• 更新日 : 2025年7月23日

「法定休日」とは?「振替休日」と「代休」の違いを正しく理解しよう

「法定休日」とは、労働基準法に定められている休日のことをいいます。休日には、この法定休日以外にも、「法定外休日(所定休日)」「有給休暇」「振替休日」「代休」などの休日があり、それぞれの名称については皆さんも聞いたことがあると思います。今回はこれらについて整理するとともに、振替休日と代休との違いについて解説します。

法定休日・法定外休日(所定休日)とは?

まず、法定休日と法定外休日とはどのような休日なのか、それぞれについて見ていきます。

法定休日とは?

労働基準法第35条第1項で、使用者は労働者に「毎週少なくとも1回の休日」を与えなければなりません。これを「法定休日」といいます。

法定休日は、原則として午前0時〜午後12時までの暦日をいいます。法定休日にする曜日を特定することは義務ではありませんが、特定する方が望ましいとされています。また、週1日の休日の例外として「4週を通じて4日」と定めることも可能です。(同法第35条第2項)ただし、これを適用するには、4週間の起算日を就業規則等に定めておかなければなりません。

また、法定休日に勤務した場合には、割増率35%以上の割増賃金の支払いが必要になります。しかし、法定休日以外の所定休日に勤務した場合は、週の労働時間が週の法定労働時間である40時間を超えた部分について、時間外労働として割増率25%以上の割増賃金の支払いが必要です。

法定外休日(所定休日)とは?

一方、法定休日以外の休日については、会社ごとの就業規則等で自由に規定することができ、「所定休日」といいます。週休2日制、国民の祝日、年末年始、夏季休暇等を会社の休日としている会社が多いようです。

法定外休日について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご確認ください。

振替休日とは?

振替休日とは、事前に労働日と休日を振り替えて、あらかじめ休日にしていた日を労働日とする代わりに、その他の労働日を休日とする制度です。

振替休日の条件は?

労働者にとっては、振替休日を取るからといって休日労働が頻繁に行われると、私生活や体調に支障をきたすおそれがあります。そのため、次のような取り扱いが必要とされています。

  • 就業規則に振替休日についての規程があること
  • 振替休日とする日を明確に指定すること
  • 前もって振替休日を指定しておくこと
  • 法定休日を確保しておくこと

    振替休日は割増賃金の支払いが必要?

    振替休日は、休日出勤をしたとしても、その日は労働日ですので休日労働にはなりません。労働日ですので割増賃金の支払いもありません。ただし、休日の振替により労働した日の週の労働時間が週の法定労働時間を超えた場合、その時間は時間外労働となるので、割増賃金を支払う必要があります。

    振替休日と代休の違いは?

    休日に労働した場合に、休日労働した後の日に本来労働日だった日を休むことを「代休」といいます。振替休日のように「あらかじめ振替える」わけではありませんので、労働した時間は休日労働として扱われ、法定休日に労働した時間は原則通り、35%以上の割増率での割増賃金の支払いが必要になります。

    振替休日と代休の違い
    振替休日と代休の違い

    代休について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご確認ください。

    法定休日に振替休日は適用される?

    労働基準法第35条により休日と定められている日のことを「法定休日」といいます。法定休日は従業員に対して、1週間に1日、もしくは4週間に4日以上与えることが義務付けられています。法定休日は振替休日にも適用されます。ただし、実際に振替休日として認められるためには一定の条件があります。

    • 就業規則に振替休日についての規程があること
    • 振替休日とする日を明確に指定すること
    • 前もって振替休日を指定しておくこと
    • 法定休日を確保しておくこと

      その他、従業員の負担を減らすため、頻度の高い休日の振替は避けること、なるべく早めに振替休日を設けることなどに気をつけましょう。

      管理職・非正規・フレックス社員における「振替休日」「代休」の運用

      振替休日や代休の制度は、雇用形態や勤務体系によって運用方法が異なります。正社員と非正規社員、あるいはフレックスタイム制や管理監督者など、立場や契約に応じた適切な運用が必要です。ここでは、それぞれの働き方に応じた「振替休日」「代休」制度の扱い方について解説します。

      管理監督者の場合

      労働基準法第41条により、いわゆる「管理監督者」として認められる社員は、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用が除外されます。そのため、原則として法定休日に働いたとしても代休や振替休日の取得義務はありません。また、休日出勤に対する割増賃金も不要とされることがあります。

      ただし、これはあくまで「名ばかり管理職」でない、実態において経営に準じるような立場にある社員に限られます。実務では、企業が独自に管理職にも代休や振替休日を認めている場合もあり、就業規則や労使協定で明文化しておくことが重要です。

      非正規社員(アルバイト・契約社員・パートタイマー)の場合

      非正規社員であっても、労働基準法は正社員と同じように適用されます。そのため、事前に労働日を振り替えた場合は振替休日、休日出勤後に別の日に休む場合は代休として扱われます。勤務日数や時間数に応じて振替・代休の対象となるかを判断する必要があります。

      特に注意が必要なのは、所定労働日数の少ないパートタイマーです。週に1日や2日しか勤務しない場合、どの日が法定休日に該当するのか判断しづらく、休日出勤の定義が曖昧になりやすいのです。このような場合でも、労働契約書や勤務シフトに基づいて振替・代休の扱いを明確にしておくことが求められます。

      フレックスタイム制の社員の場合

      フレックスタイム制では、社員が一定期間(清算期間)の中で労働時間を自律的に配分することができます。しかし、休日出勤や代休の扱いは無関係ではありません。たとえフレックス勤務であっても、法定休日に労働が発生すれば休日労働となり、代休や割増賃金の対象になります。

      また、フレックスタイム制の中でも「コアタイム」がある場合、その時間に働くことが求められます。休日と振り替えられた日は、通常の労働日となるため、コアタイムには出勤しなければなりません。企業側はフレックスタイム制度と代休・振替休日の整合性を保つよう、就業規則に具体的な運用ルールを設けておくべきです。

      締め日にまたがる休日労働や代休取得の勤怠管理・給与処理

      勤怠管理や給与計算を正確に行ううえで、締め日(給与計算期間の終わり)をまたぐ休日出勤や代休の扱いは重要です。実際の労働と代休取得日が別の月にまたがる場合、給与処理や労働時間の集計にズレが生じることがあり、トラブルの原因にもなります。ここでは、締め日をまたぐ場合における実務上の注意点と処理方法について解説します。

      締め日をまたぐ休日出勤の場合

      多くの企業では月末締め・翌月10日支払いなどのスケジュールを採用しています。このような場合、たとえば3月31日(日)に休日出勤した場合、その労働実績は3月分の勤怠に含まれることになります。

      この休日出勤に対する割増賃金は3月分として計算し、4月の給与支払い時に反映させるのが原則です。休日労働が発生した月に割増賃金を計上することが法的にも望ましいとされています。ただし、やむを得ず翌月に繰り越す場合は、会社の給与規程や労使協定で処理基準を明示しておく必要があります。

      締め日をまたぐ代休の場合

      代休は、休日労働に対する「休息の付与」であり、法律上は義務ではありません。ただし、会社の制度として代休制度を導入している場合は、実際に代休を取得した日がどの月の勤怠に属するかが重要です。

      例えば、3月31日(日)に休日出勤し、代休を4月3日(水)に取得した場合、労働時間の集計上、3月に実績が1日分追加され、4月に1日分マイナスされることになります。勤怠システムや管理表では「休日出勤日」「代休取得日」を別々に正確に記録する必要があります。

      月をまたいだ代休を取得する場合には、給与計算に注意が必要です。代休の取得が月をまたぐような場合には、一旦休日出勤をした月に割増賃金を含めた給与全額を支払います。そして、翌月以降の代休取得月の給与から基本となる賃金のみを控除することになります。

      「振替休日」と「代休」を正しく運用するための社内ルール・就業規則の整備ポイント

      振替休日や代休の制度は、対象者や取得ルールが曖昧なまま運用されると、トラブルの原因になります。適正な運用を行うためには、社内ルールや就業規則に明確な定義と運用基準を盛り込むことが不可欠です。ここでは、制度設計・規則整備の観点から押さえておくべきポイントを解説します。

      振替休日・代休の違いを明文化する

      就業規則にはまず、「振替休日」と「代休」の定義を明確に記載する必要があります。

      • 振替休日
        事前に勤務日と休日を入れ替え、労働義務のある日を変更する制度(例:休日である土曜に勤務する代わりに勤務日である木曜を休みにする)。
      • 代休
        休日に出勤した後、別日に休みを取る制度。ただし法定休日労働は割増賃金の対象。

        この2つの違いを理解していない従業員や管理者が多いと、誤って割増賃金を支払わなかったり、代休取得義務があると誤解したりするリスクがあります。定義と扱いの違いを明文化し、運用ルールとして周知することが第一歩です。

        振替休日・代休の取得条件・手続きを明示する

        次に重要なのは、制度を利用する際の手続きフローと条件を規定することです。たとえば、以下のようなルールを就業規則や社内マニュアルに盛り込むと明確です。

        • 振替休日や代休を適用するには事前に申請書を提出し、上長の承認を得ること
        • 代休は休日出勤後〇ヶ月以内に取得すること(明確な取得期限はないが管理上必要)
        • 所定休日と法定休日の区別に基づいて、割増賃金の発生有無を明記

          特に、「代休を取得すれば割増賃金を支払わなくてもよい」と誤解しているケースが多いため、制度上の違いと給与処理の関係性を明確に記述しておくことが重要です。

          勤怠管理と連動したフローを整備する

          制度が就業規則に記載されていても、勤怠管理システムや実務の運用ルールが追いついていないと意味をなしません。以下のような運用ルールも併せて整備することが必要です。

          • 勤怠システムで「振替休日」「代休」が正しく選択・記録できること
          • 月次締め処理時に代休の未消化分や消化期限を自動集計する機能の活用
          • 管理職への研修・マニュアル配布などで、承認・確認の責任範囲を明確化

            こうした運用設計によって、制度を形式上のものにとどめず、現場レベルで確実に機能する仕組みを作ることが求められます。

            就業規則の周知を徹底する

            最後に、振替休日や代休の制度が従業員にとって実効性を持つためには、就業規則への記載と周知徹底も重要です。

            • 就業規則を変更し、振替休日・代休の運用条件を明確化する
            • 社内イントラネットや研修資料に就業規則と制度の運用例を記載し、従業員に周知する
            • 制度変更時には改定内容をメール・掲示などで全社員に周知する

              就業規則を変更して終わりではなく、制度の内容を全社員が理解し、自主的に適切に活用できる状態にしてこそ、制度の整備が完了したといえます。

              トラブル回避のための「振替休日」「代休」に関する労使間の合意の取り方

              振替休日や代休の運用は、法的なルールだけでなく、職場ごとの合意形成が重要です。運用方法や賃金の扱いについて労使間で誤解があると、後々トラブルに発展するリスクがあります。ここでは、制度を円滑に運用するための労使間の合意の取り方について解説します。

              制度導入時は就業規則で明文化する

              振替休日や代休に関する運用ルールを導入・変更する際には、就業規則へ記載し明文化することが基本です。どのようなケースで適用するのか、代休の取得期限、割増賃金の扱いなどは、労使で協議し、できうる限り意見を取り入れることが必要です。

              社内周知と説明会の実施

              就業規則や制度の運用ルールは、書面またはイントラネットなどで全社員に明示し、可能であれば管理職や人事担当者向けに説明会を開くことで、理解不足による誤運用を防げます。個別の出勤・休暇変更時には、口頭での確認やメールでの記録を残すなど、合意の形を見える化することも有効です。

              小規模事業所では労働者代表からの意見聴取を

              就業規則の作成や変更には、労働組合または労働者代表の意見を聴くことが必要です。小規模な事業所では、労働組合が組織されていないことが多いため、労働者代表から意見を聴取することになるでしょう。定期的に制度運用状況をレビューし、必要に応じて制度の内容を見直す姿勢も重要です。

              有給休暇とは?

              上述の「休日」とは別に、労働基準法第39条では、労働者に毎年規定の「年次有給休暇」を付与することを使用者に義務付けています。これは、労働者の疲労の回復や労働力の維持、ゆとりのある生活を保障するために、所定の休日以外にも一定の休みを付与する制度になっています。

              例えば、正社員の場合、雇い入れの日から起算して「6か月間継続勤務」し、かつ、全労働日の8割以上出勤した場合は10日の有給休暇が付与されます。その後、1年ごとに付与される日数が増えていき、雇い入れの日から6年半以上勤務した場合には、それ以後は毎年20日ずつ有給休暇が付与されます。

              有給休暇は労働者の権利であるため、労働者には時季指定権という有給休暇の取得日を指定する権利があり、使用者はその有給休暇の取得を認めなくてはなりません。労働者が届け出をすることは、労働者が既に有している権利を時季指定して行使するものであり、使用者の「承諾」や「同意」は必要ないのです。

              ただし、使用者には例外として「時季変更権」という権利があり、労働者の請求する時季に有給休暇を取得する場合に「事業の正常な運営を妨げる場合」には、他の時季を指定するよう求めることができます(使用者の時季変更権:法39条5項)。

              なお、「同じ日に他の人も休みを取ることになっているから」というのは理由になりません。同僚等のサポートによって部署内の業務に支障が生じないのであれば、「事業の正常な運営を妨げるもの」ではないからです。

              また、労働者が退職する直前にまだ消化していない有給休暇をまとめて請求したときはどのように取り扱うべきか、ということが労使間でよく問題になるようです。退職直前ですので、他の時季に変更することができない場合は、使用者は時季変更権を行使できません。その場合は労働者からの有給休暇の届出を拒むことができないため、業務の引継ぎなどを勘案し、退職時には前もって退職の申し出を行うよう事前に説明をしておきましょう。

              振替休日と代休の違いを確認しましょう

              振替休日と代休では労働基準法での休日の考え方が異なり、割増賃金の発生についても異なります。この違いを確認し、正しく理解して、間違った割増賃金の計算をしないように注意しましょう。

              よくある質問

              法定休日とは?

              「法定休日」とは、労働基準法第35条で定められている、使用者が労働者に必ず与えなければならない休日のことをいいます。毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通して4日以上の休日を与える必要があります。 詳しくはこちらをご覧ください。

              振替休日と代休の違いは?

              振替休日は、あらかじめ休日と定めた日を労働日として、その代わりに他の労働日を休日とすることをいいます。代休は、休日労働が行われたときに、その代わりとして休日労働日以後の特定の労働日を休みとするものです。詳しくはこちらをご覧ください。


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