- 更新日 : 2025年7月11日
【2025年・令和7年】学生の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方や注意点
アルバイトをしている学生も、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する必要があります。これは、自分の収入状況や適用される控除の内容を勤務先に正しく伝えるための重要な書類です。特に、勤労学生控除や親の扶養の範囲に関わるため、内容を正しく理解し、正確に記入することが求められます。さらに、2025年の税制改正により、学生アルバイトにも関係する制度が大きく変わりました。本記事では、最新の情報に基づき、学生がこの申告書を提出する際の書き方や注意点をわかりやすく解説します。
目次
学生でも給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の提出が必要?
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、従業員が扶養している家族構成や、自分自身が特定の控除要件を満たすかどうかを雇用主に知らせるための書類です。
年末調整の時期になると、学生のアルバイトの方も、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、扶養控除等申告書)を勤務先に提出します。
1事業所この申告書を提出することで、勤務先は「甲欄」という比較的低い源泉税率で適切な所得税額を計算し、年末調整を行うことができます。
提出がない場合、「乙欄」という高い税率で源泉徴収されるため、手取りが減るだけでなく、年末調整が受けられず確定申告が必要になることもあります。
従って、雇用主が従業員の所得税を正しく源泉徴収し、年末調整を行うためには必要な書類となります。
申告書には、自分の基本情報、配偶者に関する情報、扶養親族に関する情報、そして寡婦、ひとり親、または勤労学生といった特定の状況に関する情報を記入する欄があります。学生にとって特に重要なのは、「勤労学生」に関する項目です。この項目に該当する場合、所得税の控除を受けることができる可能性があります。
扶養内でも、提出した方が良い?
扶養内で働く場合でも扶養控除等申告書の提出は必要です。収入が少なく所得税がかからない見込みであっても、扶養控除等申告書を提出していれば、毎月の給与から源泉徴収される所得税が正しく計算されます(通常は徴収されません)。
また、万が一、何らかの理由で源泉徴収されたとしても、年末調整で精算されます。提出しないと、乙欄課税となり、少額でも所得税が徴収される可能性や、年末調整の対象外となるデメリットがあります。
【2025年】学生の扶養控除に関する変更点
2025年の税制改正は、学生の扶養控除に関する年収の壁と所得要件に大きな変化をもたらしました。
19歳から22歳までの「特定扶養親族」は150万円以下へ引き上げ
2025年の税制改正により、学生の扶養控除に関する収入の壁や所得要件が大きく変わりました。特に、19歳から22歳までの大学生などに該当する「特定扶養親族」については、年間の給与収入の上限が、従来の103万円以下から150万円以下に大幅に引き上げられました 。この改正により、大学生はより多くの収入を得ても、親の扶養控除の対象から外れにくくなります。
勤労学生控除の所得要件も150万円以下へ引き上げ
また、学生自身が所得税の控除を受けられる「勤労学生控除」の所得要件も、合計所得金額75万円以下から85万円以下に引き上げられます。給与収入のみの場合、年収130万円以下から150万円以下が対象となります 。
高校生(16歳~18歳)の扶養控除
大学生の扶養控除に関する変更が大きい一方で、16歳から18歳までの高校生年代の扶養控除については、2025年の税制改正では大きな変更は見送られました。現在、これらの年齢の扶養親族がいる場合、所得税で38万円、住民税で33万円の控除を受けることができます。ただし、将来的にはこの控除額が見直される可能性も示唆されています。
アルバイトの学生が知っておきたい勤労学生控除とは
学生自身で所得税の控除を受けるための制度が「勤労学生控除」です。この控除を受けるためには、以下の3つの要件すべてを満たす必要があります。
- 給与所得などの勤労による所得があること:アルバイトによる給与収入などがこれに該当します。親からの仕送りは勤労による所得には含まれません。
- 合計所得金額が85万円以下で、かつ、勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること(2025年):例えば、給与所得のみの場合、年収が150万円以下であれば、給与所得控除65万円を差し引いた所得金額が85万円以下となります。
- 特定の学校の学生、生徒であること:これは、学校教育法に規定された小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校などのほか、一定の要件を満たす専修学校や各種学校、職業訓練法人の認定職業訓練を受ける訓練生も含まれます。対象となる学校かどうか不明な場合は、通学している学校の窓口で確認することが推奨されます。
勤労学生控除を受けることで、所得税や住民税が軽減されるメリットがあります。例えば、所得税の場合、27万円の所得控除(勤労学生控除)を受けることができます。住民税についても、地域によって控除額は異なりますが、税負担を軽減する効果があります。
ただし、勤労学生控除はあくまで学生本人に適用される控除であり、学生を扶養している親がこの控除を受けることはできません。
学生の給与所得者の扶養控除等申告書の書き方のポイント
年末調整で扶養控除や勤労学生控除を受けるためには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に正しく記入し、勤務先に提出することが大切です。ここでは、学生が特に注意すべきポイントを解説します。
申告書上部の基本情報
まず、氏名、住所、マイナンバー、生年月日などの基本情報を正確に記入します。世帯主の氏名やあなたとの続柄も忘れずに記入しましょう 。
A 源泉控除対象配偶者
配偶者がいる場合は記入しますが、学生の場合は該当しないことが多いでしょう。
B 控除対象扶養親族(16歳以上)
16歳以上の扶養親族(例えば、アルバイトをしていない兄弟姉妹など)がいる場合に記入します。氏名、生年月日、続柄、住所、年間の所得見込み額などを記入します 。
C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生
ご自身が障害者、寡婦、ひとり親、または勤労学生のいずれかに該当する場合に記入します。学生の方は「勤労学生」の項目を確認しましょう。
勤労学生の記入
自分が勤労学生の要件を満たしている場合は、「勤労学生」の左にある□にチェックを入れます。
その下の「障害者または勤労学生の内容」という欄に、学校名と入学年月日、そしてその年の所得の種類と見込み額を記入します 。例えば、「〇〇大学、2025年4月1日入学、給与所得80万円」のように具体的に記載します。給与所得は、年間の給与収入から給与所得控除額(2025年からは最低65万円)を差し引いた金額です。
D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
ご自身を扶養している親などが、他の扶養親族についても控除を受けている場合に記入します。
住民税に関する事項(16歳未満の扶養親族)
16歳未満の扶養親族がいる場合に記入します。
提出時の注意点
申告書を提出する際には、学生証のコピーや在学証明書の提出を求められることがあります。在学証明書が必要な場合は、早めに学校に申請しておきましょう 。
提出先と提出期限
記入済みの申告書は、アルバイト先の会社に提出します。提出期限は、原則としてその年の最初の給与の支払いを受ける日の前日までです 。年の途中でアルバイトを始めた場合は、最初の給与の支払いを受ける日の前日までに提出する必要があります。
学生アルバイトの扶養、税金、勤労学生控除に関するよくある疑問
学生の皆さんがアルバイトをする上で気になる、扶養、税金、そして勤労学生控除について、よくある疑問にお答えします。
年収がいくらまでなら親の扶養に入れる?
2025年からは、19歳から22歳までの特定扶養親族については、年間の給与収入が123万円までは特定扶養控除が、123万円超~150万円までは新設の特定親族特別控除けられます。また、150万円超~188万円までも段階的に控除が受けられます。
勤労学生控除を受けると親の税金が増える?
勤労学生控除は、学生本人の所得税や住民税に関する制度であり、親の税金には影響しません。ただし、皆さんの年収が一定額を超えると、親の扶養控除の対象から外れるため、結果的に親の税負担が増える可能性はあります。
一人暮らしでも親の扶養に入れる?
一人暮らしをしている学生でも、親からの仕送りなどによって生計が維持されていると認められれば、扶養控除の対象となる可能性があります 。
アルバイトを複数している場合は?
複数のアルバイトをしている場合でも、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、原則として最も収入の多い勤務先(主たる給与の支払いを受けている企業)に提出します 。
学生も給与所得者の扶養控除等申告書は必要!制度を理解して賢く活用しよう
2025年の税制改正により、学生がアルバイトをする際の収入の壁が緩和され、より柔軟に働きやすくなります。しかし、ご自身の収入が親の扶養控除にどう影響するのか、自分が勤労学生控除の対象となるのかどうかを正しく理解することが大切です。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、これらの情報を勤務先に伝えるための重要な書類です。正確に記入し、期日までに提出することで、税金が適切に処理され、年末調整で控除を受けることができます。もし不明な点があれば、勤務先の担当部署や税務署に気軽に相談してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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