- 更新日 : 2024年12月13日
ボーナス(賞与)とは?平均はいくら?計算方法についても解説
ボーナスは「賞与」とも呼ばれ、業績等に応じて支払われる定期または臨時の賃金です。毎月の給与と異なり法律上の支給義務はなく、支給日や支給時期、計算方法等は会社が任意に決定します。本記事では、ボーナスの定義や種類、平均額、公務員のボーナスとの違い等について解説します。
目次
ボーナスとは?
ボーナスとは、毎月の給与とは別に、業績や経営状態に応じ、定期または臨時に支払われる賃金です。
労働基準法で支払いが義務づけられている給与と異なり、ボーナスには法律上の支払義務はありません。そのためボーナスの計算方法や額、支給回数、支給時期等は、原則として会社が任意に設定できます。
ボーナスと賞与の違い
英語か日本語かの違いだけで、ボーナスと賞与は同じものです。ボーナスの語源は、ラテン語で「良い」という意味のBonus(ボヌス)。これはローマ神話の成功と収穫の神「Bonus Eventus(ボヌス・エヴェントス)」に由来するといわれています。
なお英語のボーナス(Bonus)には、賞与・期末手当という訳語に加え「思いがけない贈り物(良いこと)」という意味もあるようです。
ボーナスの種類
ボーナスは支給の性質や計算方法等により「基本給連動型賞与」「業績賞与」「決算賞与」の3種類に分けられます。
基本給連動型賞与
基本給連動型賞与とは「基本給の2ヶ月分」のように、基本給に連動してボーナス額を決めるものです。昔から日本企業において広く用いられてきた方式で、支給額の予測がしやすく、額が比較的安定しているという特徴があります。
一方、会社や個人の業績が反映されにくいため、モチベーションアップ効果はそれほど高くはないでしょう。よって、それを補うために基本給連動型賞与を、後述する「業績賞与」と組み合わせて支給する会社もあります。
業績賞与
業績賞与とは、会社や個人の業績に連動して支給額を決定する方式です。業績連動型賞与とも呼ばれます。
業績が支給額に反映されるため成果主義型の体系とされており、従業員のモチベーションアップにつながりやすい点が特長です。一方で、基本給連動型賞与に比べ支給額の増減が大きく、支給額を長期的に予測しにくい点はデメリットだといえます。
決算賞与
決算賞与とは、会社の業績に応じて支給されるもので、その年度の会社利益の一部を従業員に分配する性質があります。業績が良かった事業年度には多額のボーナスが支給される一方、業績が低迷した年度は少額になったり不支給になったりする点がデメリットです。
決算賞与は、会社業績により額が決まるため、従業員のモチベーションアップ効果が期待できるでしょう。また賞与の支給が節税につながることもあります。
公務員のボーナスと一般企業のボーナスの違い
公務員と一般企業のボーナスの違いは、支給について法律の定めがあるか否かです。
公務員のボーナスは、支給基準日や支給日、計算方法などが法律や条例に定められています。例えば国家公務員の場合、支給対象となるのは6月1日と12月1日の在籍者、支給日は6月30日と12月10日です。期末手当と勤勉手当から成り、それぞれの計算方法も規定されています。
一方、民間企業のボーナスに法律の定めはなく、支給日、支給基準日、計算方法、支給の有無に至るまで、各企業の裁量に委ねられています。
ボーナスの支給時期
「夏と冬のボーナス」は一般的ですが、ボーナスの支給時期について法律の規定はありません。しかしボーナスの性質により、いくつかのパターンがあります。
夏と冬に1回
多くの会社が、夏と冬に1回ずつボーナスを出しています。通常は6月(または7月)と12月に支給されます。
支給回数3回以上
前述の「夏と冬」のボーナスに決算賞与をプラスし、合計で年3回支給するパターンです。なお稀に年4回以上ボーナスを出す会社もありますが、この場合は健康保険料や厚生年金保険料の算定方法が通常のボーナスと異なるため注意しましょう。
年度末に1回
事業年度末に1回「期末賞与」を支払う会社も少なくありません。その事業年度の会社利益の一部を従業員に還元する形で支給します。
ボーナスなし
賃金制度上、ボーナスを最初から設定していない会社もあります。
ボーナスに関する決まりごと
ボーナスの支給日や回数に法令の規定はありませんが、留意すべき点はあります。社会保険や雇用保険におけるボーナスの扱いと併せて解説します。
支給日に決まりはある?
ボーナスの支給日について法律の定めはありません。ただし、就業規則や労働契約で支給日が定められている場合は、その支給日に支払う必要があります。
なお決算賞与をその事業年度の損金にするには「事業年度終了日の翌日から1ヶ月以内」に支払う必要があるため、注意が必要です。
支払い回数に決まりはある?
ボーナスの支払い回数にも法律の規定はありません。しかし、就業規則等に支給回数が明記されている場合は、その回数に従わなければなりません。
社保・雇用保険料におけるボーナスの位置づけ
ボーナスには、原則として社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)と雇用保険料がかかります。また、従業員負担分はありませんが、労災保険料の対象です。
社会保険と雇用保険とで扱いが異なるのは、退職者や退職予定者にボーナスを支払う場合です。社会保険は、退職日の属する月(退職日が月の末日の場合以外)に支払われたボーナスに保険料はかかりません。一方雇用保険は、ボーナスの支払日にかかわらず保険料がかかります。労災保険も雇用保険と同じ扱いです。
なお、ボーナスの支払回数が年4回以上の場合は、社会保険の計算上はボーナス(標準賞与)として扱わず、通常の給与と同じく報酬として計算します。
ボーナス支給の有無の決め方
会社の業績が良くないときなどは、ボーナスの支給を躊躇することもあるでしょう。しかし法律上の義務がないとはいえ、就業規則等に賞与の支払いが明記されていれば、それに従わなければなりません。
ただし、就業規則等の文言が「会社の業績によってはこの限りでない」「会社の業績により賞与を支給することがある」といったものであれば、会社業績が悪いときにボーナスの支給がなくても問題はないでしょう。
毎年賞与が支給されている会社では、従業員は「今年も賞与があるだろう」と期待するでしょう。そのため、もし賞与が出せない場合や例年より少額になる場合は、その理由を従業員に説明できるように準備しておく必要があります。
支払金額の決め方
ボーナスの支払金額は、就業規則等で決定方法や計算式が取り決められているときは、それに従います。
従業員数の少ない企業では、ボーナスの額を社長の裁量のみで決定するケースが少なくないかもしれません。しかしボーナスの計算方法をあらかじめ決めておけば、ボーナス計算の時間短縮につながるだけでなく、制度の透明性も高まります。
ボーナスが支払われる条件 – 支給日在籍の要件とは?
ボーナスの支払条件に「支給日に在籍していること」を挙げている会社は少なくありません。そして、この支給日在籍要件をつけるか否かは、会社が任意に決められます。
よく取り沙汰されるのが、査定期間との関係です。12月支払いのボーナスに対応する査定期間が「4月から9月まで」の場合、8月退職者にボーナスを支払うかどうかは、支給日在籍要件の有無に左右されます。
支給日在籍要件がなければ支払義務があり、在籍要件があれば「12月の支払日」には既に退職しているため、支払う必要がありません。なお、支給日在籍要件をつける場合は、就業規則等にその旨を明記しておきます。
ボーナスの一般的な金額
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、令和4年の年末賞与平均額は392,975円、令和5年の夏季賞与平均額は397,129円でした。
産業別では、電気・ガス業の745,209円から飲食サービス業等の59,978円(いずれも令和5年夏季賞与)まで、大きな開きがあります。ボーナス額は、産業により、また個々の会社により異なるため、あくまで平均額としてとらえましょう。
ボーナスの計算方法
ボーナス計算は、支給額の決定、社会保険料・雇用保険料の計算及び控除、所得税の算出および控除の順に進めていきます。
- ボーナス支給額の決定
決定方法は会社により異なりますが、就業規則等に決定方法が記載されている場合は、それに従って計算します。 - 社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)の計算
ボーナス額の1000円未満を切り捨てて算出した「標準賞与」の額に、それぞれの保険料率を乗じます。なお標準賞与には上限(健康保険は、年度の累計額573万円、厚生年金保険は1ヶ月150万円)があり、上限を超えた分について社会保険料はかかりません。 - 雇用保険料の計算
ボーナス額にそのまま雇用保険料率(労働者負担分)を乗じて計算します。 - 所得税額の計算
ボーナスから社会保険料と雇用保険料を差し引き、所得税が課される額を算出します。そしてその額に、前月給与から求めた賞与所得税率を乗じて、所得税額を算出します。 - 振込額の算出
ボーナス額から社会保険料、雇用保険料及び所得税を差し引き、振込額を計算します。
【労務担当者向け】ボーナス支払いに必要な手続き
ボーナスを支給したら賞与支払届を作成し、紙媒体または電子申請により、管轄の年金事務所に提出します。また健康保険組合管掌の事業所は、年金事務所に加え、健康保険組合への提出も必要です。
賞与支払届については、次の事項に注意してください。
- 70歳以上の従業員についても届出が必要です
- 資格喪失月にボーナスが支払われた場合でも、支払日が退職日以前の場合は、賞与支払届を提出します(ただし社会保険料の対象にはなりません)
- 育児休業中など社会保険料免除期間中に支払われたボーナスについても、賞与支払届が必要です
- ボーナス支給回数が年4回以上の場合は、賞与支払届の対象になりません
ボーナスの計算は正確さが大切
ボーナスを支払うには、支給額の決定、社会保険料や雇用保険料の計算、所得税の控除など、煩雑な事務をこなさなければなりません。
しかしボーナスは、従業員のモチベーションアップにつながる大切な賃金です。ボーナスを支給した後で訂正などということにならないよう、ミスなく計算しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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