- 更新日 : 2025年6月23日
労基とは?相談問題やメリット・デメリット、労働基準監督署の役割を解説
労基とは労働基準監督署の略で、全国に321署があります。厚生労働省の第一線機関であり、会社が労働基準法違反をしていないかを監督しています。労働者からの通報先となっているほか、使用者からの相談も受け付けています。使用者は労働条件・労災保険・労働者の安全衛生や健康管理に関する問題を、労基に無料で相談できます。
目次
労基とは?
人事労務担当者にとって労基は、36協定の届出先として広く認知されています。しかし、それ以外にどんな機関であり、どのような業務を行っているのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。まずは労基の基本的な事項を理解しましょう。
正式名称は労働基準監督署
労基は厚生労働省の出先機関で、正式名称を労働基準監督署と言います。全国に、321署があります。労働基準法や労働安全衛生法といった法律に基づいて労働者の権利を守るための取り組みを行う機関で、労働条件(労働時間・賃金など)・職場の安全・労働者の健康の確保・改善に向け、様々な業務を遂行しています。労災保険の給付も労働基準監督署が行っています。
労基と労働局との違い
労働局は国民の生活の安定と経済・社会の発展を図る目的で、地域における労働行政の総合的機関として、雇用の安定や働きやすい職場の実現を目指して設置されています。労基は労働基準法に基づいて労働条件の監督を行う機関であるのに対し、労働局は労働政策の立案や実施、雇用促進などを担当します。労基は監督業務に重点を置き、労働局は広範な労働問題に対する総合的な対応を行います。
労基と労働基準局との違い
労働基準局は労働関係法令の制定・改廃、各種施策の企画・立案、都道府県労働局や労働基準監督署に対する指揮・監督などを行う機関です。労基は全国に321署があり具体的な現場での監督業務を行い、企業や事業所に対する定期的な監査や、労働者からの通報に基づく調査を実施します。これに対して労働基準局は1局しかなく、労働基準法の改正や新たな労働基準の策定、全国的な労働条件の実態調査など、政策レベルでの業務を行います。
労基を構成する4つの課は?
労基を構成する4つの課と、担当業務を説明します。
監督課
監督課は労働基準法などの関係法令に関する各種届出の受け付けや、相談対応、監督指導を行う部署です。主要業務は以下の通りです。
- 申告・相談の受け付け労働条件に関する相談や会社が労働基準法などに違反している場合に行政指導を求める申告を受け付けます。
- 監督指導定期的、あるいは申告により労働基準監督官が労働条件の確認を行います。結果として法律違反があった場合は事業主に対して是正指導を実施します。
- 司法警察事務重大・悪質な法律違反を刑事事件として取り扱い、必要な捜査を行って検察庁に送検します。
安全衛生課
労働安全衛生法などに基づき、労働者の安全と健康を確保する措置が講じられるよう、事業場への指導などを行います。
労災課
労働者災害補償保険法に基づき、労災保険給付を行います。
業務課
庶務経理事務などを行います。
労基に相談できる内容は?
労基は労働者の権利が守られているか、健康や安全が保たれているかについて、会社を監督する立場にあります。法律違反などの問題解決に向け、以下のような相談を受け付けています。
労働条件に関する問題
労基が受け付けている相談の中でも主要なものが、労働条件に関する相談です。以下の問題について相談ができます。
労災保険に関する問題
労基は労災保険に関する相談も受け付けています。以下の相談が労災保険に関する相談に該当します。
- 労働災害に該当するかどうかの相談
- どのような給付が受けられるかの相談
- 労災保険特別加入の相談
労働者の安全衛生や健康管理に関する問題
労基には以下の労働者の安全衛生や健康管理に関する問題も相談できます。
- 健康診断やストレスチェックについての相談
- 安全教育についての相談
- クレーンや玉掛けなどの資格や講習についての相談
労基に相談するメリットは?
労基に相談するメリットには、以下の点が考えられます。
- 無料である
労基は公的機関であるため、相談に費用はかかりません。無料で、専門家に相談できます。
- 法律違反を未然に防げる。
法律違反をすると罰金などの処罰を受ける恐れがあります。罰則を免れても企業名が公表されたり指導・勧告を受けて対応が迫られたりする恐れがあります。労基に相談すると法律違反を防げ、不安を払拭した業務遂行が可能になります。
労基に相談するデメリットは?
労基に相談するデメリットとして考えられるのは、以下の点です。
- 労働法に関わる相談しかできない労基の取り扱い範囲は、労働法に関わる問題に限られます。人事・労務についての相談であっても法律に関係ない、例えば経営上の事案については相談できません。
- 一般的な内容のみに留まる
労基は公的機関であり、相談できる内容も一般的なものに留まります。
- 具体的な解決策は教えられない
相談に対する回答も一般的なものとなり、具体的な解決策は自社で考える必要があります。
労基に相談する方法・流れは?
労基へ相談する方法・流れは、以下の通りです。
- 相談内容をまとめる労基に相談する前には整理して相談内容をまとめておく必要があります。相談したいこと、困っている理由を明確に伝えられるよう整理しておくと、相談時に役立ちます。望む解決策まで考えておくと、具体的なアドバイスが受けられ、相談をより有益なものにできます。
- 必要資料を準備する
必要資料を持参すると、相談がスムーズに運びます。必要資料には以下のものが考えられます。- 従業員の遅刻・早退・無断欠勤の相談 勤務表
- 時間外労働の相談 勤務表・割増賃金実績
必要資料はできるだけ具体的なものを準備すると、理解が得られやすくなります。どのような状況であるかが分かるような資料を準備しましょう。
- 労基へ相談する
相談は管轄の労基に行います。予約時間に遅れないよう出向きましょう。
労働基準法に違反した企業はどうなる?
労働基準法に違反した企業は、次のリスクが生じます。
- 罰則が科せられる
罰則付きの規定に違反すると、場合によっては該当する処罰を受けなければなりません。罰則付きの規定と違反に科せられる罰則には、以下のようなものがあります。
- 指導や勧告を受けなければならなくなる。
指導や勧告を受けると、指定期日までに是正策を講じる必要があります。違反点を正さなければならず、報告も求められます。
- 企業名が公表される
労働基準法違反企業として公表され、社会的制裁が課せられます。
労基以外の労働相談窓口は?
会社が相談できる窓口は労基だけではありません。ほかにも、以下のような相談窓口があります。
総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーはあらゆる分野の労働問題について、労働者・会社のどちらからの相談も受け付けています。専門の相談員に直接、あるいは電話で、無料で相談できます。個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づく相談も受け付けているほか、助言や指導、あっせんの案内も受けられます。開庁時はいつでも、予約不要で利用できます。各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内などの約380ヵ所に設置されています。
都道府県労働局雇用均等室
都道府県労働局雇用均等室は男女雇用機会均等法をはじめとする各種法律に基づいて、労働者・会社に相談・指導を行っています。雇用均等行政の第一線機関として47都道府県にある労働局に置かれ、相談業務のほか、事業主を対象とした法律の説明会や、両立支援等助成金の支給など、男女雇用機会均等法・育児介護休業法・パートタイム労働法に関するトラブルを迅速に解決にするための援助・調停を行っています。
社会保険労務士や弁護士
会社が労働問題を相談できる相手には、社会保険労務士や弁護士も挙げられます。社会保険労務士は人事、弁護士は法律に関するエキスパートで、専門知識と経験に基づいた有用なアドバイスが受けられます。有料にはなるものの、問題解決に向けた効果的な方法を聞くことができます。
労働者とのトラブルを未然相談先に防いで良好な関係を構築するために労基を上手に利用しよう
労基は厚生労働省の第一線機関です。4つの課で構成され、就業規則の変更や36協定の締結を受理したり、労災保険の給付を行ったりと様々な業務を行っています。労働者・使用者の双方からの相談も受け付けています。公的機関であるため、無料で利用できます。
会社の事業が円滑に進んで行くよう、使用者は労働者とのトラブルを回避し、良好な関係を築くよう努めなければなりません。懸念がある場合には、労基を相談先の第一候補とし、労働者との良好な関係を構築しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
健康保険とは?被用者保険と国民健康保険の違い
健康保険は、日本の医療制度を支える重要な保険制度です。会社員や公務員が加入する政府管掌健康保険、健康保険組合、共済組合のほかに、個人事業主や自営業者が加入する国民健康保険があります。 ここでは、日本の健康保険制度の種類や加入対象者について解…
詳しくみる退職後の健康保険 – 国民健康保険と健康保険任意継続制度を比較
国民皆保険制度を採用している日本では、会社を退職したら、なんらかの公的保険に加入しなければいけません。退職後は国民健康保険に加入することもできますが、会社の健康保険を継続する選択肢もあります。 ここでは、国民健康保険と健康保険任意継続制度の…
詳しくみる厚生年金の加入条件とは?加入義務のある対象企業や加入手続きを解説
法人ならびに常時5人以上の従業員がいる個人事業主は、厚生年金保険に加入する義務があります。また個人事業主は、適用業種で常時5人未満の場合および適用業種以外の場合は、任意適用事業という種類に分類されます。 ここでは、厚生年金保険の対象となる適…
詳しくみる失業保険とは?手当の受給資格と手続きを解説!
毎月の給与から天引きされている「失業保険」ですが、どのようなときに受け取ることができるのでしょうか。一般的には、急な解雇や会社が倒産した際に受け取ることが可能です。また、転職のため自己都合退社した場合でも、一定条件のもと受給することができま…
詳しくみる会社が労災を嫌がるのはなぜ?デメリットや対処方法、認められない事例なども解説
業務中に予期せぬ怪我に見舞われた際、従業員が当然のように考える労災保険の申請。しかし、実際には会社側が労災申請を嫌がるケース多く見られます。この記事では、会社が労災申請を嫌がる背景にある様々な理由を深掘りするとともに、もし会社が非協力的な場…
詳しくみる産休と失業保険はどっちが得?計算シミュレーションで比較
出産にともなう給付金を受け取る方法として、産休を取得して出産手当金をもらうか、退職して失業保険を受け取るかで迷う人は少なくありません。どちらも条件を満たせば受給できますが、支給額や保険料の扱い、手取り額に大きな差が出ることもあります。 この…
詳しくみる