- 更新日 : 2025年11月5日
勤怠集計のやり方とは?手計算やExcel、勤怠管理システムで効率化する方法まで解説
毎月の給与計算に欠かせない勤怠集計のやり方は、タイムカードを使った手計算から、Excelや勤怠管理システムを活用した自動化までさまざまです。
この記事では、勤怠集計の正確なやり方について、初心者にもわかりやすく解説します。この記事を読めば、自社に合った労働時間の計算方法を見つけ、ミスなく効率的に勤怠管理を行うための具体的な手順と注意点がわかります。煩雑な集計作業を正確かつスムーズに進めるために、ぜひご活用ください。
目次
そもそも勤怠集計とは?
勤怠集計とは、従業員一人ひとりの出勤・退勤時刻、休憩時間などを記録・集計し、労働時間を正確に把握して給与計算の基礎データを作成する一連の作業です。
労働基準法では、会社は労働時間を適切に把握する責務があると定められています。勤怠集計は、この法的な義務を果たし、残業代の未払いといった労務リスクを防ぎ、従業員の健康を守る上で重要な業務といえます。
勤怠集計の目的
勤怠集計の主な目的は、給与の正確な計算、法令遵守、従業員の健康管理の3つです。
- 給与の正確な計算
従業員の労働に対する正当な対価を支払うための根拠となります。計算ミスは従業員の不信感に繋がり、モチベーション低下の原因にもなります。 - 法令遵守(コンプライアンス)
労働基準法で定められた労働時間の上限規制や、割増賃金の支払義務などを守るために不可欠です。労働基準監督署の調査が入った際にも、客観的な労働時間の実態を示す証拠となります。 - 従業員の健康管理
36協定で定められた時間外労働の上限を超えていないかなどを把握し、過重労働を防ぐ役割を担います。従業員の心身の健康を守ることは、生産性の維持・向上にも繋がります。
勤怠集計で扱う主な項目
勤怠集計では、主に以下の項目を管理・計算します。これらのデータを正確にまとめることが、適切な勤怠管理の第一歩です。
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 出勤・退勤時刻 | 業務を開始した時刻と終了した時刻。 |
| 所定労働時間 | 会社が就業規則で定めた正規の労働時間。 |
| 実労働時間 | 実際に働いた時間。出勤時刻から退勤時刻までの時間(拘束時間)から休憩時間を除いたもの。 |
| 休憩時間 | 労働時間の途中に与えられる休息時間。 労働基準法で取得が義務付けられています。 |
| 時間外労働(残業) | 法定労働時間または所定労働時間を超えて働いた時間。 |
| 深夜労働 | 原則として午後10時から午前5時までの間に働いた時間。 |
| 休日労働 | 労働基準法で定められた法定休日に働いた時間。 |
| 遅刻・早退・欠勤 | 所定の勤務時間に満たなかった場合の時間や日数。 |
| 休暇取得状況 | 年次有給休暇やその他の特別休暇の取得日数・残日数。 |
勤怠集計のやり方は?
勤怠集計の主なやり方には、手計算、表計算ソフト(Excelなど)、勤怠管理システムの3つの方法があります。
企業規模や従業員数、求める正確さや効率性によって最適な方法は異なります。それぞれの特徴を理解し、自社の状況に合った手段を選択することが大切です。
1. タイムカードを使った手計算
紙のタイムカードに打刻された時刻を従業員ごと、日ごとに確認し、電卓を使って労働時間を手作業で集計する方法です。従業員が数名程度で、勤務形態が非常にシンプルな企業に向いています。
- 従業員がタイムレコーダーで紙のタイムカードに打刻する。
- 締め日後にタイムカードを回収する。
- 各日の労働時間、残業時間などを目視で確認し、電卓で計算する。
- 集計結果を給与計算用の台帳などに転記する。
2. Excelやスプレッドシートでの集計
多くの企業で導入されているのが、ExcelやGoogleスプレッドシートといった表計算ソフトを使用する方法です。関数やテンプレートを活用することで、ある程度の自動化が可能です。
- 出退勤時刻などの打刻データをExcelシートに入力する。(手入力またはCSVデータでのインポート)
- 事前に設定した関数(IF、SUM、VLOOKUPなど)を使い、労働時間や残業時間を自動計算させる。
- 月間の合計値を算出し、給与計算データとして利用する。
3. 勤怠管理システムの活用
勤怠管理システムは、勤怠管理に特化した専用のソフトウェアやクラウドサービスです。打刻から集計、給与ソフトとの連携までを自動化できます。
- 従業員がPC、スマートフォン、ICカードなどで打刻する。
- 打刻データはリアルタイムでシステムに記録される。
- あらかじめ設定した就業規則に基づき、労働時間や残業時間が自動で集計される。
- 集計データはCSV形式で出力したり、給与計算ソフトとAPI連携したりできる。
勤怠集計を正しく行うための注意点
勤怠集計を正確に行うためには、法律を正しく理解し、社内ルールを統一し、事前の準備を整えておくことが大切です。
1. 労働基準法の基本を理解する
勤怠管理は労働基準法と密接に関わっています。特に以下の点は必ず押さえておきましょう。
- 法定労働時間
原則として1日8時間、1週40時間です。これを超えて労働させる場合は、事前に36協定の締結と届出が必要です。 - 割増賃金
法定労働時間を超える時間外労働、深夜労働(22時〜5時)、法定休日労働には、法律で定められた割増率をかけた賃金を支払わなければなりません。 - 休憩時間
労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を、労働時間の途中に与える義務があります。
2. 労働時間の端数処理は1分単位が原則
労働時間は、原則として1分単位で管理しなければなりません。15分未満切り捨てといった運用は、切り捨てた時間分の賃金が未払いとなり、労働基準法違反と判断される可能性があります。
ただし例外として、1か月の時間外労働合計に出た30分未満の端数は切り捨てることが認められています。社内で端数処理のルールを明確に定め、全員が同じ方法で計算することが重要です。
3. 打刻漏れやミスへの対応ルールを決めておく
従業員の打刻忘れや入力ミスは起こり得るものです。そうした場合に、誰が、いつまでに、どのように修正するのかという流れを事前に決めておきましょう。上長が客観的な事実(PCのログイン履歴など)を確認して承認するなど、不正な時刻修正を防ぎ、客観性を保つルールが求められます。
4. 締め日から給与支払日までのスケジュールを管理する
勤怠の締め日から給与支払日までの期間は限られています。この期間内に、全従業員の勤怠データを集計し、ミスがないかを確認し、給与計算につなげる必要があります。特に手計算やExcelで集計している場合は時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
勤怠集計を効率化・自動化する方法
毎月の負担を減らし、正確性を上げるためには、作業の効率化が欠かせません。
勤怠管理システムを導入する
勤怠管理システムを導入すれば、打刻から集計までの工程の多くを自動化できます。
- 工数の大幅削減
自動集計により、担当者は確認作業に集中できます。 - 正確性の向上
計算ミスや転記ミスがなくなります。 - リアルタイムな勤怠把握
管理者はいつでも従業員の労働状況を確認でき、長時間労働を早期に発見できます。 - 法改正への対応
クラウド型のシステムであれば、提供元が法改正対応のアップデートを行うことが多いため安心です。 - 多様な働き方への対応
テレワークやフレックスタイム制など、複雑な勤務形態にも柔軟に対応できます。
Excelのマクロや関数を使いこなす
すぐに勤怠管理システムを導入するのが難しい場合は、現在使用しているExcelの機能を最大限に活用して効率化を図りましょう。定型的な作業をマクロで自動化したり、SUMIFなどの関数を使いこなしたりすることで、集計作業を簡略化できます。
ダブルチェック体制を整える
誰がどの範囲の集計を担当するのかを明確にしましょう。また、一人が集計した結果を必ず別の担当者が確認するダブルチェック体制を構築することで、人為的なエラーを早期に発見し、手戻りを減らせます。これは、どの集計方法を採用していても有効な品質管理の手法です。
勤怠集計の方法を見直し、正確で効率的な企業運営へ
この記事では、勤怠集計の基本的なやり方から、Excelを使った具体的な手順、法律上の注意点、そして作業を効率化する方法までを解説しました。
勤怠集計は、正確な給与計算と法令遵守の根幹をなす大切な業務です。手計算やExcelでの管理に限界を感じている場合は、勤怠管理システム導入を一つの選択肢として、自社に最適な勤怠集計の方法を見直してみてはいかがでしょうか。正確な勤怠管理は、従業員との信頼関係を築き、健全な企業経営を実現するための第一歩となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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