- 更新日 : 2025年3月5日
就業規則に違反した場合の7つの対応方法|違反行為や処分の例も紹介
就業規則の違反には、主に7つの対応方法があります。対応方法とは、始末書の提出や減給といった懲戒処分のことです。
ただ「具体的にはどのような処分がある?」「どのような違反行為に、どういう処分を下すべき?」と疑問に思っている人もいるでしょう。そこで本記事では、7種類の処分の内容やそれぞれの処分に相当する違反行為を中心に解説します。
目次
就業規則の違反に該当する行為
就業規則の違反に該当するのは、主に以下のような行為です。
- 無断欠勤
- 機密情報や顧客情報の持ち出し
- ハラスメント
- 始業や終業時刻の虚偽の申告
- 会社で許可をしていない場合の副業
- 業務内容の不正
- 暴力
- 業務の拒否、職務の放棄
- 横領や着服
- 在宅勤務中や外回り中の職務怠慢
就業規則を作成する際は、違反行為のほかに違反に対する罰則も併せて規定しましょう。就業規則に規定がないと、処分を下しても無効となる可能性があります。
また、アルバイトやパートにも正社員と同一の就業規則を適用し、違反行為に対して処分を下せます。ただ、働き方や勤務時間などが異なるため、アルバイト・パート用の就業規則を作成し、有期雇用者向けの規定や処分を記載するのがおすすめです。
就業規則の違反を発見した場合の7つの対応方法
就業規則に違反した従業員がいた場合の一般的な7つの対応方法を紹介します。
ただ、就業規則に違反したからといって、すぐに懲戒処分を下すとトラブルに発展する可能性があるため、事実確認や証拠収集などをして慎重に対応しましょう。
1. 厳重注意
厳重注意とは、口頭や文書で就業規則に違反していることを注意し、反省を促すという対応方法です。
一般的に、始末書を提出させるほどではない軽度の違反は、厳重注意で対応します。たとえば、1日だけ無断欠勤した場合や始業・終業時刻を初めて虚偽の内容で申告した場合などです。
厳重注意をする際は、当事者を別室に呼び出して違反した事実を伝えたり、文書で違反内容を伝えたりして反省を促しましょう。単に違反した事実だけを説明するのではなく、違反行為に対する問題点や再発を防ぐ方法なども一緒に伝えると、当事者も違反を重大なこととして認識してくれます。
また、厳重注意をしたあとは、注意をした事実・内容・当事者の弁明などを記録するのがおすすめです。同じ違反を繰り返したときや別の就業規則を違反したときに役立ちます。
2. 始末書の提出
始末書とは、就業規則に違反した内容や当事者の反省などを文書として残すための書類です。同じ違反やミスを繰り返さないよう約束させる目的もあります。
始末書の提出を求めるケースとしては、就業規則の違反が初回ではない場合や備品を破損した場合などが挙げられます。具体的には、遅刻に対して厳重注意したが改善されなかった場合や会社の機材・車などを壊した場合などです。
また、始末書には主に以下の項目を記載します。
- 当事者の個人情報(名前や所属部署など)
- 就業規則を違反した日時
- 就業規則に違反した内容や原因
- 反省点
- 再発の防止策
なお、始末書の提出を求める場合は、様式・明記する事柄・提出方法などを指定しましょう。マネーフォワードなら始末書のテンプレートをダウンロードできるため、必要な場合はぜひご利用ください。
3. 減給
減給とは、文字通り給与を減額することを指します。比較的重い処分であるため、減給するなら厳重注意や始末書の提出では済まない正当性のある理由が必要です。
たとえば、何度も無断欠勤や遅刻を繰り返して他の従業員や顧客にも影響が出ている場合、度重なるハラスメントを行い注意しても改善されない場合などです。
ただ、処分としての減給には、労働基準法によって以下の上限が定められています。
- 1回の減給処分が、平均賃金の1日の半分の額を超えてはならない
- 減給する総額が、一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならない
1ヶ月の給与が20万円の場合、平均賃金は約6,600円となるため、「平均賃金の1日の半分の額」は単純計算で約3,300円です。また、1つの違反行為に対して減給できるのは1回までであるため、2月に減給した場合、3月には通常賃金の20万円を支払う必要があります。
もし、減給に値する違反行為が複数ある際は、違反した行為の数だけ減給できます。ただし、減給する総額が「1ヶ月の賃金総額の10分の1」である20,000円を超えてはいけません。20,000円を超える場合は翌月に繰り越してください。
4. 出勤停止
出勤停止とは一定期間の就労を禁止する処分で、停職や自宅謹慎処分とも呼ばれます。出社を禁止して在宅勤務を許可するという処分ではないため注意してください。就労が禁止された期間は、給与も支給されず勤続年数にも加算されないのが一般的です。
他の従業員へ暴力を振るった場合、業務の拒否や職務放棄などをして会社に損害を与えた場合などに、出勤停止が科されることがあります。
また、出勤を停止する期間の上限は、法律で定められていません。会社の就業規則で出勤停止の期間を定める必要があります。
就業規則に記載する場合は、どのような違反行為に対してどのくらい出勤を停止するのか明確化しましょう。月単位だけでなく、5日や14日などの日単位でも出勤停止の期間を定められます。
5. 降格
降格とは、従業員の役職や職位などを下げることです。昇格の停止・延長や給与等級の引き下げも降格に該当します。ただし、降格処分として無期雇用から有期雇用へ変更するには当事者の同意が必要です。
降格処分に相当するのは、管理職が就業規則に何度も違反した場合、禁止されている副業を長期間行った場合などです。
また、降格に伴い減給するかどうかも決めてください。減給の上限は法律で定められていないため、会社側で減給する額を決めることとなります。なお、労働基準法の減給に関する規定は前述の「減給」が対象であり、降格に伴う減給は対象外です。
上限がないからといって、極端な減給は避けましょう。就業規則の違反行為や役職手当の額などをもとに慎重に検討してください。
6. 諭旨解雇
諭旨解雇とは、会社が当事者に退職の話を告げ、両者が納得したうえで雇用契約を終了することです。当事者が自ら退職届を提出すれば、自己都合退職としての扱いも可能です。
懲戒解雇は会社側が一方的に解雇する処分であることを考えると、諭旨解雇の方が猶予があります。また、懲戒解雇は一般的に退職金も支払われません。諭旨解雇は全額もしくは一部の退職金が支払われるため、懲戒解雇よりも軽減された処分だと言えます。
諭旨解雇に相当するのは、違法行為や悪質な業務の不正などです。たとえば、横領した場合、会社の情報を持ち出したり顧客の情報を流出させたりした場合などが挙げられます。
もし諭旨解雇を拒否された場合は、懲戒解雇となるのが一般的です。懲戒解雇について詳しく知りたい人は、下記の内容をご参照ください。
7. 懲戒解雇
懲戒解雇とは、懲戒処分の中でも最も重い処分です。諭旨解雇のように当事者に納得してもらうような猶予はなく、会社から一方的に解雇を告げて雇用契約を終了させることになります。
従業員を解雇する際は、少なくとも30日前に解雇予告をしなければなりません。労働基準法によって解雇予告は義務付けられています。
懲戒解雇の場合も原則として解雇予告をする必要がありますが、労働基準監督署長の認定を受ければ即時解雇が可能です。解雇予告をしない場合に発生する予告手当も支払う必要がありません。
また、就業規則に規定があれば、懲戒解雇の処分が下された当事者に退職金を支払わないという選択もできます。全額を不支給もしくは減額など、違反行為に応じて決めましょう。
懲戒処分に相当するのは、悪質な経歴違反や私生活での犯罪などです。ただ、懲戒解雇は最も重い処分であるため、本当に処分を下すのか慎重に検討してください。
就業規則の違反に該当する行為と処分の例
前述の7つの処分それぞれに相当する違反行為を例として紹介します。
7つの処分 | それぞれの処分に相当する主な違反行為 |
---|---|
厳重注意 |
|
始末書の提出 |
|
減給 |
|
出勤停止 |
|
降格 |
|
諭旨解雇 |
|
懲戒解雇 |
|
上記は一例であるため、自社の業務内容や取り扱う情報などを考慮して処分を検討してください。
就業規則の違反に対して処分を下す場合の注意点
就業規則の違反に処分を下すことに関して、いくつか注意点があります。違反行為や対応方法を決める前に確認しておいてください。
懲戒処分の種類と懲戒事由を就業規則に定める必要がある
就業規則に違反した従業員に懲戒処分を下したい場合は、処分の種類と懲戒事由を就業規則に定める必要があります。労働基準法によって義務付けられているためです。
懲戒処分に関する規定が就業規則にないと、処分を下しても無効となります。
たとえば、会社に黙って副業した従業員に対して処分を適用したくても、「会社に報告せず副業すること」を懲戒事由として規定していないと懲戒処分を下せません。より悪質な違反や重大なミスについても同様です。
また、就業規則は存在するものの、従業員に周知していなかった場合も懲戒処分が無効となる可能性があるため注意してください。
違反行為に対して重すぎる処分を下すと、トラブルに発展する可能性がある
違反行為に対して重すぎる処分を下すと、訴訟問題に発展する可能性があります。また、懲戒処分が違反行為に相当すると認められない場合、懲戒処分の権利を濫用したとして処分が無効になると労働契約法に定められています。
当事者の違反行為の内容、違反をした理由、過去の事例などのさまざまな要素を考慮して、懲戒処分について検討してください。中でも、経済的な影響がある処分や履歴書に残る処分は、慎重に対応する必要があります。
懲戒処分を決定する前に弁護士に相談するのも一つの手です。
同一の違反行為に対して複数回の懲戒処分を下せない
同一の違反行為に対して、2回以上の懲戒処分は下せません。日本国憲法に「二重処罰の禁止」として定められています。
たとえば、会社に報告せず副業したことに対して、始末書の提出という懲戒処分を下したとします。処分を下したあとに、減給という懲戒処分を重ねて下すことはできません。
ただ、同様の違反行為を繰り返している従業員に対して、より重い懲戒処分を下すのは問題ありません。また、以前に懲戒処分を下した従業員が別の違反行為をした際に、新たに懲戒処分を下すことも「二重処罰の禁止」の対象外です。
就業規則に違反した従業員が出た場合は、慎重に判断して処分を決めましょう
懲戒処分を下すと、経済的な影響が出たり履歴書に残ったりすることがあります。
よって、違反行為・違反した理由・過去の事例などを考慮したうえで懲戒処分を検討しましょう。慎重に処分を検討することで、トラブルを未然に防げます。また、従業員が十分に反省し、同じ過ちを繰り返すことも防げる可能性があります。
懲戒処分を下す場合は、あらかじめ処分の種類と懲戒事由を定めておいてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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