- 更新日 : 2025年9月22日
【2025年最新】給与計算の法改正一覧|実務で対応すべきポイントを解説
2025年から2026年にかけて、給与計算業務は複数の法改正への対応が必要です。特に、2025年4月から順次施行される育児・介護休業法の改正は、従業員の働き方に直接影響し、給与計算の実務にも変更が生じます。
また、2024年から続く時間外労働の上限規制への準拠や、社会保険関連の制度変更も引き続き重要なテーマです。これらの法改正の内容を正確に把握し、適切に対応しない場合、追徴課税や労使トラブルに発展する危険性があります。
この記事では、2025年から2026年にかけて給与計算に影響する法改正の要点を一覧で整理し、担当者が実務で何をすべきかを具体的に解説します。最新情報を確認し、正確な給与計算を実現しましょう。
目次
給与計算に関連する主な法改正一覧
まずは、給与計算に関わる法改正の全体像を把握しましょう。
施行時期 | 法改正の概要 | 給与計算への主な影響 |
---|---|---|
2024年4月~ | 時間外労働の上限規制 (建設業、運送業、医師などへ適用拡大) | 残業代の正確な計算、労働時間の客観的な記録・履歴管理がより重要になる。 |
2024年12月 | 2024年分 定額減税の終了 (年末調整での精算) | 月次の所得税減税は終了。年末調整で最終的な税額を計算・精算する。 |
2025年4月1日~ | 育児・介護休業法 改正 (子の看護等休暇、残業免除の対象拡大など) | 休暇取得時の給与控除計算、残業免除対象者の勤怠管理。 |
2025年4月1日~ | 雇用保険法 改正 (育児時短就業給付金の創設など) | 新たな給付金制度の理解と、従業員への情報提供。 |
2025年度 | 介護保険料率の変更 | 40歳から64歳の従業員の給与から控除する介護保険料額が変動。 |
2026年度~ | 子ども・子育て支援金制度の開始 | 医療保険料に上乗せして新たな支援金を徴収開始。 |
【2025年施行】給与計算に直接影響する法改正
2025年は、特に育児・介護関連の法改正が多く、従業員の勤怠や給与控除に直接的な影響があります。
育児・介護休業法の改正
2025年4月1日より、仕事と育児・介護の両立支援を目的とした法改正が順次施行されます。企業の義務が増えるため、就業規則の改定や勤怠管理方法の見直しが必要です。
- 所定外労働(残業)免除の対象拡大
これまで3歳未満の子を養育する従業員が対象だった残業の免除制度が、小学校就学前の子を養育する従業員まで拡大されます。 - 子の看護休暇の対象拡大
こちらも同様に、対象となる子の範囲が小学校就学前から小学校3年生修了までに引き上げられます。 - 柔軟な働き方のための措置
3歳以上小学校就学前の子を養育する従業員に対して、企業は2025年10月1日から、時短勤務、フレックスタイム、テレワークなどの中から2つ以上の制度を選択して導入することが義務付けられます。
これらの改正により、対象従業員の労働時間が変わるため、残業代や各種手当の計算を正確に行う必要があります。
社会保険料率の変更
介護保険料率は、毎年の医療費や介護給付費の見通しに基づき改定されます。協会けんぽの2025年度の介護保険料率は1.59%に決定(2025年2月13日厚労大臣認可)されました。40歳から64歳の従業員の給与から控除する金額が変わるため、最新の保険料率を適用して計算しなくてはなりません。
賃金のデジタル払い
2023年4月に解禁された、キャッシュレス口座への給与支払いは、2025年も企業の選択肢となります。導入は義務ではありませんが、従業員のニーズに応じて検討する場合、労働者の同意や労使協定の締結などの手続きが必要です。
【2024年施行】給与計算に引き続き影響する法改正
2024年から始まった制度や規制も、2025年の給与計算に引き続き影響します。
時間外労働の上限規制と割増賃金
働き方改革関連法により、時間外労働には原則月45時間・年360時間という上限が設けられています。2024年4月からは、これまで猶予されていた建設業、運送業、医師などにもこの上限規制が適用されました。
- 労働時間の客観的な把握
企業は、タイムカード、PCのログイン・ログアウト履歴、勤怠管理システムなどを用いて、従業員の労働時間を客観的かつ正確に把握する義務があります。これは連続勤務や過重労働を防ぐためにも不可欠です。 - 割増賃金の計算
月60時間を超える時間外労働に対しては、50%以上の割増賃金を支払う必要があります。このルールは大企業に加え、2023年4月1日以降は中小企業にも適用されています。
これらの規制を順守し、正しい残業代を支払うことは、給与計算における最重要事項の一つです。
2024年分の定額減税の年末調整
2024年6月から始まった所得税の定額減税は、あくまで2024年限定の措置です。2025年1月以降の月次給与計算では、定額減税の処理は行いません。
2024年分の最終的な税額調整は、年末調整で行います。月々の給与から引ききれなかった減税額を精算する年調減税の計算は、住宅ローン控除など他の税額控除との順序も決まっており、計算が複雑化します。年末の繁忙期に向けて、国税庁の「定額減税に関する年末調整マニュアル」などをあらかじめ確認しておくことが大切です。
なお、一部の特殊なケースでは、2025年度の個人住民税から減税が行われる場合があります。
【2026年施行予定】子ども・子育て支援金制度
少子化対策の財源として、2026年4月から子ども・子育て支援金制度が始まります。この支援金は、公的医療保険の保険料に上乗せする形で、全世代の被保険者から徴収されます。
徴収開始は2026年度からですが、新たな負担が発生するため、従業員への事前説明が重要になります。制度の詳しい内容や正確な徴収額については、こども家庭庁など公的機関からの発表を注視し、早期に情報収集を進めましょう。
法改正に伴う給与計算実務の具体的な変更点
法改正にスムーズに対応するため、担当者は以下の準備を計画的に進める必要があります。
給与計算システムの設定更新
給与計算システムを利用している場合、法改正に対応したアップデートが提供されます。ベンダーからの案内を確認し、必ず適用してください。アップデート後は、計算結果が正しいか、複数の従業員を例にテスト計算を行い、自身の目で確認する作業が欠かせません。
手計算や表計算ソフトで管理している場合は、計算式の変更漏れやミスが起きやすいため、特に注意深く見直しを行ってください。
給与明細の記載事項の変更
定額減税を実施した際は、給与明細に減税額を「定額減税額(所得税)〇〇円」のように明記する必要がありました。今後、子ども・子育て支援金の徴収が始まれば、同様に明細への項目追加が必要になる可能性があります。従業員が自身の給与内容を正しく理解できるよう、法令に準拠したフォーマットを準備しましょう。
従業員への丁寧な説明と周知
給与の手取り額が変わることは、従業員にとって大きな関心事です。なぜ金額が変わるのか、法改正の背景や目的を分かりやすく説明する責任が企業にはあります。社内掲示板や朝礼、説明会の開催などを通じて、全従業員に情報を周知しましょう。特に、定額減税や新たな社会保険料の負担については、誤解や不安を招かないよう、丁寧なコミュニケーションを心がけることで、従業員の納得感と会社への信頼感を維持できます。
必要に応じた専門家への相談
給与計算は専門性が高く、法解釈が難しい場面も少なくありません。自社だけで対応することに不安がある場合は、顧問の社会保険労務士や税理士といった専門家に相談しましょう。専門家は法改正に関する深い知見を持ち、個別のケースに応じた的確な助言を提供してくれます。誤った対応によるリスクを避けるためにも、早めに相談し、万全の体制を整えることが賢明な判断です。
計画的な準備で、2025年の給与計算を行いましょう
2025年にかけて、給与計算に関連する法改正は、企業の経理・人事担当者にとって対応が必須の課題です。 特に、育児・介護に関連する法律や社会保険制度の変更は、全従業員の給与に直接関わるため、正確な理解が求められます。
これらの変化に対応するには、まず国税庁や厚生労働省のウェブサイトで一次情報を確認し、正確な知識を身につけることが第一歩です。 その上で、給与計算システムの設定変更や、従業員への分かりやすい事前説明を計画的に進めることが重要となります。 本記事で解説したポイントを参考に、余裕を持った準備を進め、円滑で正確な給与計算業務を維持してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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