• 更新日 : 2025年7月7日

育休中でも住宅ローンは組める?審査ポイント・種類・注意点を解説

育児休業(以下、育休)は、家族が増え、マイホームの購入を検討し始める方も少なくない時期です。新しい生活への期待が膨らむ一方で、「育休中に住宅ローンは本当に組めるのだろうか?」「審査が通常より厳しくなるのでは?」といった不安を抱えるのは自然なことです。

この記事では、育休取得中または取得予定の方が住宅ローンを検討する際に知っておくべき基本的な知識から、具体的なローンの種類、審査のポイント、さらには注意点や活用できる制度に至るまで解説します。

育休中に住宅ローンは組める?

まず結論からお伝えすると、育休中であっても住宅ローンの契約が可能な場合があります。育休を取得している方は、給与が支払われていない期間があったとしても、無職や無収入の状態とは異なります。雇用関係は継続しているため、住宅ローンを申し込む資格自体は有していると判断されるのが一般的です。

ただし金融機関の審査は厳しくなる傾向も

育休中でも住宅ローンを組める可能性はありますが、全ての金融機関で容易に契約できるわけではありません。一般的に、育休中の住宅ローン審査は、通常時と比較して慎重に行われ、条件が厳しくなる傾向が見られます。育休や産休の取得が、審査において直接的なプラス要素として評価されることは稀であると認識しておく必要があります。

金融機関が審査を慎重に行う背景には、貸し手としてのリスク評価があります。住宅ローンは長期にわたる返済契約であり、金融機関は申込者の「安定した収入の継続性」を最も重視します。育休期間は一時的に収入状況が変化し、また復職後の働き方にも不確定要素が生じる可能性があるため、金融機関はこれらの要素が返済能力にどう影響するかを多角的に評価しようとします。

育休が審査に与える主な影響とは?

育休が住宅ローン審査に与える主な影響は、以下の3点に集約されます。

  1. 一時的な収入減少と年収算定への影響
    育休期間中は、主に育児休業給付金が収入源となりますが、この給付金は税法上非課税であり、多くの金融機関では審査上の「給与収入」とは見なされません。そのため、一時的に年収が大幅に減少したように映り、返済能力評価の懸念材料となります。
  2. 職場復帰の不確実性と復職後の収入変動リスク
    金融機関は、育休取得者が確実に職場復帰できるか、また復職後に以前と同様の条件で勤務を継続できるかを重視します。復職後に時短勤務を選択し収入が減少する場合や、万が一復職が困難になった場合のリスクを考慮します。
  3. 健康状態の変化と団体信用生命保険(団信)加入への影響
    多くの住宅ローンでは、団体信用生命保険(団信)への加入が融資の必須条件とされています。団信は生命保険の一種であるため、加入には健康状態の告知が必要です。妊娠・出産を経て育休中に体調が変化した場合、団信の審査に通らず、結果として住宅ローンを組めなくなるケースも考えられます。

育休中に検討できる住宅ローンの種類

育休中に住宅ローンを組む場合、申込者の状況や金融機関の方針によって利用できるローンの種類が異なります。特に夫婦で協力してローンを組む方法がいくつかあり、それぞれの特徴を理解することが重要です。

ペアローンとは?

ペアローンは、夫婦それぞれが個別の住宅ローン契約を結び、お互いが相手のローンの連帯保証人になる仕組みです。

  • メリット
    夫婦それぞれの収入に基づいて借入可能額を算出するため、一人で申し込むよりも借入総額を増やせる可能性があります。夫婦それぞれが住宅ローン控除を利用できます。
  • デメリット
    ローン契約が2本になるため、諸費用が割高になる場合があります。育休中の場合、収入が減少している側の借入可能額は通常より少なくなる可能性があります。

収入合算とは?(連帯債務型・連帯保証型)それぞれの特徴

収入合算は、夫婦の収入を合算して一つの住宅ローンとして申し込む方法です。

連帯債務型

夫婦の一方が主たる債務者、もう一方が連帯債務者となり、双方が全額に対して返済義務を負います。

  • メリット
    借入可能額を増やしやすく、夫婦双方が持ち分に応じて住宅ローン控除を利用できる場合があります。事務手数料も1契約分で済むことが多いです。
  • デメリット
    連帯債務者は団信に加入できない、または加入できる商品が限られる場合があります。

連帯保証型

夫婦の一方が主たる債務者、もう一方が連帯保証人となる形態です。

  • メリット
    主たる債務者の収入だけでは希望額に届かない場合に、審査基準を満たしやすくなることがあります。
  • デメリット
    連帯保証人は住宅ローン控除の適用や団信への加入はできません。

これらの夫婦で組む住宅ローンの特徴をまとめたものが以下の表です。

夫婦で組む住宅ローンの比較

ローン種別契約形態債務者団信加入(対象者)住宅ローン控除(対象者)
ペアローン夫婦それぞれが個別にローン契約、相互に連帯保証夫婦それぞれ夫婦それぞれ(各々のローンに対して)夫婦それぞれ(各々のローンに対して)
収入合算(連帯債務型)夫婦で1つのローン契約、双方が債務を負う主たる債務者と連帯債務者(夫婦双方)主に主たる債務者(連帯債務者は加入不可の場合が多い)夫婦それぞれ(持ち分に応じて)
収入合算(連帯保証型)一方が主債務者、もう一方が連帯保証人主たる債務者のみ主たる債務者のみ主たる債務者のみ

【フラット35】とは?

【フラット35】は、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供している全期間固定金利型の住宅ローンです。

  • 育休中でも申し込み可能
    申込時に産休・育休を取得していても利用可能です。審査においては、多くの場合、休業前に得ていた給与収入を基に年収が算出されます。
  • 比較的緩やかな収入要件
    他の民間金融機関の住宅ローンと比較して、収入に関する要件が比較的緩やかであると言われています。
  • 注意点
    融資実行時点で復職していなくても返済は開始されるため、育休期間中の返済計画をしっかりと立てておく必要があります。

【フラット35】子育てプラスで金利優遇も

「【フラット35】子育てプラス」は、子どもの人数などに応じて、借入金利が一定期間引き下げられる制度です。

  • 対象条件
    借入申込時に子ども(18歳未満)がいる子育て世帯、または夫婦のいずれかが40歳未満の若年夫婦世帯などが対象です。
  • 金利引き下げ
    子どもの人数等に応じてポイントが加算され、そのポイント数によって当初5年間、金利引き下げが受けられます。
  • 留意点
    予算金額に達すると受付が終了する可能性があるため、最新情報の確認が不可欠です。

育休中の住宅ローン審査

育休中に住宅ローンを申し込む際、金融機関は通常よりも慎重に審査を行います。

最重要ポイント:収入の安定性と継続性

金融機関が最も重視するのは、申込者が将来にわたって安定的にローンを返済し続けられるか、すなわち収入の安定性と継続性です。

育休「前」と復職「後」の年収が審査の土台

育休中の住宅ローン審査では、主に産休・育休取得「前」の年収、または復職「後」に見込まれる年収が審査の基準となります。金融機関によって判断基準は異なります。

育児休業給付金は年収に含まれない点に注意

育児休業給付金は税法上非課税所得として扱われるため、原則として住宅ローンの審査における「年収」には算入されません。

職場復帰の確実性と復職後の働き方

金融機関は、育休取得者が確実に元の職場に復帰できるか、そして復職後にどのような雇用形態・勤務条件で働く予定なのかを非常に重視します。復職後に時短勤務を選択し収入が減少する場合、その減少後の収入に基づいて返済能力が評価されます。

健康状態と団体信用生命保険(団信)加入の壁

ほとんどの民間金融機関の住宅ローンでは、団体信用生命保険(団信)への加入が融資の必須条件です。団信に加入するためには健康状態に関する告知が必要であり、審査が行われます。妊娠・出産の影響や育休中の生活環境の変化などにより体調を崩した場合、団信の審査に通らない可能性があります。

審査に必要な主な書類一覧

育休中に住宅ローンを申し込む際に金融機関から提出を求められる主な書類は以下の通りです。

  • 源泉徴収票
  • 給与明細
  • 育児休業証明書
  • 復職後の収入見込証明書(またはそれに準ずる書類)
  • 母子手帳のコピー
  • その他(預金残高証明書、本人確認書類、物件に関する書類など)

審査通過の可能性を高めるための準備と対策

  • 頭金を多めに用意する
  • 無理のない借入額を設定する
  • 信用情報をクリーンに保つ
  • 複数の金融機関に相談する
  • 復職の意思と計画を明確に伝える

育休中の住宅ローン申し込み

育休中に住宅ローンを組むことを決めた場合、次に考えるべきは「いつ申し込むか」というタイミングです。

育休中の住宅ローン申請:タイミング別メリット・デメリット

タイミングメリットデメリット
育休取得前現在の安定した収入状況で審査を受けられる。
出産・育児前に手続きを済ませられる。
将来の返済計画に狂いが生じるリスク。
収入減の状態で返済が始まる可能性がある。
育休期間中物件探しや情報収集に時間をかけられる。
ライフスタイルに合った物件を選びやすい。
審査が厳しくなる傾向。
復職の確実性がより慎重に判断される。
復職後安定した収入実績で審査が有利に進む可能性。
希望額で審査を受けやすくなる。
良い物件を待つ必要がある。
手続きに時間を割けない可能性。

住宅ローン控除への影響は?知っておきたい節税ポイント

住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高の一定割合が所得税などから控除される制度です。育休期間中は育児休業給付金が主な収入源となり、これは非課税所得です。そのため、その年の課税所得が大幅に減少したりゼロになったりすると、住宅ローン控除の恩恵を満額受けられない、あるいは全く受けられない可能性があります。

返済計画の立て方

  • 収入減リスクの考慮
    育休中や復職後の時短勤務による収入減を考慮し、余裕を持った資金計画を立てましょう。
  • ボーナス返済の注意点
    育休中のボーナス支給は企業の規定により減額・不支給の可能性があるため、ボーナス併用払いは慎重に。
  • 繰り上げ返済の検討
    手元資金に余裕がある場合でも、生活防衛資金は確保し、住宅ローン控除期間中の影響も考慮しましょう。
  • 金利タイプの選択
    変動金利型と固定金利型のメリット・デメリットを理解し、自身のライフプランやリスク許容度に合わせて選択しましょう。

金融機関独自の育児支援策や優遇制度

一部の金融機関では、子育て世帯向けに金利優遇や手数料割引、元金返済の据え置きなどの支援策を提供している場合があります。積極的に情報を収集し、比較検討しましょう。

【注文住宅の場合】つなぎ融資期間中の育休取得リスク

注文住宅では、建物の完成前に土地代金や着工金などを支払うため、「つなぎ融資」を利用することがあります。このつなぎ融資期間中に育休に入ると、住宅ローンの本審査に影響が出る可能性があるため注意が必要です。本融資の審査が再度行われたり、融資額が減額されたり、最悪の場合否決されるリスクがあります。

育休中でも住宅ローンを組める

育休中に住宅ローンを組むことは可能ですが、通常時とは異なる審査の視点や注意点が多く存在するため、事前の情報収集と入念な準備が不可欠です。

金融機関は育休「前」や復職「後」の収入を基に審査を行い、育児休業給付金は年収に含まれず、職場復帰の確実性や健康状態も重視されます。ペアローンや収入合算、【フラット35】といったローンの種類、住宅ローン控除の条件、無理のない返済計画の重要性を理解しましょう。

積極的に情報を集め、自身の状況を客観的に把握し、金融機関の懸念点を解消する計画的な準備が求められます。不明な点があれば、金融機関の担当者やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも有効です。


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