- 更新日 : 2025年11月4日
年末調整のRPA活用で何が自動化できる?業務フローやメリットを徹底解説
年末調整は、RPA(Robotic Process Automation)を導入することで、これまで多くの時間を費やしてきた手作業を大幅に効率化できます。これにより、申告書のデータ入力や煩雑なチェック作業が自動化され、担当者の負担軽減とヒューマンエラーの防止につながるでしょう。
毎年の年末調整シーズンになると、山積みの書類や差し戻し対応に追われ、本来の業務が滞ってしまうという悩みを抱える企業は少なくありません。
この記事では、RPAが年末調整業務をどのように変えるのか、具体的な業務フローから導入のメリット、成功させるための準備までを、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。
目次
年末調整にRPAを活用すると何が自動化できる?
年末調整にRPAを活用することは、これまで人が手作業で行っていたデータ入力や転記、照合といった一連の定型業務を、ソフトウェアのロボットに任せて自動化することです。RPAはパソコン上での操作を記憶し、ルールに基づいて正確に再現できるため、とくに反復作業が多い年末調整業務とは非常に相性が良いといえるでしょう。
RPAの基本的な仕組みとAIとの違い
RPAは、あらかじめ定められた手順(シナリオ)に沿って作業を実行する「実行役」です。例えば、「ExcelのA列の値をコピーし、給与システムのB画面に貼り付ける」といった明確な指示に従って動きます。
一方で、AI(人工知能)は、データから学習し、人間のように自ら「判断」する技術です。この二つを連携させることで、より高度な自動化が実現します。例えば、AI-OCR(AI搭載の光学的文字認識)が手書きの申告書を読み取って「判断」しデータ化、そのデータをRPAがシステムに正確に「実行(入力)」するといった役割分担が可能になります。
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年末調整業務にRPAを活用した5つの自動化領域
RPAは、年末調整における以下のような幅広い領域で活躍します。
申告書データのシステム入力
従業員から回収した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「保険料控除申告書」の内容を、給与計算ソフトや人事システムへ自動で入力します。
控除証明書データの転記
生命保険や地震保険などの控除証明書(電子データまたはAI-OCRで読み取ったデータ)から、保険会社名や支払金額といった必要な情報を抽出し、システムに転記します。
提出内容の不備チェック
提出された申告書の情報と、社内の人事データとの間に矛盾がないか、あるいは記入漏れや計算ミスがないかを自動で照合・チェックします。不備が見つかった場合は、担当者にアラートを出すことも可能です。
源泉徴収票などの帳票作成・出力
年税額の計算後、全従業員分の源泉徴収票や給与支払報告書といった各種帳票を、RPAが自動で作成し、PDFファイルとして保存したり、一括で印刷したりします。
e-Tax/eLTAX用の電子申告データ作成
国税庁のe-Taxや地方税ポータルシステムのeLTAXで電子申告を行うためのデータを作成し、申告システムへのアップロードまでを自動化します。
年末調整にRPAを導入するメリット・デメリットは?
年末調整業務へのRPA導入は、業務負担の軽減や精度の向上といったメリットがある一方で、事前の準備やセキュリティ対策といった注意点もあります。 メリットとデメリットの双方を正しく理解し、自社にとって最適な導入計画を立てましょう。
担当者と企業のメリット
RPAの導入は、現場の担当者と企業経営の双方に、測定可能な良い影響をもたらします。
圧倒的な業務時間の短縮
RPAは人間と違い、24時間365日稼働できます。これまで担当者が数日から数週間かけて行っていたデータ入力作業を、数時間で完了させることも不可能ではありません。この時間的余裕は、担当者の残業時間削減に直結し、ワークライフバランスの改善にもつながるでしょう。
ヒューマンエラーの防止と品質向上
人間が手作業で行う以上、どれだけ注意しても入力ミスや見落としは発生します。RPAはプログラムされた通りに寸分たがわず作業を実行するため、ヒューマンエラーを根本からなくせます。これにより、差し戻しや修正といった手戻り作業が減り、業務全体の品質が安定・向上します。
ペーパーレス化と人件費の抑制によるコスト削減
電子データでのやり取りが中心となるため、紙の購入費、印刷代、書類の保管スペースといった物理的なコストを削減できます。また、業務時間の短縮は残業代の抑制につながり、長期的にはより少ない人数で業務を遂行できる体制構築にも寄与するでしょう。
コア業務へのシフトによる生産性向上
定型業務から解放された担当者は、人でなければ対応できない、より付加価値の高い業務に時間と能力を振り向けられるようになります。例えば、従業員からの個別相談への丁寧な対応、複雑な税制改正に関する情報収集と社内への展開、人事戦略の立案など、企業の成長を支えるコア業務に集中できる環境が整います。
導入前に把握すべきデメリットと対策
メリットを享受するためには、導入に伴う課題にも目を向ける必要があります。
導入・運用コストの発生
RPAツールのライセンス費用や、業務内容に合わせたシナリオ(ロボットの動作手順)の開発に初期コストがかかります。また、税制改正や社内システムの変更に伴うシナリオの修正など、定期的なメンテナンス費用も見込んでおく必要があります。
対策:導入前に、削減できる人件費や時間的コストを試算し、費用対効果を慎重に検証しましょう。
業務フローの見直しが必要
非効率な業務フローをそのままRPAで自動化しても、期待したほどの効果は得られません。RPA導入を機に、現在の業務プロセス全体を洗い出し、「そもそもこの作業は必要なのか」「もっとシンプルな手順にできないか」といった視点で見直すことが大切です。
セキュリティリスクへの対応
年末調整業務では、マイナンバーをはじめとする極めて機密性の高い個人情報を取り扱います。RPAがこれらの情報にアクセスするため、情報漏洩を防ぐための厳格なセキュリティ対策が欠かせません。
対策:誰がRPAを管理・操作できるのかを明確にし、アクセスログの監視や権限設定を徹底するルールを定めましょう。
RPAとAI-OCRを活用した年末調整の業務フローは?
紙の申告書を扱う企業にとって、手書き文字などを高精度で読み取るAI-OCRとRPAの連携は、年末調整を自動化する上で強力な組み合わせとなるでしょう。ここでは、書類の回収からシステム入力、帳票作成まで、一連の業務がどのように自動化されるのかを6つのステップで解説します。
STEP1:申告書・証明書の回収とスキャン
まず、従業員から提出された紙の申告書や保険料控除証明書などを回収し、スキャナで読み取り、画像データとして保存します。この段階は、今後の電子化推進にふまえて、従業員に電子データでの提出を促す良い機会にもなるでしょう。
STEP2:AI-OCRによる文字情報のデータ化
スキャンした画像データをAI-OCRが解析し、記載されている文字情報をテキストデータに変換します。近年のAI-OCRは、手書きの文字や多少のズレがある印字でも、AIの学習機能によって高い精度で認識できます。
STEP3:RPAによるデータの整形と抽出
AI-OCRによってテキスト化されたデータの中から、RPAが必要な情報だけを抽出します。例えば、氏名、住所、扶養家族の情報、保険料の金額といった項目を抜き出し、給与計算ソフトが読み込める形式(CSVファイルなど)に自動で整形・出力します。
STEP4:給与計算ソフトへの自動入力
整形されたデータを、RPAが給与計算ソフトや人事システムの該当項目へ、一件ずつ自動で入力していきます。これまで担当者が画面を見ながら行っていた、最も時間のかかる単純作業をロボットが代行します。
STEP5:年税額計算後の帳票自動作成
給与計算ソフトで年税額の計算が完了したことをトリガーに、RPAが次の工程を自動で開始します。全従業員分の源泉徴収票や給与支払報告書といった法定調書を作成し、指定されたフォルダにPDF形式で保存します。
STEP6:電子申告データの作成と申請
最後に、税務署や市区町村へ提出するための電子申告用データ(e-Tax、eLTAX形式)をRPAが生成します。ツールによっては、電子申告システムへ自動でログインし、データのアップロードや送信ボタンのクリックといった申請作業までを代行させることも可能です。
年末調整にRPAを活用するには何を準備すればよい?
RPAの導入には、技術的な準備だけでなく、組織としての周到な準備が欠かせません。「とりあえずツールを入れてみよう」という見切り発車は失敗のもとになります。担当者が事前に確認・実行すべきポイントを解説します。
目的と自動化範囲を明確にする
まず、「何のためにRPAを導入するのか」という目的をはっきりさせましょう。「年末調整にかかる残業時間をゼロにする」「データ入力ミスをなくす」など、定量的で具体的な目標を設定することが大切です。その上で、年末調整業務のどの部分から自動化に着手するのか、範囲を定めます。最初は「保険料控除申告書の入力」のように、範囲を絞ってスモールスタートし、成功体験を積みながら対象業務を広げていくのが着実な進め方です。
既存の業務フローを可視化・整理する
次に、現在の年末調整業務のフローを、開始から完了まで詳細に洗い出し、「業務フロー図」として可視化します。この作業を通じて、担当者間の認識のズレや、非効率な手順、属人化している作業などが明らかになります。非効率なプロセスをそのまま自動化しても効果は限定的です。自動化を前提に、よりシンプルで標準化された業務フローへと見直しましょう。
費用対効果を試算する
RPAの導入にはコストがかかります。ライセンス費用、開発費用、保守費用などの「投資」に対して、どれだけの「効果(リターン)」が見込めるのかを事前に試算します。削減できる残業代や人件費、ペーパーレス化による経費削減効果などを算出し、投資回収にどれくらいの期間がかかるのかを把握した上で、経営層の理解を得ることが大切です。
セキュリティポリシーを策定する
マイナンバーなどの重要情報を取り扱うため、セキュリティに関する厳格なルール作りは必須です。誰がRPAのシナリオを作成・変更・実行できるのか、といった権限管理を明確にします。また、RPAによる操作ログをすべて記録・保管し、万が一の際に追跡できるようにしておくなど、情報漏洩や不正利用を防ぐための運用ポリシーを策定し、関係者で共有しましょう。
RPAの活用は年末調整の繁忙期をスムーズに
RPAとAI-OCRを組み合わせた自動化は、年末調整業務を「年に一度の、大変でミスの許されないイベント」から、「効率的で質の高い、コントロールされた定常業務」へと変革させる力を持っています。
これまで反復作業に費やしていた膨大な時間を、従業員へのきめ細やかな対応や、より戦略的な人事・会計業務へと振り向けることができるようになるでしょう。
もちろん、導入には事前の準備やコストも必要ですが、それらを乗り越えることで得られる効果は計り知れません。この記事で解説したポイントをふまえ、自社に合った形での業務変革を進め、生産性の高いバックオフィス体制を構築してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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