- 更新日 : 2025年8月20日
給与支払報告書の郵送方法は?普通郵便でもいい?提出先や書き方、eLTAXのやり方も解説
給与支払報告書の提出にあたって、郵送方法が気になる総務・経理担当者の方も多いのではないでしょうか。普通郵便で送っても問題ないのか、封筒にはどのように記載すれば良いのか、アルバイトや退職者の分はどう扱うのか、など、毎年行う手続きでありながら、細かい疑問は尽きないものです。
この記事では、給与支払報告書の郵送方法を中心に、提出の基本ルールから具体的な書き方、作業を効率化する電子申請システムeLTAXのやり方まで、担当者が知りたい情報を網羅的に解説します。
目次
そもそも給与支払報告書とは
まずは、給与支払報告書の基本的な役割と、なぜ提出が必要なのかを理解しておきましょう。
従業員の住民税計算の基礎となる重要書類
給与支払報告書とは、事業者が前年中に従業員へ支払った給与の金額などを、従業員が住む市区町村へ報告するための書類です。地方税法という法律により、給与を支払ったすべての事業者に提出が義務付けられています。
市区町村はこの報告内容に基づき、個人の住民税額を決定します。つまり、従業員が適正な住民税を納めるための根拠となる、非常に重要な書類です。
記載内容は源泉徴収票とよく似ていますが、源泉徴収票は税務署と従業員本人へ、給与支払報告書は市区町村へ提出する点で役割が異なります。
提出対象者にはアルバイトや退職者も含まれる
原則として、前年中に給与を支払ったすべての従業員について給与支払報告書の提出が必要です。これには、正社員や契約社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトなど、雇用形態を問いません。
また、年の途中で退職した人についても提出義務がありますので注意が必要です。
給与支払報告書を提出しないとどうなるのか
給与支払報告書の提出は、地方税法で定められた事業者の義務です。地方税法第317条の7の規定により、給与支払報告書を提出しない、または虚偽の記載をした場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。
また、従業員自身が確定申告をする際に不便が生じたり、住民税の納付が遅れたりといった影響が出る可能性も考えられます。企業の信頼性を保つためにも、必ず正しく提出しましょう。
給与支払報告書を郵送するための準備
郵送する前に、必要な書類を正しく作成する必要があります。ここでは、書類の種類と書き方のポイントを解説します。
必要な書類を揃える
給与支払報告書は、以下の2種類の書類で構成されています。
- 給与支払報告書(総括表)
全従業員分をまとめた表紙の役割を果たす書類です。 - 給与支払報告書(個人別明細書)
従業員一人ひとりについて作成する詳細な書類です。
これらの様式は、提出先である各市区町村のウェブサイトからダウンロードするのが一般的です。総務省のウェブサイトでは掲載されていない場合があるため、各自治体のウェブサイトを確認してください。
総括表の書き方
総括表には、事業者の名称や所在地、法人番号(または個人事業主の個人番号)などを記載します。また、報告する従業員の総数や、そのうち住民税を給与から天引きする特別徴収対象者と、個人で納付する普通徴収対象者の人数などを正確に記入します。
個人別明細書の書き方
個人別明細書は、従業員一人につき1枚作成します。主な記載項目は以下の通りです。
これらの情報は、年末調整で作成した源泉徴収簿などをもとに、正確に転記してください。特に個人番号(マイナンバー)は、法律で記載が義務付けられていますので、漏れのないよう注意が必要です。
給与支払報告書の郵送方法
書類の準備が整ったら、次は郵送です。ここでは、提出先から具体的な郵送方法までを解説します。
提出先は従業員の1月1日時点の住所
給与支払報告書の提出先は、会社の所在地ではありません。その年の1月1日現在で、従業員が居住している(住民票がある)市区町村です。
例えば、会社が東京都港区にあっても、従業員が神奈川県横浜市に住んでいる場合は、横浜市の担当部署へ提出します。
年の途中で退職した従業員については、翌年の1月1日時点ではなく、退職した日時点で居住していた市区町村が提出先となります。従業員の住所を正確に管理し、提出先を間違えないようにしましょう。
複数の市区町村へ郵送する場合の注意点
従業員がそれぞれ異なる市区町村に住んでいる場合、それぞれの市区町村ごとに書類をまとめて個別に郵送する必要があります。
市区町村ごとに総括表と、該当する従業員の個人別明細書をセットにして、封筒に分けて発送してください。宛先を間違えないよう、慎重に作業を進めましょう。この作業が煩雑な場合は、後述するeLTAXを利用すると、一度の操作で複数の市区町村へ送信できて大変効率的です。
封筒の書き方
郵送する際は、封筒の表面に提出先市区町村の担当課(例:〇〇市役所 市民税課)を明記し、他の郵便物と区別され、担当部署へスムーズに届くよう、封筒の左下に赤字で「給与支払報告書 在中」と記載します。
裏面には、差出人である会社の名称、所在地、担当部署、電話番号を忘れずに記載してください。
封筒に入れる際は、総括表を一番上にし、その下に個人別明細書をまとめます。個人別明細書は、特別徴収対象者と普通徴収対象者を分けておくと、受け取った市区町村が処理しやすくなります。
普通郵便での送付も可能
給与支払報告書は大量の個人情報を含む信書に該当します。法的には普通郵便で送付可能ですが、送達記録が残らず紛失のリスクがあるため、取り扱いには注意が必要です。
万が一の郵送事故のリスクを減らし、提出した事実を証明するためにも、単なる普通郵便よりは、送達記録が残る特定記録郵便やレターパック、簡易書留を利用することを強くおすすめします。これにより、いつ、どの市区町村へ提出したかという証拠が手元に残り、安心して手続きを完了できます。
提出期限は毎年1月31日必着
給与支払報告書の提出期限は、毎年1月31日です。この日までに、各市区町村に書類が到着している必要があります。
郵送の場合は、配達にかかる日数を考慮し、余裕を持って発送することが重要です。特に期限の直前は窓口が混雑し、処理に時間がかかることも予想されます。遅くとも1月20日頃までには発送作業を終えることを目標に準備を進めると良いでしょう。
給与支払報告書の郵送より便利な電子申請のやり方
近年、給与支払報告書の提出は郵送だけでなく、地方税ポータルシステムeLTAX(エルタックス)を利用した電子申請が普及しています。業務効率化の観点から、導入を検討する価値は十分にあります。
eLTAXを利用するメリット
eLTAX最大のメリットは、複数の市区町村への提出を一度のデータ送信で完了できる点です。
- 郵送のように提出先ごとに書類を仕分け、封筒を作成する手間が省ける
- 郵送代や印刷代などのコストを削減できる
- オフィスにいながら24時間いつでも提出が可能
- オンラインで受付状況を確認できる
- 市区町村からの特別徴収税額通知も電子データで受け取れ、給与計算がスムーズになる
eLTAXの基本的なやり方と流れ
eLTAXを利用するには、事前の準備が必要です。
- 利用届出とID取得
eLTAXの公式サイトから利用届出(新規)を行い、利用者IDを取得します。 - 電子証明書の準備
データ送信時に電子署名を付与するため、マイナンバーカードや商業登記に基づく電子証明書などが必要になります。 - 申告データの作成
eLTAXに対応した給与計算ソフトなどを使って、申告データ(CSV形式など)を作成します。 - 送信
作成したデータをeLTAXの無料ソフトウェアであるPCdeskなどに取り込み、電子署名を付与して送信すれば手続きは完了です。
初めて利用する場合は、利用者IDの取得や電子証明書の準備に時間がかかることがあるため、早めに準備を始めることをおすすめします。
参考:eLTAX
給与支払報告書の提出準備を進めましょう
給与支払報告書の提出は、年に一度の重要な手続きです。提出方法は郵送とeLTAXの2種類がありますが、郵送の場合は個人情報を含む信書として扱われるため、送達記録の残る方法を選ぶとより安全です。提出先は従業員が1月1日時点で居住する市区町村であり、提出期限は1月31日必着です。
雇用形態にかかわらず、アルバイトやパート従業員の分も提出義務があり、これを怠ると罰則の対象となる可能性もあります。この記事で解説した郵送方法のポイント、書き方の注意点、そしてeLTAXの活用法を参考に、提出準備を滞りなく進めてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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