- 更新日 : 2025年11月26日
人材育成計画の作成は難しい?作り方を5ステップでわかりやすく解説!
「人材育成計画の作成」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。しかし、ポイントを押さえてステップ通りに進めれば、誰でも効果的な計画を作成できます。この記事では、人材育成計画の作り方を5つのステップに分けて具体的に解説します。計画の重要性から、すぐに使える具体例、計画倒れを防ぐコツまで網羅しているので、ぜひ貴社の人材育成にお役立てください。
人材育成計画を作成する5ステップ
人材育成計画の作成は、決して複雑なものではありません。これから紹介する5つのステップに沿って進めることで、自社の状況に合った、実用的な計画を立てることができます。一つひとつのステップを着実に実行していくことが、成功への近道です。
ステップ1:現状分析と課題の明確化
最初に行うべきは、自社の「現在地」を正確に把握することです。経営目標や事業戦略に対して、現在の人材面で何が足りていないのか、どんな課題があるのかを洗い出します。社員アンケートや個人面談、スキルマップなどを活用して、組織全体および社員一人ひとりの能力や意欲を可視化しましょう。この現状分析が具体的であるほど、後の計画が的を射たものになります。
ステップ2:育成目標と人物像の設定
次に、現状分析で見えた課題をもとに「目指すべきゴール」を設定します。3年後、5年後に会社がどうなっていたいか、そのために社員にどんなスキルやマインドを持ってほしいかを具体的に描きましょう。「〇年後までに、〇〇のスキルを持つリーダーを〇名育成する」といった定量的な目標や、各階層で求められる理想の人物像(ペルソナ)を設定すると、計画の方向性がより明確になります。
ステップ3:育成プログラムの具体化
目標が決まったら、それを達成するための具体的な育成方法を考えます。育成方法には、実務を通して学ぶ「OJT」、研修などの「Off-JT(OFF-THE-JOB TRAINING)」、社員の自発的な学習を支援する「自己啓発(SD)」の3つの柱があります。これらをバランス良く組み合わせ、新入社員向け、管理職向けなど、対象者に合わせたプログラムを設計することが重要です。
ステップ4:実施計画(スケジュール・予算)の策定
育成プログラムが決まったら、それをいつ、誰が、どのくらいの予算で実行するのかを詳細な計画に落とし込みます。年間スケジュールを作成し、四半期ごと、月ごとの具体的なアクションプランを立てましょう。特に中小企業では予算が限られているケースも多いため、eラーニングの導入や後述する助成金の活用など、コストを抑えつつ効果を最大化する工夫が求められます。
ステップ5:評価方法の決定
計画は実行して終わりではありません。計画通りに進んでいるか、期待した効果が出ているかを測るための「評価」の仕組みが不可欠です。研修後の理解度テストやアンケート、上司や同僚からのフィードバック、目標達成度など、客観的な指標で評価できるように設計します。この評価結果をもとに計画を見直し、改善していくPDCAサイクルを回すことで、人材育成の質は着実に向上していきます。
なぜ人材育成計画は重要なのか
場当たり的な研修ではなく、なぜわざわざ時間と手間をかけてまで「計画」を作成する必要があるのでしょうか。それは、人材育成計画が企業の持続的な成長の土台となる、非常に重要な役割を担っているからです。
会社の成長と業績向上
人材育成はコストではなく、未来への「投資」です。社員一人ひとりのスキルや生産性が向上すれば、それは組織全体の力の底上げに直結し、最終的には売上や利益といった業績向上に繋がります。経営戦略と連動した人材育成計画を立てることで、事業目標の達成を強力に後押しすることができます。
社員のエンゲージメント向上と定着
会社が自身の成長を真剣に考え、キャリアアップの機会を提供してくれると感じることは、社員の働く意欲(エンゲージメント)を大きく高めます。明確な育成計画があることで、社員は自身の成長ステップをイメージしやすくなり、安心して働き続けることができます。結果として、優秀な人材の流出を防ぎ、定着率の向上にも繋がるのです。
経営ビジョンの浸透
人材育成計画は、経営層が社員に何を期待しているのかを伝える絶好の機会です。会社の理念やビジョンを育成目標に反映させることで、「会社が目指す方向」と「個人の成長の方向」が一致します。これにより、社員は日々の業務に目的意識を持ち、組織としての一体感が醸成され、ビジョンの実現が加速します。
【具体例】階層・職種別の目標設定
人材育成の目標は、全社員一律ではなく、それぞれの立場や役割に応じて設定することが効果的です。ここでは、階層別・職種別にどのような目標が考えられるか、具体的な例を紹介します。自社の状況に合わせてカスタマイズする際の参考にしてください。
新入社員の目標例
新入社員の育成では、社会人としての基礎体力と、自社で働く上での土台作りが目標となります。「ビジネスマナーや報連相を徹底する」「企業理念を理解し、自身の言葉で説明できる」「担当業務の基本的な流れを一人で遂行できる」といった、基本的な行動や知識の習得を中心に目標を設定します。
中堅社員の目標例
中堅社員には、自身の専門性を高めると同時に、チームの成果に貢献する役割が期待されます。目標例としては、「担当分野の専門知識を深め、後輩への指導ができるようになる」「プロジェクトにおいて中心的な役割を担い、主体的に課題解決に取り組む」「業務改善提案を年間〇件以上行う」などが挙げられます。
管理職の目標例
管理職の目標は、個人の成果からチームや組織の成果へと視座が高まります。「部下の能力やキャリアに合わせた育成計画を作成し、1on1を通じて成長を支援する」「チームの目標達成に向けた戦略を立て、メンバーのモチベーションを管理する」「経営視点を持ち、担当部署の課題を解決する」といった、マネジメント能力に関する目標が中心となります。
職種別の目標例
営業職であれば「顧客の課題解決に繋がる提案力を強化し、成約率を〇%向上させる」、技術職であれば「最新の〇〇技術を習得し、開発プロジェクトに応用する」、事務職であれば「〇〇ツールを導入し、業務プロセスを改善して作業時間を〇%削減する」など、それぞれの専門性に応じた具体的なスキルや成果を目標に設定します。
計画作成への支援と助成金
ゼロから人材育成計画書を作成するのは大変だと感じるかもしれません。しかし、公的機関による作成支援や、国からの支援制度をうまく活用することで、担当者の負担を大きく軽減できます。ここでは、特に中小企業が知っておきたいツールと制度を紹介します。
厚生労働省による作成支援
厚生労働省では、企業の人材育成を支援するために「事業内職業能力開発計画」の作成を推奨しており、そのための手引きやQ&Aをウェブサイトで公開しています。これらを参考にすることで、どのような項目を盛り込むべきかが明確になり、抜け漏れのない計画書を効率的に作成できます。まずは自社の計画の骨子として活用してみるのがおすすめです。
人材開発支援助成金
「人材開発支援助成金」は、従業員の職業訓練などを実施する事業主に対して、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を国が助成する制度です。Off-JTの費用負担を軽減できるため、特に研修予算が限られる中小企業にとっては非常に心強い味方です。2025年9月現在、多様なコースが設定されていますので、自社で計画している訓練が対象になるか、厚生労働省のホームページで最新の情報を確認してみましょう。
人材育成計画を形骸化させない活用術
まず避けたいのは、立派な計画書を作成したものの、机の引き出しにしまったまま実行されない「計画倒れ」の状態です。計画は作ってからが本当のスタート。ここでは、計画を絵に描いた餅に終わらせず、組織に根付かせるための活用術を紹介します。
定期的な進捗確認とフィードバック
計画の実行状況や目標の達成度合いを定期的に確認する場を設けましょう。特に、上司と部下が1対1で対話する「1on1ミーティング」は効果的です。部下の成長を具体的に褒め、課題に対しては一緒に解決策を考えるなど、丁寧なフィードバックを行うことで、社員のモチベーションを維持し、計画の実効性を高めることができます。
経営層のコミットメントと社内への周知
人材育成は、人事部だけの仕事ではありません。経営トップが「会社として人材育成に本気で取り組む」という強いメッセージを、朝礼や社内報などを通じて繰り返し発信することが重要です。経営層の強いコミットメントが伝わることで、管理職や一般社員の意識も変わり、全社的に協力的な雰囲気が醸成されます。
社員のキャリア自律の支援
変化の激しい時代においては、会社が一方的に教育プログラムを与えるだけでなく、社員が自ら学び、キャリアを切り拓いていく「キャリア自律」の視点が不可欠です。資格取得支援制度の導入や、副業の許可、社内公募制度など、社員が主体的にキャリアを考えるきっかけとなる機会を提供することで、組織全体の学習意欲と適応力を高めることができます。
評価制度との連動
人材育成計画で定めた目標の達成度や、学習への取り組み姿勢、身につけたスキルの発揮度などを、昇給・昇格といった人事評価制度に適切に反映させる仕組みを構築しましょう。「頑張って成長すれば、きちんと報われる」ということが明確になれば、社員はより意欲的に育成プログラムに取り組むようになります。
人材育成計画の作成で未来の強い組織をつくる
企業の成長は、社員一人ひとりの成長なくしてあり得ません。人材育成計画の作成は、その成長をデザインするための重要な第一歩。難しく考えすぎず、まずは現状分析から始めてみましょう。この記事で解説した5つのステップを参考に計画を立て、実行と改善を繰り返すことで、社員と会社が共に成長する好循環が生まれます。計画的な人材育成を通じて、変化に負けない強い組織を築き上げていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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