- 更新日 : 2025年10月10日
バーンアウト(燃え尽き症候群)とは?症状や対処法を解説 | 給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」
バーンアウト症候群は、仕事での極度の疲労によって引き起こされ、感情の枯渇や自己嫌悪などに陥るのが特徴です。何もやる気にならず、保守的になったり達成感が低下したりするため、仕事だけでなく私生活にも支障が出ることがあります。本記事では、バーンアウト症候群の予防方法や、なったときの対処方法について解説します。
目次
バーンアウト(燃え尽き症候群)とは?
ここでは、バーンアウト症候群の概要と判定方法について解説します。
ハーバート・フロイデンバーガーの理論
バーンアウト症候群とは燃え尽き症候群とも呼ばれ、ハーバート・フロイデンバーガーによって定義されました。仕事でエネルギーを使い果たした人に見られ、極度の心身疲労によって、以下のような症状が現れるのが特徴です。
- 感情の枯渇
- 自己嫌悪
- 仕事嫌悪
- 思いやりの喪失
仕事などに意欲を持って没頭していた人が、急に燃え尽きたかのように意欲をなくしてしまう状態に陥ることから、バーンアウト症候群と名づけられました。
マスラーク・バーンアウト・インベントリー
バーンアウト症候群かどうかを判定するために、マスラーク・バーンアウト・インベントリーという診断テストが世界中で用いられています。マスラーク・バーンアウト・インベントリーには、日本版もあり全17項目について「まったくない・まれにある・ときどきある・しばしばある・いつもある」のうちのいずれかを回答し、得点を集計することで判定を行う方法です。
バーンアウト(燃え尽き症候群)とうつ病との違い
バーンアウト症候群と似た病気に、うつ病があります。両者の大きな違いは、仕事上に起きる現象であるかどうかです。バーンアウト症候群はあくまでも仕事上に限定されていますが、うつ病は仕事だけでなく私生活においても起こりうるものであるとWHOが示しています。また、バーンアウト症候群は精神疾患や精神障害とは異なるとされている点でも、うつ病とは異なります。
バーンアウトの症状
バーンアウト症候群には特徴的な症状があります。自分が該当しないかどうか確認するために、1つずつ詳しく見ていきましょう。
① 情緒的消耗感
情緒的消耗感とは、仕事を通じて心身ともに疲れ果てて、何もする気になれない消耗した状態のことです。サービス業のように他人を思いやったり、信頼関係を築いたりするような仕事では情緒的エネルギーを消費し尽くしてしまい、バーンアウト症候群になりやすいです。
➁ 自己保存・保守的になる
自己保存・保守的になるのもバーンアウト症候群の特徴です。自己保存とは、自分の身の安全のために必要なものだけをため込むことで、安心安全な居場所を求めるようになります。また、保守的になると新しいものを受け入れたくなくなります。例えば、出歩くのが嫌になったり、家にこもることが多くなったりするでしょう。
③ 達成感の低下
バーンアウト症候群になると、個人的な達成感も低下してしまいます。例えば、これまで楽しくバリバリに仕事をこなしていた人が、急に仕事に対する喜びを感じられなくなるといったことがあります。バーンアウト症候群によって、自分の職務の重要性を低く見てしまうのです。
参考:長時間労働医師への健康確保措置に関するマニュアル(改訂版)|厚生労働省
セルフメンタルヘルス|厚生労働省
バーンアウトの予兆
バーンアウト症候群が起きる前には予兆があります。身体のサインを見逃さないようにしましょう。
やる気が起きない
物事に対して急にやる気が起きなくなったときは、バーンアウト症候群の予兆かもしれません。仕事においては、遅刻や欠勤が急に多くなるといったことが見受けられます。また、プライベートで家族や友人と過ごしているときでも、以前ほど楽しいと思わなくなるといったように、仕事以外の時間にも影響を与えることもあります。
頭が回らない・思考が停止する
仕事中に頭が回らず思考が停止することが続くと、バーンアウト症候群の予兆かもしれません。例えば、労力のいる仕事だけでなく単純作業のような仕事でさえも終えるのに時間がかかったり、仕事に集中できずに休憩ばかりしていたりといったケースが考えられます。このような場合は、仕事に対して意欲を感じなくなっている可能性があるでしょう。
片頭痛・めまいがある
バーンアウト症候群の予兆は、片頭痛やめまいなどの身体症状として現れることもあります。これは、まだ表面化していない体の不調を示すサインの可能性があります。これらの症状が見られた場合は、すみやかに医師に相談することも大切です。
バーンアウトの原因
バーンアウト症候群になるのには原因があります。ここでは、4つの原因について1つずつ詳しく見ていきましょう。
要求以上の成果を出そうとする
バーンアウト症候群になりやすい人はひたむきな人が多く、要求以上の成果を成し遂げようとするあまり多くの仕事を抱えてしまいがちです。特に人が相手の仕事の場合、相手からの要求にしっかり応えるためには多大なエネルギーを消耗してしまいます。そして、仕事の成果が出ない場合には、極度に疲弊しバーンアウト症候群に陥ってしまうリスクがあるのです。
完璧主義の傾向が強くなる
完璧主義の人は、バーンアウト症候群になりやすいです。完璧主義者の人は過度に責任感があり、自分自身の目標を高く設定したり、他人の評価に敏感になったりする傾向があります。目標が達成できないと、理想と現実のギャップに対して自己否定的となり、ストレスを抱えてバーンアウト症候群に陥りやすいのです。
残業が多い
劣悪な仕事環境で働いていると、バーンアウト症候群になりやすいです。例えば、日々の仕事量が膨大で残業が常態化しており、休日出勤も多いような会社では仕事に対するモチベーションは下がってしまいます。そのような環境で働き続けるとストレスがたまりやすく、バーンアウト症候群になりやすいでしょう。
高いノルマが課せられている
仕事で高いノルマが課されている人も、バーンアウト症候群になりやすいです。
昨今の日本では人手不足が社会問題となっており、業種によっては長時間労働を余儀なくされているところがあります。そのようなケースでは、労働者一人あたりの労働時間が増え、ノルマも高く設定される傾向にあります。ノルマを達成できない場合のペナルティを恐れて、精神的なストレスが増えバーンアウト症候群を誘発する恐れがあるのです。
バーンアウトを防ぐ方法
バーンアウト症候群は予防が大切です。ここでは、5つの予防方法について解説します。
食事・睡眠をしっかりとる
バーンアウト症候群を防ぐためには、何よりもまず健康であることが大切です。食事や睡眠はしっかりとりましょう。特に睡眠に関しては、睡眠不足になると脳の神経細胞が十分に修復できなくなる恐れがあります。睡眠不足の状態が長期に渡ると、バーンアウト症候群だけでなくうつ病になる危険性も増すので注意が必要です。
働く環境・作業環境を整える
働く環境や作業環境を整えることも大切です。近年は在宅ワークの普及によって、仕事とプライベートの切り替えが難しいという人も多いですが、オン/オフのメリハリをつけた生活が大切です。そのためには、例えばベッドの上でパソコン作業をしない、パジャマのままで仕事をしないといった対策をしましょう。
また、仕事をする空間とプライベート空間を別々にするという方法も有効です。
メンターやコーチなどを準備する
メンターやコーチなどの相談相手によるサポートも、バーンアウトの予防に有効です。仕事に関する悩みの場合、上司に相談しにくいという人もいるため、別部署や社外の人をメンターやコーチとして準備するとよいでしょう。安心して話ができる相手がいると、精神的安心感にもつながり、一人で問題を抱え込まずに済みます。
環境の変化があったメンバーにはケアを行う
環境の変化があったメンバーに対する配慮も大切です。特に、まだ仕事に慣れていない新入社員などは情緒的消耗に陥りやすいため、注意が必要です。例えば、定期的に個別ミーティングを行い業務の進捗状況や業務量が負担になっていないかなどを確認しましょう。社内のコミュニケーションを密にして、お互いを気遣い合うことも大切です。
過剰な目標・業務負担を課さない
社員に対しては、過度な目標設定をしたり、業務の負担が増えるような指示を出したりしないことが大切です。無理強いをすると、離職につながってしまうリスクもあります。社員の負担を減らし働きやすくするために、メンタルヘルス対策を実施したり業務効率化を図ったりなどの労働環境の改善が大切です。
バーンアウト症状が出てしまった場合の対処法
ここでは、バーンアウト症候群の症状が出てしまった社員に対する対処方法について解説します。
業務負担を減らす
社員にバーンアウト症候群の症状が出てしまった場合、過度な業務負担となっていた可能性があります。業務負担を減らすために他部署に移動させる、長時間の残業はさせないなどの対策が必要です。
目標の見直しを行う
社員の心理的ストレスを和らげるために、目標の見直しも大切です。もともと高く設定されていた目標のハードルを下げてみましょう。また、最終的な目標だけでなく、短期間で達成できる小さな目標を設定することも有効です。そうすることで小さな成功体験を積め、自信やモチベーションアップにつながりやすくなります。
情報共有の仕組みを見直す
情報共有の仕組みを見直すことも視野に入れましょう。社内の情報共有が不十分だと、人は不安になりストレスを感じやすくなるものです。情報共有をスムーズに行うために、社内の情報を一元管理したり、毎日決まった時間にミーティングを行ったりする対策が有効です。また、情報共有ツールを活用することで、バーンアウト症候群の緩和だけでなく業務効率化やコミュニケーションの促進に対しても効果が期待できるでしょう。
働きやすい社内環境を整備してバーンアウト症候群を予防しよう
バーンアウト症候群になると、仕事だけでなく私生活にも悪影響が出る可能性があります。予兆が見られたら、周囲の人が積極的に声がけを行うなどのケアが大切です。予防策も大切ですが、万が一なった場合には労働環境を改善し働きやすい職場環境の整備が必要です。
また、働きやすい職場を作り上げるためには、社内の密なコミュニケーションが欠かせません。スムーズな情報共有を行うために、情報共有ツールを利用してみるのもおすすめです。社員一人ひとりが、やりがいをもって働ける職場環境づくりが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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