• 更新日 : 2025年10月6日

退職勧奨されたらどうする?知らないと損する5つの交渉条件

「突然退職勧奨されたけど、どうすればよいだろう」「退職勧奨は拒否できる?」

このような悩みを抱える方もいるのではないでしょうか。

退職勧奨は、さまざまな理由で行われ、前提知識がないと自身に不利な条件で退職が進んでしまう可能性もあります。

本記事では、退職勧奨されたときに確認するポイントや、その後の対処の流れを退職勧奨に応じる場合と応じない場合に分けて解説します。

この記事を読んでいただければ、退職勧奨への対応を検討するうえで役立つ情報が得られ、あなたのキャリアにとって最適な判断をするための手助けとなるでしょう。

退職勧奨は拒否できる

退職勧奨とは、会社が従業員に対して「退職してくれませんか?」とお願いすることです。あくまで会社側からの提案であり、従業員に退職を強制はできません。

したがって、従業員は退職勧奨を拒否することもできます。

一方で、「解雇」は会社が一方的に雇用契約を終了させることを指すため、拒否できません。

ただし、解雇は法律によって厳しく制限されており、会社が従業員を解雇するためには、よほどの正当な理由が必要とされます。

退職勧奨された際に確認すべき3つのポイント

退職勧奨をされたときに、確認しておきたいポイントを3つ紹介します。

これらのポイントを知ることで、自身の状況を客観的に把握し、今後の対応を検討するための判断材料になるでしょう。

1. 退職勧奨された理由は何か

退職勧奨されたら最初に確認すべきは、会社がどのような理由で退職を勧めているのかということです。

会社は従業員に対して、退職を勧めるに足る明確な理由を提示する責任があります。

退職勧奨の理由として考えられるものは、以下の通りです。

  • 業績不振による人員削減
  • 経営方針の変更
  • 従業員個人の能力不足や成績不振

まず、会社の提示する理由が客観的な事実にもとづいているか、納得できる説明であるかを確認しましょう。説明が曖昧であったり、根拠に乏しいと感じたりした場合は、さらに詳しく説明を求めるようにします。

退職勧奨が業績不振や経営方針の変更による理由の場合は、会社に残っても将来的に倒産に至る場合や、まったく違う内容の業務に就かされる可能性もあります。

理由によっては、勧奨を受け入れたほうが今後のキャリアのためになる場合もあるでしょう。

2. 解雇される可能性はあるか

退職勧奨された際、2つめに確認したいポイントは、解雇される可能性があるかどうかです。

退職勧奨を拒否したからといって、会社が簡単に従業員を解雇できるわけではありません。会社が従業員を解雇するためには、非常に厳しい法的要件を満たす必要があるためです。

日本の労働法では「解雇権濫用法理」という考え方があり、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は無効とされます。

参考:厚生労働省|労働契約の終了に関するルール

会社が解雇を行うためには、たとえば、以下のような明確で合理的な理由が必要です。

  • 経営が極度に悪化している
  • 著しい能力不足がいつまでも改善されない
  • 重大な規律違反があった

また、解雇に至るまでに、会社は従業員に対して改善の機会を与えたり、配置転換を検討したりするなど、さまざまな努力をする義務があります。

解雇の条件や種類については、以下の記事で詳しく解説しているため参考にしてみてください。

退職勧奨に応じない選択をしたとしても、すぐに解雇される可能性は低いと考えられます。

ただし、重大な不当行為を行ったなど、社会通念に照らしてやむをえないと認められるような場合は、退職勧奨後に会社が解雇に踏み切る可能性もゼロではありません。

解雇に至りそうな場合は退職勧奨を受け入れたほうがよいこともあるため、信頼できる第三者と相談しながら慎重に検討する必要があります。

3. 退職した場合、生活を維持できるか

退職勧奨に応じて退職を選択した場合、当面の生活を維持できるだけの経済的な基盤があるかどうかも、重要なポイントです。

現在の貯蓄額や退職金の支給額、失業保険の受給期間などを正確に把握し、次の仕事が見つかるまでの生活費を賄えるか、シミュレーションしてみましょう。

失業保険は、退職理由が会社都合であれば、自己都合の場合よりも手厚く支給されます。

また、住宅ローンや子どもの教育費など、毎月必ず発生する固定費についても再確認し、退職後の収入でそれらを支払えるか計算しましょう。

経済的な面を見極めることで、自身の生活を守るための最善の選択ができます。

退職勧奨されたあとの流れ

退職勧奨されたあとの流れについて、勧奨を受け入れる場合と拒否する場合に分けて解説します。

それぞれ見ていきましょう。

退職勧奨に応じる場合

退職勧奨に応じる場合は、主に退職条件の確認と交渉、合意書の作成が重要になります。

対応の流れは、以下の通りです。

1. 面談し、退職条件の協議

退職勧奨が行われるときは、会社との間で退職条件について話し合う面談の機会が設けられます。

この面談は、退職の条件を明確にし、従業員と会社双方にとって納得のいく解決策を見つけるために重要です。

話し合われる主な内容は、退職日や退職の種類(自己都合退職か会社都合退職か)、特別退職金の有無や金額、有給休暇の消化方法などです。

面談に臨む際は、事前に自身の希望する条件や確認したい事項を整理し、メモにまとめておくとよいでしょう。

交渉を有利に進めるため、その場ですぐに返事をせず、労働法の知識がある弁護士や労働組合に相談することも有効な方法です。

2. 退職合意書の作成

退職条件の協議がまとまったら、退職合意書を作成します。

退職合意書とは、会社と従業員の間で合意した退職条件を文書として残すもので、後々の認識のずれやトラブルを防ぐために重要な書類です。

退職合意書について、詳しくは以下の記事で解説しています。

退職合意書に記載される事項は、以下のようなものです。

  • 退職日
  • 退職の理由
  • 退職金の金額や支払い期日
  • 有給休暇の消化方法
  • 秘密保持義務

面談で合意した条件が、具体的に記載されます。

合意書の内容に、従業員にとって不利な条件が含まれていないか、しっかりと確認する必要があります。

署名・押印をする前に、疑問点があれば必ず会社に確認し、必要であれば、弁護士などの専門家にも内容をチェックしてもらうとよいでしょう。とくに、退職金や失業保険に関する条項は重要です。

合意書を作成した後は、通常、会社と従業員がそれぞれ1部ずつ保管します。

3. 退職手続き

退職合意書の作成後は、合意した退職日に向けて退職手続きを進めましょう。

社員証やPC、携帯電話など、会社から貸与されていた物品があれば返却します。

また、年金手帳や離職票、源泉徴収票などの書類を会社から受け取りましょう。これらの書類は、失業保険の申請や次の転職先での手続き、確定申告などに必要となります。

退職時の手続きについては、手順や書類の扱いを以下の記事で詳しく解説しているため、参考にしてみてください。

国民年金への切り替えや国民健康保険への移行手続きなど、退職後に自身で行うものも多いため、事前に何をするべきか確認しておくとスムーズな移行につながります。

退職勧奨に応じない場合

退職勧奨に応じない場合は、勧奨に関わる証拠の保全が重要です。

具体的な流れを見ていきましょう。

1. 面談し、退職についての協議

退職勧奨に応じる場合と同様に、会社側にとって面談は退職に至る経緯や理由を説明し、従業員に退職を促す場となります。

退職勧奨に応じないことを考えている場合、この面談は自身の勤務継続の意思を明確に伝えるための機会となるでしょう。

会社側からは、特別退職金の支給など退職のメリットが提示されることもありますが、安易にその場で返事をせず、持ち帰ってじっくりと検討しても問題ありません。

面談中は、会社側の発言内容をメモを取るなどして、記録を残しておくとよいでしょう。

2. 退職の拒否

退職に応じないという選択をした場合は、その意思を会社に伝えます。

口頭で伝えるだけでも構いませんが、後々のトラブルを避けるためにも、メールやチャットなど、書面でも意思表示をしておいたほうが確実です。また、会話の録音も残しておくとよいでしょう。

証拠は形に残るもののほうが事実を客観的に証明できるため、あとで裁判で争うことになった場合などに安心です。

会社がしつこく退職を迫るような行為は、ハラスメントに該当する場合もあるので、専門機関への相談も検討しましょう。

3. 勤務継続、または第三者へ相談

会社側が断念すれば、そのまま勤務が継続します。

しかし、退職勧奨を拒否する意思を伝えた後も、会社が引き続き退職を迫ってきたり、不当な圧力を加えてきたりする場合があります。

退職勧奨が継続的に続くようであれば、ひとりで抱え込まず、外部の第三者機関へ相談しましょう。

相談できる機関としては、以下があります。

  • 労働基準監督署
  • 弁護士
  • 労働組合

これらの専門家は、労働者の権利や労働法に関する知識を持っており、具体的なアドバイスやサポートを提供してくれます。

相談の際は、これまでの経緯や会社からの退職勧奨の内容、証拠となり得る記録を持参すると、より的確なアドバイスを受けられるでしょう。

退職勧奨されたら交渉すべき退職条件5つ

退職勧奨された際に交渉すべき退職条件を、5つ解説します。

これらの条件を交渉することで、納得のいく退職の実現に近づけるでしょう。

1. 特別退職金

1つめは、特別退職金です。

会社は、円満な退職を実現するために、通常の退職金に上乗せして特別退職金を支払うことがあります。

特別退職金は法律で定められたものではなく、会社と従業員の交渉によって決まるため、金額に差があります。会社から特別退職金の提示をしてこない場合でも、こちらから積極的に交渉する姿勢が大切です。

おおよその相場は給料の3ヶ月〜6ヶ月分といわれますが、勤続年数や役職、会社の業績などによって金額が変動することが一般的です。

交渉の際には、現在の給与や勤続年数、今後の生活設計などを踏まえ、具体的な希望額を提示してみましょう。

2. 退職理由

退職理由の扱いも、重要な交渉ポイントのひとつです。

会社側が、「自己都合退職」として処理しようとすることもありますが、退職勧奨は実質的には「会社都合退職」にあたります。

会社都合退職と自己都合退職では、失業手当の受給期間や開始時期、再就職への影響など、さまざまな面で違いが生じます。

退職理由による失業手当の条件の違い

会社都合退職自己都合退職
支給の開始7日後7日+1~3ヶ月後
給付日数90~330日90~150日

参考:ハローワークインターネットサービス|基本手当の所定給付日数

会社都合退職のほうが失業手当の受給期間、開始時期ともに条件がよいため、退職理由を会社都合退職にしてもらうように交渉することが重要です。

3. ガーデンリーブ

ガーデンリーブとは「Garden Leave」、直訳すると庭いじり休暇という意味で、職場の在籍期間を延長し、その期間の就労を免除したうえで給与の支給が行われます。外資系企業などで用いられることが多い方法です。

本来は、従業員に一定期間就労を制限することで、企業秘密の流出や競業避止の目的で行われるものですが、退職勧奨を受け入れやすくするために企業が行う場合もあります。

平均的な期間は3ヶ月〜6ヶ月ほどで、会社側が転職を制限しない場合はこの期間を利用して再就職先を探せるため、転職活動が有利になるでしょう。

4. 有給休暇の買取

退職日までに残っている有給休暇があれば、原則としてすべて消化できます。

会社によっては「業務の引き継ぎがあるから」といった理由で消化を拒むケースもありますが、これは労働基準法に反する可能性があります。

引き継ぎを考慮しつつも、残りの有給休暇をすべて消化できるように交渉しましょう。もし消化できない場合は、未消化分の有給休暇を買い取ってもらう方法もあります。

通常は、有給休暇の買取は違法ですが、退職時に未使用の有給休暇を買い取ってもらうことについては違法とはなりません。

有給休暇の買取について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてみてください。

5. 再就職支援

会社が退職勧奨を進めやすくするため、従業員の再就職支援を行うことがあります。

再就職支援で受けられるサービスの例は、以下の通りです。

  • 求人情報の紹介
  • アドバイザーとの面談
  • 今後のキャリアプランの相談
  • 履歴書、職務経歴書の作成支援

再就職支援を受けられれば、次の仕事を探すうえでの時間的・経済的な負担を軽減し、よりスムーズに転職活動ができます。

費用は会社が負担してくれることがほとんどのため、積極的に利用を検討するとよいでしょう。

退職勧奨されたら集めておくべき証拠3つ

退職勧奨が執拗に行われたり、不当な理由にもとづいていたりした場合、従業員は大きな精神的負担を感じ、外部の専門機関に相談が必要になることがあります。

ここでは、退職勧奨された場合に集めておいたほうがよい証拠を、3つ紹介します。

1. メールや連絡ツールのチャット

1つめは、メールや連絡ツールの記録です。

退職勧奨に関するやり取りは、メールやLINEなどのチャットツールで行われることも少なくありません。

これらのデジタルデータは日時が記録されており、内容が明確であるため、有力な証拠となるでしょう。

やり取りの履歴をスクリーンショットで保存したり、トーク履歴をバックアップしたりする方法で証拠を残せます。

これらの証拠は、後日、会社側が「そのような事実はない」と主張してきた際に、客観的な事実を示すための証拠となります。

2. 面談の際の会話録音

2つめは、面談などの会話録音です。

会話の録音データは面談の内容をすべて記録するため、発言のニュアンスや、会社側の具体的な指示、圧力の有無などを客観的に示せます。

証拠として残すために当事者が会話を録音することは「秘密録音」といい、違法にはあたらないため、相手の同意を得ていなくても問題ありません。

悪質な会社の場合は、脅迫的な発言や、大声で威嚇するなどの言動が行われる可能性も否定できないため、会話録音しておくと安心でしょう。

録音は、スマートフォンの録音機能やスマートウォッチ、ICレコーダーを使用すれば可能です。

3. 退職条件などが記載された書類

3つめは、書類関係の証拠です。

退職勧奨が行われる場合、会社から勧奨の理由や条件が提示されることがあります。

これらの内容が記載された書類は、会社が退職勧奨を行ったことを示す直接的な証拠となるだけでなく、その内容が不当でないかを確認するためにも重要です。

退職条件に関する書類を受け取ったら、必ずコピーをもらうか、写真を撮るなどして控えを保管しましょう。

従業員側に著しく不利な条件が記載されている可能性もあるため、その場ですぐに判断しないようにすることが大切です。


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