- 更新日 : 2025年2月21日
10連勤は法律上違法ではない!労働基準法の定めや違法になるケースを解説
「10連勤は違法?」「違反するとどうなる?」「正社員は何日まで連勤できる?」
労働環境が厳しい職場では、連勤が続くことが増え、そもそも法律的にどうなのか気になる方もいらっしゃるでしょう。
結論、10連勤務は違法ではありません。しかし、従業員への適切な休息は必要です。
本記事では、10連勤が法律的にどう扱われるのかを明確にしつつ、連勤が避けられない会社に向けて従業員が不満を持たないための仕組みづくりについても解説します。
労働環境でお悩みの企業はぜひ参考にしてください。
目次
10連勤は法律上は違法ではない
労働基準法では、10連勤は原則として違法ではありません。実際、12連勤まで法律上可能です。
ただし、法定休日を適切に確保している場合に限られます。労働基準法第35条では、週に1回以上の法定休日を与えることが義務付けられており、守られていれば連勤が続いても問題ありません。
しかし、適切な休息が確保されていない場合や過重労働が生じた場合には、他の法律や規制に抵触する可能性があります。従業員の健康面や生産性の観点からも、10連勤があまり起きないよう慎重にシフトを管理するようにしましょう。
法定休日と法定外休日
労働基準法において、休日は法定休日と法定外休日の2種類です。法定休日とは労働基準法第35条に基づき、週に1回以上与えられることが義務付けられた休日を指します。
たとえば、日曜日を法定休日と定めた場合、守らないと労働基準法違反となります。法定休日に労働した場合は、35%以上の割増賃金が必要です。
法定外休日とは、会社が独自に設定した休日で、法定休日以外の休日を指します。たとえば、会社が土日を休日としている場合、そのうちの1日が法定休日、もう1日が法定外休日となり、どちらを法定休日とするかは会社が定められます。
法定外休日に労働しても休日割増賃金は適用されませんが、就業規則に基づいて対応しなければなりません。法定休日と法定外休日を正確に理解し、適切に運用することは、労働者の権利を守り、企業のコンプライアンスを確保するうえで非常に重要です。
連勤に関する労働基準法の定め
連勤は労働者にとって負担が大きいだけでなく、法律的な問題が発生する可能性もあります。
ここからは、労働基準法における連勤に関する規定や、違法となるケースについて詳しく解説します。
週1日休日にしなければならない
労働基準法第35条では、「週休1日制」が定められています。この法律によれば、労働者には1週間に1日以上の休日を与える義務が使用者側に課されています。
一般的に、1週目の日曜日に休みが設定され、2週目の土曜に休日を設定すれば、2週目の金曜日までの間に最大12日間連続で勤務することが法律上可能です。ただし、許されるのは法律上の最低基準を満たしている場合のみであり、企業は従業員の健康状態や職場環境に十分配慮する必要があります。
月4日の休日があれば週1日休日は適用しなくて良い
労働基準法では、「変形休日制」によって、週休制をとることが難しい場合に4週間の中で4日間の休日を設けることも可能です。変形休日制を導入する際は、起算日を就業規則に明記する必要があり、あわせて従業員への説明も行います。変形休日制を活用した場合、実質的に24連勤が可能となるケースも存在します。
しかし、長期間の連勤は従業員の健康を著しく害する可能性があり、現実的には推奨されません。
なお、厚生労働省の諮問機関である「労働政策審議会」では、2026年の法改正に向けて、14日以上の連勤を禁止する新たな規定が検討されています。長期間連勤を制限する方向性が進められている点も注目すべきポイントです。
1日に8時間、1週で40時間以上の勤務は割増賃金が発生
労働基準法第37条では、法定労働時間を超える勤務に対して割増賃金を支払うことが義務付けられています。
具体的には、1日の勤務時間が8時間、または1週間の勤務時間が40時間を超えた場合、超過分に対して25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
割増賃金が導入されている背景は、違法な長時間労働や過重労働が連勤によって発生しないようにするための仕組みです。雇用者は割増賃金の規定を遵守し、労働者の権利を守る必要があります。
労働基準法以外で連勤が違反になるケース
連勤に関する問題は労働基準法だけでなく、他の法律にも抵触する場合があります。以下では、労働契約法や労働安全衛生法に基づいて連勤が違反とされるケースについて解説します。
労働契約法違反
労働契約法第5条には、使用者が労働者の安全に配慮する義務(安全配慮義務)が明記されています。連勤が続くことで労働者の健康や安全が脅かされる場合、使用者がこの義務を怠ったとみなされ、法的な責任を問われる可能性も少なくありません。
たとえば、過度な連勤が原因で労働者が健康被害に遭った場合、労災保険の適用を受けるだけでなく、使用者が損害賠償責任を負うこともあるでしょう。
法律違反を避けるためにも、企業は適切な勤務スケジュールを設定し、労働者の健康を守る意識を心がけましょう。
労働安全衛生法違反
労働安全衛生法第66条では、事業者に対して労働者へ健康診断を実施する義務が規定されています。この法律は労働者の健康を守るために作られたもので、企業や事業主が定期的な健康診断を実施し、その結果を適切に管理する義務が必須です。
労働安全衛生法66条8において、連勤などの結果、時間外・休日労働が月80時間を超えた労働者に対しては、疲労の蓄積があるとされ、労働者が申し出た場合に医師による面接指導が義務化されています。
また、過度の連勤から労働災害等も引き起こし、労働基準監督署による行政指導や是正勧告の対象となる可能性もあるでしょう。長期間の連勤による疲労の蓄積や健康障害は、労働者の労働環境の安全性を著しく損なうため、企業は定期的な健康診断を徹底し、労働時間の管理を厳格に行う必要があります。
連勤で従業員に不満を持たせないための4つの対策
連勤が続くと従業員のストレスや不満が高まり、離職やパフォーマンス低下につながる可能性があります。
ここでは、連勤を避けられない状況でも従業員の不満を最小限に抑えるための4つの対策を解説します。
適切な人材を配置しておく
効果的な人材配置は、従業員の負担を軽減し、不満を抑えるために重要です。とくに、繁忙期や特定の曜日・時間帯の負担が増える場合に対応できる体制を整えましょう。人材の配置方法は以下の通りです。
- 忙しい時間帯に合わせた配置
- 緊急時のバックアップ
- 繁忙期に短期スタッフを活用
業務が集中する時間帯に経験豊富なスタッフを配置すると、業務が遂行されやすくなります。また、急な欠勤が発生した場合に備え、予備のスタッフや短期契約の人材を確保しておくことが有効です。
短期スタッフを採用することも、従業員の負担を分散できます。適切な人材配置によって、従業員が安心して働ける環境を整備しましょう。
休日取得をしやすい環境にする
従業員が適切に休息を取れる仕組みを整えることは、不満を軽減するうえで不可欠です。従業員が事前に休日の希望を申告できるようにし、スケジュール調整に反映させることで、さらに労働環境の改善につながりやすくなるでしょう。
また、有給休暇を取得しやすい環境を作ると、従業員が休みを取りやすい職場づくりにつながります。たとえば、定期的に取得状況を確認し、取得が少ない従業員には積極的な声掛けを行うなどの取り組みが効果的です。
従業員が「仕事の休みが取りづらい」「連勤がしんどい」というストレスを感じにくくなります。
勤務間インターバルを導入する
勤務終了から次の勤務開始までに十分な休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」は、従業員の健康維持に役立ちます。勤務間インターバル制度とは、労働者の健康を守るために、勤務終了後から次の勤務開始までに一定の休息時間を確保する制度です。
2019年の労働基準法改正により、連勤による疲労が蓄積しないよう、最低9〜11時間のインターバルを設けることが推奨されます。
労働基準法では、勤務間インターバルの導入が推奨されており、多くの企業が採用しています。従業員が安心して勤務できる環境を整えるための第一歩として取り組みましょう。
シフト作成の基準やルールを明確にする
シフト作成における透明性や公平性を保つことは、従業員の不満を防ぐ鍵です。シフト作成時には、労働時間や休日のバランスを考慮したルールを明確化し、全従業員に共有するのも良いでしょう。
従業員自身が働きたい時間帯や休みたい日を申請できる「希望シフト制」を採用することで、勤務への満足度を高められます。
特定の従業員に負担が集中しないよう、役割や時間帯のローテーションを行います。明確なルールを設けることで、従業員に公平感を与え、不満の解決にもつながるでしょう。
10連勤に関するよくある疑問
10連勤が発生する状況は、業種や雇用形態によって異なります。
ここでは、パート・アルバイト、派遣社員、高校生の場合に10連勤が可能かどうかについて、関連する法律を交えながら解説します。
パート・アルバイトの場合は10連勤可能?
結論として、パートやアルバイトも10連勤は可能です。ただし、正社員と同様に労働基準法の規定に従う必要があります。
パートやアルバイトにも週1日の法定休日を設ける義務があり、日曜が休日の場合、翌週の金曜まで最大12連勤までは可能です。
長期間の連勤は、労働者の健康やモチベーションに悪影響を及ぼす可能性があります。企業側は従業員の負担を軽減するため、適切な休息を取れる仕組みを整備することが重要です。
派遣社員の場合は10連勤可能?
派遣社員の場合も、パートやアルバイト同様基本的には10連勤は可能です。派遣社員にも、雇用主である派遣会社が週1日の法定休日を設ける義務があり、遵守されている場合、10連勤ができます。
派遣社員の労働時間や休日に関する規定は、派遣元企業(派遣会社)の管理下にありますが、派遣先企業の状況によって連勤が発生しやすい場合も少なくありません。その場合、派遣会社は派遣先に対して適切な勤務調整を要請する必要があります。
高校生の場合は10連勤可能?
高校生が10連勤をすることは、労働基準法に違反する可能性があります。未成年者の労働時間には厳しい制限が設けられているためです。
高校生を含む18歳未満の労働者は、1日8時間、週40時間を超える労働が禁止されています。また、深夜労働(22時〜翌5時)も原則禁止です。
違法な長時間労働が発覚した場合、労働基準監督署から指導や是正勧告を受ける可能性があるため、注意しておきましょう。
10連勤は違法ではないが不満になりやすい
10連勤自体は法律違反ではありません。しかし連勤が続くと従業員に不満を与えやすく、職場の生産性やモチベーションに悪影響を及ぼす可能性があります。
適切な休息時間の確保や人員配置の工夫によって、連勤による負担を軽減し、働きやすい環境を整えることが重要です。マネーフォワードでは、人事・労務管理システムを提供しています。現在のシフト管理の体制や勤怠管理をさらに効率的に進めたい企業は、ぜひ導入を検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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