• 更新日 : 2025年11月5日

【記入例付き】物損事故報告書の書き方は?無料テンプレートをもとにわかりやすく解説

業務中に物損事故を起こした場合は、警察への届け出に加えて会社への報告が必要です。しかし、どのような形式で、何を書けばよいのかわからず戸惑う方も多いでしょう。

この記事では、会社へ提出する物損事故報告書の書き方を、具体的な記入例を交えながら詳しく解説します。すぐに使える無料のExcelテンプレートも用意していますので、ダウンロードしてご活用ください。

物損事故報告書とは?

物損事故報告書とは、業務に関連して発生した物損事故の詳細を会社へ報告するためのビジネス文書です。従業員が起こした事故の発生日時、場所、状況、損害の程度などを正確に記録し、組織として情報を共有、保管する目的があります。保険金請求時などに、自動車安全運転センターが作成する交通事故証明書(事故証明)の交付を申請するための書類とは、その目的も内容も異なります。

この報告書は、単なる事実の記録だけでなく、会社のコンプライアンス(法令遵守)、リスクマネジメントの観点から非常に重要な役割を果たします。

会社に物損事故の報告が必要な理由

会社に物損事故の報告が必要な理由は、事故によって発生するさまざまな責任や手続きに、会社として対応するためです。

  • 保険手続き
    会社の車両保険(社用車の場合)や、業務災害に関連する保険手続きを進める上で、事故の客観的な記録が必須となります。
  • 使用者責任への対応
    業務中の事故では、会社も「使用者責任(民法第715条)」を問われる可能性があります。会社は事実を迅速に把握し、被害者対応や示談交渉など、然るべき対応を取る必要があります。
  • 再発防止策の検討
    事故の原因を分析し、組織全体で共有することで、同様の事故の再発を防ぐための具体的な対策(安全運転教育の強化、危険箇所の情報共有など)を講じることができます。
  • 従業員の保護
    事故後の対応や交渉を個人任せにせず、会社が組織としてサポートすることで、従業員の精神的・経済的負担を軽減する目的もあります。

顛末書や物件事故報告書との違い

物損事故報告書と混同されやすい書類には顛末書と警察用の物件事故報告書がありますが、それぞれ目的と提出タイミングが異なります。

書類名主な目的提出タイミング
物損事故報告書(会社用)事故発生の事実を迅速に報告し、情報を共有する事故発生後、速やかに(当日〜翌日)
顛末書事故の一部始終と事後処理の完了を報告し、謝罪や反省を示す事故の対応や示談が完了した後
物件事故報告書交通事故の事実を警察が公的に記録する警察が作成する書類であり、事故当事者が提出する書類ではない。

物損事故報告書は事故発生の第一報であるのに対し、顛末書は事後処理の完了報告という点で異なります。また、物件事故報告書は物損事故発生時の通報をもとに警察が公的な記録を目的に作成するもので、事故当事者が提出する書類ではありません。事故の発生状況等について当事者間で争いになった際に証拠となり得る書類で、弁護士を通じて警察から入手します。

物損事故報告書の書き方

ここでは、一般的な社内向け物損事故報告書に記載すべき項目と書き方を解説します。5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識して、事実を客観的に記載することが基本です。

1. 基本情報(報告日、報告者、発生日時、場所)

いつ、どこで起こった事故に関する、誰からの報告書かを明確にするための基本情報です。

  • 宛先:報告先の役職と氏名を記載します。
  • 報告日:報告書を提出する日付を記載します。
  • 報告者:自身の所属部署と氏名を記載し、捺印欄を設けます。
  • 発生日時・場所:事故が発生した日時と場所を正確に記載します。「〇〇スーパー駐車場内」「国道〇〇号線 〇〇交差点付近」のように、誰が見ても場所を特定できるように具体的に書くのがポイントです。

2. 当事者情報(自社、相手方)

事故に関わった人物と車両の情報を正確に記載します。

  • 自社情報:運転していた従業員の氏名、社用車の車種や登録番号(ナンバープレート)を記載します。
  • 相手方情報:相手方の氏名、住所、連絡先、車両情報、加入している保険会社などを、その場で交換した情報に基づき正確に記載します。

3. 事故状況

事故状況は、どのようにして事故が起こったのかを客観的に記述する部分です。感情や推測(「〜だろうと思った」など)を交えず、事実のみを時系列に沿って簡潔に記述します。

例文

私が社用車(トヨタ・プリウス/品川300 あ 12-34)を運転し、〇〇株式会社様への納品を終え、国道1号線を時速40kmで走行中、〇〇交差点にて信号待ちのため停車した。青信号に変わったため発進しようとしたところ、後方から進行してきた〇〇 〇〇氏運転の普通乗用車(日産・ノート/横浜500 い 56-78)に追突された。

必要であれば、別紙で図解を添付すると状況がより明確に伝わります。

4. 損害状況(車両、その他)

自社車両と相手方、その他(設備など)の損害について、わかる範囲で具体的に記載します。

  • 自社車両:右リアバンパーのへこみ、擦り傷
  • 相手方車両:左フロントバンパーの破損
  • その他:なし

修理費用の見積額がわかる場合は記載しますが、不明な場合は「右フロントバンパーのへこみ、擦り傷(修理費用は見積中)」のように記述します。

5. 事故後の措置と今後の対応

事故発生直後、どのような対応を取ったのかを時系列で記載します。報告者が社会人として適切な初期対応を行ったことを示す上で非常に重要な項目です。

例文
  1. 車両を安全な場所に移動し、負傷者がいないことを確認。
  2. 警察(〇〇警察署)へ通報し、指示を待った。(14:10頃)
  3. 相手方の〇〇 〇〇氏と連絡先、免許証、車検証、保険会社情報を交換。(14:20頃)
  4. 上司である〇〇部長に電話で第一報を報告。(14:30頃)
  5. 警察官による現場確認に対応。(14:50頃)
  6. 自社の保険代理店へ事故の連絡を実施。(15:30頃)

今後の対応についても、保険会社と連携し、相手方との交渉を進めていく予定です、のように記載します。

6. 所感・再発防止策

事故に対する反省と、今後どのようにして再発を防ぐかを具体的に記述します。

単に「気をつけます」といった精神論ではなく、「バック時は目視に加え、必ず降車して後方の安全確認を徹底します」「駐車場の利用時は、死角の少ない場所に駐車するよう心がけます」など、具体的な行動目標を記載することが重要です。

例文

今回の追突事故は、後方車両からのものでしたが、車間距離の重要性を再認識しました。今後は、自らが追突しないことはもちろん、後方車両の動きにも注意を払い、急ブレーキを避けるなど、より一層防衛運転を心がけます。また、日々の運転前に車両のブレーキランプ等の点検を徹底いたします。

物損事故報告書の記入例

マネーフォワード クラウドでは、すぐに使える物損事故報告書のExcelテンプレートをご用意しています。このテンプレートは、一般的な社内報告で求められる要素を網羅しており、A4サイズで印刷しやすいレイアウトになっています。状況に応じて項目を修正、追加してご活用ください。

物損事故報告書を作成・提出する際の注意点

物損事故報告書を作成し、提出する際には、いくつかの注意点があります。誠実な姿勢で、迅速かつ正確な対応を心がけましょう。

事実を客観的かつ簡潔に記述する

物損事故報告書は、感情や主観を排し、客観的な事実(ファクト)のみを5W1Hに沿って記述するのが鉄則です。 「〜だと思う」「〜に違いない」といった推測や、「相手が急に…」などの他者を批判するような表現は避けましょう。

提出期限を守り、速やかに報告する

事故報告はスピードが重要です。会社の規定にもよりますが、事故発生当日、遅くとも翌営業日までには口頭で第一報を入れると共に、速やかに報告書を提出しましょう。報告が遅れると、保険会社への連絡や相手方への対応が後手に回り、問題が複雑化する可能性があります。

警察への届出も必ず行う

会社への報告とは別に、事故の大小にかかわらず必ず警察に届け出ましょう。道路交通法第72条により、人身・物損を問わず事故発生時は警察への報告が義務付けられています。届出を怠ると、保険金請求に必要な交通事故証明書が発行されず、保険の適用が受けられないなど、大きな不利益を被る可能性があります。

物損事故報告書に関してよくある質問(Q&A)

最後に、会社への物損事故報告書に関するよくある質問とその回答をまとめました。

どんなに軽い事故でも報告は必要ですか?

はい、必ず報告が必要です。軽微な接触でも、後から相手が「体が痛い」と言い出したり、想定外の修理費用を請求されたりする可能性があります。会社としてリスクを管理するためにも、事故の大小にかかわらず報告を徹底してください。

相手がいない自損事故の場合はどう書けばよいですか?

相手方情報の欄を「なし」または「自損」と記載し、事故状況を具体的に記述します。たとえば、「駐車場のポールに接触」「ガードレールに車体を擦った」など、何を相手に、どのように損害を与えたのかを明確に記載します。社用車を修理する必要があるため、自損事故であっても必ず報告が必要です。

物損事故報告書は手書きでもよいですか?

まずは会社の規定を確認してください。特に指定がなければ、PC(ExcelやWord)で作成するのが一般的です。最近では電子化が進んでおり、手書きでの報告を求める会社は減っていますが、指定の用紙がある場合はそれに従います。PCで作成する方が、修正が容易で、関係者への共有もスムーズに行えるというメリットがあります。

物損事故報告書を正確に作成・提出しましょう

業務中の物損事故は、どの職場でも起こりうるトラブルです。重要なのは、事故が発生した後に、いかに誠実かつ迅速に対応するかです。

今回ご提供したExcelテンプレートと記入例を参考に、物損事故報告書を正確に作成、提出することは、会社や関係者からの信頼を維持し、問題を円滑に解決するための第一歩となります。落ち着いて適切な報告を行いましょう。


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