- 更新日 : 2025年12月24日
フレックスタイム制の清算期間とは?1ヶ月・3ヶ月での計算方法や注意点を徹底
フレックスタイム制の清算期間は、1ヶ月が上限でしたが、法改正により最長で3ヶ月とすることが可能です。清算期間の長さにかかわらず、期間内で週平均40時間を超えないように調整する必要があります。
本記事では、フレックスタイム制の清算期間について徹底解説します。清算期間に関する疑問をお持ちの方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
目次
フレックスタイム制の清算期間とは?|労働者が働く時間を調整する期間
フレックスタイム制の清算期間は、事前に設定した総所定労働時間に対し、実際に労働した時間の過不足を調整するための期間です。一般的な労働時間管理とは異なり、労働者の所定労働時間は1日ごとではなく、清算期間ごとに定められます。
フレックスタイム制は、労働者が毎日の始業・終業時間を自分で決められますが、事前に定められた総労働時間分は働く必要があります。また、清算期間は従業員が働くべき総労働時間と労働時間の清算を行うための期間です。
フレックスタイム制を導入するには、清算期間の起算日や終期、労働時間の管理方法などを労使協定で定めなければいけません。適切なルールを設けることにより、柔軟な働き方を実現できます。
フレックスタイム制についての詳しい情報は、下記の記事をご覧ください。
2019年4月から最大3ヶ月まで清算期間の延長が可能
2019年4月の法改正でフレックスタイム制の清算期間が3ヶ月を上限に延長されました。延長されたことで、月をまたいだ労働時間の調整が可能となり、より柔軟な働き方が実現できます。
従来の制度では、清算期間が1ヶ月以内と定められていたため、労働者は1ヶ月のうちで労働時間を調整する必要がありました。しかし、1ヶ月を超えた長期的な調整はできず、繁閑の波に対応しにくいことが課題だったのです。
法改正後は、最大3ヶ月の範囲内で労働時間を柔軟に管理できるようになり、繁忙期と閑散期のバランスがとりやすくなったことで、労働者の働きやすさが向上しました。
清算期間が1ヶ月超の場合は労使協定の届出が必須
法改正により、「清算期間が1ヶ月を超える期間に設定する場合」は、労働者を代表する者と使用者との間で締結する「労使協定届」を事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に届け出ることが義務付けられました。
従来は、清算期間が1ヶ月以内の場合、労使協定の締結のみで届出は不要でした。労使協定届の届出制度は、労働時間の偏りや従業員の健康への影響を労働基準監督署が監督するために導入されたものです。
労使協定届には、対象者や部署ごとに異なる清算期間を設定できるため、柔軟な運用が期待できます。なお、届出の提出を怠ると30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため、注意が必要です。
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フレックスタイム制の清算期間内の総労働時間
フレックスタイム制における清算期間内の総労働時間は、清算期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間の範囲内となるよう設定する必要があります。
たとえば、清算期間が31日の場合、法定労働時間の総枠は約177.1時間です。
上記の範囲内で総労働時間を設定し、清算期間を平均した1週間の所定労働時間が法定労働時間内に収まるようにしなければいけません。
具体的な計算式は後に紹介します。
フレックスタイム制の清算期間を延長するメリット
フレックスタイム制の清算期間を最長3ヶ月に延長することで、労働者は月をまたいで労働時間を調整できるようになります。たとえば、4月から5月が繁忙期で労働時間が長くなった場合、6月の閑散期には労働時間を短くすることで、全体のバランスをとることが可能です。
また、清算期間を延長すると労働者は仕事とプライベートの両立がしやすくなる点でもメリットがあります。柔軟な働き方を提供する企業は、求職者にとってのニーズも高く、人材確保や定着率の向上にもつながります。
ただし、清算期間を1ヶ月以上に設定する場合は、労使協定を締結して所轄の労働基準監督署への届出が必要のため、適切な手続きを行うことが重要です。
フレックスタイム制の清算期間を延長するデメリット
清算期間を延長する場合、各月ごとに週平均労働時間が50時間を超えた際には、フレックスタイム制でも月ごとに残業代(割増賃金)の支払いが必要です。
なお、休日出勤(割増率35%)や深夜労働(割増率25%)についての割増賃金は週平均労働時間の長短にかかわらず発生します。あくまで法定労働時間を超過した時間について、フレックスタイム制においても1ヶ月に50時間を超過した場合には割増賃金が発生するということです。
さらに、月60時間を超える時間外労働には50%以上の割増賃金が必要となりますが、この点はフレックスタイム制を導入していない場合と同様です。そのため、フレックスタイム制を導入していない場合に比べて時間外労働の集計がより複雑になり、企業の給与計算の負担が大きくなります。
また、従業員自身も長期間にわたって労働時間を管理する必要があり、自己管理が苦手な人にとっては負担が大きくなる可能性があるため注意が必要です。適切に運用しなければ、誤った時間外労働の集計、労働時間の偏りや過重労働につながるリスクがあるため、慎重な管理が求められます。
清算期間における法定労働時間の計算方法
フレックスタイム制の清算期間における法定労働時間は、「法定労働時間の総枠=40時間(特例事業場の場合は44時間)×清算期間の暦日数÷7日」で算出できます。
たとえば、清算期間が31日の場合、「40時間×31日÷7=約177.1時間」が法定労働時間の総枠です。特例事業場(常時使用する労働者が10人未満の卸売業や小売業などの事業場)では、法定労働時間が週44時間となるため、上記の計算式では40時間の部分を44時間に変更する必要があります。
企業は、清算期間内の所定労働時間を計算式で求めた総枠内に設定する必要があります。適切に設定しなければ時間外労働が発生し、割増賃金の支払いが必要です。
下記記事では、時差出勤とフレックスタイム制の違いを解説しているため、あわせてご覧ください。
清算期間が最長1ヶ月の場合
労働基準法では、労働者の健康と安全を守るため、週の法定労働時間は原則として40時間を超えてはいけないと定められています。フレックスタイム制を導入する場合、清算期間内で法定労働時間の総枠を超えないように調整が必要です。
たとえば、清算期間が1ヶ月の場合の計算方法は以下のとおりです。
- 31日:177.1時間
- 30日:171.4時間
- 29日:165.7時間
- 28日:160時間
1ヶ月(31日)の所定労働日数が23日の場合、完全週休2日制での法定労働時間の総枠は「8時間×23日=184時間」となります。仮に1日の労働時間が7時間45分であれば、「7時間45分×23日=178.25時間」となり、法定労働時間内に収まります。
清算期間が最長3ヶ月の場合
清算期間が最長3ヶ月の場合、法定労働時間は「1ヶ月を超え3ヶ月以下の期間における暦日数÷7×40時間」で計算します。期間を月単位で設定する場合、2ヶ月と最長3ヶ月の法定労働時間の総枠は以下のとおりです。
【2ヶ月の場合】
- 62日の場合:354.2時間
- 61日の場合:348.5時間
- 60日の場合:342.8時間
- 59日の場合:337.1時間
【3ヶ月の場合】
- 92日:525.7時間
- 91日:520.0時間
- 90日:514.2時間
- 89日:508.5時間
フレックスタイム制において清算期間が1ヶ月を超える場合、労働時間の清算は期間最終月に行います。また、清算期間中、1ヶ月ごとの労働時間が週平均50時間を超えないことが重要で、過重労働防止の観点からも厳守が求められています。
フレックスタイム制における時間外労働の計算方法
フレックスタイム制での時間外労働は、清算期間内の法定労働時間の総枠を超えて労働した時間を指します。清算期間は最長3ヶ月で、期間内であれば労働時間の調整が可能です。ただし、総枠を超えた時間には時間外労働として割増賃金が発生します。
フレックスタイム制における時間外労働の計算方法は、「1時間あたりの基礎賃金×時間外労働(残業時間)×割増率」です。
たとえば、基礎賃金が1,500円で時間外労働が10時間、割増率が25%の場合は「1,500円×10時間×1.25=18,750円」が残業代となります。なお、週平均50時間を超える労働は健康への影響が懸念されるため、期間内の時間管理が重要です。
清算期間が1ヶ月以内の場合
フレックスタイム制でも、時間外労働を行わせる際は36協定を締結しなければいけません。清算期間が1ヶ月以内の場合は、期間内の実労働時間が所定労働時間を超えた分が時間外労働です。
ただし、1日の労働時間が8時間を超えてもすぐに残業代は発生せず、清算期間終了時に総枠を超えた時間をもとに時間外労働を計算します。
たとえば、清算時間が30日で所定労働時間が160時間、法定労働時間の上限が約171.4時間の場合は以下のとおりです。なお、ここでは計算を簡略化するために法定労働時間を171時間として計算しています。
- 総枠超過・上限内(165時間勤務):所定労働時間を5時間超えているが、法定労働時間を下回っているため、割増賃金は不要で5時間分の時給単価のみ支払う。
- 総枠・上限超過(175時間勤務):所定労働時間を15時間、法定時間を4時間超過している。所定超過・法定内の11時間は時給単価のみの支払いとなり、法定超過の4時間は「時給単価+割増賃金」の支払いが必要。
上記のように、法定時間を超える部分には割増賃金が適用されます。
清算期間が1ヶ月を超える場合
フレックスタイム制で清算期間を1ヶ月超えて設定する場合、割増賃金が必要な時間外労働は、2つの条件で判断されます。
まず、1ヶ月ごとの労働時間が週平均50時間を超えた場合、超えた分については割増賃金の支払いが必要です。清算期間が長い場合でも、特定の月に労働時間が過度に集中しないようにするための措置です。
次に、清算期間全体の法定労働時間の総枠を超えた場合も、超過分に対して割増賃金を支払う必要があります。ただし、すでに1ヶ月ごとの週平均50時間超過分として割増賃金を支払った時間は、割増の対象にはなりません。
上記のように、フレックスタイム制では清算期間中の時間管理が重要です。清算期間は最大3ヶ月まで設定可能ですが、労働時間が極端に偏らないよう、これらのルールで労働者の健康と働きやすさを確保しています。
フレックスタイム制の清算期間に関する注意点
フレックスタイム制では一定の清算期間を設け、期間内で労働時間を調整します。しかし、適切に運用しなければ法令違反となる可能性があるため、清算期間の設定には注意が必要です。以下では、清算期間に関する具体的な注意点を解説します。
実労働時間が総労働時間を下回った場合
フレックスタイム制において、実労働時間が総労働時間を下回った場合には2つの対応方法があります。
まず、不足分の賃金を控除して支払う方法です。清算期間終了時に実労働時間が総労働時間に達していない場合、不足時間に相当する賃金を差し引いて支給します。
次に、不足した時間を次の清算期間に繰り返し、総労働時間に合算する方法です。ただし、合算する場合、繰り越し後の所定労働時間が法定労働時間の総枠を超えない必要があります。この場合、清算期間中の総労働時間として定めた時間分の賃金は、清算期間の賃金支払日に支払うこととなります。
繁忙期のみ清算期間を3ヶ月にする場合
フレックスタイム制では、繁忙期のみ清算期間を3ヶ月に設定する運用も可能です。たとえば、繁忙期に対応するため、清算期間と有効期間をそれぞれ3ヶ月とする労使協定を締結し、有効期間終了後に清算期間を1ヶ月以内に変更した新たな協定を結べます。
また、有効期間を1年とする労使協定を締結し、有効期間の中で繁忙期や閑散期に応じて所定労働時間が異なる複数の清算期間を設定することも認められています。
ただし、上記のような運用では時間外労働の管理が複雑になりやすく、とくに労働時間の偏りや割増賃金計算には注意が必要です。
清算期間中に入社・退社・異動した場合
フレックスタイム制では、清算期間中に入社・退社・異動があった場合、賃金の清算が必要となる場合があります。清算期間が途中で終了することにより、実労働時間と法定労働時間の比較が必要になるためです。
賃金を精算する際は、清算期間内の労働時間を平均し、平均が週40時間を超えた分について割増賃金を支払います。たとえば、清算期間途中で退社し、平均労働時間が42時間だった場合、超過した2時間分に割増賃金が発生します。
フレックスタイム制の導入に必要な手続き
フレックスタイム制を導入するためには、必要な手続きが3つあります。適切に手続きを行わなければ法的リスクにつながる可能性があるため、注意が必要です。以下では、各手続きについて解説します。
就業規則に規定する
フレックス制を導入するには、企業規則に「始業時間および就業時間を労働者の決定に委ねる」ことを明記する必要があります。
フレキシブルタイムやコアタイムの有無に関わらず、就業規則に規定するのは必須です。また、コアタイムがある場合は、時間帯における必須勤務時間を明確に定めることが求められます。
さらに、労働時間の管理方法についても具体的に記載し、適正な運用ができるようにすることが重要です。
フレックス制の導入方法やコアタイムについての詳しい情報は、下記記事をご覧ください。
所定事項について労使協定に定める
フレックスタイム制を導入するには、所定事項について労使協定を締結する必要があります。労使協定で定める事項は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる労働者の範囲 | 制度を適用する労働者の範囲 |
| 清算期間 | 労働時間を調整する期間(最長3ヶ月) |
| 清算期間の起算日 | 清算期間の開始日を特定 |
| 清算期間の総労働時間 | 期間内に労働すべき総時間数 |
| 標準となる1日の労働時間 | 1日あたりの基準労働時間 |
| コアタイム | 必ず勤務すべき時間帯(なしも可能) |
| フレキシブルタイム | 労働者が自由に始業・終業を決められる時間帯 |
上記を明記し、適切な協定を結ぶことで、制度が適法かつスムーズに運用できるようになります。
労働基準監督署に労使協定の提出が必要なケースがある
フレックスタイム制を導入する際、清算期間が1ヶ月を超える場合は、労使協定を締結して労働基準監督署へ提出する必要があります。一方で、清算期間が1ヶ月以内であれば、提出義務はありません。
提出を怠ると労働基準法違反となり、30万円以下の罰金が科される可能性があるため、適切な手続きを行うことが重要です。
フレックスタイム制の清算期間の仕組みを理解して正しく計算しよう
フレックスタイム制の清算期間を正しく理解することで、適切な労働時間の管理が可能です。清算期間が1ヶ月を超えない場合は、期間内で週平均40時間を超えないように調整し、1ヶ月を超える場合は長期的な視点で労働時間を管理できます。
いずれの場合も、正しい計算方法を把握し、適切に運用することで柔軟な働き方と労働時間の適正管理を両立させることが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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