- 更新日 : 2023年4月14日
育休中は社会保険料免除?改正後の期間や手続きを解説
2023年に育児休業の改正が行われました。育休の取得率を向上させ、特に男性が取得しやすいものにするためです。産後パパ育休制度が設けられたり、分割取得が可能になったりと、男性労働者でも取得しやすいように変更されています。
育児休業期間中の社会保険料控除についても、月をまたがない場合や賞与の取扱いについて変更があるので、注意が必要です。
目次
育休(育児休業)とは?
育児休業とは「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」において規定されている、育児を行う労働者が取得できる休業のことです。
育児・介護休業法 第5条
労働者は、その養育する1歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。
育児休業を取得できる期間は原則として子が1歳になるまでですが、保育所に入所できないなどの場合は最長2歳になるまで延長できます。
育休中(育児休業中)の社会保険料免除とは?
育休を取得しやすくするために設けられているのが、育児休業期間中の社会保険料免除制度です。無給となることの多い育休中の経済的負担を軽減する目的で、社会保険料の支払いが免除されます。具体的にどのような制度なのか、免除される期間や免除対象となる社会保険料の種類を解説します。
社会保険料が免除になる期間
育休中の社会保険料が免除される期間は、育児休業を開始した日の属する月から終了する日の翌日が属する月の前月までです。
例1)2月1日から11月30日まで育児休業を取得した場合
→2月1日が属する月から11月30日の翌日(12月1日)が属する月の前月まで
(2月分・3月分・4月分・5月分・6月分・7月分・8月分・9月分・10月分・11月分)の社会保険料が免除される
例2)2月1日から11月20日まで育児休業を取得した場合
→2月1日が属する月から11月20日の翌日(11月21日)が属する月の前月まで
(2月分・3月分・4月分・5月分・6月分・7月分・8月分・9月分・10月分)
の社会保険料が免除される
免除の対象となる社会保険料の種類
育児休業期間中に免除の対象となる社会保険料は、健康保険料と厚生年金保険料です。毎月の社会保険料だけでなく、賞与についての社会保険料も免除されます。
事業主(会社)と被保険者に負担はある?
育児休業期間中の社会保険料免除は被保険者が負担する分だけでなく、事業主が負担する分も含まれます。従業員が育児休業期間中の社会保険料免除を受けている場合、事業主もその従業員の社会保険料を支払う必要はありません。
育休による社会保険料免除のための手続きの流れ
育児休業中の社会保険料免除を受ける際には、事業主が以下の手続きを行う必要があります。
提出期限: 育児休業終了日から1ヵ月以内
提出方法: 窓口持参・郵送・電子申請のいずれか
提出先: 窓口持参の場合は事業所を管轄する年金事務所
郵送の場合は事務センター
育休取得の対象者・対象外の条件とは?
育児休業は、パートやアルバイトであっても取得できます。以前は期間を定めて雇用される者は育児休業の取得対象者から除外されていましたが、2005年4月より育児休業取得を申し出る時点で雇用の継続が見込まれる一定範囲の期間雇用者も、育児休業を取得できるようになりました。
育児休業を取得できる一定の範囲の期間雇用者とは、以下のすべての条件に該当する労働者を指します。
- 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
- 子が1歳に達する日(1歳の誕生日の前日)を超えて引き続き雇用されている見込みであること(子が1歳に達する日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く)
短期間の育休の場合も社会保険料が免除される?
育児休業期間中の社会保険料が免除されるのは、育児休業を開始した日の属する月から終了する日の翌日が属する月の前月までです。ただし、2022年10月より短期間の育児休業取得についても公平に社会保険料免除が行われるよう、以下の場合も社会保険料免除が受けられるようになりました。
- 同月内に14日以上育児休業を取得した場合
この改正は、育児休業期間が月末をまたぐか否かで社会保険料免除が行われるかどうかが変わるのを防ぐためのものです。 - 2022年9月までに、4月1日から4月29日まで育児休業を取得した場合
→4月1日が属する月から4月29日の翌日(4月30日)が属する月の前月まで
→社会保険料は免除されない - 2022年10月以降に、4月1日から4月29日まで育児休業を取得した場合
→4月中に14日以上育児休業を取得
→4月分の社会保険料が免除される
賞与月の育休の場合も社会保険料が免除される?
毎月の社会保険料だけでなく、賞与についての社会保険料も免除されますが、2022年10月より賞与の保険料の免除要件に以下のものが追加されました。
・賞与を支払った月の末日を含む、連続した1ヵ月を超える育児休業を取得していること
1ヵ月を超えるかどうかは、暦の日付で判断します。土曜日・日曜日・祝日の休日も、育児休業期間に含めることができます。
育休中の社会保険料免除を正しく理解して活用しよう
育児を行う労働者は原則として子が1歳になるまでの期間、保育所に入所できないなどの理由がある場合は2歳になるまでの期間、育児休業を取得できます。パートやアルバイトであっても育児休業の取得は可能で、育児休業期間中は社会保険料が免除されます。
社会保険料免除期間は育児休業を開始した日の属する月から終了する日の翌日が属する月の前月までですが、2022年10月からは同一月内に14日以上を育児休業した月の社会保険料も免除されることになりました。賞与の社会保険料免除についても要件が変更されているので、確認しておきましょう。
よくある質問
育休中の社会保険料免除について教えてください。
育児休業を開始した日の属する月から、終了する日の翌日が属する月の前月までの社会保険料が免除されます。詳しくはこちらをご覧ください。
短期間の育休の場合も社会保険料は免除されますか?
2022年10月から、同一月内に14日以上育児休業した場合も社会保険料が免除されるようになりました。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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