- 更新日 : 2025年3月5日
タイムカードに時間ぴったりの打刻は遅刻扱い?ルールを定める重要性を徹底解説
タイムカードの打刻は、原則、時間ぴったりでも問題ありません。しかし、会社のルールにより異なる場合があります。タイムカードによる打刻ルールが明確でないと、従業員との間でトラブルの原因となる可能性があるため注意が必要です。
本記事では、タイムカードのルールを明確に定める重要性やトラブルへの対処法について解説します。
目次
時間ぴったりの打刻時間でもすぐ業務開始できれば遅刻ではない
定時ちょうどで打刻しても、すぐに業務を開始できる状態なら遅刻になりません。ただし、業務内容や職場環境、就業規則によっては遅刻とみなされる場合があるため、注意が必要です。
たとえば、タイムカードの打刻機が職場の入り口にある場合と、労働場所から離れている場合では状況が異なります。打刻後に着替えや移動が必要な職場では、すぐに業務を開始できる状況とはいえず、遅刻扱いになる可能性があります。
また、業務開始の基準は仕事によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。オフィス業務ではパソコンを立ち上げた時点、接客業ではすぐに対応できる状態を求められることもあるため、職場のルールを理解しておきましょう。
法的な労働時間の定義とは
法的な労働時間は、厚生労働省のガイドラインで「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されています。つまり、会社から働くように命じられている時間はすべて労働時間です。
具体的には、明確な指示を受けた業務だけでなく、指示はなくても仕事をしなければいけない雰囲気のある時間も含まれます。たとえば、始業前の準備作業や終業後に自主的に残って行う業務などです。
また、労働時間を適切に管理するためには、開始時刻と終了時刻の正確な記録が重要です。タイムカードや勤怠管理システムを活用し、適切に労働時間を把握する必要があります。
タイムカードで勤怠管理する意味
タイムカードは、従業員の出退勤の時間を管理するツールです。タイムカードを使用した勤怠管理は、労働時間の記録を明確にし、給与計算の正確性を高めるだけでなく法的リスクの防止にも役立ちます。以下では、タイムカードで勤怠管理する具体的な理由を解説します。
タイムカードの仕組みや利用タイミングについては、下記記事で詳しく紹介しているため、ぜひご覧ください。
関連記事:タイムカードとは?仕組みや押すタイミング、注意点を解説
正しい労働時間を把握するため
労働基準法では、使用者が労働時間を適正に把握する責務が定められています。厚生労働省のガイドラインでも、始業・終業時刻の記録方法として、タイムカードやICカードなどの客観的記録が推奨されています。
タイムカードは、出退勤時間を正確に記録できるため、労働時間の正確な把握に役立つ重要なツールです。
また、労働基準法第109条により、タイムカードを含む労働関係の重要な書類は5年間保存することが義務付けられています。タイムカードで従業員の労働時間を把握することで、労働時間が守られているか確認できるため、働きやすい労働環境の維持にもつながります。
正しく給与計算するため
タイムカードは、従業員の労働時間を正確に記録し、適切な給与計算を行うために重要なツールです。タイムカードに記録された出退勤時刻は、通常の労働時間や休憩時間、残業時間、遅刻・早退の有無などを確認する根拠となります。
もし労働管理の管理が適切に行われていなければ、実際の勤務状況と給与にズレが生じ、誤った支給額となる可能性があります。
また、打刻ミスや押し間違いは勤務時間の計算に影響を与え、従業員の不利益につながることもあるため、早期に修正することが重要です。
社内でタイムカードの打刻ルールを定める重要性
タイムカードは、従業員の労働時間を正確に記録し、勤務状況を把握するために重要な書類です。しかし、明確な打刻ルールがないと、労働時間を客観的に管理できず、不正打刻や記録ミスを見逃す可能性があります。
たとえば、ある従業員が出勤後すぐに打刻せず業務を開始してから打刻する一方で、別の従業員は会社に到着した直後に打刻する場合、記録上の労働時間に差が生じてしまいます。
上記のようなズレを防ぐためには、「会社に到着したらすぐに打刻する」などのルールを設けることが重要です。統一したルールを定めることで、従業員間で生まれる労働時間の差をなくし、より正確な労働時間の管理が可能です。
定めておくべきタイムカードの打刻ルール4選
タイムカードに関するルールは、正確な労働時間の管理に欠かせません。タイムカードで打刻する場合は、具体的に4つのルールを定めておくと、労使間でのトラブルを防げます。以下では、定めておくべき打刻ルールを紹介します。
1. 打刻のタイミング
タイムカードで出退勤時間を記録する場合、打刻のタイミングを定める必要があります。
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下にある時間です。出勤後すぐに業務に関する活動を始める場合、労働時間に含まれます。たとえば、ラジオ体操や制服への着替え、業務開始前の清掃などです。一方、始業時刻に余裕を持って職場に到着した後、休息をとってから着替えなどを行う場合、休息を取っている時間は労働時間ではありません。
このように、労働時間を正しく把握するためには、企業側が明確にルールを定めることが重要です。そのため、「出社後すぐに打刻する」「着替える前に打刻する」「ラジオ体操の準備ができた時点で打刻する」などのルールを設定するようにしましょう。
以下では、さらに出勤時・休憩時・退勤時に分けたルールについて解説します。
出勤時
出勤時のタイムカードの打刻は、労働時間の正確な管理に欠かせません。
原則として、出勤時は使用者の指揮下に置かれるため、すぐに打刻しなければいけません。とくに、制服の着用を義務付けられている場合、更衣や作業場への移動も労働時間に含まれる可能性があるため、明確なルールを定めることが重要です。
また、打刻後はすぐに業務を開始しなければいけないため、喫煙やコーヒーの購入などの個人的な行動は事前に済ませておくべきです。さらに、タイムカードの打刻場所が職場から離れている場合、出勤時間ちょうどに打刻すると職場到着が遅れ、遅刻とみなされる可能性があります。
上記のようなトラブルを防ぐためにも、企業側は打刻ルールを明確にしておきましょう。
休憩時
休憩時間の打刻は法律で義務付けられていませんが、適切に労働時間を管理するためにはルールを定めることが重要です。労働基準法第34条では、6時間を超え8時間以下の労働には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を与えることが定められています。
従業員が適切に休憩を取れていない場合は、法律違反となる可能性があります。実際に休憩をとっているかの確認として、タイムカードの打刻ルールは事前に定めておくことがおすすめです。
たとえば、「休憩開始時と終了時に打刻する」ルールを導入すると、休憩時間をより正確に管理できます。
退勤時
業務終了と同時に打刻を徹底することで、打刻忘れや不正打刻を防止できます。退勤時は、業務に関する片付けや掃除、制服の着替えなどを終えた後に打刻することが原則です。
上記の作業は労働時間に含まれるため、先に打刻すると実際の労働時間と記録にズレが生じる可能性があります。また、退勤後に急な残業が発生した場合、企業のルールに従って再度打刻するか、適切に残業申請する必要があります。
退勤時のルールも事前に定め、従業員に周知しておくことが重要です。
2. 直行直帰・在宅勤務の打刻ルール
直行直帰や在宅勤務では、オフィスでの打刻ができないため、業務開始・終了時間のルールを明確にすることが重要です。たとえば、直行直帰の場合、現場に到着・現場から退出した時点でオンラインで打刻する、もしくは仕事用パソコンのログイン・ログアウト時間を打刻とみなすことが想定されます。
また、オンラインで打刻するシステムを採用していない場合、メールやチャットで業務開始・終了を報告することで打刻とするケースもあります。在宅勤務の場合も、社内システムへのログイン・ログアウト時間を打刻とするか、業務報告をもって打刻とするか、企業ごとにルールを定めましょう。
とくに、在宅勤務では、労働状況の監視が難しいため、不正や労働時間のルール違反を防ぐために追加ルールが求められることもあります。
3. タイムカードの打刻修正のルール
タイムカードの打刻ミスや漏れが発生した際の修正方法を明確に定めることは、正確な退勤管理のために重要です。修正が必要な場合、上司や管理者の確認を経て修正し、従業員本人のみの修正を認めないルールを設けることで、不正や誤りを防げます。
また、修正内容が労働時間に大きく影響する場合は、申告内容を証明できる書類や記録(メールや業務システムのログ)を提出するルールを設けると、不正防止につながります。
4. ミスや不正に対するペナルティ
タイムカードは手動で打刻するため、ミスや不正が発生しやすい傾向にあります。とくに、意図的な打刻の改ざんや勤務時間の虚偽申告は、正確な勤怠管理を妨げる重大な問題です。ミスや不正を防ぐためには、ペナルティを設けることも重要となります。
たとえば、打刻ミスが数回程度の場合は戒告(口頭・書面での注意)とし、常習化した場合は減給処分(就業規則に基づいた)を検討することが有効です。
明確なルールを定めることで、勤怠管理だけでなく不正防止にも役立ちます。
出勤簿のテンプレート(無料)
出勤簿は、従業員の出勤日や出退勤時間、勤務時間などを正確に記録するための重要な書類です。出勤簿の活用は労働時間の管理や給与計算、労務トラブルの防止に役立ちます。
効率的に出勤簿を作成したい場合は、出勤簿テンプレートの活用がおすすめです。以下のURLからExcelですぐに使えるテンプレートを無料でダウンロードできるため、ぜひご活用ください。
タイムカードによる勤怠管理の問題点
タイムカードによる勤怠管理は、多くの企業で広く導入されていますが、問題点もあります。問題点を理解せずに導入すると、トラブルが発生し、給与計算や労働管理に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。以下では、タイムカードによる勤怠管理の具体的な問題点を紹介します。
集計と計算に時間がかかる
タイムカードによる勤怠管理では、集計と計算に膨大な時間がかかることが問題です。とくに従業員数が多い場合、全員分のタイムカードを回収するだけでも手間がかかります。
さらに、集計や計算を手作業で行うと、ミスが発生しやすくなります。計算ミスや転記ミスは、給与の未払いや過払いなどの重大な問題につながるため、注意が必要です。
そのため、正確さを確保するためにもダブルチェックは欠かせず、作業時間や負担が増加する恐れがあります。
ヒューマンエラーの可能性がある
タイムカードによる勤怠管理は、手作業での集計によりヒューマンエラーが発生しやすいため、注意が必要です。とくに繁忙期には、従業員が忙しさのあまり打刻ミスや打刻忘れを起こすことがあり、残業時間を含む労働時間の正確な把握が難しくなります。
また、本人以外が打刻する「代理打刻」が発生する可能性があり、実際の勤務実態と記録が食い違うリスクが生じます。タイムカードによる打刻では、エラーや不正を完全に排除することは難しいため、給与計算や労務管理に悪影響を及ぼす可能性を常に念頭に置いて、打刻ルールの徹底など適切な運用に務めましょう。
リアルタイムでの勤怠状況の把握が難しい
タイムカードは出退勤時間を記録するものであり、タイムカードだけでは遅刻や早退の有無、正確な残業時間を即座に判断することはできません。
とくにリアルタイムでの勤怠状況の把握が難しく、管理者が従業員の労働時間を正確に把握できず、過剰な残業が発生するリスクがあります。
残業時間には法律で上限が定められており、超過すると企業は法律違反に問われる可能性があるため、正確な勤怠管理の徹底が重要です。
タイムカードが破損・紛失する可能性がある
タイムカードによる勤怠管理では、カードの紛失や破損が起こりやすいことが問題点です。とくに、紙ベースのタイムカードは破れたり濡れたりすると記録が読めなくなり、勤怠情報が失われる可能性があります。
紛失や破損が発生すると、従業員の勤務時間を証明できなくなり、正しい給与計算が困難になります。給与計算に影響がある場合、従業員とのトラブルや労務管理条の問題を起こす可能性があるため、勤怠記録の安全な管理が重要です。
タイムカードによるトラブルの対処法
タイムカードによる勤怠管理は手軽な一方、打刻ミスや打刻漏れ、不正打刻などのトラブルが発生する可能性があります。トラブルを放置すると、給与計算の誤りや労務トラブルにつながりかねません。以下では、タイムカードによるトラブルの対処法を紹介します。
誤打刻や打刻漏れが発覚した場合
誤打刻や打刻漏れは、入力ミスや打刻忘れが主な原因です。打刻に関するトラブルを防ぐためには、従業員に打刻ルールをしっかり周知し、正しい操作方法を徹底することが重要です。
それでも誤打刻や打刻漏れが発生する場合は、口頭での注意やペナルティを設けるなどして常習化を防止しましょう。
ただし、まれに打刻記録の欠落や打刻機の故障、誤作動が原因となることもあります。正しく打刻できていない場合は、機器の点検や修理を依頼し、誤作動の場合は設定や接続状況を見直しましょう。
タイムカードの押し忘れや打刻忘れを防ぐための方法については、下記記事をあわせてご覧ください。
関連記事:タイムカードの押し忘れ・打刻忘れを防ぐには?NG対応と防止策を解説
打刻ミスをした場合
打刻ミスが発覚した場合、まずミスの内容を正確に把握し、本人から状況を聞き取ることが重要です。状況を把握したうえで実際の勤務時間を調べ、従業員に修正申請書を提出してもらいます。
修正申請書に記載された申請内容を上司や人事担当者が確認し、正しい勤怠記録に修正します。故意や度重なる打刻ミスがある場合は、始末署や反省文の提出を求めることも有効です。
打刻ミスに対する対処法を考えることで従業員の意識向上につながり、再発防止につながります。
不正打刻が発覚した場合
不正打刻が発覚した場合は、原因を突き止め、該当する従業員にヒアリングを行うことが重要です。不正が故意か過失かにより対処法は異なるため、慎重な調査が必要です。調査が不十分なまま従業員を処分すると、さらなるトラブルに発展する恐れがあるため注意しましょう。
調査の結果、過払いが発生している場合は、従業員に対して給与の返還を求めることが適切です。とくに悪質なケースでは、懲戒解雇に該当する場合もあることを従業員に周知しておきましょう。
時間ぴったりでタイムカードの打刻をする際はルールを明確にしよう
タイムカードの打刻ルールが曖昧だと、労使間で誤解やトラブルが生じる可能性があります。始業時間ぴったりの打刻を遅刻とみなすかどうかは、企業の方針により異なります。そのため、事前に明確なルールを定め、従業員に周知することが重要です。
ルールを統一することで、従業員とのトラブルを防ぎ、円滑な職場環境を築けます。企業と従業員の双方が納得できる打刻ルールを定め、働きやすい職場環境を作ることが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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