• 更新日 : 2025年7月24日

2025年/令和7年度の年末調整の変更点まとめ

2025年(令和7年度)の年末調整では、主に基礎控除給与所得控除の引き上げ、そして特定親族特別控除の新設といった大きな変更点があります。これにより、「103万円の壁」が「123万円の壁」へ実質的に変更され、特定の大学生年代の子を持つ親に対する税負担が軽減されるなど、多くの納税者に影響が及ぶ見込みです。

これらの改正は、物価上昇への対応や労働力不足の解消を目的としており、特に低・中所得者層の税負担軽減が期待されます。

この記事では、2025年(令和7年度)の年末調整における具体的な変更点をわかりやすくまとめ、皆様がスムーズに年末調整を終えられるよう、注意すべきポイントを解説していきます。

2025年/令和7年度の年末調整の変更点

令和7年度税制改正により、所得税に関する複数の改正が行われ、原則として令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税に適用されます。

このため、令和7年12月に行われる年末調整を含む、令和7年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じます(令和7年11月までの源泉徴収事務には変更はありません)。

令和7年分の年末調整における主な改正規定と留意事項は以下の通りです。

⑴ 基礎控除の見直し

  • 改正内容: 合計所得金額に応じて基礎控除額が改正されました。
基礎控除額
  • 合計所得金額132万円以下(給与収入200万3,999円以下)の場合、基礎控除額が95万円(改正前48万円)となります。
  • 合計所得金額132万円超336万円以下(給与収入200万3,999円超475万1,999円以下)の場合、基礎控除額が88万円(改正前48万円)となります。
  • 合計所得金額336万円超489万円以下(給与収入475万1,999円超665万5,556円以下)の場合、基礎控除額が68万円(改正前48万円)となります。
  • 合計所得金額489万円超655万円以下(給与収入665万円5,556円超850万円以下)の場合、基礎控除額が63万円(改正前48万円)となります。
  • 655万円超2,350万円以下(給与収入850万円超2,545万円以下)の場合、基礎控除額が58万円(改正前48万円)
  • 合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません。
  • 令和7年分の年末調整における適用
    • 令和7年12月に行う年末調整の際に、改正後の基礎控除額に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の源泉徴収税額表によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。

⑵ 給与所得控除の見直し

  • 改正内容: 給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました(給与の収入金額190万円以下の場合)。給与の収入金額190万円超の場合の給与所得控除額に改正はありません。
  • 令和7年分の年末調整における適用: 令和7年12月に行う年末調整の際に、改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の源泉徴収税額との精算を行います。

⑶ 特定親族特別控除の創設

  • 改正内容: 居住者が特定の親族(「特定親族」)を有する場合には、その居住者の総所得金額等から、特定親族1人につき、その合計所得金額に応じて一定の金額を控除する「特定親族特別控除」が創設されました。
    • 特定親族の定義: 居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払いを受ける人および白色事業専従者を除く)で、合計所得金額が58万円超123万円以下の人を指します。親族には里子を含みます。
    • 控除額: 特定親族の合計所得金額に応じて、3万円から63万円の控除額が設定されています。
控除額
  • 合計所得金額58万円超85万円以下(給与収入123万円超150万円以下)の場合、控除額は63万円。
  • 合計所得金額85万円超90万円以下(給与収入150万円超155万円以下)の場合、控除額は61万円。
  • 合計所得金額90万円超95万円以下(給与収入155万円超160万円以下)の場合、控除額は51万円。
  • 合計所得金額95万円超100万円以下(給与収入160万円超165万円以下)の場合、控除額は41万円。
  • 合計所得金額100万円超105万円以下(給与収入165万円超170万円以下)の場合、控除額は31万円。
  • 合計所得金額105万円超110万円以下(給与収入170万円超175万円以下)の場合、控除額は21万円。
  • 合計所得金額110万円超115万円以下(給与収入175万円超180万円以下)の場合、控除額は11万円。
  • 合計所得金額115万円超120万円以下(給与収入180万円超185万円以下)の場合、控除額は6万円。
  • 合計所得金額120万円超123万円以下(給与収入185万円超188万円以下)の場合、控除額は3万円。
  • 令和7年分の年末調整における適用: 令和7年12月に行う年末調整の際にこの改正が適用されます。適用を受けるためには、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を給与の支払者に提出する必要があります。

⑷ 扶養親族等の所得要件の改正

  • 改正内容: 基礎控除の見直しに伴い、扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件が改正されました。
    • 扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子: 所得要件が58万円以下(給与収入123万円以下)に引き上げられました(改正前48万円以下)。
    • 配偶者特別控除の対象となる配偶者: 所得要件が58万円超133万円以下(給与収入123万円超201万5,999円以下)に引き上げられました(改正前48万円超133万円以下)。
    • 勤労学生: 所得要件が85万円以下(給与収入150万円以下)に引き上げられました(改正前75万円以下)。
  • 令和7年分の年末調整における適用: 令和7年12月1日以後に支払う給与からこの改正が適用されます。この改正により新たに扶養控除等の対象となった親族等がいる場合には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要となります。

令和7年分の年末調整における留意事項(給与の源泉徴収事務)

令和7年12月に行う年末調整では、以下の点に留意が必要です。

扶養控除等(異動)申告書の受理と内容確認

  • 給与所得控除額及び扶養親族等の所得要件の改正により、新たに扶養控除等の対象となる親族等がいる従業員から、「令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらい、内容を確認します。
  • 申告書は原則として令和7年12月1日以後最初に給与の支払を受ける日の前日までに提出が必要ですが、年末調整を行う時までに提出があれば、その申告に基づいて年末調整を行うことができます。

特定親族特別控除申告書の受理と内容確認

  • 特定親族特別控除の適用を受けようとする従業員から、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出してもらい、内容を確認します。この申告書は、その年最後に給与の支払を受ける日の前日までに提出することとされています。
  • 「給与所得者の特定親族特別控除申告書」は、「給与所得者の基礎控除申告書」、「給与所得者の配偶者控除等申告書」及び「所得金額調整控除申告書」との兼用様式となっています。

基礎控除申告書の受理と内容確認

  • 従業員から提出された「給与所得者の基礎控除申告書」に、その合計所得金額に応じた基礎控除額が正しく記載されているかを確認してください。

配偶者控除等申告書の受理と内容確認

  • 配偶者に給与所得がある場合、改正後の給与所得控除額を適用して算出された合計所得金額に応じて、配偶者(特別)控除額が正しく記載されているかを確認してください。

年末調整の計算上の留意事項

  • 改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使用して計算を行います。
  • 従業員から提出された申告書に基づき、改正後の基礎控除額および特定親族特別控除額を控除して計算を行います。
  • 令和6年9月から掲載されている「令和7年分給与所得に対する源泉徴収簿」は、特定親族特別控除の適用がある場合の計算に対応していません。このため、余白部分を用いるなどして年末調整の計算を行う必要があります。
  • 「給与所得の源泉徴収票」が改正され、特定親族特別控除の適用がある場合には、その控除額等を記載する必要があります。改正後の様式は、令和7年中に支払うべき給与で最後の支払日が令和7年12月1日以後であるものから使用します。

3. 公的年金等の源泉徴収事務における留意事項(令和7年分)

  • 公的年金等の支払者は、令和7年12月の年金支払時に、改正後の一定の基礎的控除額を用いて計算した1年分の税額と、既に源泉徴収した税額との精算を行います。
  • この精算により還付が生じる場合は、原則として公的年金等の支払者から還付されます。
  • 公的年金等の受給者が、特定親族特別控除の適用を受けようとする場合や、扶養親族等の所得要件改正により扶養控除等の適用を受けようとする場合には、原則として確定申告をする必要があります。
  • 令和7年12月の精算時に用いる基礎的控除額は、公的年金等の収入金額にかかわらず一律で計算されるため、合計所得金額によっては確定申告により還付を受けられる場合があります。

令和7年分の年末調整における各書類の書き方のポイント

令和7年12月に行う年末調整の際には、以下の点に注意してください。

1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

  • 記載事項の変更は令和7年分にはありません。
  • ただし、給与所得控除額および扶養親族等の所得要件が改正されるため、この改正により新たに扶養控除等の対象となる扶養親族等がいる場合は、その旨を記載した「令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要です。
  • 提出期限は原則として令和7年12月1日以後最初に給与の支払を受ける日の前日ですが、年末調整を行う時までに提出があれば、その申告に基づいて年末調整を行うことができます。
  • 申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和7年12月1日 改正」などと記載してください。

2. 給与所得者の特定親族特別控除申告書(新規様式)

  • 新しく創設された控除であり、適用を受けるためにはこの申告書を給与の支払者に提出する必要があります。
  • 提出期限は、その年最後に給与の支払を受ける日の前日までです。
  • 国税庁が作成する様式は、「給与所得者の基礎控除申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」「所得金額調整控除申告書」との兼用様式となっています。

記載のポイント

    • 「特定親族の氏名」、「特定親族の個人番号」、「あなたとの続柄」等を記載します。
    • 特定親族が非居住者である場合は「非居住者である特定親族」欄に○印を付け、「生計を一にする事実」欄に本年中にその特定親族に送金等をした金額の合計額を記載します。この場合、「親族関係書類」と「送金関係書類」の提出または提示が必要です。
    • 「特定親族の本年中の合計所得金額の見積額」を計算し記載します。
    • その見積額を基に、控除額の計算表(特定親族の合計所得金額に応じた控除額)を適用し、「特定親族特別控除の額」を記載します。
  • 適用を受けられないケースがあります。
    • 例えば、2人以上の居住者の特定親族に該当する親族がいる場合、その親族はいずれか1人の特定親族にのみ該当するものとみなされます。
  • マイナンバー(個人番号)の記載は、給与の支払者が一定の帳簿を備え付けている場合は省略できます。備え付けていない場合でも、従業員と給与支払者の合意に基づき、申告書の余白に「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨を記載し、給与支払者が確認すれば省略可能です。

3. 給与所得者の基礎控除申告書

  • 合計所得金額に応じて基礎控除額が改正されたため、提出された申告書に、その合計所得金額に応じた改正後の基礎控除額が正しく記載されているかを確認してください。

4. 給与所得者の配偶者控除等申告書

  • 給与所得控除の最低保障額が引き上げられたため、配偶者に給与所得がある場合は、改正後の給与所得控除額を適用して算出された合計所得金額に応じて、配偶者(特別)控除額が正しく記載されているかを確認してください。

令和8年分以後の主な変更点

  • 令和8年1月1日以後に支払うべき給与および公的年金等については、「源泉徴収税額表」が改正されます。
  • 「扶養控除等申告書」には、従来の「控除対象扶養親族」に加え、特定の特定親族を含んだ「源泉控除対象親族」を記載することとなります。これにより、各月(日)の源泉徴収の際に特定親族特別控除が適用されることになります。

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