- 更新日 : 2025年1月29日
有給休暇を付与したら通知は義務?通知する項目を例文つきで解説
原則、有給休暇を付与した際の通知は義務ではありません。労働基準法第39条に基づき、一定の条件を満たした労働者には、年次有給休暇を付与する必要があります。しかし、付与時に通知する義務があるかについては、意外と知られていないポイントです。
本記事では、有給休暇を付与する際の通知の義務と、具体的な通知項目について徹底解説します。
目次
有給休暇を付与したら通知義務はある?
社員に有給休暇を付与した場合、取得日数や残りの日数などを通知する義務はありません。しかし、従業員が有給休暇を適切に取得できるように、付与日や残り日数などを伝えておくことも重要です。
とくに、労働基準法では年5日の有給休暇取得が義務化されているため、適切な管理と周知が求められます。下記では、有給休暇の付与の通知義務について、より具体的に解説します。
法的な通知義務は無い
有給休暇を付与する際、通知義務はありません。
しかし、有給休暇の趣旨は、従業員の心身の疲労回復であるため、従業員が適切に取得できるよう通知を行うことが望ましいです。
記載自体は任意のため、会社により有給休暇の取得日数や残り日数を給与明細に記載していることもあります。
また、労働基準法施行規則第24条の7に基づき、事業主には「有給管理簿」を作成し、重要員ごとの付与日数や取得状況を記録する義務があります。管理簿の適切な運用を通し、有給休暇の取得を促進し、労働環境の向上を図ることが重要です。
ガイドラインにより周知が求められている
平成30年に改正された「労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)」によると、年次有給休暇管理簿を作成したうえで、その取得状況を労働者本人および上司への周知が求められています。
とくに、年次有給休暇の計画的な取得を促進するため、時季指定義務を遵守しつつ、労働者の有給取得状況を把握することが必要です。
下記では、さらに労働時間等見直しガイドラインの改正点について詳しく解説します。
労働時間等見直しガイドラインの改正点
労働時間等見直しガイドラインは、平成30年に改正され、平成31年4月1日から適用されました。労働時間等見直しガイドラインは、時間外労働の上限規制や年次有給休暇取得促進を目的に、使用者が遵守すべき項目が記載されています。
改正では、使用者は有給休暇管理簿を作成する義務に加え、取得状況を労働者本人と上司に周知することが求められています。改正では、労働環境の透明性を高め、働きやすい職場づくりを支援する重要なポイントです。
年次有給休暇取得状況の周知が求められる
年次有給休暇取得状況の周知は、法律上の義務ではありませんが、ガイドラインにより求められている事項を指します。労働基準法改正による「年休5日取得義務」や「年次有給休暇管理簿」の作成義務に基づくものです。
管理簿には、基準日、日数、取得時期の記録が必要です。管理簿をもとに、労働者や上司へ情報提供することで、年次有給休暇の取得促進を図ります。そのため、年休取得が円滑になり、職場の働き方改革の実現が期待されています。
有給休暇付与通知書の無料テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、有給休暇付与通知書の無料テンプレートをご用意しております。
無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご利用ください。
有給休暇付与のタイミングで通知する項目
有給休暇の有給休暇付与のタイミングで通知する項目は、労働者本人と労働者の上司へ通知する際で異なります。有給休暇付与のタイミングの通知は義務ではありませんが、通知することによりトラブルを回避可能です。
下記では、労働者本人と労働者の上司に通知すべき項目に分けて解説します。
労働者本人へ通知する項目
労働者本人へ通知する項目は、下記のとおりです。
- 付与された年次有給休暇の日数
- 取得状況
- 申請方法
労働者には、自分が付与された有給休暇の残り日数を正確に通知することが重要です。年次有給休暇の日数を通知すると、労働者が自身の有給休暇を適切に計画と取得ができるようになります。
また、労働者が自分の有給取得状況を確認することも大切です。必要に応じて申請できるように、管理簿や取得履歴を通知されることが望ましいです。
休暇を取得する際の手続きや申請方法についても通知する必要があります。とくに「年5日の取得義務」に関しては、労働者に取得の必要性を意識させるためにも、具体的な指示が求められることもあります。
労働者の上司へ通知する項目
労働者の上司へ通知する項目は、下記のとおりです。
- 労働者の有給休暇の付与状況
- 取得予定日や申請内容の共有
上司には、部下の有給休暇付与日数や取得状況を把握してもらう必要があります。上司には、部下の年次有給休暇の付与日数や、残りの取得可能日数を正確に通知し、管理してもらう必要があります。
また、労働者が有給休暇を申請した場合、情報を上司に通知し、業務の調整を行えるようにすることが重要です。とくに、複数の部下が休暇を取る場合、業務運営に支障が出ないように調整する必要があります。
有給休暇付与通知書の例文
有給休暇通知書は、労働者が自身の有給休暇の付与状況を確認できるために必要です。
有給休暇付与通知書を労働者本人に発行する場合、下記の例文のように作成してください。
【有給休暇付与通知書】
株式会社 〇〇
〇〇(従業員の名前)様
あなたは、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日の間の所定労働数の8割以上を出勤されたため、下記日数の年次有給休暇を付与します。
年次有給休暇 付与日数:〇〇日
上記のとおり、年次有給休暇が付与されていますので、有給休暇は計画的に取得いただけるようご協力よろしくお願いします。
また、有給休暇の取得を希望される場合は、事前に申請し、上司との調整をお願い申し上げます。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
株式会社〇〇
上記の例文をもとに通知書を作成することにより、有給休暇に関するトラブルを防げます。
有給休暇付与の通知方法
有給休暇付与の通知方法としては、給与明細への記載や勤怠システムへのアラート表示などが挙げられます。
まず、給与明細への記載を活用する方法があります。給与明細の備考欄に有給休暇の付与日数や残り日数を記載することにより、労働者が休暇状況を容易に把握可能です。給与明細へ記載することで、全員への通知がもれなく行えます。
次に、勤怠システムアラート機能を利用する方法があります。たとえば、勤怠システムにログインした際に、休暇付与日や取得期限のアラートを表示する機能を導入することで、労働者と管理者がリアルタイムで情報共有可能です。
上記のような方法を組み合わせることで、通知の正確性と休暇管理の効率化を同時に実現できます。
必要に応じて有給休暇付与の通知書を作成しよう
有給休暇付与の通知書の作成は、義務ではありません。しかし、従業員が有給休暇の状況について把握できるようにするためには、付与日や残り日数などを伝えることが重要です。
労働基準法に基づき、年5日の有給休暇取得が義務化されているため、適切な管理と通知は法令遵守の観点でも欠かせません。通知書の作成や運用を検討し、従業員が安心して有給休暇を取得できる環境を整えましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
休業手当とは?休業補償との違いや計算方法も解説!
新型コロナウイルスが猛威を振るっていた時期、感染症拡大を回避するため、多くの企業で従業員を休業させました。 労務が提供されない場合、使用者は対価となる賃金を支払わなくてよいというのが「ノーワーク・ノーペイの原則」です。 にわかに注目されるよ…
詳しくみる退職者も給与支払報告書は必要?不要な場合や書き方の注意点を解説
退職者の給与支払報告書は、原則として作成・提出が必要です。本記事では、給与支払報告書と源泉徴収票の違いや給与支払報告書の提出が不要なケース、書き方の注意点、よくある質問などを解説します。退職者に関する手続きを正しく進めるために、必要な知識を…
詳しくみる給与支払明細書とは?書き方・記入例や自分で手書きする場合の注意点も解説
給与支払明細書とは、給与の支給額や控除内容を記載した重要な書類です。 そのため、適切な管理と法令に準じた発行が必要です。 本記事では、給与支払明細書の基本情報やその他類似書類との違いを解説します。 合わせて、給与支払明細書の書き方や手書きす…
詳しくみる源泉徴収票はいつどこでもらう?もらえない時の対応方法も解説!
毎年の年末調整の時期や退職するときなどに会社からもらう源泉徴収票ですが、会社員が正しく税金を納める上でとても重要な書類です。 今回は、源泉徴収票に関して、どこでもらうのか、どのタイミングでもらう必要があるのか、どのような見方をすればよいのか…
詳しくみる定額減税を6月給与に反映しなければ罰則?対応方法について解説
定額減税は6月の給与から実施しなければならず、年末調整時に一括で処理することは認められていません。税法上の違反にはなりませんが、労働基準法違反となる可能性があります。支払うべき給与を支払わないとして、全額払いの原則を定める労働基準法第24条…
詳しくみる通勤手当とは?計算方法と課税範囲について紹介
通勤手当は、諸手当のなかでは最も一般的な手当といえますが、意外に正確な取り扱いは知られていません。計算方法、交通費との違いや、電車やバスではなく、マイカーやタクシー、徒歩で通勤した場合の取り扱いはどうするのか。また、非課税限度額など、課税上…
詳しくみる