• 更新日 : 2026年3月31日

退職勧奨の離職理由は会社都合?離職票の書き方や助成金への影響を徹底解説

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Point退職勧奨の離職理由は会社都合

退職勧奨による離職は、原則として「会社都合(特定受給資格者)」として扱われます。

  • 受給の利点: 失業保険の給付制限期間がなく、給付日数も自己都合より手厚い。
  • 会社のリスク: 会社都合の離職者を出すと、キャリアアップ助成金等が不支給になる。
  • 実務の注意: 助成金欲しさに自己都合へ誘導すると、退職強要や不正受給を問われる。

一身上の都合と書いた退職届を出しても、会社都合になります。実態が「会社からの働きかけ」であれば、ハローワークの調査により会社都合と判定されます。

退職勧奨の離職理由は、原則として会社都合として扱われます。退職勧奨は会社側からの働きかけによって合意に至るものであるため、自己都合退職とは失業保険上の扱いが大きく異なるからです。

この記事では、離職証明書の具体的な書き方や、会社都合にすることによる助成金への影響、トラブルを防ぐための退職合意書の実務までを網羅的に解説します。

目次

退職勧奨の離職理由は会社都合になる?

退職勧奨による離職理由は、雇用保険の実務において、基本的には会社都合に分類されます。これは、離職のきっかけが労働者の自発的な意思ではなく、会社側の積極的な働きかけにあると判断されるためです。

関連資料|弁護士が解説! 退職勧奨の実務対応と違法リスク防止のガイド

退職勧奨は会社からの働きかけによる合意退職

退職勧奨は、会社が従業員に対して「退職を検討してほしい」と提案し、双方が合意して労働契約を終了させる手続きです。

従業員が自らのライフプランや転職のために辞めたいと申し出る自己都合退職とは、スタート地点がまったく異なります。たとえ最終的に従業員が納得して退職合意書に判を押したとしても、そのきっかけを作ったのは会社側であるため、失業保険の枠組みでは「特定受給資格者」として保護の対象になるのが原則です。

失業保険上の特定受給資格者の定義は?

特定受給資格者とは、倒産や解雇、退職勧奨など、再就職の準備をする余裕がなく離職を余儀なくされた人を指します。

ハローワークの基準では、解雇だけでなく、事業主から退職するよう勧奨を受けたことも明確に特定受給資格者の範囲に含まれています。この基準に該当すると、従業員側には給付制限期間の短縮や給付日数の増加といった極めて大きなメリットが生じます。

参考:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス

合意退職と退職勧奨の違いは?

実務上、もっとも迷いやすいのが一身上の都合という退職願を受け取った場合です。

しかし、その退職願が会社からの退職勧奨に応じる形で提出されたものであれば、実態は退職勧奨となります。ハローワークは書類の名称よりも離職に至るまでのプロセスを重視するため、勧奨の事実がある以上、会社都合として処理を進めるのがコンプライアンス上の正しい選択となります。

関連記事|会社都合退職とは?手続きや失業保険の申請、デメリットも解説
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 【企業側】退職勧奨を会社都合にする時のリスク

労務担当者にとって、離職理由を会社都合として処理することは、経営に対していくつかの深刻なインパクトを与える可能性があります。これらを事前に把握し、経営層と共有しておくことが大切です。

雇用関係の助成金が受給できなくなる

企業側にとって最大の懸念点は、現在受給している、あるいは将来申請を予定している助成金が不支給や返還の対象になることです。

「雇用調整助成金」や「キャリアアップ助成金」「中途採用等支援助成金」など、雇用の維持や改善を目的とした助成金の多くには、支給要件として一定期間内に会社都合による離職者を出していないことという項目があります。

具体的には、離職の前後6ヶ月間に会社都合の離職者が1人でも出ると、助成金が全額不支給になったり、過去に遡って返還を求められたりするケースがあります。これは数百万円から数千万円単位の損失につながることもあるため、退職勧奨を行う際は、現在受けている、または受けようとしている助成金の要件を精査しなければなりません。

関連記事|退職勧奨した際に雇用関係の助成金は受け取れる?受け取れないケースも解説

自己都合への誘導は退職強要とみなされる

助成金への影響を回避したいあまり、従業員に「自己都合退職として処理させてほしい」と無理に頼み込むことは、極めて危険な行為です。

従業員側が「会社都合でないなら同意しない」と主張しているのに、強引に自己都合として退職届を書かせた場合、後に「退職強要」や「公序良俗違反」として訴えられるリスクが飛躍的に高まります。裁判になれば、自己都合という形式は否定され、慰謝料の支払いや、最悪の場合は解雇無効と同等の責任を問われることもあります。

従業員とのトラブルによるハローワークの調査

会社が自己都合として離職票を提出しても、従業員はハローワークの窓口で「実際は退職勧奨だった」と異議を申し立てる権利を持っています。

この異議申し立てが行われると、ハローワークから会社に対して事実関係の調査が開始されます。また、面談記録やメールのやり取り、退職合意書の提出を求められ、実態が調査されます。もし虚偽の報告をしていたことが判明すれば、会社の信頼を著しく損なうだけでなく、助成金の不正受給とみなされる恐れもあります。

参考:雇用保険手続きのご案内|ハローワークインターネットサービス

社会的信用の低下と採用への悪影響

会社都合による退職者が頻発している事実は、統計データとして集積されます。

離職率が高い、あるいは会社都合退職が多いという情報は、ハローワークを通じた求人活動や、昨今の口コミサイトなどでも広まりやすくなっています。長期的な視点に立てば、安易な退職勧奨や不透明な離職理由の処理は、将来の採用競争力を削ぐことにつながるでしょう。

退職勧奨時の離職証明書の正しい書き方

ハローワークへ提出する離職証明書には、退職勧奨であることを示す正確なチェックと記載が必要です。担当者が迷いやすい記入ポイントを解説します。

参考:離職証明書の書き方|厚生労働省

離職理由欄のチェックポイント

離職証明書の「離職理由」欄には多くの項目があります。退職勧奨の場合は「4 事業主からの働きかけによるもの」の「(3)希望退職の募集又は退職勧奨」にチェックを入れましょう。

この項目を選択することで、ハローワーク側は「この離職者は会社都合である」と自動的に判定します。

具体的事情記載欄への記入例と作成のコツ

チェックを入れるだけでなく、具体的事情記載欄に離職に至った背景を簡潔かつ客観的に記載します。

  • 業績不振の場合
    「全社的な経営状況の悪化に伴う人員整理のため、〇〇年〇月〇日に退職勧奨を行い、本人がこれに同意したため。」
  • 能力不足・ミスマッチの場合
    「職務遂行能力が期待される水準に達しておらず、改善指導を行ったが改善が見られなかったため、退職勧奨を行い合意に至ったため。」
  • 部署閉鎖の場合
    「〇〇部門の廃止に伴い、配置転換の検討も行ったが適当なポストがなく、退職勧奨を行い合意に至ったため。」

このように、なぜ勧奨に至ったのかという理由を書き添えることで、ハローワーク側の審査がスムーズになります。

 「離職理由へ異議あり」を防ぐには?

離職証明書を提出する前に、本人に対して離職理由は退職勧奨として処理することを明確に伝えておきましょう。

離職証明書の右側には従業員本人が事業主が記載した離職理由に異議があるかを記入し、署名する欄があります。事前の説明がないと、従業員が「なぜ勝手にこんな理由にされたのか」と不審に思い、異議を申し立ててしまうことがあります。円満な退職を目指すなら、最後まで認識を合わせておくことが、事務手続きを迅速に進めるコツです。

離職証明書には本人の署名が必要

離職票のもととなる「離職証明書」には、原則として本人の署名が必要です。

退職勧奨の場合、すでに本人が出社しなくなっているケースも多いでしょう。その際は、郵送で署名をもらうか、どうしても連絡がつかない場合は「本人に送付したが返送がない」旨を付記して提出することも可能ですが、後々のトラブルを防ぐためにも、退職合意書を締結するタイミングで署名をもらっておくのが理想的です。

退職時の離職票発行はトラブルになりやすい?退職手続きの実態

退職勧奨に伴う離職票の記載内容をめぐるトラブルは、退職する従業員にとって不利益となるだけでなく、会社の人事・労務担当者にとっても大きな負担となります。

マネーフォワード クラウドが実施した調査によると、退職手続きにおいて特にトラブルや苦労が発生しやすい項目として、最も多いのは「離職票の発行手続き(賃金台帳の集計等)」で、31.7%でした。次いで「健康保険証の回収」が29.1%、「退職届の受理と退職日の合意」が26.8%となっています。

また、これらの入退社手続きのトラブルによって生じた業務への影響について尋ねたところ、最も多いのは「担当者の残業時間が大幅に増加した」で、37.5%でした。次いで「従業員との信頼関係が悪化した」が28.1%となっています。

退職理由が「自己都合」か「会社都合」かで認識のズレがあると、離職票の発行が遅れたり、修正のための余計な手続きが発生したりする可能性があります。従業員と会社側の双方が納得いく形で退職手続きを進めることが、トラブルや信頼悪化を防ぐ観点からも重要です。

出典:マネーフォワード クラウド、退職⼿続きにおいてトラブルが発⽣しやすい項⽬、トラブルによって⽣じた業務への影響【⼊退社に関する調査データ】(回答者:597名、集計期間:2026年2⽉実施)

トラブルを未然に防ぐ退職合意書の作成方法

離職理由をめぐる争いや、退職後の「言った言わない」を封じ込めるための最強の武器は、口頭の約束ではなく「退職合意書」という書面エビデンスです。

関連記事|退職合意書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説〖無料テンプレ付き〗

離職理由の齟齬を防ぐ「合意内容」を明文化する

退職合意書には、必ず「会社からの勧奨に対し、労働者がこれに同意した」という一文を盛り込んでください。

これにより、離職理由が退職勧奨による合意退職であることを双方が確認したという動かぬ証拠になります。もしハローワークから「本当に退職勧奨だったのか?」と疑われた際も、この一文がある合意書を提示すれば、一発で解決します。

後の紛争を封じる清算条項の重要性

給与計算・労務担当者がもっとも注視すべきなのが「清算条項」です。

「本合意書に定めるほか、甲(会社)と乙(従業員)との間には何らの債権債務関係がないことを相互に確認する」という趣旨の文章です。これを入れることで、退職後に「未払い残業代がある」「解決金が支払われていない」といった追加の金銭請求を受けるリスクを法的に遮断できます。

会社の評判を守る「口外禁止条項」と「誹謗中傷禁止条項」

SNS時代の現代において、退職した従業員によるネガティブな情報発信は大きな経営リスクです。

  • 口外禁止
    退職に至った経緯や、上乗せされた特別退職金の金額などを第三者に漏らさないことを約束させます。
  • 誹謗中傷禁止
    SNSや口コミサイトなどで、会社の不利益になるような投稿を行わないことを約束させます。

これらの条項を盛り込むことで、心理的な抑止力が働き、会社としてのブランドを守ることにつながります。

証拠としての保管期間と管理方法

退職合意書は、労働基準法で義務付けられた法定3帳簿には含まれませんが、実務上は5年間の保管を強く推奨します。

民法上の債権の時効が延長されていることもあり、万が一の訴訟に備えて長めに保管しておくのが安全です。紙での保管に加え、スキャンしてPDF化し、退職者名や退職日で検索できるようにデータベース化しておくことで、数年後の問い合わせにも即座に対応できるようになります。

関連資料|退職合意書のテンプレート
関連資料|退職誓約書のテンプレート

自己都合と会社都合の違いによる給付金の違いは?

担当者が離職理由を説明する際、従業員がなぜそこまで会社都合を希望するのかを具体的な数字で理解しておくと、条件交渉が非常にスムーズになります。

受給開始時期の違い

最大の差は、お金がいつ振り込まれるかというスピード感にあります。

  • 自己都合
    7日間の待機期間 + 1ヶ月〜3ヶ月の給付制限期間
  • 退職勧奨(会社都合)
    7日間の待機期間のみ(給付制限なし)

失業直後の生活費を心配している従業員にとって、この1〜3ヶ月の空白がないことは、退職に応じるための極めて強力な動機になります。

給付日数の大幅な差

雇用保険の加入期間や年齢によりますが、会社都合のほうが受給できる期間が圧倒的に長く設定されています。

  • 例:45歳以上60歳未満、加入期間20年以上の場合
    • 自己都合:150日
    • 会社都合:330日

このように、倍以上の差が出ることもあります。これを金額に換算すると数百万円の差になるため、従業員が自己都合への変更に強く抵抗するのは、経済的に見て当然の反応といえます。

参考:基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス

国民健康保険の減免措置の有無

会社都合として離職した場合、多くの自治体で国民健康保険料の軽減措置が受けられます。

前年の所得を30%として計算してくれるため、翌年の保険料が数万円、あるいは数十万円単位で安くなることがあります。これは会社側が直接支払うものではありませんが、従業員の「退職後のキャッシュフロー」を改善する提案として、交渉の材料に加える価値があります。

参考|非自発的失業者の国民健康保険料軽減について|墨田区

【Q&A】人事担当者が迷う退職勧奨の判断ポイント

現場で日々発生する、判断に迷うケースについてQ&A形式で整理しました。

Q. 従業員から「一身上の都合」と書かれた退職願が出ていれば自己都合で通る?

A. 実態が退職勧奨であれば、ハローワークで覆る可能性が高いです。

退職願の文面よりも、その前に会社が「退職してほしい」と伝えたかどうかが重視されます。従業員がハローワークで「会社から辞めてくれと言われて、渋々一身上の都合と書いた」と証言すれば、ハローワークは会社都合として処理します。書類の名称を過信せず、実態に即した処理を心がけましょう。

Q. 助成金のために、本人同意のもと自己都合にするのは違法?

A. はい、事実と異なる記載をして助成金を受給すれば不正受給に該当します。

従業員と口裏を合わせたとしても、後にその従業員が失業保険の給付制限に不満を持ち、ハローワークで真実を話してしまうケースが非常に多いです。発覚した場合、助成金の全額返還だけでなく、延滞金や不正受給額の2倍相当額の支払い、さらには会社名の公表という甚大なペナルティを負うことになります。

参考:雇用関係助成金の不正受給について|厚生労働省

Q. ハローワークから離職理由の確認が来た時の対応は?

A. 焦らず、事実をありのままに伝えましょう。

「経営状況の悪化や能力不足を理由に、会社から退職を提案し、本人が合意したものです」と回答すれば問題ありません。隠し事をしたり、曖昧な返答をしたりすると、かえって疑念を深め、詳細な調査を招くことになります。

退職勧奨の離職理由は原則として会社都合!

退職勧奨の離職理由を会社都合として正しく判断し、処理することは、従業員の再出発を支援するだけでなく、会社を将来の法的リスクから守ることにもつながります。

助成金への影響という目先のデメリットに目を奪われ、不適切な「自己都合誘導」を行ってしまうと、結果として裁判費用や助成金の返還といった、より大きな損害を会社に与えることになりかねません。厳しいコンプライアンス環境においては、事実に基づいた誠実な事務手続きこそが、最善の労務管理であるといえるのではないでしょうか。

円満な退職勧奨から、間違いのない離職票の作成、そして離職後のスムーズな給付へとつなげるためには、人事・給与担当者の正確な知識が不可欠です。こうした煩雑な手続きを効率化し、法改正や制度変更にも柔軟に対応するためには、マネーフォワード クラウド給与のようなクラウド型ツールの活用が有効です。正確なエビデンス管理と一貫したデータ運用が、担当者の心理的負担を軽減し、強い組織を作るためのけん引役となってくれるはずです。

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