• 更新日 : 2025年11月25日

【チェック付】スメハラとは?どう伝える?職場の具体例や対策を解説

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スメハラ(スメルハラスメント)は、体臭や香水、タバコなどの「臭い」が原因で他者に不快感を与えることを指します。

本人に悪意がなく、体質や文化の違いも絡むため対応が難しく、集中力低下による業務効率の悪化や、最悪の場合、離職につながるケースも見られます。

香りや臭いの感じ方は、人それぞれです。もちろん多くの人が明確に悪臭と判断するような場合もありますが、人によってにおいの感じ方はさまざまでしょう。

本記事ではスメハラの具体例や、職場で可能な対策、スメハラの上手な伝え方など、すぐに使える知識をお伝えするのでご参照ください。

スメハラ(スメルハラスメント)とは?

スメハラとは「スメルハラスメント」の略語で、口臭や体臭、香水の香りなどのにおいを原因として、周囲の人に不快感を与える行為を指します。パワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)と同様に、職場で問題となるハラスメントの一つです。

スメハラは、パワハラやセクハラなどに比べて、知名度は低いかもしれません。しかし、においという五感に訴えるハラスメントであるため、時に大きな影響を与える場合もあります。

職場での“どうにかして欲しいこと1位”「ニオイ(体臭)」

株式会社マンダムが25歳から49歳の働く男女を対象に行った調査では、職場の身だしなみで「どうにかして欲しいこと」の1位は、3年連続で「ニオイ(体臭)」となっています。調査によると、においによるマイナス評価は、「ボサボサの髪型」の-34点を大きく上回る-54点となっています。スメハラの周囲への悪影響がうかがえる結果といえるでしょう。

また、においのする人に対しては、相手の立場にかかわらず「一緒に仕事をしたくない」「気遣いや配慮が足りない」と感じる人が多いようです。スメハラは、社内における自身の評価を大きく引き下げるだけでなく、取引先との関係を悪化させる事態も引き起こしかねません。

自身のスメハラのせいで、取引先とのビジネスチャンスを潰してしまうようなことにならないよう、身だしなみをはじめとしたにおいについての対策をすることは、極めて重要だといえます。

マンダム 職場のニオイに関する意識調査2017②|株式会社マンダム

なぜスメハラは対応が難しいのか?

スメハラへの対応は、体臭や口臭などは、本人が気づいていない場合も多く、周りに不快感を与えていることを自覚するのが困難なため、難しいといわれています。また、悪意がないハラスメントであり、本人の体質などにも関係するため、伝え方によっては相手を傷付けることにもなりかねません。

スメハラは法的に問題となる?

スメハラ(スメルハラスメント)自体を罰する法律は、現状ありません。臭いによる不快感は主観的な要素が強く、どの程度から違法とするかの線引きが難しいためです。

しかし、法的な問題が全くないわけではありません。会社がスメハラを放置し、他の従業員が頭痛や吐き気などの体調不良を訴え、業務に支障が出ているにもかかわらず対策を講じない場合、会社が負うべき「職場環境配慮義務(安全配慮義務)」(労働契約法第5条)違反に問われる可能性があります。

また、逆のケースとして、スメハラの加害者とされる従業員への対応を誤ると、問題が生じます。例えば、上司が臭いを理由に他の従業員の前で厳しく叱責したり、無視や隔離などの対応をとったりした場合、その行為が「パワーハラスメント(パワハラ)」に該当するおそれがあるため、慎重な対応が求められます。

職場で問題になりやすいスメハラの具体例は?

職場で問題になりやすいスメハラには、体臭やワキガ臭、口臭、香水、柔軟剤、タバコの臭いなどがあります。代表的なスメハラの具体例を紹介します。

1. 体臭・汗・ワキガなどの生理的な臭い

体臭や汗の臭いは、最もデリケートな問題の一つです。特にワキガ(腋臭症)は本人の体質によるものであり、自覚が難しい場合や、自覚していても対策が困難な場合があります。夏場の汗の臭いだけでなく、冬場でも暖房の効いた室内や厚着による蒸れで臭いが発生することがあります。

2. 口臭(ニンニクなど食べ物、体調不良)

口臭もスメハラの原因となります。ランチで食べたニンニクやニラなどの臭いが強い食べ物による一時的なものから、歯周病や内臓の不調など健康状態に起因するものまで、原因はさまざまです。また、過度なストレスや緊張による口内の乾燥(ドライマウス)が口臭を強くすることもあります。

3. 香水・柔軟剤・制汗剤などの人工的な香り

良かれと思って使用している香水や香りの強い柔軟剤、制汗スプレーなども、スメハラにつながります。特に、狭いオフィス空間では香りが充満しやすく、化学物質過敏症の人や、特定の香りが苦手な人にとっては、体調不良を引き起こす原因にもなります。

4. タバコ臭(喫煙後の呼気や衣服)

喫煙者本人は気づきにくいものの、タバコの臭いは非喫煙者にとって非常に不快な臭いとなりがちです。喫煙室から戻った直後の呼気や、髪の毛、衣服に染み付いた「三次喫煙」による臭いが、周囲の従業員の集中力を奪うことがあります。

5. 外国人従業員との文化的な違い

グローバル化が進む現代の職場では、外国人従業員との文化的な違いがスメハラ認識のズレを生むことがあります。

例えば、食文化の違い(香辛料の強い食事など)や、体質の違い(欧米系の人種はワキガ体質が多い傾向など)、あるいは体臭ケアに対する考え方の違い(欧米では体臭を香水でカバーする文化があるなど)が背景にある場合、単純なマナー違反として指摘することが難しくなります。

スメハラを防ぐセルフチェック

スメハラは自覚がないまま加害者になっていることや、不快感を我慢して被害者になっていることがあります。

スメハラの加害者にならないためのセルフチェック

以下の項目に当てはまる場合、意図せずスメハラの原因を作っているかもしれません。

チェック項目具体的な状況
清潔さ□ 毎日入浴やシャワーをしていない

□ 汗をかいた後、着替えや汗拭きシートでのケアをしていない

衣服□ スーツや制服を頻繁にクリーニングしていない

□ 生乾きの臭いがする服を着ていることがある

□ 香水や香りの強い柔軟剤を好んで使う

嗜好品・
健康・食事
□ 喫煙後、消臭ケアをせずにデスクに戻る

□ 歯磨きを毎食後していない

□ ニンニクや香辛料の強い食べ物をよく食べる

□ 胃腸の調子が悪い、またはストレスが多い

周囲が感じているサイン

もし職場で以下のような状況が見られる場合、スメハラが発生している兆候かもしれません。

  • 特定の人が近づくと、無意識に鼻をおさえたり、息を止めたりする人がいる。
  • 特定の人のデスク周りだけ、窓が開けられたり、小型の扇風機が置かれたりしている。
  • 「最近、柔軟剤変えた?」など、臭いに関する遠回しな会話が聞こえる。
  • 特定の人が喫煙所から戻ると、あからさまに席を立つ人がいる。

職場でできるスメハラ対策

職場においてスメハラが発生すれば、従業員のパフォーマンスが低下する可能性は高いです。そのため、職場でできるスメハラ対策を行い、改善を試みましょう。

空気清浄機や消臭グッズを設置する

スメハラ対策として、空気清浄機や消臭グッズを設置したり、定期的な換気をルール化することで、職場全体の空気を清潔に保ちます。体臭や香水など、においの発生源を絶つわけではありませんが、対処療法として活用できます。

また、消臭スプレーや汗拭きシート、マウスウォッシュなどをアメニティとして常備し、従業員が自由に使えるようにすることも、個人のケアを促す上で役立つでしょう。

就業規則やハラスメント指針への明記

まず、スメハラがハラスメントの一種であると会社として定義することが必要です。

就業規則の服務規律や、別途定めるハラスメント防止指針の中に、「臭いにより他者に不快感を与えないよう、身だしなみに配慮すること」といった一文を盛り込みましょう。これにより、会社がスメハラを問題として認識しているという明確なメッセージになります。

社内周知やハラスメント研修

ハラスメント研修の一環として、スメハラを取り上げ、どのような行為が該当するのか、なぜ問題なのかを全従業員に周知します。

その際、特定の個人を攻撃するものではなく、誰もが快適に働ける職場環境を作るための「マナー」や「配慮」の問題として伝えることが大切です。

本人の気づきを促す

スメハラの原因となる体臭や口臭などは、本人に生来的な体質による場合が多いです。しかし、制汗シートやマウスウオッシュの利用により、軽減できます。本人の気付きを促すことで、改善を図れるでしょう。

社内の相談窓口などに相談する

個人でスメハラ問題を解決できない場合は、社内のハラスメント相談窓口などに相談し、助けを求めましょう。個人で解決できない問題も会社が組織として対処すれば、解決できることはあります。

配置変えを検討する

自分にとっては不快なにおいでも、他の人にとっては問題ない場合もあります。このような場合には、スメハラの解決は困難です。会社に相談のうえで、配置換えを検討してみるのがよいでしょう。

スメハラの上手な伝え方は?

スメハラは、デリケートな問題であるため、伝え方を誤ると相手を深く傷つけ、指摘自体がハラスメント(パワハラ)になりかねません。

スメハラを指摘する際の基本原則は「1対1で」「客観的に」「改善策をセットで」伝えることです。

例えば、人事担当者や直属の上司が、人目につかない会議室などで話す場を設けます。その際、「あなたが臭う」といった主観的な非難ではなく、「職場の労働環境を維持する観点から」や「社内のエチケットとして」といった客観的な視点で話を進めます。

相手を気遣うアプローチとして、「最近、体調はいかがですか?疲れが溜まると、体から疲労臭が出ることがあるそうです。会社としても健康管理をサポートしたいのですが、何か困っていることはありませんか?」といった形で、健康を配慮する形で切り出すのも一つの方法です。

そのうえで、「よければ会社のアメニティの制汗シートを使ってみてはどうか」といった、具体的な改善策を一緒に考える姿勢を見せましょう。

マナーの面からスメハラを伝えてみてもよいでしょう。センシティブなにおいの問題であっても、社会人としての守るべきマナーであるとすれば、相手にとっても受け入れやすくなります。

決して「あなたの体臭が不快だ」などとストレートに伝えてはなりません。相手を深く傷付ける可能性が高いためです。特に体臭など体質的な問題は、本人にも対処が難しい場合が多く、指摘された側は理不尽な攻撃を受けたと感じてしまうこともあります。

スメハラに気をつけよう

体臭や口臭は、本人の生来的な体質によるところが大きく、対処が難しい問題です。しかし、自覚を促し、対処することで軽減は可能となるでしょう。また、体臭など生来的なものに比べて、香水やタバコなどは、より対処しやすい問題となります。

本記事で解説を行ったスメハラ対策などを参考に、スメハラのない快適な職場環境を構築してください。また、本人にスメハラを伝える際には、相手を傷付けない配慮も必要です。

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