- 更新日 : 2025年4月18日
パートでも住民税が給与から天引きされる?引かれる金額を年収別に解説
パートも、正社員と同様に給与から住民税が天引きされます。給与明細で自身の給与から住民税が天引きされていると知り驚いた人もいるでしょう。
住民税は、前年度のパート収入が100万円より高い場合に納める義務が生じるため、給与から天引きされるのです。
給与から天引きされる住民税の金額について、年収別に解説します。
目次
パートも住民税を納めなければならない?
パートで勤めている人でも、前年度の給与収入によっては正社員と同様に住民税の納付義務が生じます。
住民税の支払い義務が生じた場合は、職場の給与から天引きされ、職場が代わりに納付します。
住民税の納付が必要な人の条件や、住民税額の算出方法についてみていきましょう。
パートで住民税が発生する条件
パートやアルバイトなどの勤務形態にかかわらず、以下に該当する人は住民税の納付義務が生じます。
- 同一生計配偶者・扶養親族がおらず、前年度の給与収入が100万円よりも高い
- 同一生計配偶者・扶養親族がおり、前年の給与収入が以下の式で算出される金額よりも高い
⇒ 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+1)+31万円 + 給与所得控除(最低55万円)
※お住まいの自治体により、住民税の納付が生じる給与収入の条件が異なる場合があります。必ず自治体の公式サイトをご覧ください。
上記に該当するパート従業員は住民税が発生するため、特別徴収で住民税を納めます。特別徴収とは、企業や職場が給与から住民税を天引きして、代わりに納めてくれる方法です。
住民税の特別徴収について、以下の記事で解説しています。また、職場や企業の人が特別徴収を行うまでの手順についてもあわせて解説しているため、ぜひお読みください。
一方で、収入が一定金額より少ない場合は、住民税非課税世帯として認められる場合があります。住民税の負担軽減のほか給付金が受けられる制度も設けられています。経済的に住民税の支払いを困難に感じている方は、以下の記事もあわせてお読みください。
住民税のしくみ
住民税は「所得割額」と「均等割額」を合計して算出します。
「所得割額」とは、自身の前年度の課税所得金額に対して、一定の税率(10%)をかけて算出される金額です。課税所得金額が高いほど超過分に対する税率が上がる「超過累進税率」が適用されます。
課税所得金額にかける税率は、市町村民税が6%・道府県民税が4%で、合計10%です。(政令指定都市では道府県民税が2%、市民税が8%)
また「均等割額」とは、一定額をすべての納税者に対して均等に与えられる負担額です。道府県民税1,000円 + 市町村民税3,000円 + 森林環境税1,000円(令和6年度より)です。
住民税は、前年度の課税所得金額が45万円以下の場合、均等割と所得割が課税されず非課税になります。
給与所得控除(最低55万円)により課税所得金額が45万円以下になるため、給与収入が100万円以下であれば非課税になるのです。
住民税額の算出方法
住民税の納付額は、所得割額と均等割額の合計です。具体的には、住民税は以下の式で算出します。
税額控除額は、住宅ローンの支払いや非営利団体への寄付を行った場合などに発生する控除です。
たとえば、パートで前年度の年収が120万円だとすると、住民税額は以下の式で算出できます。
※税額控除・社会保険料控除は考慮しないものとする
120万円 – 給与所得控除(最低55万円)= 65万円
65万円 – 基礎控除(43万円)= 22万円
22万円 × 税率10% = 2万2,000円
2万2,000円 + 都道府県民税1,000円 + 市町村民税3,000円 + 森林環境税1,000円(令和6年度より)= 2万7,000円
※上記都道府県民税・市町村民税は国が示している金額であり、都道府県・市町村によっては異なる場合があります。
当年の住民税額は2万7,000円であり、毎月給与から天引きされます。
パートや正社員の住民税の計算方法について、以下の記事で解説していますので、自身の住民税額について気になる方は、あわせてお読みください。
【前年度の年収別】パートで給与から引かれる住民税額
パートで、前年度に一定金額を超えた給与収入を得ている場合は、住民税が特別徴収により給与から天引きして納められます。
前年度の給与収入により納付する住民税額が異なるため、算出される住民税額を年収別に解説します。
自身に当てはまるケースを参考にしてください。
※住民税額の算出において、税額控除や社会保険料控除は考慮しないものとします。
年収100万円以下の住民税はいくら?
お住まいの自治体により異なりますが、前年度の給与収入が100万円以下の場合は、住民税は非課税になります。
住民税は、前年度の給与収入から給与所得控除(最低55万円)を引いた、給与所得に税率をかけます。給与所得が45万円以下の場合は非課税となるため、年収100万円以下の場合、住民税は課税されません。
そのほか住民税非課税世帯として認められるには、生活保護を受けていたり扶養家族がいたりするなど、いくつかの条件があります。該当していれば、経済的な優遇措置が受けられる可能性があるため、お住まいの自治体で確認してみましょう。
年収100万円より高く103万円未満の住民税はいくら?
パートの給与収入が100万円より高く103万円未満の場合、以下の計算式でおおよその住民税額が算出できます。
1.給与収入 – 所得控除額 = 課税所得金額
2.課税所得金額 × 税率10% = 所得割額
3.所得割額 + 均等割額 = 住民税額
103万円以下にもかかわらず住民税が引かれるのはなぜか?という疑問がよく挙げられます。103万円以下であれば、所得税は課税されませんが、住民税は課税対象になるため注意が必要です。
また、記事執筆時点において令和7年度税制改正案および修正案が衆議院で可決され、参議院で審議中です。
法改正により、令和7年度より現行103万円の壁が引き上げられる可能性があります。
本改正案及び修正案が参議院においても可決され改正法が成立すると、現行と改正後で、所得税が非課税となるボーダーラインは以下のとおり変更されます。
- 基礎控除48万円+給与所得控除55万円=給与収入103万円「以下」なら所得税は発生しない
- 基礎控除95万円(47万円引き上げ)+給与所得控除65万円(10万円引き上げ)=給与収入160万円「以下」なら所得税は発生しない
法改正により「103万円の壁」が「160万円の壁」に引き上げられる可能性があるため、今後の動向を確認することが大切です。
所得税と住民税の違いについて、以下の記事で解説していますので、あわせてお読みください。
パート先で社会保険に加入している場合
パート先で以下1,2のうちいずれかに当てはまる場合は社会保険に加入し、給与所得から社会保険料控除が受けられます。
2.以下のすべてに当てはまる場合
- 勤務先が特定適用事業所
- 週の勤務時間が20時間以上
- 給与が月額88,000円以上
- 2ヶ月を超えて働く予定がある
- 学生ではない
そのため、以下の計算式で住民税を算出します。
1.給与収入 – 所得控除額(社会保険料控除額を含む) = 課税所得金額
2.課税所得金額 × 税率10% = 所得割額
3.所得割額 + 均等割額 = 住民税額
ただし、社会保険に加入することで住民税が減る一方で、社会保険料が給与から天引きされます。
パートに勤めながら住民税額をおさえる方法
住民税額は、パートで受け取る前年度の給与収入により決まります。
そのため、住民税額を減らすには給与収入を下げる方法が効果的です。しかし、基礎控除や給与所得控除以外にも複数の控除があり、利用することで課税所得金額が減らせます。
パートに務めながら住民税額をできるだけおさえる方法を紹介します。
収入をおさえる
課税所得金額は、給与収入から給与所得控除(最低55万円)と基礎控除(43万円)を引いて算出するため、給与収入を少なくすることで、住民税額がさえられます。
また前年度の給与収入が一定の金額を下回っていた場合、翌年の住民税は非課税になります。
勤務する日数を減らしたり勤務時間を短縮したりして、収入がおさえられるよう調整しましょう。
社会保険に加入する
社会保険料控除で課税所得金額を下げることで、住民税額を下げられます。
住民税は、前年度の課税所得金額により決まります。しかし課税所得金額は、前年度の給与収入がそのまま適用されるわけではありません。おもに以下の計算式で算出されます。
ほかにも職場が社会保険に加入しており、パートである自身も社会保険へ加入している場合、社会保険料控除が受けられます。つまり、上記の式からさらに社会保険料控除額を引いた金額が課税所得金額になるため、住民税額を下げられるのです。
生命保険料控除を活用する
生命保険料控除は、生命保険へ加入している場合、支払った生命保険料に応じて一定額を所得から控除できる制度です。控除により実際に課税される所得が減るため、結果として住民税額を軽減できます。
生命保険料控除には「新制度」と「旧制度」があり、それぞれ以下の金額を限度額とした控除が受けられます。
【新制度】 2012年1月1日以降に契約 |
| (各控除)2.8万円 (3種合計)7万円 |
---|---|---|
【旧制度】 2011年12月31日以前に契約 |
| (各控除)3.5万円 (3種合計)7万円 |
パートに務めながら生命保険に加入している場合、支払っている保険料を忘れず申告することで、住民税の負担を軽減できます。
医療費控除を活用する
課税所得金額をできるだけ少なくする方法に、医療費控除の活用が挙げられます。
医療費控除とは、1月1日から12月31日までに支払った医療費をもとに算出した金額を給与収入から差し引ける仕組みです。医療費控除は以下の式で算出され、最高で200万円の医療費控除が受けられます。
(年間で支払った医療費 – 保険金などで補填された金額)-10万円(所得金額が200万円以下の場合、所得金額の5%)
ただし、以下の費用は医療費として認められないため注意が必要です。
- 医師等への謝礼
- 親族へ支払った療養上の世話費
- 病気予防や健康増進のための医薬品購入費(サプリメント含む)
- 健康診断や人間ドッグの費用
- 通院のための自家用車のガソリン代
医療費控除を活用して住民税をおさえる方法については、以下の記事で詳しく解説しています。医療費の支払いが多い方は、ぜひ参考にしてください。
個人確定拠出年金(iDeCo)をはじめる
個人確定拠出年金(iDeCo)とは、老後資金を自分で積み立てて運用できる、私的年金制度です。毎月5,000円から掛金を設定できるため、気軽にはじめられます。
個人確定拠出年金(iDeCo)で毎月積み立てた掛金は全額、給与収入から控除できます。
老後資金を形成しつつ住民税の負担が減らせるため、お得な制度といえるでしょう。
ふるさと納税をはじめる
ふるさと納税は、特定の自治体に寄付をすることで、地元の特産品がもらえるとともに、寄付額に応じた控除が受けられる制度です。
具体的には、ふるさと納税を通じて支払った寄付金が、翌年度の所得税と住民税から控除される仕組みです。控除額は寄付額から2,000円を引いた額であり、住民税はふるさと納税を行った翌年度から控除されます。
寄付先の自治体から特産品などのお礼がもらえることが魅力のひとつであり、好きな場所や地元を応援したり地域活性化に貢献したりできることから、利用者が増えています。
パートでも給与収入が100万円を超えたら住民税の納付が必要
パートやアルバイトなど、勤務形態にかかわらず、前年度に一定以上の給与収入を得た場合は、住民税の納付義務が発生します。
パートで給与収入を得ている場合は特別徴収で納めるため、給与から住民税額が天引きされます。
ただし住民税は給与収入により決まるため、控除を利用して対策することで、負担が下げられるため積極的に利用しましょう。
医療費控除やふるさと納税など、無理なく利用できるサービスの利用が大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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