- 更新日 : 2025年2月27日
年金から住民税は引かれる?課税・非課税の条件や金額を解説
2009年10月から、公的年金から住民税が引かれる特別徴収が行われるようになりました。特別徴収の対象は、4月1日時点で65歳以上の公的年金受給者のうち、住民税を納税する義務がある人です。
特別徴収対象年金額や特別徴収される住民税額は、毎年6月に市区町村から送付される税額決定・納税通知書に記載され、通知されます。
目次
年金から住民税は引かれる?
会社員の給与所得や個人事業主の事業所得には、税金がかかります。では、高齢者が受け取る老齢年金や、障がい者・遺族に対して支払われる障害年金・遺族年金に税金はかかるのでしょうか? ここでは、「年金から住民税が引かれるか」について解説します。
厚生年金の場合
会社員や公務員など、厚生年金の加入期間がある人には老齢厚生年金が支払われます。老齢厚生年金は課税されるため、老齢基礎年金と合わせて一定額以上になると住民税を支払う必要があります。
国民年金の場合
国民年金から高齢者に支払われる年金を老齢基礎年金といいます。一定の保険料納付済期間に、65歳以上の高齢者に支払われる年金です。老齢基礎年金も課税されるため、老齢厚生年金と合わせて一定額以上になると住民税がかかります。
遺族年金・障害年金の場合
遺族年金は生計維持者を失った一定の遺族を対象に支払われる年金で、国民年金から支払われる遺族基礎年金と、厚生年金から支払われる遺族厚生年金があります。
障害年金は一定の障害を持つ者に対して支払われる年金で、国民年金から支払われる障害基礎年金と、厚生年金から支払われる障害厚生年金があります。
遺族年金(遺族基礎年金と遺族厚生年金)と障害年金(障害基礎年金と障害厚生年金)に住民税はかかりません。金額に関係なく、非課税とされています。
年金から住民税が引かれる条件
年金から住民税が引かれることを、特別徴収といいます。以下の条件に該当する場合、年金から住民税が特別徴収されます。
- その年の4月1日時点で65歳以上であること
- 年金額が18万円以上であること
ただし以下の場合、特別徴収は行われません。
- その年の1月2日以降、他の市町村に転出した場合
- 年度の途中で介護保険料額や税額に変更があった場合
- その年の4月1日時点で年金の支払いを受けていなかった場合
- 特別徴収額が年金支給額を超える場合
年金から住民税を支払う方法
2009年10月支給分から、年金から住民税が引かれる特別徴収が行われるようになりました。年金受給者の納税の手間を省くとともに、市町村における事務の効率化を図るために導入された制度です。住民税の支払方法や注意点を解説します。
特別徴収で支払う
住民税の支払方法には年金からの特別徴収の他に、市役所や金融機関などで納付書によって納める普通徴収があります。しかし、年金からの住民税の特別徴収は地方税法第321条7の2に基づく制度で、個人が徴収方法を選択することはできません。条件に該当する場合、住民税は年金から特別徴収されます。
普通徴収の支払いで二重課税にならない?
年金から特別徴収される住民税は、支払われる年金にかかる分のみです。他に所得がある場合はその所得から引かれたり、普通徴収で納めたりする必要があります。普通徴収が行われる場合でも、年金からの特別徴収による二重課税にはなりません。
年金からの控除額一覧
年金に対してかかる税金は、受取年金額から公的年金等控除額を差し引いて計算されます。公的年金等控除額は年齢と年金額、年金以外の所得金額によって決まります。
・年金以外の所得がないか、1,000万円以下の場合
年齢 | 年金額 | 公的年金等控除額 |
---|---|---|
65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 |
130万円超410万円以下 | 年金額×25%+27.5万円 | |
410万円超770万円以下 | 年金額×15%+68.5万円 | |
770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+145.5万円 | |
1,000万円超 | 195.5万円 | |
65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 |
330万円超410万円以下 | 年金額×25%+27.5万円 | |
410万円超770万円以下 | 年金額×15%+68.5万円 | |
770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+145.5万円 | |
1,000万円超 | 195.5万円 |
・年金以外の所得が1000万円超2,000万円以下の場合
年齢 | 年金額 | 公的年金等控除額 |
---|---|---|
65歳未満 | 130万円以下 | 50万円 |
130万円超410万円以下 | 年金額×25%+17.5万円 | |
410万円超770万円以下 | 年金額×15%+58.5万円 | |
770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+135.5万円 | |
1,000万円超 | 185.5万円 | |
65歳以上 | 330万円以下 | 100万円 |
330万円超410万円以下 | 年金額×25%+17.5万円 | |
410万円超770万円以下 | 年金額×15%+58.5万円 | |
770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+135.5万円 | |
1,000万円超 | 185.5万円 |
・年金以外の所得が2,000万円超の場合
年齢 | 年金額 | 公的年金等控除額 |
---|---|---|
65歳未満 | 130万円以下 | 40万円 |
130万円超410万円以下 | 年金額×25%+7.5万円 | |
410万円超770万円以下 | 年金額×15%+48.5万円 | |
770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+125.5万円 | |
1,000万円超 | 175.5万円 | |
65歳以上 | 330万円以下 | 90万円 |
330万円超410万円以下 | 年金額×25%+7.5万円 | |
410万円超770万円以下 | 年金額×15%+48.5万円 | |
770万円超1,000万円以下 | 年金額×5%+125.5万円 | |
1,000万円超 | 175.5万円 |
2009年10月に始まった住民税の特別徴収を正しく理解しよう
2009年10月に、年金から住民税が引かれる特別徴収制度が導入されました。その年の4月1日時点で65歳以上、18万円以上の老齢年金受給者が対象です。条件に該当する場合に特別徴収が行われ、普通徴収を選択することはできません。
老齢年金にかかる税金は、受け取る年金額から公的年金等控除額を差し引いた金額をもとに計算されます。年金や税金に対する理解を深めるために、住民税の特別徴収の仕組みや税額の計算方法の知識を身につけましょう。
よくある質問
年金から住民税は引かれますか?
老齢年金からは住民税が引かれますが、遺族年金や障害年金からは引かれません。詳しくはこちらをご覧ください。
年金から住民税はどのようにして支払われますか?
基本的に、年金から天引きされて支払われます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
産後パパ育休とは?育休との違いや制度の詳細を解説!
産後パパ育休は、主に男性が出産直後の配偶者とともに育児をしやすくするための育休制度です。 子の出生後8週間の間に、最大4週間の休業を2回に分けて取得できるのが大きな特徴です。本記事では、他の育休制度と比較しながら産後パパ育休の導入にあたって…
詳しくみる雇用保険被保険者証とは?再発行の方法や離職票との違い
雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入していることを示す書類で、事業主を通じてハローワークから交付されるのが一般的です。 原則は雇入れ時に渡されることとなっていますが、重要書類であることから会社が保管し、退職時に雇用保険被保険者証を渡すケー…
詳しくみる一日で辞めた社員も社会保険料が発生する?退職日と保険料の関係を解説!
健康保険や厚生年金保険などの社会保険料は月単位で計算されます。また、月の途中で従業員が退職した場合には、原則として資格喪失月の保険料は発生しません。では、入社してすぐに従業員が退職するようなケースでは、社会保険料は徴収されるのでしょうか。 …
詳しくみる資格確認書とは?どこでもらえる?送付状のテンプレも
2024年12月2日以降、従来の健康保険証が新規発行されなくなる代わりに、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」が基本となります。 しかし、何らかの事情でマイナンバーカードを取得・利用できない方のために、医療保険者(協…
詳しくみる休職中の社会保険料ガイド|払えない場合は?全額負担になる?
人事労務担当者やビジネスパーソンにとって、休職中の社会保険料の取り扱いは悩ましい問題ですが、休職中の社会保険料は原則として全額負担です。支払いが困難な場合においては、対応策があります。 本記事では、休職中の社会保険料の仕組みや支払い方法、負…
詳しくみる育児休業給付金(育休手当)とは?給付の条件や申請方法を解説
育児休業給付金とは、育児休業を取得したときに国から支給されるお金のことです。休業中の収入が確保されることで、従業員は安心して育児に専念できます。パートや契約社員など、有期雇用社員も受給が可能です。 本記事では、育児休業給付金の概要や支給条件…
詳しくみる