• 更新日 : 2025年8月20日

アルバイトの給与支払報告書を提出しないとどうなる?バレる理由と会社の義務を解説

アルバイトやパートの給与支払報告書について、どこまでの範囲で提出すべきか判断に迷うことはありませんか。雇用形態が多様化する現代において、給与支払報告書の適正な提出は、企業のコンプライアンス遵守と信頼性を示す上で不可欠な業務です。

結論から言うと、アルバイトであっても給与支払報告書の提出は法律で定められた義務であり、提出しなければいずれ発覚します。

この記事では、給与支払報告書を提出しないとなぜバレるのか、提出を怠った場合の罰則やリスク、誤解の多い30万円以下の例外ルール、日雇い従業員の提出義務について、実務に即して具体的に解説します。

アルバイトの給与支払報告書も提出が必要

給与支払報告書の提出は、地方税法第317条の6において給与支払者である事業主に課せられた義務です。前年中に給与の支払いを行った事業主は、支払いを受けた者の住所地の市区町村長に対し、給与支払報告書を提出しなければなりません。

参考:地方税法|e-Gov 法令検索

この規定に、従業員の雇用形態による区別はありません。正社員、アルバイト、パート、日雇いなど、すべての給与所得者が対象となります。

アルバイト・パートも対象となる理由

給与支払報告書は、市区町村が個人の住民税額を算定するための根拠資料です。アルバイトやパートであっても、給与所得を得ている以上は住民税の課税対象者となり得ます。企業がすべての従業員の所得を正確に報告することで、市区町村は適正な課税を行うことができ、従業員一人ひとりの公平な納税につながるのです。

給与103万円以下でも提出は必要

年間の給与収入が103万円以下の場合、所得税は課税されませんが、住民税は課税される可能性があります。

所得税がかからないからといって、給与支払報告書の提出が不要になるわけではありません。支払った給与の金額にかかわらず、提出義務があることを理解しておく必要があります。

給与支払報告書の提出対象となる従業員の範囲

給与支払報告書の提出対象となるのは、前年中に給与・賞与等の支払いをしたすべての従業員です。これには、年の途中で退職した従業員や、乙欄適用者、他の会社で年末調整を受けている従業員も含まれます。

短期・日雇いアルバイトの取り扱い

短期間の雇用契約であるアルバイトや、日雇いの従業員であっても、給与を支払った場合は提出対象です。従業員の入れ替わりが激しい業種では、対象者の把握漏れが起きやすいため、特に注意が必要です。給与台帳と照らし合わせ、支払い実績のあるすべての従業員をリストアップする作業が欠かせません。

年末調整の対象外とした従業員も含む

年収が2,000万円を超える、2か所以上から給与を受けているなどの理由で、年末調整の対象としなかった従業員についても、給与支払報告書の提出は必要です。年末調整の有無と、給与支払報告書の提出義務は別の話です。自社が支払った給与額を正確に記載し、摘要欄に「年調未済」と記載して提出します。

給与支払報告書が提出不要となる30万円ルール

実務上、特に誤解が多いのが、支払額30万円以下の退職者は提出不要という例外規定です。

提出不要の条件は退職者のみ

この例外規定が適用されるのは、あくまで前年中の退職者に限られます。年末(12月31日)時点で在籍している従業員については、この規定は適用されません。

例えば、年間の給与支払額が20万円であっても、年末時点で在籍していれば給与支払報告書の提出は必須です。

年間給与支払額が30万円以下

上記の退職者という条件を満たした上で、その退職者に対する前年中の給与支払総額が30万円以下である場合に、市区町村への提出を省略できます。ただし、これは提出義務が免除されるだけであり、法令順守の観点から、社内での支払記録は適切に保管しておく必要があります。

アルバイトの給与支払報告書を提出してない会社がバレる理由

税務署と市区町村は連携しているため、源泉徴収票と給与支払報告書の情報を突合することにより、未提出や虚偽がある場合に把握できる体制になっています。

  • 税務署と市区町村の情報連携
    事業主は税務署に源泉徴収票を、市区町村に給与支払報告書を提出します。これらの情報が突合されるため、提出漏れがあれば発覚します。
  • マイナンバーによる所得の把握
    マイナンバー制度の導入により、行政機関は個人の所得情報をより正確に把握できるようになりました。これにより、異なる会社からの給与なども名寄せされ、申告漏れが判明しやすくなっています。
  • 従業員自身による申告や問い合わせ
    従業員が確定申告をしたり、住宅ローンや保育園の申請などで所得証明が必要になったりした際に、会社からの給与支払報告書が提出されていないことが発覚するケースも少なくありません。

アルバイトの給与支払報告書の提出を怠った場合のリスク

正当な理由なく給与支払報告書を提出しなかった場合、または虚偽の記載をした報告書を提出した場合、地方税法第317条の7の規定により、提出義務者である事業主やその担当者に対して、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

意図的でなくとも、結果として未提出となれば罰則の対象となります。また、提出漏れは以下のようなリスクも引き起こします。

税務調査の対象となる可能性

給与支払報告書の提出状況は税務当局も把握しています。不提出や記載内容の不備が続くと、企業の経理処理全般に対して疑念を持たれ、税務当局が実施する調査の選定要因の一つとなるため注意が必要です。

従業員からの信頼損失

給与支払報告書が提出されていない場合、通常1〜2ヶ月後に市区町村から「住民税申告のお願い」といった通知が届くことがあります。このような事態は、従業員に多大な迷惑をかけるだけでなく、ずさんな会社という印象を与え、企業と従業員との信頼関係を大きく損なう原因となります。

会社がアルバイトの給与支払報告書を提出してくれない場合の対処法

もし、ご自身の勤務先が給与支払報告書を提出しているか不安な場合は、まず経理や人事の担当者に確認してみましょう。

万が一、会社が提出してくれない場合、そのまま放置していると正しい住民税額が計算されず、市区町村から延滞税が加算された納税通知書が送付されることがあります。そうした事態を避けるため、ご自身で市区町村の役所へ行き、住民税の申告を行う必要があります。申告の際は、給与明細や源泉徴収票など、収入を証明できる書類を持参しましょう。

アルバイトの給与支払報告書も忘れずに提出を

今回は、企業の担当者様向けに、アルバイトやパート従業員の給与支払報告書に関する提出義務と注意点を解説しました。

雇用形態にかかわらず、給与を支払った全従業員の情報を正確に市区町村へ報告することは、企業の法的義務です。特に、提出対象者の範囲特定や、退職者に対する30万円ルールの適用条件は、誤解が生じやすい部分なので正確な理解が求められます。

適正な提出は、罰則リスクを回避するだけでなく、従業員からの信頼を確保し、健全な企業経営を維持するための基本です。eLTAXなどの電子申告も活用しながら、効率的で正確な業務遂行を心がけましょう。


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