• 更新日 : 2025年11月5日

テレワークの勤怠管理の方法は?注意点やシステムの選び方、導入事例まで徹底解説

テレワーク(在宅勤務)の導入が進む中で、従業員の労働時間を正確に把握する勤怠管理の方法に悩む企業が増えています。オフィス勤務とは異なり、従業員の働き方が見えにくいため、適切な勤怠管理は過重労働の防止や公正な評価に不可欠です。

この記事では、テレワークにおける勤怠管理の具体的な方法、自社に合ったツールの選び方、そして遵守すべき法律上の注意点までわかりやすく解説します。

テレワークにおける勤怠管理の重要性

テレワークにおける勤怠管理は、従業員の労働状況を客観的に把握し、法令を遵守した上で、健全な労働環境を維持するために重要です。上司や同僚が直接働きぶりを確認できないため、意図せず長時間労働になったり、逆に正当な労働時間が評価されなかったりする危険性があるからです。

労働時間の客観的な把握

企業には、労働者の労働時間を客観的な方法で記録し、管理する法的な義務があります。厚生労働省が2017年に公表した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」でも、労働時間を客観的に把握することが使用者の責務であると明記されています。

従業員の自己申告だけに頼ると、実際の労働時間とずれが生じやすくなります。たとえば、サービス残業が発生したり、業務をしていない時間が労働時間として申告されたりするかもしれません。このような不正確な記録は、後の労使トラブルに発展する可能性があります。

そのため、PCのログ記録や勤怠管理システムの打刻時間など、客観的に判断できる方法で労働時間を記録し、保管することが求められます。

参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省

従業員の健康管理と過重労働の防止

従業員の働きすぎを未然に防ぎ、心身の健康を守るためにも勤怠管理は欠かせません。労働安全衛生法では、事業者に従業員の健康と安全を確保する義務が課せられています。

在宅勤務は、長時間労働につながるリスクがあると指摘されています。適切な勤怠管理によって時間外労働や休日労働の状況を正確に把握することで、企業は特定の従業員に業務負荷が偏っていないかを確認し、必要に応じて業務量の調整といった対策を講じられます。

公平な人事評価と生産性向上

客観的な勤怠データは、従業員の働きぶりを公平に評価し、組織全体の生産性を向上させるための基礎情報となります。

オフィスにいる時間の長さで評価するような旧来の評価制度は、テレワークに適さないケースが多いとされています。成果を正しく評価するためにも、その前提となる労働時間を正確に把握することが大切です。

また、チームや部署ごとの労働時間を分析すれば、特定の時期に残業が集中しているといった課題が見えてきます。このデータから業務の進め方を見直したり、ツールを導入して効率化を図ったりすることで、組織全体の生産性向上につながります。

テレワークの勤怠管理の方法

テレワークにおける勤怠管理の方法は、主に4つあります。それぞれの特徴を理解し、自社の状況に合わせて複数の方法を組み合わせることが推奨されます。

1. 自己申告(Excelやスプレッドシートへの入力)

ExcelやGoogleスプレッドシートなどを用いて、従業員が始業・終業時刻や休憩時間を自ら入力する方法です。

コストをかけずに手軽に始められる点が最大のメリットですが、申告の正確性が従業員に依存するため、客観性に欠けるという大きなデメリットがあります。厚生労働省のガイドラインでも自己申告制は認められていますが、補完措置を講じる必要があります。

運用上の注意点
  • 定期的な実態調査
    申告された労働時間と、PCのログイン時刻やメールの送受信履歴などの客観的な記録に大きなずれがないか、定期的に確認する。
  • 管理者への教育
    管理者に対し、自己申告の時間を適正に管理する重要性や、記録にずれがあった場合に是正を促す責任があることを教育する。
  • 従業員への周知
    従業員に対し、労働時間を正しく記録・申告する重要性を十分に説明する。

2. PCログでの管理

PCの電源オン・オフ(ログイン・ログオフ)の時刻や、アクティブな操作時間を記録して労働時間とみなす方法です。打刻忘れを防ぎ、実際の業務時間に近い記録が取れるというメリットがあります。

ただし、電話対応やWeb会議など、PCを直接操作していない時間も業務時間に含まれる場合があるため、それらの時間をどう把握するか別途ルールを決める必要があります。また、従業員のPC操作を過度に監視することはプライバシーの問題につながる恐れがあるため、ログ取得の目的や範囲を事前に従業員へ明確に説明し、合意を得ることが重要です。

3. メールやチャットによる報告

メールやMicrosoft Teams、Slackなどのチャットツールのステータスや、始業・終業時の報告投稿を勤怠記録の補助として利用する方法です。

たとえば、以下のようなルールを設けることが考えられます。

  • 始業時に業務報告チャンネルへ「業務を開始します」と投稿する。
  • 終業時に「本日の業務を終了します」と投稿する。
  • 離席や中抜けの際は、ステータスを「離席中」に変更する。

特別なツールを導入せずに始められ、チーム内のコミュニケーション活性化にもつながります。ただし、これ単体では正確な記録として不十分なため、自己申告や勤怠管理システムと組み合わせて利用するのが一般的です。

4. 勤怠管理システムの活用

クラウド型の勤怠管理ツールやアプリを導入し、PCやスマートフォンからワンクリックで打刻する方法です。打刻時刻が自動で記録されるため改ざんが難しく、厚生労働省のガイドラインが示す客観的な記録として信頼性が高い方法です。

主なメリット
  • 客観性の担保:打刻時刻が自動で記録され、信頼性が高い。
  • 管理業務の効率化:労働時間の自動集計、残業時間のアラート、休暇申請・承認など、管理者の負担を大幅に削減する機能が豊富。
  • 法令遵守の強化:法改正に対応した残業時間の上限管理や、有給休暇の取得義務化などに自動で対応できる製品が多い。

主要な勤怠管理システムはスマホアプリに対応しており、場所を選ばずに打刻できるため、テレワークと相性が良いと言えます。

テレワークの勤怠管理で注意すべき法律やガイドライン

テレワークの勤怠管理では、オフィス勤務と同様に労働基準法が適用されます。厚生労働省のガイドラインを遵守し、労働時間を客観的かつ適正に把握することが求められます。

厚生労働省のガイドライン

厚生労働省のガイドラインでは、労働時間の把握は、タイムカード、ICカード、PCの使用時間の記録といった客観的な方法で行うことが原則とされています。

やむを得ず自己申告制とする場合でも、企業は申告された労働時間とPCの使用時間などの客観的記録との間に著しいずれがないかを確認し、必要であれば実態調査を行って時間を補正するなどの対応が必要です。

参考:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン|厚生労働省

中抜けや休憩時間の取り扱いルール

厚生労働省のガイドラインでは、テレワーク中の中抜け時間は労働時間から除外し、休憩時間として扱うことが可能とされています。

子供の送り迎えや役所での手続きなど、中抜けが発生しやすいため、あらかじめ就業規則でルールを明確にしておくことがトラブル防止につながります。

ルール設定のポイント
  • 申請・報告のルール:中抜けをする際の手続き(誰に、いつまでに、どうやって連絡するか)を定める。
  • 勤怠システムでの記録:勤怠管理システムの中抜けや休憩の記録機能を活用し、正確な労働時間を算出する。
  • フレックスタイム制の活用:フレックスタイム制を導入すれば、中抜け時間を柔軟に調整でき、従業員はより働きやすくなる。

テレワークに最適な勤怠管理システムの選び方

テレワークでは、オンラインで勤怠を記録し、リアルタイムで状況を把握できるシステムの導入が効果的です。最適なシステムを選ぶ際のポイントを解説します。

自社の勤務形態に適しているか

フルリモート、ハイブリッド勤務、時差出勤など、自社の働き方に柔軟に対応できるシステムを選びましょう。インターネット環境があればどこからでもアクセスできるクラウド型のシステムは、フルリモートの企業に向いています。時差出勤に対応できるシステムであれば、従業員の多様な働き方に応じた運用が可能です。

従業員と管理者の双方が使いやすいか

勤怠管理システムは、従業員と管理者の双方が使いやすいことが重要です。たとえば、ワンクリックで出退勤の打刻ができる機能や、勤務時間の申請・承認がスムーズに行えるUIなどがあると便利でしょう。

操作が複雑だと、従業員が使いこなすまでに時間がかかり、導入がスムーズに進まない可能性もあります。使い勝手が良いシステムは、従業員の負担軽減だけでなく、システムの円滑な運用も実現します。

コストが見合っているか

初期費用や月額利用料といった導入コストが、得られる効果と見合っているかを確認しましょう。

従業員ひとり当たりのコストや機能ごとの料金体系を比較することも大切です。初期費用や月額費用が安いからという理由で選ぶのではなく、導入後に期待される効果をしっかり考慮した上で、コストに見合ったシステムを選定することが求められます。

サポート体制は整っているか

勤怠管理システムをスムーズに運用するためには、トラブル発生時に迅速に対応できるサポート体制が欠かせません。

問題が発生した際に、電話、メール、チャットなどで迅速に対応してくれるサポート体制があるかを確認しましょう。オンラインのマニュアルやFAQが充実していたり、導入後の研修サポートが提供されていたりすると、システムの運用をスムーズに開始できます。

テレワークで勤怠管理システムを導入した企業の成功事例

テレワークに対応可能な勤怠管理システムを導入した企業の成功事例として、メーカーズシャツ鎌倉とやまもとくんが挙げられます。

両社は「マネーフォワード クラウド勤怠」を導入し、勤怠管理の効率化や残業時間の削減を実現しました。手作業での勤怠集計や給与計算を自動化したことで、業務負担の軽減だけでなく、従業員の意識向上も実現しています。

事例の詳細は、以下の記事をご確認ください。

自社に合った勤怠管理方法で、より良いテレワーク環境を

本記事では、テレワークにおける勤怠管理の重要性から具体的な方法、ツールの選び方、法的な注意点までを解説しました。在宅勤務における労働時間の把握は、単なる義務ではなく、企業全体の生産性を向上させるためには従業員の健康を守り、公平に評価することが欠かせません。

自社の規模や働き方に最も適した勤怠管理方法を選び、透明性の高いルールを構築することが、これからの時代の働き方を成功させる上で重要です。


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