- 更新日 : 2025年10月10日
トライアル雇用とは?制度の仕組みや助成金、対象者を解説
トライアル雇用とは3ヵ月間のトライアル期間を設けることで、雇用のミスマッチ防止を図る制度です。職業経験不足などから就職が難しい求職者が、安定した職業に就くことを目的にしています。直接応募や知人の紹介などではなく、ハローワークを介さなければなりません。要件を満たすと事業主は最大で月額4万円のトライアル雇用助成金が受け取れます。
目次
トライアル雇用とは?
トライアル雇用は国による就職困難者のための支援制度です。職業経験不足などから就職が難しい求職者を対象に、3ヵ月間の試行期間が設けられます。試行期間中に適性や能力の見極めが行われ、問題がなければ無期雇用に移行されます。企業と求職者が合わない場合は3ヵ月の期間終了と同時に雇用も解消されます。
助成金「トライアル雇用助成金」の支給
所定の条件を満たすトライアル雇用には、以下のトライアル雇用助成金が支給されます。
| 支給金額 | 月4万円 |
|---|---|
| 支給対象期間 | 雇入の日から1ヵ月単位で最長3ヵ月 |
トライアル雇用のメリット・デメリット
トライアル雇用にはメリットもあればデメリットもあります。制度を利用する際は両面をよく理解し、よく検討することが大切です。
トライアル雇用のメリット
トライアル雇用のメリットには、以下の点が挙げられます。
スムーズな採用が可能になる
トライアル雇用ではハローワークが選んだ、適した求職者が紹介されます。書類選考でふるいにかける必要がなく、採用の手間が削減できます。コスト削減にもつながります。
雇用のミスマッチが防げる
トライアル雇用は3ヵ月間、実際に求職者の働きぶりから適性や能力を見極められます。合わない場合は契約解除が可能で、雇用のミスマッチが防げます。
金銭的メリットがある
トライアル雇用はハローワークから求職者の紹介を受けるため、募集広告費がかかりません。採用のスムーズ化により、コスト軽減も図れます。さらにトライアル雇用助成金受取のメリットもあります。
トライアル雇用のデメリット
以下がトライアル雇用のデメリットです。
教育に時間がかかる
トライアル雇用はほとんどの場合で未経験者の採用となり、業務遂行に必要な知識や技術は一から教えなければなりません。教育に時間がかかり、場合によっては教育体制の再構築が必要になることも考えられます。
事務負担がある
トライアル雇用助成金受取のためには、申請手続きが必要です。書類作成と申請を複数回行わなければならず、手間がかかります。申請期限も短く、スケジュール調整も必要とされます。
トライアル雇用制度のコースと対象者、助成金の支給額
トライアル雇用には、一般トライアルコース、障害者トライアルコース、若年・女性建設労働者トライアルコースの3種類があります。ここでは基本となる一般トライアルコースと障害者トライアルコースの支給額、対象者、支給条件について説明します。なお、新型コロナウィルス感染症対策トライアルコースは2023年3月で廃止となりました。
一般トライアルコース
一般トライアルコースの支給額・対象者・支給条件は以下の通りです。
| 支給額 | 月額4万円 母子家庭の母等や父子家庭の父の場合は月額5万円 |
|---|---|
| 対象者 | 次のいずれかの要件を満たした上で紹介日に本人がトライアル雇用を希望していること
|
| 対象者条件 |
|
| 雇入条件 |
|
障害者トライアルコース
障害者トライアルコースの支給額・対象者・支給条件は以下の通りです。
| 支給額 | 月額最大4万円(最長3ヵ月間) 精神障害者の場合、月額最大8万円(最長3ヵ月間) |
|---|---|
| 対象者 |
|
| 対象者条件 | 継続雇用する労働者としての雇入れを希望し、障害者トライアル雇用制度を理解したうえで障害者トライアル雇用による雇入れについても希望していること |
| 雇入条件 |
|
また週の所定労働時間10時間以上20時間未満を対象にした、障害者短時間トライアルコースもあります。
トライアル雇用助成金の申請手続きと流れ
トライアル雇用で助成金を受け取るための申請手続きと流れを説明します。
1.求人の申込み
トライアル雇用ではハローワーク、地方陸運局、職業紹介事業者に対して求人の申込みを行う必要があります。これらを通していない求職に対して、トライアル雇用とすることはできません。HPや知人を通じて直接応募してきた場合は、トライアル雇用の対象外となります。
2.面接
ハローワークから紹介された求職者に面接を行います。
3.トライアル雇用開始
3ヵ月間のトライアル雇用を開始します。
4.トライアル雇用実施計画書の提出
トライアル雇用開始日から2週間以内に、実施計画書を提出します。提出先は対象者を紹介したハローワークまたは労働局です。
5.無期雇用契約の締結
トライアル雇用の結果から無期雇用とする場合は、契約を締結します。
6.トライアル雇用助成金の支給申請
トライアル雇用期間終了後、トライアル雇用助成金の申請を行います。申請期間はトライアル雇用終了日の翌日から起算して2ヵ月以内、申請先は事業所を管轄するハローワーク、または労働局です。トライアル雇用の途中で無期雇用に移行したり退職したりした場合は申請期間が変わるため、早めの手続きが必要です。
トライアル雇用助成金を申請できる事業主
トライアル雇用助成金は、トライアル雇用求人によってトライアル雇用にいたった事業主が申請できます。トライアル雇用求人は次のすべてを満たしていなければなりません。
- 無期雇用とトライアル雇用、いずれにも応募できること
- 派遣求人でないこと
- 法令に違反していないこと
- 求人受理にかかる条件等について規定等が定められている場合に、その規定等を満たしていること
トライアル雇用のよくある質問
トライアル雇用に関しては多くの企業が同じような点を疑問に思っています。トライアル雇用でよくある質問と、その答えを説明します。
トライアル雇用助成金が減額になる場合はある?
次のいずれかの場合、トライアル雇用助成金は減額されます。
- 離職・無期雇用への移行・所定労働時間の変更の理由で、1ヵ月未満となるトライアル雇用期間がある場合
- 支給対象者都合の休暇や事業主都合の休業があった場合
トライアル期間の給料はどうなる?
トライアル雇用で給料についての条件は設けられていません。そのため通常と同じように、採用者の能力やスキル、経験、その他の事項に応じた給与額を決定し、支払います。時間外労働時間に対する割増賃金の支払い義務も、他の従業員と同じです。残業や休日出勤、月60時間を越える時間外労働に対して、法定通りの割増賃金支払いが必要になります。
トライアル雇用でも解雇できる?
トライアル雇用中であっても、企業側からの解雇は正当な理由がない限り、認められません。客観的合理性と社会通念上の相当性が認められない解雇は無効となるため注意が必要です(労働契約法16条)。
トライアル雇用と試用期間の違いは?
トライアル雇用は国による施策であるのに対し、試用期間は企業が独自で設けている制度です。試用期間を設けるか否か、また期間について法律で定められていません。多くの企業が3ヵ月間を試用期間としているのは、本人に適性があるかを判断するための期間として概ね適切であると認識しているからです。
またトライアル雇用は継続と終了のどちらの選択も可能であるのに対し、試用期間は雇用継続が前提であるという点の違いもあります。
トライアル雇用や助成金制度を活用してスムーズな採用・コスト削減に役立てよう
トライアル雇用は3ヵ月間のトライアル期間を設けて求職者の適性や能力を見極め、雇用のミスマッチ解消を図る制度です。求職者はハローワークなどから紹介されるため、募集の手間が削減できます。スムーズな採用が可能になり、コスト削減の効果も期待できます。
トライアル雇用助成金制度もあり、月額4万円が受給できます。トライアル雇用・トライアル雇用助成金の両制度をよく理解し、採用活動に役立てましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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