- 更新日 : 2025年8月29日
タイムレコーダーによる勤怠管理とは?種類やシステム、選び方まで解説
タイムレコーダーによる勤怠管理は、従業員の労働時間を正確に記録し、管理するための基本的な手法です。単に時間を記録するだけでなく、労務管理や給与計算の正確性を高める手段として、一定の役割があります。
この記事では、タイムレコーダーでの勤怠管理の基本から、最新のタイムレコーダーの種類、メリットや注意点、そして自社に合った選び方のポイントまで、初心者の方にもわかりやすく解説します。
目次
タイムレコーダーによる勤怠管理とは?
タイムレコーダーを用いた勤怠管理は、従業員の労働時間を客観的に記録し、企業の適切な労務管理を支えるものです。
タイムレコーダーとは、従業員の出勤時刻や退勤時刻などを記録するための機械全般を指します。多くの方が思い浮かべるのは、紙のタイムカードに時刻を印字するタイプかもしれませんが、現在ではICカードをかざすものや、指紋で認証するものなど、さまざまな種類があります。これら時刻を記録する機器がタイムレコーダーです。
その記録は、日々の労働時間や休憩時間、時間外労働(残業)などを正確に把握し、給与を計算するための元データとなります。手書きの出勤簿と比べて、機械が客観的に時刻を記録するため信頼性が高く、公平な労務管理につながるでしょう。
法律で求められる「客観的な労働時間の記録」
2019年4月に施行された働き方改革関連法により、企業は従業員の労働時間を客観的な方法で把握することが義務付けられました。これは、長時間労働の是正や、従業員の健康を守ることを目的としています。
厚生労働省が示す「客観的な方法」の原則として、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」とされています。タイムレコーダーによる記録は、この法的要件を満たすための有効な手段のひとつといえます。
出典:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
タイムレコーダーによる勤怠管理の種類と特徴
タイムレコーダーには、昔ながらの紙のタイムカードを使うものから、最新の技術を活用したものまで、さまざまな種類があります。ここでは、代表的な4つの種類の特徴を解説します。自社の働き方や環境に合ったものを選びましょう。
1. 紙のタイムカード式
紙のタイムカードをタイムレコーダー本体(タイムカード機)に挿入し、時刻を印字する最もシンプルなタイプです。多くの方が「タイムレコーダー」と聞いて思い浮かべる形式ではないでしょうか。
- メリット:
操作が簡単で誰でも使いやすく、導入コストも比較的安価です。本体とタイムカードがあればすぐに運用を始められます。 - デメリット:
月末の給与計算時には、印字された時刻を手作業で集計する必要があり、手間と時間がかかります。また、代理打刻などの不正が行われやすい側面もあります。
2. ICカード認証式
社員証や交通系ICカード(Suica、PASMOなど)を専用の読み取り機にかざして打刻するタイプです。オフィスへの入退室管理と連動させている企業も多く見られます。
- メリット:
打刻がスムーズで、従業員の負担が少ないです。打刻データは自動で集計されるため、手作業による計算ミスや手間を大幅に削減できます。パソコン連動タイプの製品も多くあります。 - デメリット:
ICカードを忘れたり紛失したりすると打刻できません。また、カードの貸し借りによる代理打刻のリスクは残ります。
3. 生体認証(指紋・顔など)式
指紋や静脈、顔といった、本人の身体的特徴を読み取って認証・打刻するタイプです。近年の技術向上により、認証精度も高く、導入する企業が増えています。
- メリット:
本人以外は打刻できないため、代理打刻などの不正を防ぎやすくなります。
カードなどを持ち歩く必要がなく、紛失のリスクもありません。 - デメリット:
導入コストが他のタイプに比べて高くなる傾向があります。また、指の状態(乾燥や怪我など)や、マスク・眼鏡の着用によって認証しにくい場合も考えられます。
4. PC・スマートフォンアプリ式
従業員が自身のパソコンやスマートフォン、タブレットのアプリを使って打刻する方法です。ソフトウェアやクラウドサービスとして提供されることが多く、「勤怠管理システム」とも呼ばれます。
- メリット:
テレワークや直行直帰など、多様な働き方に対応しやすい点が大きなメリットです。GPS機能と連携して打刻場所を記録できるサービス(例:ジョブカン、KING OF TIME など)や、休暇・残業申請をシステム上で完結できる多機能型も多く提供されています。 - デメリット:
パソコンやスマートフォンを持たない従業員には利用が難しいです。また、月額利用料などのランニングコストが発生します。
タイムレコーダーで勤怠管理を行うメリット
タイムレコーダーを導入することは、単に時間を記録するだけでなく、企業と従業員の双方にとって多くのメリットがあります。ここでは、勤怠管理にタイムレコーダーを活用する主なメリットを3つ紹介します。
正確な労働時間を把握できる
タイムレコーダーを使えば、従業員の出退勤時刻を分単位で客観的に記録できます。自己申告制で起こりがちな「5分程度の遅刻をなかったことにする」「少し早く退勤したけれど定時で申告する」といった曖昧さがなくなり、1か月の実労働時間を正確に把握できるようになります。
これは、サービス残業の防止や、長時間労働の早期発見にもつながります。
不正な申告を防ぎやすい
自己申告制の場合、意図的であるかどうかにかかわらず、事実と異なる時間の申告が起こる可能性があります。たとえば、同僚に頼んで打刻してもらう「代理打刻」や、記録の改ざんなどです。
とくに生体認証式のタイムレコーダーを導入すれば、本人しか打刻できないため、こうした不正を効果的に防ぐことができ、公平な労務管理が実現します。
従業員の勤怠意識が向上する
毎日決まった方法で出退勤時刻を記録することは、従業員一人ひとりの時間管理に対する意識を高めるきっかけになります。始業時刻までに業務を開始できる状態を整える、終業時刻に向けて効率的に仕事を進める、といった意識が自然と芽生え、時間意識の向上が、業務の効率化につながることも考えられます。
タイムレコーダーでの勤怠管理における課題
便利なタイムレコーダーですが、導入や運用にあたってはいくつかの注意点や課題もあります。事前にこれらを把握し、対策を考えておくことで、よりスムーズな勤怠管理が実現できます。
打刻漏れや間違いが起こる可能性がある
最もよくある課題が、打刻のし忘れです。出勤時や退勤時に打刻を忘れてしまうと、その日の正確な労働時間がわからなくなってしまいます。また、出勤時に誤って退勤ボタンを押してしまうなどの操作ミスも起こりえます。打刻漏れや間違いがあった場合の報告・修正ルールをあらかじめ明確に定めておくことが大切です。
集計作業に手間がかかる場合がある
紙のタイムカード式の場合、月末に全従業員分のカードを集め、一人ひとりの労働時間や残業時間を手作業で計算し、給与計算ソフトなどに入力し直す必要があります。この集計作業は非常に手間がかかり、担当者の大きな負担となるでしょう。
計算ミスや入力ミスが起こるリスクも伴います。ICカード式やアプリ式でも、自動集計機能がない場合は同様の手間が発生します。
導入や運用にコストがかかる
タイムレコーダーを導入するには、本体の購入費用や、ICカード、タイムカードなどの消耗品費が必要です。とくに高機能な生体認証式や、勤怠管理システムと連携するタイプのタイムレコーダーは、初期費用が高くなる傾向があります。
また、クラウド型の勤怠管理アプリなどを利用する場合は、月額の利用料金といったランニングコストも考慮しなくてはなりません。
タイムレコーダーの選び方と勤怠管理のポイント
自社に合ったタイムレコーダーを選ぶには、どのような点に注目すればよいのでしょうか。ここでは、タイムレコーダー選びで失敗しないための3つのポイントを解説します。目的をはっきりさせることが、最適な勤怠管理への近道です。
企業の規模や従業員数で選ぶ
従業員が数名程度の小規模な事業所であれば、シンプルな機能の紙のタイムカード式や、安価なICカード式タイムレコーダーでも十分対応できるかもしれません。一方で、従業員数が数十人、数百人となってくると、手作業での集計は現実的ではありません。
打刻データが自動で集計され、給与計算ソフトと連携できるような機能を持つタイムレコーダーが適しているでしょう。
勤務形態に合わせて選ぶ
全従業員がオフィスに出勤する働き方が中心であれば、設置型のタイムレコーダーで問題ありません。しかし、営業職の直行直帰、テレワーク、複数の拠点での勤務など、働き方が多様化している場合は、場所を選ばずに打刻できるPC・スマートフォンアプリ式が便利です。
働き方の実態に合わないものを選ぶと、かえって勤怠管理が煩雑になってしまいます。
集計方法や連携機能で選ぶ
タイムレコーダーを選ぶうえで非常に重要なのが、打刻後のデータをどう活用するかです。打刻するだけで集計は手作業という運用では、業務効率化は進みません。打刻データが自動で集計され、労働時間や残業時間が一覧で確認できる機能は必須といえるでしょう。
さらに、そのデータをCSVファイルで出力できたり、利用中の給与計算ソフトと直接連携できたりすると、経理担当者の業務負担を大幅に軽減できます。
タイムレコーダーと勤怠管理システムの特徴を整理しておく
タイムレコーダーを活用した勤怠管理は、従業員の労働時間を客観的かつ正確に記録するための基本的な仕組みです。紙のタイムカードからICカード、生体認証、スマートフォンアプリまで、多様な方式が存在し、それぞれに特性や導入条件があります。
勤怠管理の方法を検討する際は、記録の正確性や不正防止の観点だけでなく、集計作業の手間、給与計算ソフトとの連携可否、運用コストなど「打刻後」の業務フロー全体を見据えることも重要です。
また、従業員数や勤務形態、既存システムとの相性などにより適した方法は異なります。導入目的や求める効率化のレベルを明確にし、各手段のメリット・デメリットを整理したうえで、自社に合った勤怠管理のあり方を検討することが制度設計の見直しにもつながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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