- 更新日 : 2025年10月31日
年金から住民税は引かれる?課税・非課税の条件や金額を解説
2009年10月から、公的年金から住民税が引かれる特別徴収が行われるようになりました。特別徴収の対象は、4月1日時点で65歳以上の公的年金受給者のうち、住民税を納税する義務がある人です。
特別徴収対象年金額や特別徴収される住民税額は、毎年6月に市区町村から送付される税額決定・納税通知書に記載され、通知されます。
目次
年金から住民税は引かれる?
会社員の給与所得や個人事業主の事業所得には、税金がかかります。では、高齢者が受け取る老齢年金や、障がい者・遺族に対して支払われる障害年金・遺族年金に税金はかかるのでしょうか? ここでは、「年金から住民税が引かれるか」について解説します。
厚生年金の場合
会社員や公務員など、厚生年金の加入期間がある人には老齢厚生年金が支払われます。老齢厚生年金は課税されるため、老齢基礎年金と合わせて一定額以上になると住民税を支払う必要があります。
国民年金の場合
国民年金から高齢者に支払われる年金を老齢基礎年金といいます。一定の保険料納付済期間に、65歳以上の高齢者に支払われる年金です。老齢基礎年金も課税されるため、老齢厚生年金と合わせて一定額以上になると住民税がかかります。
遺族年金・障害年金の場合
遺族年金は生計維持者を失った一定の遺族を対象に支払われる年金で、国民年金から支払われる遺族基礎年金と、厚生年金から支払われる遺族厚生年金があります。
障害年金は一定の障害を持つ者に対して支払われる年金で、国民年金から支払われる障害基礎年金と、厚生年金から支払われる障害厚生年金があります。
遺族年金(遺族基礎年金と遺族厚生年金)と障害年金(障害基礎年金と障害厚生年金)に住民税はかかりません。金額に関係なく、非課税とされています。
年金から住民税が引かれる条件
年金から住民税が引かれることを、特別徴収といいます。以下の条件に該当する場合、年金から住民税が特別徴収されます。
- その年の4月1日時点で65歳以上であること
- 年金額が18万円以上であること
ただし以下の場合、特別徴収は行われません。
- その年の1月2日以降、他の市町村に転出した場合
- 年度の途中で介護保険料額や税額に変更があった場合
- その年の4月1日時点で年金の支払いを受けていなかった場合
- 特別徴収額が年金支給額を超える場合
年金から住民税を支払う方法
2009年10月支給分から、年金から住民税が引かれる特別徴収が行われるようになりました。年金受給者の納税の手間を省くとともに、市町村における事務の効率化を図るために導入された制度です。住民税の支払方法や注意点を解説します。
特別徴収で支払う
住民税の支払方法には年金からの特別徴収の他に、市役所や金融機関などで納付書によって納める普通徴収があります。しかし、年金からの住民税の特別徴収は地方税法第321条7の2に基づく制度で、個人が徴収方法を選択することはできません。条件に該当する場合、住民税は年金から特別徴収されます。
普通徴収の支払いで二重課税にならない?
年金から特別徴収される住民税は、支払われる年金にかかる分のみです。他に所得がある場合はその所得から引かれたり、普通徴収で納めたりする必要があります。普通徴収が行われる場合でも、年金からの特別徴収による二重課税にはなりません。
年金からの控除額一覧
年金に対してかかる税金は、受取年金額から公的年金等控除額を差し引いて計算されます。公的年金等控除額は年齢と年金額、年金以外の所得金額によって決まります。
・年金以外の所得がないか、1,000万円以下の場合
| 年齢 | 年金額 | 公的年金等控除額 |
|---|---|---|
| 65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 |
| 130万円超410万円以下 | 年金額×25%+27.5万円 | |
| 410万円超770万円以下 | 年金額×15%+68.5万円 | |
| 770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+145.5万円 | |
| 1,000万円超 | 195.5万円 | |
| 65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 |
| 330万円超410万円以下 | 年金額×25%+27.5万円 | |
| 410万円超770万円以下 | 年金額×15%+68.5万円 | |
| 770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+145.5万円 | |
| 1,000万円超 | 195.5万円 |
・年金以外の所得が1000万円超2,000万円以下の場合
| 年齢 | 年金額 | 公的年金等控除額 |
|---|---|---|
| 65歳未満 | 130万円以下 | 50万円 |
| 130万円超410万円以下 | 年金額×25%+17.5万円 | |
| 410万円超770万円以下 | 年金額×15%+58.5万円 | |
| 770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+135.5万円 | |
| 1,000万円超 | 185.5万円 | |
| 65歳以上 | 330万円以下 | 100万円 |
| 330万円超410万円以下 | 年金額×25%+17.5万円 | |
| 410万円超770万円以下 | 年金額×15%+58.5万円 | |
| 770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+135.5万円 | |
| 1,000万円超 | 185.5万円 |
・年金以外の所得が2,000万円超の場合
| 年齢 | 年金額 | 公的年金等控除額 |
|---|---|---|
| 65歳未満 | 130万円以下 | 40万円 |
| 130万円超410万円以下 | 年金額×25%+7.5万円 | |
| 410万円超770万円以下 | 年金額×15%+48.5万円 | |
| 770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+125.5万円 | |
| 1,000万円超 | 175.5万円 | |
| 65歳以上 | 330万円以下 | 90万円 |
| 330万円超410万円以下 | 年金額×25%+7.5万円 | |
| 410万円超770万円以下 | 年金額×15%+48.5万円 | |
| 770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+125.5万円 | |
| 1,000万円超 | 175.5万円 |
2009年10月に始まった住民税の特別徴収を正しく理解しよう
2009年10月に、年金から住民税が引かれる特別徴収制度が導入されました。その年の4月1日時点で65歳以上、18万円以上の老齢年金受給者が対象です。条件に該当する場合に特別徴収が行われ、普通徴収を選択することはできません。
老齢年金にかかる税金は、受け取る年金額から公的年金等控除額を差し引いた金額をもとに計算されます。年金や税金に対する理解を深めるために、住民税の特別徴収の仕組みや税額の計算方法の知識を身につけましょう。
よくある質問
年金から住民税は引かれますか?
老齢年金からは住民税が引かれますが、遺族年金や障害年金からは引かれません。詳しくはこちらをご覧ください。
年金から住民税はどのようにして支払われますか?
基本的に、年金から天引きされて支払われます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
契約社員も育休をとれる!取得条件や手続き方法を分かりやすく解説
出産後も仕事を続ける予定でいるけれど、契約社員でも育休はとれるの?と不安を抱いている方もいるでしょう。しかし、契約社員も一定の条件を満たせば、法律上育休を取得できます。 とはいえ、契約社員の場合は契約期間や更新の有無によって育休の取得可否が…
詳しくみる公務災害と労災の違いは?対象や給付内容、手続きの流れなどをわかりやすく解説
公務災害と労災の違いは、初めて事故や病気に遭った際に混乱しやすいポイントです。「自分はどちらに該当するの?」「どうやって申請するの?」と悩む方も多いでしょう。この記事では、公務災害と労災それぞれの定義や補償内容、適用対象者、具体的な申請手続…
詳しくみる個人事業主が選択できる4つの健康保険まとめ
会社に勤めている場合、国民健康保険又は各会社の保険組合に加入することになっていますが、独立して個人事業主として働く場合には自分で加入する健康保険を選ぶ必要があります。 しかし、これは逆に言うと自由に健康保険を選択することができるとも言えます…
詳しくみる産休手当を受給できる条件は?計算方法についても解説!
産休手当は、健康保険の被保険者が出産のために会社を休んだときに支給される手当のことで、正式名称は「出産手当金」です。産休手当として支給される金額がいくらくらいなのか、支給される条件にはどのようなものがあるのか、気になっている方も多いでしょう…
詳しくみる公務員の社会保険は会社員と違う!?自営業についても解説!
公務員と会社員の社会保険には、同じ点もあれば違う点もあります。公務員の年金は会社員と同じ厚生年金保険ですが、健康保険は会社員が協会けんぽや健康保険組合に加入するのに対し、公務員は共済組合に加入する点が異なります。 共済組合には国家公務員共済…
詳しくみる社会保険の改定まとめ!社会保険の種類・対象・保険料の計算方法も解説
日本の社会保険制度は大きな改定期を迎えており、企業の人事・法務担当者や被保険者にとって最新情報の把握が欠かせません。社会保険改定のポイントとして、短時間労働者への適用拡大、保険料率の変更などが挙げられます。 本記事では、これらの改定内容と注…
詳しくみる