的に欠勤する必要がある場合、休職するのも選択肢の一つです。休職は、病気・事故・留学・資格取得など、私的な理由で長期間の休みが必要と判断された場合に取得できます。

長期間にわたって欠勤しなければならず、有給休暇でも賄えない場合に休職を取得すると良いでしょう。短期間で済みそうな場合は、有給休暇を消化するか欠勤扱いにしてもらうのが望ましいです。

ただ、休職制度を設ける義務は会社にないため、会社によっては休職できない可能性があります。休職制度を利用できるかどうかは、就業規則を確認してみてください。もし、休職に関する事項が記載されていないときは、人事部や管理部の担当者に相談してみましょう。

事故欠勤が続くと解雇される?

事故欠勤が続いたことにより解雇されるかどうかは、会社の方針や欠勤理由によって変わってきます。

私用での欠勤が多いことを良く思わない会社であれば、解雇とはいかないまでも何らかの処分が下される可能性があります。反対に、プライベートに干渉しないという方針の会社であれば、人事評価に大きく影響することはないでしょう。

また、私用での欠勤でも介護や留学といった理由なら、やむを得ない事情である・会社にもメリットがあるなどと判断されることも考えられます。

欠勤理由がどのように受け取られるかは会社によって異なるため、人事面談で相談したり周囲に聞いてみたりするのがおすすめです。

ただ、違法行為をして逮捕・勾留された場合は、解雇となる可能性があります。大きな交通事故を起こしてしまって解雇予告をされたり、退職を促されたりすることもあり得るでしょう。

就業規則に規定がないと解雇できない

事故欠勤を理由に何らかの懲戒処分を下したり懲戒解雇したりする場合は、就業規則に規定がないと実行できません。懲戒処分の種類と懲戒事由について就業規則に定める必要があると、労働基準法の第89条で義務付けられているためです。

仮に就業規則に規定がない状態で処分を下しても、処分は無効となる可能性が高いと考えられます。また、就業規則を従業員に周知していない状態でも、同様に無効です。

厚生労働省が交付しているモデル就業規則に、懲戒処分についての規定があるため参考にしてください。懲戒処分の種類・懲戒事由だけでなく、解雇についての規定も記載されています。

参考:労働基準法|e-Gov 法令検索モデル就業規則|厚生労働省

事故欠勤する場合に利用できる手当や制度を確認しましょう

事故欠勤すると、給与や賞与だけでなく税金や社会保険料にも影響が出ます。

事故欠勤をした場合の給与や賞与について正しく理解することで、実際に事故欠勤した従業員が出たときでもスムーズに処理できます。また、税金や社会保険料に関しても適切に処理できるでしょう。

もし、従業員に給与の減額や税金の徴収について質問された場合も、本記事を参考に丁寧に説明してください。分かりやすい説明によって、トラブルを未然に防げる可能性があります。


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