• 更新日 : 2025年3月6日

【2025年-28年】雇用保険法改正まとめ!図解資料も用意!

本記事では、2025年から2028年にかけて段階的に施行される雇用保険法の改正ポイントを、企業の人事労務担当者向けに解説します。

雇用保険の制度概要から始め、高年齢者雇用継続給付の支給率見直し、自己都合退職者に対する失業給付制限期間の短縮、育児休業給付の実質的な給付率引き上げ、新設される育児時短就業給付金や教育訓練休暇給付金、そして適用対象拡大によるパートタイム労働者の雇用保険加入範囲拡大まで、改正内容を網羅。

各改正の概要と企業が取るべき対応策を整理し、公式情報源に基づいて丁寧に説明します。

【要点】雇用保険法の改正ポイント

2025年4月1日施行

  • 高年齢雇用継続給付の見直し
    • 高年齢雇用継続給付金は、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者を対象とした給付金です。2025年4月1日以降、賃金の最大15%であった給付率が最大10%に縮小されます。企業は、高年齢労働者が給付金に頼らず働ける賃金制度を整備する必要があります。
  • 自己都合離職者の給付制限の見直し
    • 自己都合で離職した場合の給付制限期間が短縮されます。原則として、給付制限期間が2ヶ月から1ヶ月へ短縮されます(5年以内に3回以上となる場合は3ヶ月)。
  • 育児休業給付の給付率引上げ
    • 育児休業給付の給付率が引き上げられ、育児休業給付金と合わせて給付率が80%となります。手取りで10割相当の収入が確保されることになります。
  • 育児時時短就業給付の創設
    • 2歳未満の子を養育するために、時短勤務をしている人に給付金が支給されます。時短勤務中に支払われた賃金全額の10%が支給されます。
  • 教育訓練中の生活を支えるための給付の創設
    • 2025年10月1日から、教育訓練給付金が創設され、雇用保険の被保険者が教育訓練を受けるために休職した場合、失業時の基本手当に相当する金額の給付が受けられるようになります。

2028年10月1日施行

  • 雇用保険の適用拡大
    • 雇用保険の加入対象となる労働者の範囲が拡大されます。1週間の所定労働時間が20時間以上であったものが、10時間以上であることへと変更されます。企業は、加入対象となるパート・アルバイト従業員を洗い出し、企業保険料の負担分を概算計算する必要があります。

高年齢雇用継続給付の見直し(2025年4月1日施行)

◇制度の概要

高年齢雇用継続給付金とは、60歳以上65歳未満の高年齢者が継続雇用制度等により働き続ける際に、60歳時点と比べて賃金が大きく低下した場合、その減収を一定割合補填する雇用保険の給付金です。賃金が60歳到達時に比べ75%未満に下がった場合に支給対象となり、現行制度では賃金低下分に応じて最大で賃金の15%相当が支給されています。

◇改正内容

2025年4月以降、この高年齢者雇用継続給付の支給率上限が15%から10%に引き下げられます。例えば従来は賃金低下が大きい場合に15%支給されていたものが、改正後は10%が上限となります。

なお、新しい10%の支給率が適用されるのは2025年4月1日以降に60歳に達する方からであり、それ以前に60歳に到達している方については引き続き旧制度(上限15%)が適用されます。ただし60歳到達時点で被保険者期間が5年未満の場合には、5年に達した時点が施行日以後かどうかで適用される支給率が異なる点に注意が必要です。

◇改正の背景

給付率引き下げの背景には、高年齢者の就業環境整備が進んだことがあります。企業には65歳までの雇用確保措置が義務付けられ、さらに70歳までの就業機会確保努力義務も導入されました。こうした中で、高年齢者雇用継続給付金は将来的に段階的廃止が決まっており、「高齢者が働きやすい社会では公的補填をせずとも済むはず」との考えから給付縮小が進められています。

企業としては、高年齢従業員の賃金設計や処遇を見直し、公的給付に頼らなくても働き続けられる環境づくりが求められます。

自己都合離職者の給付制限の見直し(2025年4月1日施行)

◇制度の概要

自己都合退職(正当な理由のない自己都合による離職)をした労働者が失業給付(基本手当)を受給する際には、現行制度では一定期間の給付制限(待期期間とは別に給付が行われない期間)が課されています。

直近の制度では、この給付制限期間は原則2ヶ月と定められており、自己都合退職者は離職後に約2ヶ月間は基本手当が支給されません。ただしハローワークの指示による職業訓練を受講する場合など一定の場合には、この給付制限が適用除外となる仕組みもあります。

◇改正内容

2025年4月1日以降、自己都合退職者の失業給付制限期間が原則2ヶ月から1ヶ月に短縮されます。これにより、自己都合で退職した場合でも従来より早く基本手当を受給できるようになります。ただし直近5年以内に3回以上自己都合退職を繰り返している場合には、従来どおり3ヶ月間の給付制限が課される予定です。また今回の法改正では、自己都合退職者であっても失業後に主体的に職業訓練を受講した場合には給付制限を行わない(待たずに基本手当を受給できる)措置も導入されます。

具体的には、離職前1年以内に雇用保険の教育訓練給付金対象の講座を受講していた者、または離職後に教育訓練給付の対象講座を受講する予定の者については、自己都合退職であっても給付制限を免除し基本手当を直ちに支給する扱いとなります。これは労働者のリスキリング(技能習得)を促し、早期再就職を支援する狙いがあります。

◇企業への影響

給付制限短縮により自己都合退職者が失業給付を受け取りやすくなるため、人材の流動が活発化する可能性があります。

企業としては退職前後の従業員への周知や、安易な離職増加への対策(社内でのキャリア相談制度の充実等)を検討するとよいでしょう。また従業員が在職中にキャリア形成のための研修や教育訓練を受講する場合には積極的に支援し、必要に応じて教育訓練給付金の対象講座受講を促すことで、本人が円滑に失業給付を受けられる環境を整備することも求められます。

育児休業給付の給付率引き上げ(2025年4月施行)

◇制度の概要

育児休業給付金は、1歳未満の子を養育するため育児休業を取得した雇用保険被保険者に支給される給付金です。

休業開始から180日目までは休業前賃金(日額)の67%、181日目以降は50%相当の額が支給される仕組みになっており、育児休業中の収入補償制度として定着しています。

また育児休業給付金は所得税が非課税扱いで、育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の本人負担・事業主負担とも免除されるため、支給額の67%/50%は手取りベースではそれ以上の補償となっています。

◇改正内容

2025年4月から、育児休業給付金に「出生後休業支援給付金」という追加給付制度が新設され、一定要件下で育休中の給付率が実質的に引き上げられます。具体的には、両親ともに子の出生直後の一定期間(原則として産後8週間以内)にそれぞれ14日以上の育児休業を取得した場合(配偶者が就労していない等の場合は本人のみで要件充足可)、育児休業給付金(67%または50%支給)に加えて最大28日分の「出生後休業支援給付金」が支給されます。

この出生後休業支援給付金の額は休業開始時賃金日額の13%相当(28日取得した場合で賃金日額の13%×28日分)と定められており、既存の育児休業給付金67%と合算すると給付率80%となります。育児休業給付金と出生後休業支援給付金はいずれも非課税かつ社会保険料免除の対象であるため、80%の給付率は手取り収入に換算して実質100%(手取り10割)の補償に相当します。

ただし休業開始時賃金日額には上限があり、高所得者の場合は80%に達しないケースもあります。

◇企業へのポイント

この新制度により、育児休業取得者(特に父親の育休取得促進が想定されています)にとって経済的メリットが拡大します。企業の人事担当者は、従業員から出生後休業支援給付金の申請を受ける際に配偶者の育休取得状況を確認し、一定要件を満たす場合にハローワークへ支給申請手続きを行う必要があります。

また社内制度としても、育児休業を夫婦で取得しやすい雰囲気づくりや、有給の「産後パパ育休制度」(出生時育休)を促進することが大切です。従業員に制度改正の内容を周知し、「両親で育休を取り合うと給付金が増える」というポイントを伝えることで、男性の育休取得を後押しできるでしょう。

育児時短就業給付金の創設(2025年4月1日施行)

◇制度の概要

育児・介護休業法により、子が3歳未満の労働者には短時間勤務制度(育児のための所定労働時間短縮措置)が義務付けられています。

多くの企業で、育休から復職した社員が子の満3歳まで1日6時間程度の時短勤務を選択できる仕組みがあります。しかし時短勤務をすると収入が減少するため、経済的な理由で時短を選べないケースもありました。育児時短就業給付金は、こうした育児中の短時間勤務による収入減を補填し、育児と仕事の両立を後押しするために新設される雇用保険の給付金制度です。

対象は雇用保険の一般被保険者で、2歳未満の子を養育するために育児目的の短時間勤務(育児時短就業)を開始した方となります。育児休業から復職して時短勤務を始めた方や、復職前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上ある方など、一定の要件を満たす場合に支給対象となります。

◇給付内容

育児時短就業給付金は、時短勤務期間中に支払われる賃金額に対し原則10%相当の額が支給されます。例えば時短勤務中の月給が20万円の場合、その10%にあたる2万円が給付金として支給されるイメージです。ただし支給額と賃金を合計して育児休業前の賃金水準を超えないよう調整が行われ、短時間勤務中の賃金が育児休業前賃金の90%以上ある場合は支給率が逓減(減額)されます。

また各月の賃金が一定の上限額を超える場合や、賃金低下がほとんどない場合(月の賃金が育休前と同等以上)の場合には、その月の給付金は支給されません。

支給対象期間は原則として育児時短就業を開始した日から子の満2歳到達日の属する月の末日までで、育児時短就業を終了した場合はそこで支給も終了します(支給可能期間の上限は育児時短開始から最大で2年間)。なお育児休業給付金や高年齢雇用継続給付金と重複する期間は支給対象外となります。

◇企業へのポイント

この給付金により、育休復帰後に時短勤務を選択しやすくなるため、企業は従業員のワークライフバランス支援策として歓迎すべき制度と言えます。人事担当者は、育児休業復帰者から短時間勤務の申出があった際に新給付金の案内を行い、希望者にはハローワークでの手続き方法を周知しましょう。

特に復職前面談などで「時短勤務にすると給付金が出るので収入減を補えます」と説明すれば、安心して制度を利用してもらいやすくなります。また社内の就業規則に短時間勤務制度の詳細を整備し、併せてこの給付金の社内問い合わせ窓口を設けておくと良いでしょう。

2025年4月以前から子育てのため短時間勤務をしている従業員については特例的な経過措置もありますので、個別に適用可否を確認することをおすすめします。

教育訓練休暇給付金の創設(2025年10月1日施行)

◇制度の概要

教育訓練休暇給付金は、働く人の主体的なリスキリング(学び直し)を支援するために新設される雇用保険の給付制度です。

雇用保険の一般被保険者が、厚生労働省令で定めるところにより職業に関連する教育訓練のために無給の休暇(教育訓練休暇)を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため給付金が支給されます。支給額は雇用保険の失業給付である基本手当に相当する額(賃金日額の約50〜80%程度、賃金や年齢に応じ上限あり)とされています。

要件として、休暇開始前2年間に被保険者期間が通算12ヶ月以上あることなど基本手当と同様の条件が課されており、原則として雇用保険の被保険者期間が5年以上ある労働者が対象になる見込みです。支給日数については、取得した教育訓練休暇の日数に応じて支給されます(上限は失業給付と同様に原則毎月28日分まで)。

なお、教育訓練休暇給付金を受給した場合、その休暇期間は将来基本手当を受ける際の被保険者期間算定から除外される(失業給付と二重受給にならないようにする)と規定されています。

◇企業へのポイント

この新給付金を従業員が活用するには、前提として会社に「教育訓練休暇制度」が整備されている必要があります。

今後は人材育成の観点から、就業規則に無給の教育訓練休暇制度を規定し、従業員が安心してスキル向上のための長期研修や学校通学等にチャレンジできる環境を用意することが重要です。制度を導入する際は、休暇取得の手続き方法(例えば事前に訓練の目標や内容を申出させること)や、休暇中の処遇(社会保険の継続や福利厚生の扱い)についても定めておきましょう。

また、在職中にこの給付金を受給した従業員が円滑に職場復帰できるよう、休暇前の業務引き継ぎや代替要員の確保など社内調整も怠らないようにします。

雇用保険の適用拡大(2028年10月1日施行)

◇改正内容

2028年10月より、雇用保険の被保険者となる基準が大幅に緩和されます。現行では週所定労働時間が20時間以上の労働者が雇用保険加入対象ですが、改正後は週10時間以上働く労働者まで対象が拡大されます。

すなわち、これまで雇用保険に加入していなかった週10~19時間勤務のパートタイマーやアルバイトの方々も、新たに被保険者として雇用保険料の適用を受け、失業時には基本手当など給付を受けられるようになります。なお短時間労働者の適用拡大に際しては、現行の求職者支援制度との整合性も考慮されています(雇用保険に入ったことで求職者支援の対象から外れて不利益とならないよう配慮する旨が注記されています)。

◇企業への影響と対応

適用拡大により、企業は従業員の雇用保険加入手続きの対象範囲が広がることになります。2028年10月までに週10~19時間勤務の従業員を洗い出し、雇用契約の見直しや労働時間の管理方法を検討しておきましょう。例えば学生アルバイトや短時間パートにも雇用保険への加入案内を行い、本人から被保険者資格取得の手続きを確実に行うことが必要です。

また新たに対象となる従業員については、給与から雇用保険料を控除する処理や、人事システム上の設定変更も発生します。

人事担当者は給与計算システムや勤怠管理システムのベンダーとも連携し、適用開始時点で漏れなく保険料計算・届出が行える体制を整備しましょう。併せて、短時間労働者にも雇用保険に加入するメリット(失業時のセーフティネットや教育訓練給付の利用等)を社内周知することで、従業員の理解と協力を得ることも大切です。

雇用保険法の基本と制度概要

雇用保険法は、労働者が失業した場合や雇用継続が困難になった場合に給付を行い、生活と雇用の安定や再就職の促進を図ることを目的とした法律です。具体的には、失業した方や職業訓練を受ける方に対して失業等給付(基本手当や教育訓練給付金など)を支給し、併せて失業の予防や雇用機会の増大、労働者の能力開発促進等の事業も行っています。

また雇用保険から支給される給付金には、失業時に受け取る基本手当のほか、在職中の育児休業取得者への育児休業給付金や、一定の条件で高年齢労働者へ支給される高年齢雇用継続給付金など複数の種類があります。

まとめ(企業の人事担当者へのメッセージ)

2025年から2028年にかけて順次施行される雇用保険法の改正は、育児支援から高年齢者雇用、労働者の学び直し支援、パート労働者の保障拡大まで多方面に及ぶ内容です。

企業の人事担当者は、それぞれの改正事項が自社の従業員に与える影響を把握し、必要な社内制度整備や従業員への周知を計画的に進めることが求められます。特に給付金の新設・拡充に関しては、従業員が制度を知らずに損をすることのないよう、適切なタイミングで情報提供を行いましょう。

公式情報によれば、育児休業関連の新給付で経済的不安が軽減されることで仕事と家庭の両立が一層進むと期待されています。

また、教育訓練休暇給付金の導入は企業にとっても人材のスキルアップを後押しする好機です。今回の法改正を前向きに捉え、従業員のエンゲージメント向上や働きやすい職場づくりにつなげていきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事