- 更新日 : 2025年1月24日
年次有給休暇管理簿とは?書き方や作成義務について解説
年次有給休暇管理簿は、各労働者の年次有給休暇取得状況を把握するために使用者が作成・保管しなければならない帳簿です。作成方法は自由ですが、付与日・日数・取得時期の3項目は必ず記入しなければなりません。対象者は「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が求められる、年次有給休暇付与日数10日以上の労働者です。
目次
年次有給休暇管理簿とは
年次有給休暇管理簿は労働者の年次有給休暇の取得状況を把握するための帳簿で、以下の点に注意して作成する必要があります。
作成義務がある
年次有給休暇管理簿は、その作成・保管が法律で定められています。労働者を使用する者は、必ず年次有給休暇管理簿を作成しなければなりません。作成・保管しなかった場合でも罰則はありませんが、法律違反として指導される可能性があります。
対象者
年次有給休暇を10日以上付与される労働者を対象に、年次有給休暇管理簿を作成しなければなりません。対象者が年次有給休暇付与日数10日以上の労働者に限られているのは、「年5日の年次有給休暇の確実な取得」との関係によるものです。「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられているのは、年次有給休暇が10日以上の労働者です。年次有給休暇管理簿は「年5日の年次有給休暇の確実な取得」を目的として作成されるため、対象者は同じく年次有給休暇を10日以上付与される労働者とされています。
年次有給休暇管理簿の作成方法
年次有給休暇管理簿は紙に書いたりパソコンを使ったりと、自由に作成することが認められていますが、以下の方法で作成するのが一般的です。
紙に記入する
紙への記入は、最もオーソドックスな年次有給休暇管理簿の作成方法といえるでしょう。紙に記入する方法のメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット
・ある物で作成できる
・費用がかからない
デメリット
・手書きの手間がかかる
・日数を計算しなければならない
・次年度には最初から書き直さなければならない
・紛失や破損の可能性がある
エクセルで作成する
エクセルでの作成は、紙に記入する方法に次いでポピュラーな年次有給休暇管理簿の作成方法でしょう。エクセルで作成する方法のメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット
・パソコンがあれば作成できる
・年度更新時も簡単に作表できる
・日数計算を自動でできる
デメリット
・改ざんされる可能性がある
・保存のミスでデータが消える
勤怠管理システムを利用する
年次有給休暇管理簿は、勤怠管理システムを使って作成することもできます。多くの勤怠管理システムには、入力した勤怠データから簡単に年次有給休暇管理簿を作成できる機能が備わっています。この機能を用いる方法のメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット
・ほとんど作業を行うことなく作成できる
デメリット
・勤怠管理システムを導入しなければならない
年次有給休暇管理簿の書き方
年次有給休暇管理簿は書式やフォーマットが定められていないため自由に作成できますが、書かなければならない項目は定められています。年次有給休暇管理簿には、基準日・日数・取得時期の3項目を書かなければなりません。
基準日
年次有給休暇管理簿に書かなければならない項目の1つ目は、基準日です。基準日とは、各労働者に年次有給休暇を付与した日付のことです。労働基準法の定めの通り、雇入日をもとに年次有給休暇付与を行っている場合、労働者ごとに基準日が異なります。一斉付与としている場合は、同一の一斉付与日を記入します。
日数
年次有給休暇管理簿に書くべき日数とは、各労働者が取得できる年次有給休暇の日数のことです。付与された日数から、取得済日数を差し引いた日数を記入します。
労働基準法第39条第2項において、年次有給休暇は継続勤務・8割以上出勤の労働者に対して以下の日数を付与することが定められています。
取得時期
年次有給休暇管理簿には、取得時期として各労働者が年次有給休暇を取得した日付を書く必要があります。
年次有給休暇管理簿の保管期間
年次有給休暇管理簿の保管期間は、現在のところ3年間とされています。労働基準法施行規則第24条の7第1項に規定され、条文上では5年となっていますが、経過措置により当面は3年間とされています。なお。違反した場合の罰則はありません。
・労働基準法施行規則第24条の7
使用者は、法第39条第5項から第7項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後5年間保存しなければならない。
(引用:昭和二十二年厚生省令第二十三号労働基準法施行規則|e-Gov法令検索)
年次有給休暇管理簿を作成しなかった場合の罰則
年次有給休暇管理簿を作成しなかった場合でも、罰則はありません。ただし、年次有給休暇管理簿は「年5日の年次有給休暇の確実な取得」を目的に作成・管理が義務付けられた帳簿で、5日以上の年次有給休暇取得義務を履行しなかった場合は罰則があります。処罰されるのは年次有給休暇を取得しなかった労働者ではなく、取得させなかった使用者です。未達成の労働者1人あたり、30万円以下の罰金が科せられます。
年次有給休暇管理帳のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
年次有給休暇管理簿を正しく作成し、「年5日の年次有給休暇の確実な取得」につなげよう
年次有給休暇管理簿の作成・保管が、労働者を使用する者に義務付けられています。使用者は各労働者の年次有給休暇取得状況を把握する目的で年次有給休暇管理簿を作成し、付与日・日数・取得時期を記入しなければなりません。作成方法は自由で、紙に記入する方法・エクセルで作成する方法・勤怠管理システムを利用する方法などがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社に合う方法で作成するとよいでしょう。
年次有給休暇管理簿は、「年5日の年次有給休暇の確実な取得」を目的としています。そのため、対象者は「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が必要な10日以上年次有給休暇を付与される労働者です。使用者は年次有給休暇管理簿によって各労働者の年次有給休暇取得状況を把握し、未達成の労働者に対して必要な働きかけを行わなくてはなりません。年次有給休暇管理簿を正しく作成して、労働者の年次有給休暇取得につなげましょう。
▶ マネーフォワード クラウド勤怠を使えば有給休暇管理簿の作成を効率化できます。詳しくはこちらをクリック
よくある質問
年次有給休暇管理簿とは?
各労働者の年次有給休暇取得状況を把握するため、使用者に作成・保管が義務付けられている帳簿です。詳しくはこちらをご覧ください。
年次有給休暇管理簿に書くべき項目は?
年次有給休暇管理簿には、付与日・日数・取得時期の3項目を書かなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
有給休暇の関連記事
新着記事
10時間労働の休憩は何時間?1時間半〜2時間必要?取れなかった場合の対処法も解説
「毎日10時間労働なのに、休憩はたったの1時間…これって法律的に大丈夫?」 「拘束時間が長いのに、しっかり休めていない気がしてきつい…」 長時間労働が続くと、心身ともに疲れが溜まり、休憩時間が適切に取れているか不安になりますよね。特に1日の…
詳しくみる15分の残業代切り捨ては違法!正しい計算方法や残業代がつかない場合の対処法を解説
日々の業務の中で、15分未満の残業が発生することは珍しくありません。しかし、そのわずかな時間に対して、「15分未満は切り捨て」として残業代が支払われていないケースが後を絶ちません。 この記事では、なぜ15分単位の勤怠管理が問題なのか、法律上…
詳しくみる1ヶ月単位の変形労働時間制は届出不要?10人未満でも必要なケースと手続きをわかりやすく解説
「1ヶ月単位の変形労働時間制を導入したいが、手続きが複雑そう…」「従業員が10人未満なら、労働基準監督署への届出は不要と聞いたけど本当?」このような疑問をお持ちの経営者や人事労務担当者の方も多いのではないでしょうか。 結論、1ヶ月単位の変形…
詳しくみる36協定の対象者は?管理職・パート・派遣社員の取り扱いや適用除外についても解説
従業員に残業を命じるためには、36協定の締結が必要不可欠ですが、「どの従業員が36協定の対象者になるのか」を正確に答えられるでしょうか。 管理職の扱いはどうなるのか、パートやアルバイトも対象なのか、派遣社員はどう考えればよいのかなど、対象者…
詳しくみる中小企業のための36協定ガイド|ない場合の罰則・上限規制や届出までわかりやすく解説
「従業員に残業をさせているが、法的に問題ないだろうか」「36協定という言葉は聞くけれど、自社で対応が必要なのかわからない」このような悩みを抱える中小企業の経営者や人事労務担当者の方は少なくありません。 時間外労働に関するルールは年々厳格化し…
詳しくみる社会保険料の計算方法は?シミュレーション・年収別早見表つき|2025年最新
毎月の給与明細を見ると、控除の欄に健康保険料や厚生年金保険料といった項目があります。これらが社会保険料です。社会保険は、私たちが病気やケガ、失業、老後といった人生のリスクに備えるための公的な保障制度であり、そのための費用を加入者(従業員)と…
詳しくみる