- 更新日 : 2025年3月19日
残業削減に失敗するたった3つの理由とは?残業削減に導く4つの方法
残業削減が推進されるなか、人材不足のため一部の従業員へ業務が集中したり、定時退社しにくい環境であったりするために、残業削減がうまくいかない企業も多いでしょう。
とはいえ、残業削減のために業務量を減らせば売り上げが下がるため、さらに売り上げ目標を伸ばそうとすれば従業員の負担が増え、悪循環に陥ります。
残業削減が成功しない理由と、業務量や売り上げを下げずに残業を減らす方法について解説します。
残業が減らない3つの理由
残業が減らない理由は大きく分けて2つあり、帰りにくいといった心理的理由と、業務量が多すぎて帰りたくても帰れないといった、物理的な理由です。残業削減につながる方法を模索する前に、残業削減が成功しない理由について把握しておきましょう。
理由1.適切な勤務管理ができていないため
残業削減が成功しない理由のひとつに、適切な勤怠管理が行われていないことが挙げられます。
勤怠管理が不十分だと、従業員の実働時間や残業時間を正確に把握できず、一部の従業員に業務が集中していることに気づかず対策が取れません。
さらに業務量が個人の能力や仕事内容に見合っていない場合、過剰な残業が発生するリスクがあります。また、コミュニケーション不足が原因で業務が属人化し、特定の従業員に過度の負担がかかり、残業が増えることもあります。適切な勤怠管理がなければ、残業の実態を把握し、効果的な対策が講じられないでしょう。
理由2.業務の自動化を進めていないため
定型化した業務の自動化を進めていないことも、理由のひとつとして挙げられます。
従業員ひとりが対応できる業務量には限界があります。そのため残業を削減しようとすると、業務量を減らす必要があり、企業としての売り上げが下がるでしょう。売り上げを上げるために業務量を増やすことで、従業員に長時間の残業がともなうといった悪循環がうまれているのです。
残業時間の規制や削減がさけばれるなか、多くの企業ではどのような取り組みや対策を実施しているのか、以下の記事で解説していますので、あわせてお読みください。
理由3.定時退社が当たり前な職場環境を構築していないため
定時退社が当たり前であり、残業しにくい環境こそが、生産性が高く理想的な職場であるといえるでしょう。定時退社が当たり前にならない原因は、以下の2つが考えられます。
- 残業をせず定時で帰宅する従業員はやる気がないといった価値観にとらわれている
- 残業代を稼ぐために、帰宅できるにもかかわらずわざと残業をしている従業員がいる
企業が暗黙の了解で「残業は美徳」といった考え方をしている場合、従業員は定時に退社することへ抵抗感を抱きます。さらに残業が常態化すると、従業員が自発的に残業を選択せざるを得ない状況がうまれるのです。
帰りたくても周囲の雰囲気から帰宅できない従業員がいる一方で、帰宅できるにもかかわらず、給料が減るからと、わざと残業をして無駄なコストを出している従業員がいる可能性もあります。残業代を稼ぐために、業務効率や進捗度をわざと下げ、遅くまで残っている従業員もいるのです。
残業削減を推進すべき6つの理由
残業および長時間労働は、従業員の健康を損なうだけでなく、企業で発生するコストが増えるうえ生産性が落ちます。メリットがないため、早急に残業削減を進めるべきです。効果的な残業削減を実施すべき6つの理由について解説します。
理由1.人件費が大幅に削減できるため
残業削減は、人件費の大幅な削減につながります。
企業にとって、人件費はコストのなかでも大きな割合を占めることが多く、とくに残業代は、企業の利益に直接影響を与える場合もあります。日本では残業に対して割増賃金が支払われるため、残業が多いほど人件費が膨らむのです。
また従業員の過労による病気や離職が増えることで、採用や教育にかかるコストが増加し、長期的な人材育成の観点からもマイナスに働きます。
実際に、残業が年間を通して多い企業では、月あたりの残業代が数百万から数千万に達することもあるのです。
残業過多による従業員の健康について、残業時間を設ける際の注意点や、残業代の計算方法などを以下の記事で詳しく解説しています。通常どれだけの残業代が発生しているか知りたい方は、あわせてお読みください。
理由2.従業員のモチベーション向上につながるため
残業が常態化している職場では、従業員のモチベーションが低下する傾向にあります。長時間労働は、仕事の効率を低下させるだけでなく、仕事に対する満足度も大幅に減少させます。
定時での退社を促進することで、従業員はプライベートの時間を確保でき、生活の質が向上することにより職場への忠誠心ややる気が向上するでしょう。また、残業削減を企業が積極的に推進する姿勢は、従業員に「大切にされている」と感じさせることにつながり、チームの結束力の強化にもつながります。
理由3.従業員の健康維持につながるため
残業削減は、従業員の健康維持につながります。
長時間にわたる過度な残業は心身に疲労を蓄積させ、ストレスや不安を引き起こします。疲労を蓄積させると、業務や大切な決断時にミスを多発したり業務スピードが低下したりなどの問題が発生するでしょう。
仕事と私生活のバランスを保つことで、従業員は心身ともにリフレッシュ時間が確保でき、精神的な健康を維持できます。結果、過労死やうつ病といった健康問題のリスクの低下につながるでしょう。
さらに残業の削減により、従業員が休息や趣味に時間を充てられるようになり、生活の質が向上します。生活の質の向上は仕事に対するモチベーションや満足度にも好影響を与え、結果的に職場の生産性向上にもつながるでしょう。
理由4.業務効率が向上するため
残業を削減することで、限られた時間内で成果を出す意識が芽生えるため、業務効率の向上につながります。
長時間働くことが常態化すると、社員はダラダラと仕事を続ける傾向が強くなり、やるべきことを後回しにしがちです。
しかし、残業を厳しく制限すれば社員は優先順位を見直し、有効な時間管理スキルを発揮しやすくなります。また集中して業務に取り組むことで、より質の高い成果を出してくれるでしょう。業務フローやプロセスの見直しを通じて、さらなる業務改善にもつながります。
理由5.企業イメージが向上するため
残業削減の取り組みは、企業のイメージ向上に役立ちます。
日本では「長時間労働=ブラック企業」というイメージが強く、残業が多い企業は社会的な評価が下がる傾向にあります。反対に、残業を合理的に削減して従業員のワークライフバランスを重視する企業は、「ホワイト企業」としての評価を得やすいでしょう。
ホワイト企業のイメージが維持できれば、採用活動において有利な場合が多く、優秀な人材を確保しやすくなります。
また従業員の健康を重視する企業の姿勢は、顧客からの信頼にもつながり、ブランドイメージの向上にも役立ちます。
理由6.人材の定着化につながるため
残業削減は、人材の定着化につながります。
長時間労働は、従業員の疲労やストレスの原因となり、高い離職率を招くでしょう。反対に残業時間が減少すれば、社員はプライベートな時間を確保しやすくなり、仕事と生活のバランスが整います。そのため従業員の生活満足度や幸福度が向上し、働きやすい環境が構築されるのです。
また従業員が自分の生活や時間を大切にできる状態にある場合、仕事へのモチベーションや定職への忠誠心も高まりやすいとされています。結果、優秀な人材がほかの企業に流出することが減り、企業にとっては安定した人材基盤が築けるでしょう。
残業削減の取り組みに成功した4つの事例
企業として残業削減に取り組んだ結果、効果が出たうえ業績が大幅にアップした事例を4つ紹介します。なかには、残業するための事前申告制を導入した企業もあります。自社でも同様に実践できる取り組みがないか、ぜひ参考にしてください。
事例1.残業の事前申告制を導入
とある企業では、年間を通して閑散期と繁忙期があり、繁忙期には人員が不足するため、一部の社員に業務が集中して残業過多な状況に陥っていました。
そこで従業員は、残業を希望する場合、事前に上司に申請を行う事前申告制度を設けました。残業を事前に申告するには、従業員が自身の業務進捗を適切に評価し、必要な残業時間を見積もる必要があります。
具体的には始業前と就業前のミーティングにて、残業が発生する場合は上司の承認をもらったうえで、以下について全体に報告してから残業する体制にシフトしました。
- 退社予定時刻
- 残業時に実施する業務内容
申告を受けた上司は、報告内容で翌日に回せる業務があれば、残業せず翌日に回すよう指導してから帰宅させます。
取り組みを継続した結果、従業員は自身の業務に集中するようになり、無駄な残業時間が抑制され、時間外労働の大幅削減につながったのです。
事例2.ノー残業デーを従業員自ら決めさせて徹底
数十人が同じオフィスで働く企業で「みんながいると帰りにくい」といった雰囲気がまん延しており、従業員の残業が多く気軽に帰宅できない環境にありました。
そこで従業員自らノー残業デーを決めてもらい、決めた日は必ず定時退社するよう個人で目標決めをするルールを設けました。ノー残業デーが重複することで業務に支障が出ないよう、直属の上司が指導します。
結果、ノー残業デーを理由に気兼ねなく定時退社できる職場環境ができました。さらに、定時退社が当たり前になる環境が整った結果、ノー残業デー以外でも定時退社する従業員が増えたのです。
事例3.人事評価制度に時間外労働時間の項目を追加
季節ごとに業務内容や製造品が異なり、時期により業務量の増減が激しい環境にある企業のケースです。職場が、従業員の業務時間を適切に把握していないため、業務量に見合った残業時間が設けられていないといった問題がありました。
そこで、人事評価制度に残業時間と実績の項目を設け、残業が発生した理由や残業に見合う効果が出たのかを確認する仕組みを導入します。結果、残業代を稼ぐために残業を行っていた社員や、能力不足から不適切な配置に就いていた社員などが把握できるようになりました。
さらに、従業員に残業時間が多いほど人事評価が低くなる意識が構築され、定時退社するために必要な時間配分や効率のよい働き方の模索を自ら行うようになったのです。
事例4.全従業員に教育を徹底し業務をローテーション化
とある企業で、多くの業務で属人化が起こり、一部の従業員に業務が集中して残業過多になっていました。
そこで全従業員がほとんどの業務がこなせるよう、社内教育を徹底しました。全従業員が多くの業務をこなせるようになれば、業務ローテーションが可能になるため属人化が防げます。
結果、業務ローテーションにより属人化が解消され、ほとんどの従業員が定時退社できるようになりました。
これまで残業時間や残業代の削減につなげるための取り組みについて紹介しました。残業問題の解決策については、以下の記事でも解説しています。残業問題の対策についてほかにも知りたい方は、あわせてお読みください。
残業削減を進めるなら業務の自動化が効果的
残業削減を進めず放置することで、従業員の健康に悪影響を与え、業務効率が大幅に低下し大きなコストが発生します。
しかし残業削減を進めるあまり、業務量を減らしたり事業を縮小したりする方法では本末転倒です。たとえば、業務の自動化ツールを導入することで、業務量を減らさず従業員の負担を大幅に減らせます。
残業削減を進めるほど売り上げが上がる仕組みを構築しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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